アイテム番号: SCP-830-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: obは現在、サイト-8141の標準的人型収容室に収容されています。obはその特性上、上半身に衣服を身につけることができません。このため収容室内は常に身体に影響の出ない温度に保たれる必要があります。またobは下半身に麻痺があるため、専用の自走式ベッドが支給されています。ベッドのシートベルトの暗証番号は主任研究員にのみ通知され、使用ごとに変更が実施されます。収容室内は一般的な病院施設に類似させ、許可された書物(雑誌、漫画本など)が与えられています。食事は通常の人間と同様のものを与えられることになっています。
obに対しては、中学校1年生レベルの学校教育を週に4回施しており、セキュリティクリアランスレベル2以上の職員との交流が許されています。これらはobの精神状態の維持のために実施されていますが、教育内容については主任研究員による審査の上で実施することになっています。またその効果を確認するために、週に1度の身体検査の際に心理状態評価が実行されます。
毎年3月31日にobに対して処置830-JP-Cが実行されます。
説明: obは身長147cm、体重39kgの日本人の少女です。収容当時の年齢は12歳、収容開始から現在まで加齢による肉体変化を見せていません。身体的な構造、精神活動に異常はなく、後述のob-A及び加齢による肉体変化を見せない事を除いて通常の人間との差異は確認されていません。
obの最も特徴的な部位はその胸部で、obの胸部は光の反射すらない完全な黒の曲面として観測されます(以下、SCP-830-JP-A)。身体検査によると、ob-Aはobの第3肋間1から第6肋間2の外側に位置していることが確認されています。obはob-Aに触れると、皮膚触っている感触はなく、何かに阻まれているようだ、と証言しています。
ob-Aにob以外の物体を接触させると、接触させた物体はob-Aの中に一瞬で吸引され、二度と戻ることはありません。吸引は接触した物体にのみ作用しているため、ob-Aはその接触面に対して吸引力を発生させているものと推定されています。ob-Aの吸引力の限界測定はobへの死傷をもたらす可能性があることから禁止されていますが、高性能ハイスピードカメラによる観測から少なくとも[編集済]N以上の力が発生していると推察されています。
補遺: obはその特性上、収容違反を発生させる可能性が非常高いことが懸念されていました。このため処理830-JPが実行され、現在の収容体制を確立しています。
- 処理830-JP-A: 収容以前の記憶の処理、偽装記憶「交通事故による特異性の発生及び治療のための入院」の植え付け
- 処理830-JP-B: obの安全な収容のため、人為的に下半身麻痺を付与。-Aの交通事故の影響であると説明。
- 処理830-JP-C: 1年ごとに記憶を消去。収容から█年経過による精神状態の不安定化したことから策定、19██年から実行。
研究中。
・キャンディー缶。
・内部は空であるが、開けると内部にキャンディーが出現。
・開けた人間によりキャンディーの数に変化。
・キャンディーを舐めると、「開けた人間の主観的に見た記憶」が再生される。
・「記憶」は全て幸せなもので、キャンディーを舐めている間繰り返し思い出す。
・キャンディーを舐め終わると、開けた人間が「記憶の内容」が「あった」ことは思い出せるが、幸福感が消滅。
・全てのキャンディーを舐め終わると幸福感が全て消滅し、開けた人間は鬱状態になり最終的に自殺。
・家がどんどん狭くなる。
・狭くなる速度は最初はゆっくりと、経過とともに素早く。
・外見的に異常はなし。内部だけ狭くなる。
・脱出は可能(ドアから出る、窓から出るなど。)。しかし内部の縮小により出口から出られなくなる場合はある。
・家の内部が「なくなった」時、外部も消滅。(更地になる。
・縮小の中心を調査しようとすると、縮小が異常加速する。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス:Safe
特別収容プロトコル:
説明:SCP-XXX-JPは一般的な外見をしたミキサーです。通常の家電と同じようにコンセントによって電力を確保し動作します。本体およびカップはプラスチック製でブレードはチタン製のように見えますが、どちらも未知の材質であることが判明しています。また洗浄が必要な部位以外の取り外しは出来ません。
SCP-XXX-JPの特異性は、材料を1種類だけで使用した場合に発現します。水、牛乳などの液体を入れていないにも関わらず材料は液体化します。また1種類である限り、どれだけ材料を入れても生成される液体の量は800mlを越えることはありません。
液体を飲用した場合、材料が食用の植物であれば特に影響はありません。動物であった場合、3時間から6時間以内に体内のどこかで「復元」されます。また金属であった場合、3時間から12時間以内に体内のどこかが「変換」されます。動物、金属を材料とした場合、これらの効果により被験者は負傷あるいは死亡します。
実験記録SCP-XXX-JP-1 - 20██/██/██
材料:
結果:
分析:
多重世帯住宅
・一戸建てで2階建ての6LDK。
・玄関、窓、その他入口から入ると無人宅。
・ベランダなどに洗濯物がかかることはない。
・灯りが灯ることもない。
・内部には6世帯の家族が暮らしている。
・各家族は同じ家で生活しているが、お互いを認識していない。
・家の状態は「居住者が認識していない間」に共有される。(視線を外すと扉が開いていたり、窓が開いていたり。
・各家族はそのことを気にしていない。(入った当時は気にしていたようだが、現在は気にしていない。
・家の鍵を持っていると各「家」に入ることが出来る。
・家の「別の鍵」を持っているもの同士はお互いを認識できない。
・家の外から見える窓が開くことはない。
ひとをくったはなしであり、ひとをくったはなしをしたい
(能力)
・飢餓に襲われた村が人を食うという昔話。
・口伝によって聞き手に「人肉」以外食べられないようにするSCP。
・「人肉」以外を食しても体内に吸収されず嘔吐、下痢などで排泄される。
(昔話の内容)
・昔、村が飢饉に襲われた。
・食うものに困り果てた村人は、村の中で「肉」を決めて食べることにした
・「肉」の味、食感などについて描写されている。
(実験)
・日本語が理解でないDクラスに聞かせる。 ×
・詳細は話さずあらすじで聞かせる。 ○
・録音したものを聞かせる。 ○
・文章化したものを見せる。 ○
・「肉」の味、食感の部分のみ削除して聞かせる、見せる。 ×
(インタビュー)
・おそらく発生したであろう土地の老人に話を聞く。
・昔話は元は別の内容であった。
・老人は祖母から聞いたとのこと。
・技術目的を持ってSCPを作り出す集団。
・「技術は使うものであって、善悪は使い方次第である」という思想・・・だとSafeからKeter作れて面白い感じなる・・・かな?
