収容当日に撮られたと思われるSCP-XXX-JP-1。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JP-1は442 hzにピッチを合わせ調律を行い、サイト-8181の標準防音ユニットに保管してください。SCP-XXX-JP-2の譜面は劣化を防ぐため、温度を20~25℃、湿度を50~55%に保ちサイト-8181の低危険度物品用収容ロッカーに保管してください。SCP-XXX-JP-2を書き写すなどして複製することは許可されません。実験を行う際はセキュリティクリアランスレベル3以上の職員から許可を得た上で行ってください。
説明: SCP-XXX-JPは、████████社が19██年にカエデなどの硬く緻密な木材を使用して製造したとされるグランドピアノ(以降SCP-XXX-JP-1と呼称)を使い、「最愛の者に神の奇跡を」と題されたピアノ曲(以降SCP-XXX-JP-2と呼称)を演奏することにより生じる現象です。SCP-XXX-JP-2はハ短調、3/8拍子の曲であり、SCP-XXX-JP-2の譜面にはピアノの調律のピッチを444hzに合わせることが記されています。演奏時間はおおよそ7分程度です。
SCP-XXX-JPは、SCP-XXX-JP-2の演奏が始まってからおおよそ3分後、SCP-XXX-JP-2の演奏を聴いていたもの(以降被験者と呼称)に対し、幻覚を発生させます。これによって生じる幻覚は、被験者に「神」と認識される姿で現れます。被験者によって容姿は異なります。この幻覚が現れた後、被験者はこの「神」の持つ超自然的な力をみせられるとされ、SCP-XXX-JP-2の演奏が終盤にさしかかる頃には、この「神」に対し狂信的な態度が形成されます。被験者のこの一連の行動に対して、SCP-XXX-JP-2の演奏者は違和感を覚えますが、最後まで演奏をしなくてはならないという強い使命感にかられ、演奏を続行します。
SCP-XXX-JP-2の演奏が終了すると同時に幻覚は消滅します。しかし被験者の狂信的な態度は継続し、幻覚が消滅したことに対し激しい動揺や不安をおぼえます。その後、被験者は演奏者に対しSCP-XXX-JP-2を再び演奏するように願い出ます。この願い出に応じなかった場合、被験者は罵声を浴びせ、暴力的な手段で再び演奏をするように訴えかけます。この暴力は再び演奏をするか、演奏者が死亡するまで続きます。再び演奏を再開した場合、1回目とは異なり、演奏が開始したと同時に被験者に幻覚が現れます。このとき演奏者には1回目にみられた演奏を最後まで実行しよう、という強い使命感は消滅します。2回目の演奏後も1回目の演奏後と同じようなアンコールが起こります。これは演奏者に暴力的な行為が蓄積され、死亡または衰弱するなどして演奏が不可能な状態になるまで何度も繰り返されます。被験者は演奏者が演奏不可の状態になったと理解すると、深い絶望をおぼえ、発狂し、周りの人間や自らに対して無差別に攻撃を始めます。SCP-XXX-JPのこの一連の動きは、これらの被験者が全員死亡し活動が停止するまで続きます。
実験記録XXX-JP-1 - 日付19██/██/██
対象: 演奏者と聴衆に分けられた2名のDクラス職員
実施方法: SCP-XXX-JP-1以外のグランドピアノを使用しSCP-XXX-JP-2を演奏。
結果: SCP-XXX-JPは発生せず。
分析: SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JPの発生に必須のようです。
実験記録XXX-JP-2 - 日付19██/██/██
対象: 演奏者と聴衆に分けられた2名のDクラス職員
実施方法: ピッチを444hz以外に合わせ調律を行ったSCP-XXX-JP-1で演奏。
結果: SCP-XXX-JPは発生せず。
分析: ピッチ444hzに合わせ調律を行ったSCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JPの発生に必須のようです。
実験記録XXX-JP-3 - 日付19██/██/██
対象: 演奏者と聴衆に分けられた2名のDクラス職員
実施方法: SCP-XXX-JPに曝露した被験者に強力な睡眠ガスを投与。
結果: 睡眠ガスによる効果を一切受けず、SCP-XXX-JPの一連の行動により2名とも死亡。
分析: SCP-XXX-JPは脳に何らかの影響を与え、興奮神経を常に活性化させているため眠らなかったと思われます。
実験記録XXX-JP-4 - 日付19██/██/██
対象: 演奏者と聴衆に分けられた3名のDクラス職員
実施方法: 聴衆を█████を狂信する宗教家と無宗教者で実施。
結果: 2名とも幻覚による「神」を狂信し、SCP-XXX-JPの一連の行動により3名とも死亡。
分析: 宗教家であったDクラス職員がうわ言のように「あぁ、█████様、█████様!」と発言していた。これはこのDクラス職員の信仰するところのものではありません。また無宗教者であるDクラス職員には違うものが見えていたらしく、それを狂信していきました。そのため信仰や無信仰、何を信仰しているかは無関係のようです。また人によって見えるものも違うようです。
実験記録XXX-JP-5 - 日付19██/██/██
対象: 演奏者と聴衆に分けられた2名のDクラス職員
実施方法: SCP-XXX-JPに曝露した被験者にAクラス記憶処理を行う。
結果: 記憶処理に成功したものの被験者は激しい喪失感、虚無感に襲われ、1ヶ月後衰弱死した。演奏者も無事であったがその後[データ削除済]
分析: Aクラス記憶処理によるSCP-XXX-JPの幻覚の記憶の処理は可能なようです。しかしその後の喪失感や虚無感といった症状から、被験者にインタビューを行うことは困難です。演奏者は無事でしたが、驚くべきことに[データ削除済]。
補遺: SCP-XXX-JPは日本人ピアニストで夫である████が、妻で同じくピアニストであった██████のために開催した誕生日パーティーでSCP-XXX-JPを発生させたことで発見されました。このとき夫妻のほか、友人10名を含む12名が犠牲となりました。これを発見し、通報した隣人にはAクラス記憶処理が行われ、カバーストーリー“複数犯による強盗殺人”が実施されました。
その後財団により調査が行われ、SCP-XXX-JPの発生に関係すると思われる記載がある、夫の████の日記が発見されました。以下は日記の一部を抜粋したものです。
日付: 19██/██/██ (SCP-XXX-JP回収の2ヶ月前)
今日妻が肝臓ガンと診断された。
医者はすでに末期であること、余命が3ヶ月程であること、すでに手の施しようがないことを告げてきた。
妻は「なっちゃったものは仕方ない」と笑って言っていたが、動揺しているのは鈍感な私でも分かった。医者は自宅療養を勧めてきた。もちろん断る理由はなかった。
自宅につき私はこれを書いている。これから吐き出したいことはここに記そう。そうでもしないと私は壊れてしまいそうだから。
何か私にできることはないのだろうか…。
日付: 19██/██/██ (SCP-XXX-JP回収の1ヶ月前)
今日知人からおもしろい話を聞いた。
いくつかの周波数には意味があり、528hzには「理想への変換、奇跡、神などの超自然的な力、細胞の回復」といった意味があるという。
細胞の回復とは、傷ついたDNAを修復するという意味であり、ガンから体を守ってくれるのだと…。
まだ私にもやれることはあるのだと言われた気がした。
曲を書こう、妻の為に。
思えば私にはこれしかなかった。妻が愛してくれた私の音色を聴かせるしか。
幸いにもピッチを444hzに合わせ調律をすると、Cの音が528hzになる。曲はハ短調にしよう、Cの音を主音におけるうえ、444hzなんて不吉な音を使わずに済む。
披露するのは1ヶ月後の妻の誕生日パーティーだ。
日付: 19██/██/██ (SCP-XXX-JP回収の1週間前)
ついに曲が完成した。
作曲をしていて私はこうも信仰深い人間だったのかと思った。
こんな迷信を信じ、毎日妻との思い出のピアノの前で、神にひたすら祈りながら作曲をした。傍から見ればついに狂ったと思われるかもしれない。こんなことでガンが治るなら苦労はしない。しかし祈らずにはいられなかった。思いつく限りの神に祈りながらピアノを弾いた。何度も何度も…。
もしかしたらと思ってしまうのだ…。
あとは1週間後の妻の誕生日に向け、細かい調整をするのみだ。
あぁ、曲に題をつけなくては…。何にしようか。
日付: 19██/██/██ (SCP-XXX-JP回収の前日)
ついに明日、妻の誕生日パーティーだ。曲に題もつけた。
この1ヶ月間ピアノの前で、弱っていく妻の前で、祈り続けた。
どうかもう一度妻と笑いながらピアノを弾きたい。どうかもう一度妻とコンサートを観に行きたい。どうかもう一度あの日々を過ごしたい。もう一度、もう一度と。
こんな一時的な狂信者のアンコールを神は受け入れてくれるだろうか…。
願わくば、最愛の者に神の奇跡を。
画像はこちらからお借りしました。