・財団が来るとさっさと逃げる、あくまでも技術屋の集団が主な部分なので戦力的には弱い。
・戦力が弱いので情報収集に力を入れている。(財団の襲撃が感知されたのはこのため。)
メモー
・カラオケBOXESの東弊重工サイドのお話。
・東弊重工には情報を専門とする部署「情報局」があり、工場を監視されたことを知った情報局局長が襲撃当日までにいかにして財団を知り、物品を逃がしたか・・・を描きたい。
・ドンパチよりツールの技術力の高さとかそういうの書いてみたい。
まだ肌寒い朝方・・・
ここは小さなビルの小さな探偵事務所、外から見れば「東 探偵事務所」と一文字抜けたボロボロの看板があまり目立たない様に見えるはずだ。
その寂れた事務所の中で電話が自らの仕事を果たすために鳴り響く
「はい、もしもし」
と、事務所唯一の職員である私が事務的に応答する。
「あ、もしもし・・・東急探偵事務所でしょうか?」
その言葉に目を細め、電話に接続されたパソコンに目を向ける。
その画面には声紋分析及びその結果が表示され、相手が誰であるかを確認し次の言葉を続ける。
「いいえ、こちらは東名探偵事務所です。」
「あ、すいません間違えました・・・」
という言葉を交わした後、受話器置きを素早く二度押す。
・・・これで、「回線」が切り替わった。
「どうかした?暗号じゃなくて急ぎなんて。」
事務的な声を回線と共に置き去りにし、事務所の主として私は尋ねた。
「朝からすいません局長。NG-8工場の件で少し・・・」
NG-8工場・・・そこは現在我が社が依頼品の試作の最終組み立てやテストを行っている工場だ。
「電話で済ませれそうな要件?それとも直接行った方がいい?」
「私では判断しかねています・・・というより直感めいた部分があります。ですので直接来ていただいた方が・・・」
今電話の向こうに居る局員も優秀な情報員なのだが、そんな彼女が直感的・・・つまり相手が何者か確証が持てない?・・・と少し考え・・・
「分かったわ、3時間以内に行くから資料を整理しておいて。」
お待ちしております、という返答を聞きながら今度こそ受話器を置き、服を着替えるために更衣室に向かった。
そして街中で普通に見かける様な目立たぬ服に着替え、事務所から電車とバスを乗り継いで3時間弱・・・████県██████市████町のマンションの一室の前に私は居た。
ピンポーン・・・
「はーい。」
と中から声が聞こえ、扉が開く。
「お待たせ、駅前のシュークリームもあるわよ。」
「ご苦労様です、局長。どうでしたか?」
リビングに案内されつつ聞かれた質問に
「ええ、確かに工場の周囲に監視があったわ。」
と、今見てきた内容を答えた。
そう、車ではなく公共交通機関を使った理由はそこにある。目立つ行動を控えた上で、工場の周りを視るためにバスに乗っていたのだ。
「やはりそうでしたか・・・」
お茶と共にまとめておいた資料を私に渡しつつ局員は答えた。
「こちらが写真と目撃時の資料です。見ての通りここ数日、工場近辺に周囲の住人ではない人間が複数名見受けられます。引っ越しなどがあったという話は聞きません。また工場周囲にいくつかの「視線」もあったので報告させていただきました。」
「工場の近くの駐車場に車が止めてあったわ、それも何人か乗れそうなちょっと大きいのが・・・中からカーテンを閉めてた上にタクシーでもないのに通信機の通信電波発してたし、ほぼ間違いなく前線基地ね。」
お互いの情報を交換し、シュークリームに舌鼓を打ちながら資料に目を通し・・・
「この女性Aと女性Bは同一人物ね、変装してるけど筋肉の付き方や骨格から見てほぼ間違いなく。男性Bと男性Dも。常駐のサポートが車内に居るとすれば全員で5人か6人・・・ってところかしら。」
「どこの所属か判断できなかったのでご足労頂いたのですが・・・この程度でしたらデータで送った方が良かったでしょうか?」
不安げな局員に対して、いいえと必要性を肯定しながら言葉を紡ぐ。
「この場合は直接来てた方が正解だったはずよ・・・この女性Bはさっきバスから見かけたけど、怪しまなければ分からない程度しか動きに不自然な点がなかった。かなりの練度が見て取れるわ。」
「何か異変を察知されたのでしょうか?」
「どうかしら?ここで何か異変があった?」
「観測機器は特に異常を検知していません。ですがここは工場から800m近く離れていますから、もっと至近距離あるいは遠距離では何らかの異変があったのかもしれません。」
「工場から何か報告は?」
「そちらもありません。工場長からの定期報告は直接口頭で受けてますから、嘘をついてるということもないでしょう。また工場の最終試作品はすでに完成し、現在テスト準備中とのことです。」
「なるほど・・・まあ身内を疑う必要はないか・・・みんないい技術屋だから。」
となれば・・・と少し考え
「相手はこちらを狙って行動している・・・と考えるのが自然か、またかなりの練度があり人員もそこそこ豊富・・・」
口に出しいくつかの情報をつなぎ合わせるが、それらに該当するものが少なくないため確証が持てない・・・なので私は別の確認事項を先に済ませることにした。
「最終試作品が完成してると言うことは移動させるのは難しいのね?」
「はい、資料の製作レポートの通り重量がありますから・・・」
「クレーン付きトラックなんて使ったら気付かれるわよね・・・」
はい・・・という局員の予想通りの返事を聞きながら私は次に成すべき行動を思案していた。
そして二人で黙々とシュークリームを全て食べ終え・・・まとまった考えを言葉に紡いだ。
「まずは工場長に特殊連絡網を使って、現工場を破棄した上での製造プランのアイディアを出してと伝えて。」
「期限はどうしましょうか?」
「出来るだけ早く、こちらも急いで相手の正体を掴む。」