提供元:https://pixabay.com/ja/%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0-%E7%B5%90%E5%A9%9A%E5%BC%8F-%E7%B5%90%E5%A9%9A%E6%8C%87%E8%BC%AA-%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E-%E7%B5%90%E5%A9%9A-%E3%82%B4%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89-%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%BC-433651/
作者:krvvitaliy様
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル:
SCP-XXX-JPの土地は財団のフロント企業により買収し、民間人の立ち入りを禁止してください。SCP-XXX-JPを東口から入り、南側にある16本目のケヤキと17本目のケヤキの間によるSCP-XXX-JP-1の発生から消滅までの時間を記録し報告してください。
SCP-XXX-JPの土地は財団のフロント企業により買収し、民間人の立ち入りを禁止してください。SCP-XXX-JPを東口から入り、南側にある16本目のケヤキと17本目のケヤキの間を常に監視し、記録してください。
追記: 20██/██/██、SCP-XXX-JPの特異性は消滅しました。異なる場所がSCP-XXX-JPへと変化する可能性があるため、調査を進めてください。
説明: SCP-XXX-JPは██県██村の郊外に位置し東西に延びる並木道です。112本のケヤキ(学名:Zelkova serrata)から構成され、全長は300 m程になります。SCP-XXX-JPを東口から入り、南側にある16本目のケヤキと17本目のケヤキの間は、日本標準時における16時ちょうどから、10秒程度の時間SCP-XXX-JPに酷似した別の場所(以降SCP-XXX-JP-1と呼称)へと通じます。SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JPに濃い霧がかかったような場所です。SCP-XXX-JP-1ではSCP-XXX-JPにおける東口の出口が西口の入り口へと、西口の入り口が東口の出口へと通じています。
SCP-XXX-JP-1では15歳程度とみられる女性(以降SCP-XXX-JP-2と呼称)の存在を確認できます。SCP-XXX-JP-2以外の生物は確認されていません。SCP-XXX-JP-2はSCP-XXX-JP-1へ立ち入った人物(以降被験者と呼称)を認識すると、友好的な態度で近づき、「かくれんぼ」をすることを提案してきます。この際SCP-XXX-JP-2は自らを「子」、被験者を「鬼」で開始することを要求します。この提案や要求を受け入れない場合、SCP-XXX-JP-1は消滅しSCP-XXX-JPへと戻されます。
この「かくれんぼ」では、SCP-XXX-JP-2は112本のケヤキのいずれかの裏に隠れます。この時隠れる場所に規則性はなく、ランダムであるとされています。SCP-XXX-JP-2と「かくれんぼ」を行いSCP-XXX-JP-2を発見した場合、SCP-XXX-JP-2は自らを発見した被験者に、その被験者がかつて「失くしたもの」を渡します。この際SCP-XXX-JP-2は「失くしたもの」の姿形を真似、自らを発見した人物に見つけてくれたことに対する感謝の言葉を述べます。この「失くしたもの」を受け取り、感謝の言葉を述べられたと当時にSCP-XXX-JP-1は消滅しSCP-XXX-JPへと戻されます。
実験記録XXX-JP-01 - 20██/██/██
対象: D-10020、D-10022
実施方法: D-10020とD-10022の二名をSCP-XXX-JP-1にてSCP-XXX-JP-2と「かくれんぼ」を行わせる。
結果: 先にD-10020がSCP-XXX-JP-1に入ったと同時にSCP-XXX-JP-1への入り口が消滅した。
分析: SCP-XXX-JP-1には1名しか入れないようだ。
実験記録XXX-JP-02 - 20██/██/██
対象: D-10118
実施方法: D-10118をSCP-XXX-JP-1にてSCP-XXX-JP-2と「かくれんぼ」を行わせる。
結果: D-10118がSCP-XXX-JP-2を発見した際、SCP-XXX-JP-2は膝を抱え、頭をうずめ、丸くなった状態であった。その後SCP-XXX-JP-2は「見つけてくれてありがとう」と述べ、角がとれ、小さく丸くなった消しゴムをD-10118に手渡した。受け取ったと同時にSCP-XXX-JP-1は消滅した。
分析: D-10118は消しゴムを受け取るまで、自分がこの消しゴムを失くしていたということを忘れていた。そのため本人に「失くしたもの」の記憶があるかどうかは無関係のようだ。
実験記録XXX-JP-03 - 20██/██/██
対象: D-10130
実施方法: D-10130をSCP-XXX-JP-1にてSCP-XXX-JP-2と「かくれんぼ」を行わせる。この際「かくれんぼ」後に渡される「失くしたもの」をこちらから指定する。
結果: D-10130が以前失くした靴をSCP-XXX-JP-2に「かくれんぼ」後に渡してほしいという旨を伝えた。SCP-XXX-JP-2はこれを了承、「かくれんぼ」後にD-10130が以前失くした靴を手渡した。この時SCP-XXX-JP-2は長座体前屈のような姿で、背中にリボン結びにした紐をつけていた。靴を手渡す際SCP-XXX-JP-2は「忘れないでいてくれてありがとう」と述べ、受け取ったと同時にSCP-XXX-JP-1は消滅した。
分析: 「かくれんぼ」後に渡される「失くしたもの」は指定が可能なようだ。またSCP-XXX-JP-2の言葉からSCP-XXX-JP-2は「失くしたもの」の気持ちを想像し、表現しているようだ。
実験記録XXX-JP-04 - 20██/██/██
対象: D-12880
実施方法: D-12880をSCP-XXX-JP-1にてSCP-XXX-JP-2と「かくれんぼ」を行わせる。この際「かくれんぼ」後に渡される「失くしたもの」をこちらから指定する。指定するものは人間にする。
結果: D-12880が昔死亡した婚約者をSCP-XXX-JP-2に「かくれんぼ」後に渡してほしいという旨を伝えた。SCP-XXX-JP-2はこれを「彼女はここにはいない」と拒否した。その後「かくれんぼ」を行った。SCP-XXX-JP-2発見時、SCP-XXX-JP-2は手を後ろに組み、D-12880を見上げるように立っていた。その後「ありがとう」と述べた。この言葉と同時にSCP-XXX-JP-1は消滅した。
分析: D-12880は「かくれんぼ」後何も渡された様子はなかったが、D-12880は「かくれんぼ」後、婚約者との思い出が鮮明に思い出されたと述べている。またSCP-XXX-JP-2を発見した際のSCP-XXX-JP-2の立ち姿が、婚約者を彷彿とさせるものであったと述べていることから、「かくれんぼ」後、婚約者との思い出を「失くしたもの」として渡されたと思われる。「失くしたもの」は形の見えるものだけではないようだ。またこの後も人間以外の生物を指定した実験を何度か行ったが、いづれもSCP-XXX-JP-2は「ここにはいない」と拒否をした。生物をSCP-XXX-JP-2が「かくれんぼ」後に渡す事はないようだ。
対象: SCP-XXX-JP-2
インタビュアー: ████博士
付記: インタビューは████博士がSCP-XXX-JP-1にてSCP-XXX-JP-2を発見したところから開始する。
<録音開始, 20██/██/██>
████博士: やあ、はじめまして。
SCP-XXX-JP-2: はじめまして。おじさんは迷ってここに来たんですか?それとも最近よく来る人たちの仲間の人?
████博士: 後者の方だよ。でも今日は君と「かくれんぼ」をする前に少しお話しをしたいんだ。「かくれんぼ」はそれからでいいかな?
SCP-XXX-JP-2: ん?別に構わないですよ。
████博士: ありがとう。私の名前は████、皆から████博士って言われてるから、博士とでも呼んでもらえればいいよ。君の名前は?
SCP-XXX-JP-2: ・・・名前かぁ。覚えてないんですよね。
████博士: 覚えてない?
SCP-XXX-JP-2: そうなんですよ。ここに来る前の事に関して何にも思い出せないんですよね・・・。気づいたらここにいたんですよ。
████博士: ここに来る前ということは、君は昔違うところにいたということかな?私たちと同じ世界?
SCP-XXX-JP-2: たぶんそうですね、博士のいう世界が私の思っている世界なら。まあ、覚えてないからはっきりと断言はできないですけど。
████博士: なるほど。では君はこの世界に来てどう思ったのかな?
SCP-XXX-JP-2: なんとも思わなかったですね、自分でも不思議なほどに。それどころか少し落ち着く感じもありました。それに最初はお腹も空かないし、眠くもならないから私死んだかな?って思いましたね。違うみたいですけど。
████博士: 違う?どうしてそう思ったのかな?