「了解しました。」
「私はこれから一度偵察に行くわ、現場を見て分かることもあるだろうし。」
「お気をつけて。」
もちろん、と言いながら私は前線基地から出て行った。
まずは確認から始めた。先ほど確認した車から電波を発していることは間違いない。なので、その相手先を探し何人のチームなのかを確かめたかったのだ。
工場の方へ向かいつつ、慣れた手つきでスマートフォンを叩き「無線情報検索システム」と名づけられたアプリを起動させる。
これは今無線で情報がやり取りされているもの全ての情報を検索、入手、分析できるシステムだ。
とはいえ、あらゆる情報を無差別に出したら処理容量が全く足りないので、ちゃんと絞り込んで検索する。
まずは「無線通信機」と打ち込み検索を開始した。半径1km以内の各社タクシー、警察、トラック、個人で使用していると思われるものが次々と表示される。
それらの数を確認したのち、個人で使用されていると考えられるもの全ての情報を取得し始めた。
当然ここまでの練度を持つならスクランブルをかけている可能性が非常に高い。でも私の目的は内容だけではない。交信した時間とその長さ、例えスクランブルされていてもそれらを分析すればチームが何人くらいかまでは絞り込める、そう考えたのだ。
次に通信の情報取得と並行して、「カメラ」の検索を始めた。局員の感じた「視線」・・・つまりカメラが無線で情報送信してる可能性の確認である。
いくつかの反応があり、それらを地図と同期させる・・・工場周辺のカメラは10箇所ほど、ガソリンスタンド、コンビニなど商店の無線式監視カメラを除いて、場所を確認。
「まずはカメラの位置を見てから、レポートの監視員の様子を見ればいいか。」
と誰に言うわけでもなく呟き、カメラを探し始めた。
カメラはあっさりと見つかった、というよりも隠されてすらいなかった。
自治体による防犯カメラ、それがそのまま工場の情報をどこかに送信しているのだ。
局員に確認したが間違いなく自治体によって設置されたものだという。
だがこのあたりは繁華街からは少し離れており、あまり監視カメラを設置するのに有用な場所ではない。
それに工場をカバーするカメラ以外は全てダミーなのだ。
(これは・・・相手はかなりの大物ね・・・)
自治体の情報セキュリティなどはあまり期待できるほどのものではない。
というより今あっさりと見れた時点である程度以上の組織ならないに等しいだろう。
だが「相手」はそれらをわざわざ書き換えた、あるいは自治体に指令を出せる組織である可能性が出てきたのだ。
次に私は適当な喫茶店に入り、先ほど取得を始めた通信の方の情報を確認する。
記録取得を始めたのが3時間ほど前なので、その後の交信記録からスクランブルの有無、時間間隔などで必要ない交信記録を除外していく。
その結果、通信機の数がおそらくは5台であることが確認された。
そしてもう一つ・・・どうやら私がマークされている可能性があることも。
(カメラの確認をしてからの怪しい通信機の交信量が若干だけど増えてるし違和感もある・・・バレた?)
そう思いながら外に視線を向けるとレポートで見た女性Aが見え、同時に怪しんでいる通信機の一つが交信中になったのを確認した。
(見られてるな・・・でもこの感じだと、とりあえず怪しんでる感じ?)
そのまま喫茶店で10分ほど時間を潰したところ、交信量はカメラを確認する前と同じ程度に戻った。
(シロと思われたのか・・・レポートから考えるに監視はつい最近から・・・始めたばかりだから警戒度高い?)
頭の中に様々な可能性が浮かんでは消える。しかしどれも確定するほどのものではないため、私は途中で思考を中断した。
(とりあえず一回戻ってデータの詳しい分析・・・監視員の調査は分析終わってからやった方が効率的ね。)
そう思い店を後にしようかと思った時、スマートフォンが震えた。液晶に写っているのは広告メールにしか見えない件名。
あら、早かったわね。と心中につぶやきつつ内容を見る。誰が見ても広告メールのような文面、そして送信者を調べてもきっとそういう企業に突き当たるだろう。
この企業、もちろん実在してるのだが一つ特徴がある・・・我々がハッキングしメールシステムを使わせてもらってるのだ。
早速届いたメールを暗号解読用のアプリに読み込ませ、中身を確認・・・しようとした。
今までも周りに気を配っていた。間違いなく怪しい気配はしなかった。こちらを「見る」ことはあっても「視る」ということはなかった。だが突如として「視線」を感じたのだ。
すぐにスマートフォンで別の準備をする。「Magical eyes」と書かれたアプリを起動させ、この特殊なアプリを使うためのパスワードを素早く打ち込む。
カメラが起動し、画面にロックオンマーカーが現れる。それを腕時計に合わせ「準備完了」という表示が出たのを確認してからシャッターを切る。
「カシャ」という軽い音とともに、腕時計の重さが変わり、文字盤が消えた。そして腕時計には「カメラのレンズ」が出現していた。
一般の人が見たらきっと一流のマジシャンと思われるな、などと思いつつスマートフォンを見る。
そこには予定通り「腕時計のレンズ」から見た光景が写っていた。このアプリの「スマートフォンのカメラのレンズを別の位置に移動させる」機能を使ったのだ。
そして男性のような腕時計の付け方に変え、カメラを連射モードに。伸びをする振りをして、店内を一通り撮った。すぐにアプリを解除し、元に戻す。
すぐに写真を確認するとそこには普通の店内の風景が写っていた・・・ただ一つ、店内の平均年齢を下げているような少女を除けば。
その少女は15歳ほどで、道行く人に聞けばおそらく幼いという言葉が似合う可愛らしい子だ、と評するだろう。だが、私は違う情報を知っている。
(「財団」のエージェント餅月・・・!?)
彼女は我が社にとっても第一級の脅威である「財団」と呼ばれる団体のトップエージェントである。もちろん何度か資料で目にしたことはあったが直接見るのは初めてだ。
「財団」は我が社の製品のような「人知を大きく超えた技術」を使われたアイテムを収集し、研究し、保管する機関であり、アイテムの収集のためには手段を選ばない。
これまでにも我が社の製品だけでなく国内外のそういったアイテムをあらゆる手段を駆使して「収集」したと聞く。
ただし、そんな「財団」にも付け入る隙がないわけではない。彼らは「一般人に見つかること」を恐れるのだ。
(「財団」ならカメラも朝飯前ね・・・さらにトップエージェントが来てるとなると・・・工場は引かせた方がいいか。)
冷静に現状を整理し、打てる手を打たなければ全てが持って行かれることを把握した私は今できることから始めることにした。
すなわち中断していたメールの確認である。解析されたメール文章に目を通す・・・少なくとも現在私は「マーク」されているが、「監視」されていないようなので見られることはないだろう。
まあ見られたところで分からないだろうが・・・
Q.製造工場が封鎖された時、あなたはどこで製造する?
1. MY-68工場
2. OO-8工場
3. TC-4工場
と、表示されてる画面を見てすぐ分かるのならそれはかなり情報が流出している証拠でもあるので。
さて、本当なら前線基地に戻って検討したいが・・・多分基地まで案内と言う形になる可能性が高い・・・
だがどの工場で製造するにしても本当に可能かどうか確認しなければならない・・・か。
「マークされたため一度隣町に出る、明日工場長と接触したい。」という内容のメールを暗号化して局員に送り、今度こそ私は店を出た。
そして駅に向かって歩き始めたのだが・・・
(・・・まあ、当然こうなるわね。)
後ろからつけられている。エージェント餅月は店を出る時にまだケーキを食べていたので、間違いなく部下の方だろう。
撒くことは可能だが、下手に撒いて向こうの警戒心をさらに煽る必要もないため、私は普通に駅に向かった。
結局、拍子抜けするほどあっさりと駅から電車に乗ることができ、乗る頃には尾行もなかった。監視程度の警戒状態だとこういうものなのだろうか?
安心することは出来ないが、私は隣町の駅前ホテルに入り情報の整理を始めた。
とはいっても、工場はもう決めてあったのだが・・・
1番のMY-68は今別の製品を製造中のため生産ラインが開いていないし、2番のOO-8は今回の製品を作るには場所が悪すぎる、となれば3番のTC-4しかないのだ。
盗聴器などのチェックをしてから電話を取る。ただ「財団」が本気を出せば盗聴器ではなく電話線から直接聞くだろう。
まあそこらへんも考慮して仕掛けを噛ませてあるけどね。
などと考えていると電話がつながり、確認作業を始めた。
結果だけ言えばTC-4工場で製造は可能であり、移送受け入れ準備を進めるとのことだった。
電話を終えた私はカバンから資料を取りだしメモを末尾に追加した・・・今からコレを送るよりも明日会う時にこれを渡すのが一番だろう。
緊急連絡:
財団がこの工場を察知した可能性あり。製品は第3プランで製造します。作業員はいつでも脱出できる準備と優先順位の高い順に物品の退避を。 ██月██日
これでよし・・・と呟き、今日の作業を終了し、私は鋭気を養うためにレストランに向かった。
明日からは少し忙しくなるから、しっかり身体を整えないと、ね。
翌日、朝10時に私は再び工場のある町に戻ってきた。あの後局員からメールが入り「11時に基地の近くのデパートのフードコートで会い話をする。」とのことだったので、それに合わせたのだ。
前日と同じようにバスに乗り、工場周囲を観察してから・・・と思いバスに乗り込んだ瞬間
凍りついた。
そこには何食わぬ顔で乗車しているエージェント餅月の姿があったのだ。
一瞬混乱しかけたが、ここで過剰な反応を示せばそれこそ危ういと心を落ち着け、こちらも何食わぬ顔で乗車する。
十数分後、彼女は何かすることもなくバスを降りて行き、私は一息ついた。
工場周囲だけでなく町を全体的に視ているのかもしれない、と考えながら前日に前線基地があった駐車場を見ると
車が2台に増えていた。・・・撤収を急がせよう。
局員と工場長が会うフードコートに向かうと、すでに二人とも着いており資料を広げ話をしているようだ。
当然、資料の内容も話している内容もデタラメであり・・・実際の内容は筆談で話している。
私は何食わぬ顔でその話しているテーブルに近づき・・・スマートフォンを操作する振りをしてメモの付いた資料を空いている椅子に置いた。
二人の視線がこちらを向き、次に資料に注がれる。二人が見たことを確認すると、私はその場を後にした。
おそらく伝言はあれだけで十分だろう、だが問題は「財団」の来るタイミングが分からないことだ。
(出来れば調査状況を知りたいけど・・・むやみに刺激するのも危険か・・・)
相手の動向よりもこちらがいかに早く撤収できるかを考えた方が正解だと判断し、私はまた次の行動に移った。
ごみ箱。
アイテム番号: SCP-812-JP
オブジェクトクラス: Euclid Keter
特別収容プロトコル:SCP-812-JPは現在エリア-8168にて、耐熱性無機材で作られた専用収容室に収容されています。室内は常にサーモグラフィで監視してください。また週に1度、Dクラス職員に耐熱スーツを装備させた上でSCP-812-Aの破損、劣化を確認させてください。破損及び流出が確認された場合はSCP-812-JPを乾燥砂を使い回収し、それらを耐熱密閉容器に入れた上で同室に保管してください。また、収容違反が発生した場合は炭酸ガスを使い反応を抑制した上で乾燥砂を使い回収してください。
実験を行う際はセキュリティクリアランスレベル4以上の職員2名以上の許可を得た上で行ってください。実験終了後、全実験参加職員は恒温高湿検査室で1時間の経過観察後、サーモグラフィによる検査を受けてください。
また、現在エリア-8168全域において収容違反のリスクが存在しています(詳細は事件記録812-JP-2を参照してください)。警備職員は巡回時にサーモグラフィを用いて、収容違反の有無を確認してください。
説明:SCP-812-JPは66個の専用の蓋つきの壺(以下、SCP-812-JP-A)に封入された無臭で無色透明な液体です。外見上は常温の水のように見えますが、その温度は約950℃にも達しています。また液体でありながらも自然蒸発による質量の低下は確認されていません。なお1個のSCP-812-JP-Aは約9000mlのSCP-812-JPを封入しており、その素材に異常な点は見受けられません。しかしながら、SCP-812-JP-AはSCP-812-JPから発せられる熱を外部に伝えることなく封入しています。