SCP-XXX-JP-2: 皆がここはそんな場所じゃないって教えてくれたんですよ。
████博士: 皆とは誰の事かな?
SCP-XXX-JP-2: 誰かが「失くしたもの」です。ここは誰かが「失くしたもの」が集まる場所なんですよ。誰かが何かを失くしてしまうと、皆ここに隠れてしまうんです。皆がそう教えてくれました。
████博士: 皆のなかには君以外の人はいるのかな?
SCP-XXX-JP-2: いえ、いないですね。それどころか私以外に生きているものもここに来たことはないです。どうしてかは分からないですけど。
████博士: そうか。では君はなぜ「かくれんぼ」をするのかな?
SCP-XXX-JP-2: それはですね・・・。ここにいる子たちは皆隠れてしまっている、けれど失くしてしまった人たちに見つけて欲しいと思っているんですよ。だから私が「かくれんぼ」をして、その子が隠れてしまっている所に一緒に隠れて見つけてもらうんです。皆は隠れてしまった場所から動けないから・・・。
████博士: 「かくれんぼ」の時の物真似やお礼も皆のため?
SCP-XXX-JP-2: そうですね。皆、私以外と話せないから・・・。そろそろ「かくれんぼ」しましょうか、博士に見つけて欲しがっている子もいますし。
████博士: そうしようか、「かくれんぼ」なんて何年振りかな・・・。
<録音終了>
終了報告書: 今回のインタビューでSCP-XXX-JP-2が元々は我々の世界にいたかもしれない可能性が出てきました。このことに関しては調査を進めていくことで、SCP-XXX-JPの発生の原因を突き止めることができるかもしれません。さらなる調査のためSCP-XXX-JP-2のインタビューは、引き続き続行していきます。-████博士
補遺1: 20██/██/██、SCP-XXX-JP-1へと通じる時間が日本標準時における16時ちょうどから、おおよそ30秒もの間になっていることが判明しました。これに伴いSCP-XXX-JP-1の発生場所であるSCP-XXX-JPの16本目と17本目のケヤキを見張るよう監視員を2名配置し、SCP-XXX-JP-1の発生時間を記録してください。この他異常が発見されるようであればEuclidへのオブジェクトクラスの変更も検討されます。
対象: SCP-XXX-JP-2
インタビュアー: ████博士
付記: インタビューは████博士がSCP-XXX-JP-1にてSCP-XXX-JP-2を発見したところから開始する。
<録音開始, 20██/██/██>
████博士: やあ、ひさしぶりだね。
SCP-XXX-JP-2: 久しぶりですね博士、今日もインタビューしにきたんですか?
████博士: まあそんな感じだね。じゃあさっそく質問いいかな?
SCP-XXX-JP-2: いいですよ。
████博士: 最近ここに通じる時間が延びてきているんだ、なにか心当たりはないかな?
SCP-XXX-JP-2: ・・・ありますよ。たぶん私が原因ですね。
████博士: 君が原因?
SCP-XXX-JP-2: そうです。ずっとここにいて分かったんですけど、わたしはこの場所の親木みたいなものなんだと思います。この場所の親木に私は選ばれた。だからこの場所の親木の私が消えることで、ここも消えてしまう。そういうことだと思います。ここに通じる時間が延びてるのはその前兆だと思います。
████博士: 色々気になるがひとつひとつ聞いていこうか、親木に選ばれるとは?
SCP-XXX-JP-2: ここに来たとき皆が言っていたんです。「今回は君が選ばれた」って。最初は意味が分からなかったんですけど、最近そういう意味だって理解できたんです。詳しいことや私が選ばれた理由はわからないですけど・・・。
████博士: なるほど・・・。では君が消えるというのは?
SCP-XXX-JP-2: ここにいる皆はずっと隠れているわけではないんです。・・・ある時が来ると消えてしまうんです。
████博士: ある時というのは?
SCP-XXX-JP-2: 皆を失くしてしまった人が亡くなってしまった時です。
████博士: ・・・そうか、つまり君も皆と同じ誰かが「失くしたもの」であって、その誰かも亡くなりかけてるということかな?