SCP-812-JPは有機物に触れた場合にその危険な特異性を発現します。SCP-812-JPは周囲の酸素を取り込み接触した有機物の表面に沿って自己増殖しながら、接触した有機物の表面を急激に酸化させます(以下、酸化反応)。酸化反応の速度は空気中の酸素濃度によって加減します。また、酸素濃度が一定水準以下になるとSCP-812-JPの温度は常温まで低下し酸化反応が一時的に停止しますが、阻害要因が取り除かれると再び温度は上昇し酸化反応を再開します。阻害要因が存在しない場合、酸化反応は接触した有機物が完全に酸化しきるまで続きます。
SCP-812-JPが他の液体に触れた場合、触れた液体はSCP-812-JPと同様の特異性を持つ液体に変化します(以下、SCP-812-JP-B)。SCP-812-JP-Bへの変化は水に近いほど早くなり、1000mlの水に1mlのSCP-812-JPを加えた場合は約1分ほどでSCP-812-JP-Bに変化します。この変化反応時に酸素は消費されません。この変化反応のためにSCP-812-JPの酸化反応時に水で洗い流すことは可能ですが、それはSCP-812-JP-Bの発生を引き起こすことになります。
SCP-812-JPは19██年に財団に併合された国内においてSCPを管理していた組織である蒐集院より管理を引継ぎ、収容されました。その起源に関しての資料は消失しており不明ですが、SCP-812-JP-Aの年代測定分析により少なくとも1300年以上前のものであることが分かっています。
事件記録812-JP-1:19██/██/██、当時はサイト-8168にて収容されていたSCP-812-JP-Aの定期検査のためにDクラス職員が収容室内に入室したところ、室内にて小規模な収容違反を発見。検査の結果、SCP-812-JP-Aの一つが破損していたことが確認されました。破損の原因は経年劣化と見られています。この件を受け月に一度行われていた定期検査は毎週となり、SCP-812-JP-Aに代わる新たな収容容器の研究が開始されました。またKeterへの格上げ申請も行われましたが、却下されました。
事件記録812-JP-2:19██/██/██、SCP-812-JPの特異性の限界調査のため加熱実験が行われました。その際SCP-812-JPは通常の水と同じような過熱に対する反応を見せ沸騰しました。沸騰により発生した気体に特異性は確認できず、実験は終了しました。しかし実験終了後に実験参加者全員が体内からのSCP-812-JPの酸化反応を発現し死亡。また実験終了後であったために周囲に有機物が存在する場所で酸化反応を開始、死傷者███名を出す事態となりました。この収容違反によるサイト外へのSCP-812-JP流出は確認されていません。
その後の調査により、気体となったSCP-812-JPは防護マスクを装着していたにも関わらず実験参加者の呼吸器系に侵入、変化反応によって周囲の水分を変化させ質量を増した後に酸化反応を開始した可能性が極めて高いことが判明しました。また事件後、サイト内にて██件の小規模な収容違反が報告されています。この件を受けSCP-812-JPはKeterに格上げされ、サイト-8168はエリア-8168に改称及び改装がなされました。
補遺:蒐集院側のSCP-812-JPの管理記録についての調査が進み、過去にSCP-812-JPの土壌への流出があったことが確認されています。この件について主任研究員である石打博士は「地球規模における水の循環を考えれば、これは非常に危険な可能性を示唆している」としています。現在のところ、国内の水源及び海洋におけるSCP-812-JPの変化反応の兆候は見られていません。
アイテム番号: SCP-419-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-419-JPは移動が不可能であるため、敷地内への立ち入りを禁止することによって対処されています。侵入者があった場合は拘束し、侵入の理由及び経緯について取り調べた上、Cクラス記憶処置を施して解放してください。内部の調査は人的損失を避けるため、出来る限り短時間で行ってください。 内部の調査は必要がない限り、影響範囲外からコントロールしたロボットを使用して行ってください。
説明: SCP-419-JPは████第三小学校として建造され、194█年に廃校となった木造三階建ての建物です。外装、内装ともに経年感じさせますが、管理されていないにも関わらず保存状態が良く、劣化による損傷は見られません。内部には廃校となった当時の備品が放置されたまま残されており、大半がすでに製造中止となっているにも関わらず、検査により製造後5年以内のものであると判明しました。備品は移動、持ち出しが可能であり、建物から持ち出した場合█日ほどで補充されます。しかし図書室に収蔵されている卒業アルバムのみ持ち出しが不可能であり、建物外に出した瞬間に消滅、図書室に戻ります。
SCP-419-JPの特異性の最たるものは建物内部に入った場合に発現します。内部に入った人間(以下、被験者)はまず人種、性別に関係なく建物に対して郷愁を感じます(これは被験者が小学校に行っていなかった場合においても同様に発生することが確認されています)。その後、建物内での滞在時間が█分から██分を越えると、被験者にこの学校に通っていたという記憶の改竄が発生します(またこの記憶の改竄までに、児童の笑い声、足音などの幻聴が発生することもあります)。記憶の改竄と郷愁の感情は滞在時間に比例して強大化し、これらは建物から自発的、あるいは強制的に退出するまで続きます。それらの感情的、記憶的な操作により、被験者が建物内で過去への帰還を望む言葉を発すると服、装備品などを残して被験者の肉体が消滅します(インタビュー記録-419-JPを参照してください。)。消滅した被験者は現在も発見に至っていません。
調査と実験により内部を撮影した写真を視認した場合でも軽度ながら郷愁感が発生することが確認されています。また映像及び持ち出した備品においては、視認、視聴時間によって郷愁感が強大化することが確認されています。このため資料は可能な限り文章で作成し、調査記録映像及び備品は必要最低限のみ撮影及び収集し、分析後即座に廃棄されなければなりません。また視認、視聴中に異変が発生した場合はすぐに報告してください。
インタビュー記録-419-JP
対象: 元偵察部隊す-2-5 "探検家"第5部隊所属 ████隊員(現在は本人の希望により配置換え済み)
インタビュアー: ██博士
付記: 偵察部隊す-2-5 "探検家"第5部隊はSCP-419-JP調査中に彼を残して部隊長を含めた他の隊員4名全員が消滅。
<録音開始>
██博士:それでは始めようか████くん、私は██だ。よろしく。
████隊員:よろしくお願いします、博士。
██博士:まず君たちの部隊はSCP-419-JPに入った。目的は簡易調査だ。間違いないね?