SCP-XXX-JP-2: そうですね、なんとなくですけど自分がもう少しで消えてしまうと感じることができるんです・・・。
████博士: なるほど。それは困るな。私たちは君やこの場所を確保し、収容し、保護しなくてはならない。・・・だから消えてしまうのはこちらとしては困る。君が消えないよう私たちで善処させてもらうよ。
SCP-XXX-JP-2: ありがとうございます。少し暗い話になっちゃいましたね。「かくれんぼ」しましょうか。
████博士: ああ、そうしよう。
<録音終了>
終了報告書: 今回のインタビューでSCP-XXX-JP-2が消滅しかかっていることが、SCP-XXX-JPの異変の直接の原因となっていることが分かりました。SCP-XXX-JPが消滅の危機にあるとして、その原因となるSCP-XXX-JP-2の消滅を防ぐため、調査を進めていきます。またSCP-XXX-JPが私たちの世界から親木となる人物を選出し、SCP-XXX-JPを作り出している可能性があります。こちらも調査を進めていきます。-████博士
補遺2: 20██/██/██、SCP-XXX-JP-1へと通じる時間が3時間~6時間ほどになり、発生時間にもバラつきがみられるようになりました。これに伴いSCP-XXX-JP-1の発生場所であるSCP-XXX-JPの16本目と17本目の欅を常に監視し記録し、報告をしてください。
対象: SCP-XXX-JP-2
インタビュアー: ████博士
付記: SCP-XXX-JP-2が20██/██/██のDクラスによる実験を行った際、████博士のインタビューを再び受けることを希望し、████博士が許可したためインタビューを実施しました。
<録音開始,20██/██/██ >
████博士: やあ、今日はどうしたのかな。指名してくるなんて。
SCP-XXX-JP-2: 深い意味はないですよ。ただ博士にお礼を言っておこうと思ったんで。・・・ありがとうございます。
████博士: ・・・私は君にお礼を言われることをしてきた覚えはないが。
SCP-XXX-JP-2: そうですか?私は感謝してますよ。・・・言いたいことはそれだけです。「かくれんぼ」しましょうか。
████博士: ああ、そうしよう
SCP-XXX-JP-2: ・・・博士。
████博士: なにかな?
SCP-XXX-JP-2: 見つけてくださいね。私の事。
████博士: 見つけるさ。
<録音終了>
終了報告書: この「かくれんぼ」にてSCP-XXX-JP-2は、112本のケヤキのどこにも隠れている姿が発見されませんでした。それから数分後、SCP-XXX-JP-1は消滅しSCP-XXX-JPの特異性は消滅しました。
SCP-XXX-JP-2へのインタビュー記録-5からSCP-XXX-JPは親木を変え、異なる場所をSCP-XXX-JPへと変化させる可能性があります。そのためSCP-XXX-JPの調査は今後も進め、SCP-XXX-JPを見つけ出してください。-████博士
画像はこちらからお借りしました。
提供元:https://pixabay.com/en/avenue-parkway-road-street-autumn-336492/
作者:Unsplash様
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid Neutralized
特別収容プロトコル:
███村に指定される領域は高さ3mの鉄製の柵で囲われています。ここに10名の常駐警備員を配置しSCP-XXX-JP-1、SCP-XXX-JP-2が███村の領域外へ出ないよう監視を行ってください。SCP-XXX-JP-2は週に1度、財団による定期検査を行い███村の風土病に当てはまる症状の有無を確認してください。この際症状がみられたSCP-XXX-JP-2をSCP-XXX-JP-2-a、症状のみられなかったSCP-XXX-JP-2をSCP-XXX-JP-2-bと分類し、それぞれの調査を進めてください。SCP-XXX-JP-1によって「鎖手結びの儀」(補遺1: 鎖手結びの儀を参照)を行う実験はサイト管理者の許可を得た上で行ってください。
追記: 18██/██/██、SCP-XXX-JPの特異性は消滅しました。
説明: SCP-XXX-JPは██県██市の郊外に位置する███村の村人に生じる現象です。███村の村人の多くは微弱な筋肉の痙攣、皮膚の赤化といった症状がみられる風土病を発症しています(以降発症者と呼称)。この風土病は先天的なものが多いため遺伝子疾患によるものとみられていますが、現在詳しいことは分かっていません。███村の村人は16██年よりこの発症者に対し「鎖手結びの儀」と称される儀式を行っています。