████隊員:はい、間違いありません。
██博士:・・・それほど硬くなる必要はないよ、別に詰問してるわけじゃない。そして内部に侵入、「影響」を受けた。そうだね?
████隊員:はい・・・入った瞬間急に懐かしくなったんです、自分の卒業校はコンクリート造りだったと言うのに。
██博士:その感情は部隊全員が感じていた?
████隊員:はい、他の隊員は自分よりも年上の人たちばかりだったので、より強く感じたのかもしれません。
██博士:なるほど・・・。そして君たちは調査を続行した。
████隊員:はい、「懐かしいのは木造だからかな?」なんて軽口をいいながら。
██博士:ふむ・・・そして・・・えーっと・・・レポートでは15分後かな、次の影響が出始めたのは。
████隊員:はい、15分を過ぎてからだったと思います。皆任務中だというのに鼻歌でも歌い出しそうなほどに上機嫌になったんです。
██博士:それに対して隊長は何か?
████隊員:隊長は「俺たちの仕事はただの穴か怪獣の口か分からない穴に飛び込むことだ、常に気を張っておけよ?」と軽く注意する程度でした。
██博士:それは「影響」によってだと思うかい?
████隊員:・・・おそらくはそうだと思います。そしてその後、他の隊員が既視感について口にし始めたんです。
██博士:それは交信記録にもあるね、最初に言い出したのは██████隊員か。
████隊員:はい、彼が言い始めるとまるで伝播するように他の隊員も「どこかで見覚えがある。」と言い出しました。
██博士:この時本部からは撤退を助言されたはずだが?
████隊員:はい・・・しかし隊長は「確かに郷愁感と既視感はあるが問題があるほどじゃない。」と言い調査を続行したんです。
██博士:なるほど、そして次に「この学校に居た。」という言葉が出始めた。
████隊員:はい、最初に言ったのは多分████隊員だったと思います。そしてその言葉を聞いた瞬間、自分もこの廊下を誰かと走り回ったとか、教室での掃除風景や、他にも色々学校行事の事を「思い出した」のです。
██博士:なるほど、レポートではその話の直前に██隊員が幻聴を聞いているとあるが?
████隊員:はい、急に「子供の笑い声が聞こえる。」と言い出して、他の隊員は「こっちは聞いてないぞ、懐かしさのあまり幻聴か?」とからかっていました。
██博士:なるほど、しかしそのような状況にあって本部からの二度目の撤退助言もあったが、君たちは撤退せずに調査を続けた、何故かね?
████隊員:懐かしさと共に、安心感といったものを感じていたせいだと思います。
██博士:ふむ・・・そして侵入から48分後・・・場所は二階の廊下で・・・
████隊員:はい・・・皆が口々に「あぁ・・・あの頃に戻りたい」「懐かしいなぁ・・・戻りたい」と言った瞬間に消えました・・・
██博士:全員同時に消えたのではないだろう?他の隊員は?
████隊員:気にもしていないようでした、そして自分も消えた皆を見て「ああ、自分もそっちに・・・」と思ったことは事実です。
██博士:しかし突如消滅した隊員の事を確認しようとした本部からの通信で君は一瞬正気に戻った。
████隊員:はい、「何があったんですか!?」という本部の声に一瞬疑問を抱き、目の前の消滅を理解した瞬間逃げ出していました。卒業校に対する正しい記憶も建物から出た後に思い出しました。
██博士:なるほど、影響には多少の差異があるのだろうな・・・よくわかったよ。ありがとう。
████隊員:いえ・・・ところで・・・配置換え申請の事ですが・・・
██博士:ああ、もちろん便宜を図っておこう。
████隊員:ありがとうございます。
<録音終了>
終了報告書:この件に関しては明らかに本部側にも判断のミスが見られる。これは本部も隊員たちのカメラを通じて「内部」を見ていたため、「影響」を受けていた可能性がある。 — ██博士
実験記録419-JP-1 - 19██/██/██
対象:Dクラス 1名
目的:影響の回避方法の模索
結果:使用するDクラスは小学校に通学したことがないものを選出した。入ると同時に弱いながらも郷愁を感じ始め、26分後に記憶の改竄が発生。52分後に消滅。
考察:元になる経験の有無は関係ない・・・か。 — ██博士
実験記録419-JP-2 - 19██/██/██
対象:Dクラス 3名 1名
目的:影響の回避方法の模索
結果:外科的に処置を施し、感情を排除したものを用意し実施。郷愁を感じることはなかったが、34分後に頭痛を訴え、40分後に死亡。死因は脳内出血であった。
考察:感情が無ければよい、というものでもないようだ。 — ██博士
補遺:この実験では当初3名の被験者を用意し、それぞれ外科、薬剤、双方併用による比較実験を行う予定であったが、日本支部理事より注意勧告を受け1例のみ実施。
実験記録419-JP-3 - 19██/██/██
付記:これは正規の実験ではありません。
対象:サイト-81██職員 3名
結果:SCP-419-JPより回収された備品を保管していたサイト-81██の保管庫管理職員3名が「備品の状況に関する内部調査のため」と説明し侵入、13分後に消滅した。
考察:写真の視認による影響で郷愁感の強大化は確認されていないが、この事象を見るに備品はその範疇にないのかもしれない。また視認による影響を受けることで消滅までの時間が短くなる可能性もある。 — ██博士
補遺:この件を受け、回収された備品は全て廃棄されました。
補遺1: 20██年から調査にロボットが導入され、長時間の調査が可能となりました。これにより卒業アルバムの詳細な調査が実施され、卒業アルバムが消滅した被験者のリストであることが確認されました。現在卒業アルバムは2冊、合計████名の12、3歳の頃と視られる顔写真と名前が載っています。このアルバムがどのように作成されているのかは不明です。
補遺2: 20██年に至るもSCP-419-JPへの侵入者は平均して年間██名ほど現れます。写真によって影響を受けた場合も存在しますが、備品による影響も確認されており、拡散経路は現在も分かっていません。
(大体の能力)
・カメラと「目が合う」と保存機械の中に「魂」が閉じ込められる。
・保存機械の中では1日がずっとループ。(食事などは必要なし)
・保存機械の中に捉えられてるのは「一般人10名前後」「Dクラス数名」(回収前は普通の道路に監視カメラとして設置されていた)
・入力が3台分あるのにカメラが2台なのは1台持って行かれてるため。
・カメラは外部電源、保存機械は内部電源。
・「今日」のデータは閲覧、移動、削除などの操作不能、「昨日」のデータは閲覧、移動、削除可能。
・捕捉対象は「今日」のデータの中で「監視カメラの設置されていた道から出られない今日」を送り、午前0時にその映像が「昨日」にリネームされ、「今日」が新規作成される。
(「昨日」「今日」の中身について)
・動画の内容は、商店街に閉じ込められた捕捉対象の1日。
・動画は商店街の出入り口近くの映像、黒い画面、商店街のもう一方の出入り口近くの映像の三つの画面が一緒になってる。
・捕捉対象以外の人影はなし、出入り口には透明な壁のようなものがあり脱出出来ない。
・日照時間は春分の日と同じ。(日中と夜間の時間がほぼ同じ。)
・天候は晴れ、雲はあるようだがカメラに写る雲の影の通過時間は常に一定。
「今日を見守る眼」
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス:Euclid
特別収容プロトコル:SCP-XXX-JP-Aおよび-Bは現在サイト-8181にて、破損を避けるために耐衝撃ケースに入れられ収容されています。実験を行う場合はセキュリティクリアランスレベル4以上の職員の許可を得た上で行ってください。またSCP-XXX-JP-Bからの解放に関するアイディアがある職員はすぐに報告してください。
説明:SCP-XXX-JPは2台のSCP-XXX-JP-AとSCP-XXX-JP-Bから構成されています。SCP-XXX-JP-Aはコンセントによる電気供給により動作する首振り式監視カメラです。電源、映像出力コードは一般的なものとの差異は確認できませんでした。SCP-XXX-JP-BはSCP-XXX-JP-A専用の保存機器です。外見上は一般的なデジタルビデオレコーダーですが分解することは出来ず、内部電源で稼働しています。SCP-XXX-Bに対する入力は有線のみで3台まで入力可能です。また中のデータはUSB接続により閲覧、移動、削除などの操作が可能です。(後述の「今日」を除く。)
SCP-XXX-JPの特異性は、稼働時のSCP-XXX-JP-Aのレンズを正面から見た場合に発現します。SCP-XXX-JP-Aのレンズを正面から見た人間(以下、捕捉対象)は即座に意識不明になります。この現象は非稼働時、稼働時であってもレンズを正面から見ない、SCP-XXX-JP-AがSCP-XXX-JP-Bに接続されていない場合は発現しません。捕捉対象の肉体は少しずつ生命維持機能が低下し、生命維持処置が取られなければ死亡します。
SCP-XXX-JP-Bは常に録画状態であり、内部では「今日」と名付けられた録画先ファイルが常に実行されています。このファイルは閲覧、USBなどで接続されたPCへの移動、削除等を受け付けません。そしてその日の24時に「今日」を「昨日」という名前にリネームし(その際同名ファイルが存在した場合は、通常のPCにおける処理と同じように、数字括弧が付与されます。)、次の「今日」の動画ファイルを作成し録画を開始します。「昨日」のファイルは閲覧、コピーが可能です。