鎖手結びの儀
発症者はこの世に不完全なまま生み落とされた存在とされ、不完全な身体を神の鎖によって現世に繋ぎ止めるという儀式。
村人から年に1度選出された8人の子供が手を繋ぎ、円を作る。円の中では鎖手の巫女と呼ばれる人物と発症者が両腕を鎖で繋ぎ合い、互いに強く鎖を引き合う。このとき鎖手の巫女と発症者の腕にはっきりと鎖の痣の跡が残るまで何度も引き合う。
強く引き合った結果、腕に刻まれた鎖の跡が現世とをつなぐ証とされた。
この「鎖手結びの儀」を8代目である鎖手の巫女(以降SCP-XXX-JP-1と呼称)が行うことにより、「鎖手結びの儀」を行われた発症者(以降SCP-XXX-JP-2と呼称)に特異性が生じます。
「鎖手結びの儀」を行われたSCP-XXX-JP-2は、その腕に残る鎖の跡の時間的経過による消滅が確認されていません。この他SCP-XXX-JP-2には2つの特徴的な特異性がみられます。まずSCP-XXX-JP-2は「鎖手結びの儀」以降1年以内に風土病の特徴的な症状である筋肉の微弱な痙攣、皮膚の赤化といった症状がみられなくなります。症状がみられなくなるまで人によって差異がありますが、この差異や症状の消滅にいたる詳細な原因は現在不明です。
2つ目の特異性はSCP-XXX-JP-2が███村に指定されている領域を離脱することにより生じます。SCP-XXX-JP-2が███村に指定されている領域を離脱した際、███村の方向から強く腕を引かれるような形でSCP-XXX-JP-2の両腕が肩からちぎれ落ちます。この際、ちぎれ落ちた腕の接合手術が行われましたが、いずれも腕がちぎれ落ちてから24時間以内に壊死しました。
補遺2: 18██/██/██、現時点で発症者の数が15名になりました。風土病とSCP-XXX-JPの関連性の調査のため、発症者の中から健康的な人物を5名選出しストックをしてください。この5名はSCP-XXX-JP-1が行う「鎖手結びの儀」の対象外とします。
対象: SCP-XXX-JP-1
インタビュアー: ███博士
付記: SCP-XXX-JP-1が███博士との直接の対話を望んだため、███博士がこれを許可しインタビュー記録として記録しました。
<録音開始,18██/██/██>
███博士: 初めまして、こうして直接話すのは初めてですね。話したい事というのは何でしょうか?
SCP-XXX-JP-1: 初めまして、さっそくですが今日はお願いがありましてお呼びいたしました。
███博士: お願いというのは?
SCP-XXX-JP-1: あなた方は風土病の発症者である村人を5名ほど隠していますね?お願いというのは彼らの返還です。
███博士: …隠してはいません。こちら側で風土病について調査をしているだけです。
SCP-XXX-JP-1: 調査など必要ありません。私であればそんなことをせずに治すことができます。
███博士: 我々は風土病の完治より、その実態を調べ、知ることが重要だと考えています。調査が終われば彼らもお返しします。
SCP-XXX-JP-1: …それはいつになるのでしょうか?
███博士: 今は何とも言えません。お話は以上でしょうか?であれば終了させていただきます。
<録音終了>
終了報告書: SCP-XXX-JP-1が我々のストックしていた発症者の返還を求めてきました。SCP-XXX-JPの調査のため、今後SCP-XXX-JP-1が返還を求めてきた場合も引き続き拒否をしてください。またSCP-XXX-JP-1が返還を強く求めるようになった場合、Aクラス記憶処理を行うことも検討されます。-████博士
補遺3: 18██/██/██に起こった事件XXX-JPによりSCP-XXX-JPの特異性が消滅したため、オブジェクトクラスがEuclidからNeutralizedへと変更されました(詳しくは事件記録XXX-JPを参照)。
事件記録XXX-JP - 事件発生年月日18██/██/██
事件概要: 18██/██/██、ストックとしていた発症者5名が監視員の下を離れ、SCP-XXX-JP-1の下へと移動しました。このとき少なくとも10名以上の村人がこの移動に協力したものと考えられます。この5名がSCP-XXX-JP-1の下にたどり着くと、すぐにSCP-XXX-JP-1は5名の発症者に対し「鎖手結びの儀」を行ったとされています。「鎖手結びの儀」を行った後、SCP-XXX-JP-1はその場に居た村人と数分の対話を行ったとされています。その後自ら用意したと思われる斧を床に固定し、自らの両腕をその斧に振り下ろし、切断しました。この際SCP-XXX-JP-1は治療を拒み、その後出血多量によって死亡しました。
事件報告: SCP-XXX-JP-1は死亡し、さらに発症者全員が「鎖手結びの儀」を行ったことにより、その後風土病の症状を示す人物が現れなくなくなりました。また事件XXX-JP以後、腕の鎖の跡は消滅し、███村の領域を離脱した際に起こるSCP-XXX-JP-2の腕が損失するといった特異性も消滅しました。事件XXX-JP後、村人全員にBクラス記憶処理が施されました。また███博士は事件XXX-JPの責任をとり解雇されました。
補遺4: 事件XXX-JP後、事件XXX-JPに居合わせた村人にインタビューを行い、最後にSCP-XXX-JP-1が死亡する前に行った発言を書き起こし記録しました。
皆さん、私は皆さんにお話ししなければならないことがあります。
私の肩からは鎖がぶらんと生えております。
何を言っているか皆さんは分からないと思いますが、私には、私の腕がそう見えるのです。この鎖は「鎖手結びの儀」を行うと、皆さんに結びついてしまいます。結びついてしまった人がどうなるか…皆さんはご存知のはずです。私から繋がれた鎖の跡は消えることなく、私の鎖に引っ張られ、この村を出ることができず、その腕を引きちぎられてしまいます…。
私には皆さんの病気を治す不思議な力があります。それと同時に皆さんをここに縛り付けてしまう恐るべき力もあります。何人かの腕を引きちぎり、私の鎖は赤く錆びていきました。しかしこの鎖は切れることなく、皆さんの自由を奪ってしまった…。
私はこの力を知ってから、心に決めていたことがあります。皆さんの病を治したら、自ら鎖を、この腕を断ち切ろうと、皆さんに自由を与えようと。皆さんは優しいから、こんな私を許してくれるでしょう、こんな私を心配してくださるでしょう。それでも私の腕は、鎖は多くの人の自由を奪ってしまいました。償わなければなりません。
(SCP-XXX-JP-1は病を治してくれた、そんなことはしなくていいという村人の声)
…ありがとうございます。でも正直なところ、この鎖を断ち切ることは私のためでもあります。私も皆さん同様、この鎖に縛られているのです。だから私はこの鎖を切り落とします。
もしもこんな私が生まれ変われるのなら。もしも鎖ではなく翼が生えるのなら、噂に聞く薄紅色の花の舞う空を、その花と一緒に駆けていきたい。
もしも鎖ではなくエラが生えるのなら、広大な海の中で、流れに身を任せながら自由に泳ぎたい。
もしも鎖ではなく人の手が生えるのなら、その手で誰かの手と強くつながりたい。強く、強く、その手を結び合いたい。
さようなら…。
(SCP-XXX-JP-1が腕を切り落とす)
画像はこちらからお借りしました。
提供元:https://www.flickr.com/photos/fukagawa/429240682/in/photolist-DVYiq-7zNzXR-7T1DXq-232r4-zzVxK-232nC-bc4tyr-6FfKDo-cPqnVo-iRqq9C-bmDTHt-AcsuU-eYAMUJ-dH4xDh-cLKEiw-bSXnb2-fsQWCD-rVxAWj-3mXLMT-eukp1z-euosmG-eujYcM-fhrd7i-51suPa-hsgpZH-9WTW12-hsfgVG-6Tt8CB-bc4tfV-eYAMGo-eYppb2-eYpoXz-piHSJn-dL9DEB-7nwzQJ-dLf9L5-66J57v-s5GzX9-dL9DKn-dL9DBt-6FfMr5-eV6hmc-4DY96e-aWA3tp-aWA3kr-aWA3gK-aWA34v-aWA2Qv-aWA2CX-aWA2sP
作者:d'n'c様
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe/Euclid/Keter
特別収容プロトコル: [SCPオブジェクトの管理方法に関する記述]
説明: [SCPオブジェクトの性質に関する記述]
補遺: [SCPオブジェクトに関する補足情報]
対象: [人間、団体、SCPオブジェクトなど]
インタビュアー: [インタビュアーの名前。必要に応じて█で隠しても良い]
付記: [インタビューに関して注意しておく点があれば]
<録音開始, [必要に応じてここに日時(YYYY/MM/DD)を表記]>
インタビュアー: [会話]
誰かさん: [会話]
[以下、インタビュー終了まで会話を記録する]
<録音終了, [必要に応じてここに日時(YYYY/MM/DD)を表記]>
終了報告書: [インタビュー後、特に記述しておくことがあれば]
実験記録XXX - 日付YYYY/MM/DD
対象:
実施方法:
結果:
分析:
囲まれたテキスト