「昨日」のファイルはSCP-XXX-JP-Aにより撮影された回収元である商店街を両端から映した無音声動画です。映像は撮影日の天候に関わらず晴れである事、カメラに写り込む雲の影などの通過時間が常に一定である事、外部との人の行き交いがない事などの異常な点が見られます。しかし最も異常な点は映像内に捕捉対象たちが写っていることです。捕捉対象は映像内で思い思いに活動し、「昨日」のファイルが終了するまで居続けます。そして一度写った捕捉対象が映像内から消えることはなく、現在██名の捕捉対象が映像内に確認されています。しかし捕捉対象は全員病院、死亡確認などで所在が判明しています。この事から、捕捉対象たちはおそらくSCP-XXX-JP-B内に記憶、人格、意識などをSCP-XXX-JP-Bに取り込まれたと推測されます。捕捉対象を解放する方法は現在まで判明していません。
SCP-XXX-JPは████県█████市にある████商店街にて回収されました。現地は商店の減少が進みシャッター街となっており、自治体により防犯のため5台の可動式ダミーカメラが設置されていました。20██年██月頃から原因不明の意識喪失事件が起きるようになり、財団の目に留まりました。Dクラスを用いた実験によりSCP-XXX-JP-Aが特定され、SCP-XXX-JP-Bと共に回収されました。
補遺:SCP-XXX-JP-Aの外装には小さく「No.1」、「No.3」と刻印されていました。またSCP-XXX-JP-Bの入力端子は3つあります。これら事からSCP-XXX-JP-Aの「No.2」が存在していると考えられ、現在エージェントによって捜索されています。
SCP-XXX-JP-B内部映像記録
以下、特徴的な映像とその内容について列挙。
ファイル名:昨日(78)
内容:動画に映っていた捕捉対象は若い男性4人組(以下、Aグループ)。彼らは商店街の外に出ようとしていますが、透明な壁のようなものに阻まれ出れないようです。また、捕捉された際に所持していた荷物などはそのまま持ち込める模様で、ゲームをする様子、携帯電話を見ている様子がうかがえます。食事を取っている様子はありません。
備考:回収時に存在していた「昨日」の中で最も古いファイルです。これ以前のデータが持ち去られたのか、何らかの条件により自動削除されたのかは不明です。Aグループの肉体は病院に収容されていましたが、1名は衰弱による死亡が確認されています。
考察:まだかなり余裕があるように見えますね。閉じ込められてからあまり時間が経過していないのかもしれません。 — ████博士
ファイル名:昨日(103)
内容:開始時点では捕捉対象はAグループのみ。4名で集まり話し合う時間が増加し、またカメラの方を見ることも多くなっています。23時間26分28秒時点でサラリーマンと思われる2人組男性が突如出現(以下、Bグループ)。Aグループは興奮した様子で話しかけていましたが、すぐに落胆した様子に変わりました。その後も会話を交わしていましたが、途中でAグループが突如興奮してBグループに殴りかかり、動画が終了するまでの数分間暴行が続きました。
備考:Bグループの出現は映像の1コマ間に行われていました。Bグループの肉体は両方とも酩酊状態での転倒による脳挫傷に対して適切な治療を受けられなかったため死亡。
ファイル名:昨日(104)
内容:開始時点でA・Bグループは離れていました。またBグループに負傷、着衣の破れなどは存在していないように見えます。しかしA・Bグループともにお互いに近づくことはなく、Aグループはゲームを、Bグループは読書をしていました。
備考:Bグループの開始時点の位置は昨日(103)における出現位置と一致していました。
考察:「今日」と「昨日」の間で状態のリセットが行われているようです。この様子から察するに記憶は消えていないようですが。 — ████博士
ファイル名:昨日(278)
内容:捕捉対象はA・Bグループ6名に加え、昨日(132)から出現したC(老夫婦)、昨日(208)から出現したD(小中学生の兄弟)、昨日(267)から出現したE(若い女性二人組)グループの合計12名に増加。些細な諍いからA・Bグループが暴徒化、Cグループに対して暴行を行い双方を死亡させた。またその後Eグループに暴行を働いた。Dグループはカメラの死角に入っていたため確認できないが、おそらくどこかに隠れていたのだと思われる。
備考:ここまでにA・Bグループは思考能力等が若干低下している可能性が示唆されていました。昨日(279)において状態のリセットを確認。CからEグループの肉体は全員病院に収容されましたが、Cグループは双方死亡。
考察:ファイル名から見れば、Aグループはすでに200日あるいはそれ以上閉じ込められていることになります。その意味では当然の結果かもしれません。 — ████博士
ファイル名:昨日(380)
内容:昨日(278)の事件後のしばらくは荒れた状態が続いたが、その後は沈静化。また昨日(378)からF(若い男性3名)グループが捕捉対象となり、合計15名。AからEグループは無気力状態となっていたが、Fグループは捕捉対象となったのちも活発に行動していた。13時間25分から13時間35分にかけて、Fグループによって映像を映していたカメラが2台とも破壊された。残りの時間は砂嵐のままであった。
備考:この時点ではまだ回収されていなかった。Fグループの肉体は全員死亡確認済み。
ファイル名:昨日(381)
内容:開始時点から平常通り録画されていた。Fグループにより再度破壊された。
備考:この行為は昨日(395)まで行われていたが、いずれもリセットにより復旧。
考察:カメラの破壊によって脱出・・・という発想は持たなくて良さそうですね・・・ — ████博士
ファイル名:昨日(548)
内容:SCP-XXX-JP-Aの所在を確認するためにDクラス職員1名を使用(以下Dクラス職員をまとめてGグループ)。Dクラスは16時48分07秒に意識喪失。映像内では16時間48分08秒に出現。AからFグループは無気力な状態となっており、Dクラス職員が話し掛ければ言葉を返すが、あまり積極的に行動することはなかった。脱出不能であるという事実を聞き出すとDクラスはそれを笑い飛ばした。
備考:20██/██/██にSCP-XXX-JPを回収。このファイルはその当日の様子を映している。
考察:意識喪失と出現の誤差はおそらく処理時間の関係だと推察されます。 — ████博士
ファイル名:昨日(552)
内容:14時間32分34秒に筆記具と30冊のスケッチブックを持ったDクラスが出現。AからFグループにノートと筆記具と配布し、いくつかの質問および内部からの情報提供を求めた。全てのグループが協力的であったが、内容としては「カメラを見たら閉じ込められた。」「食事は要らない。」「24時になったら全部元に戻っちまう。」といった映像からも分かる程度のものであった。
備考:捕捉させたDクラス両名には脱出手段が解明されていないとは伝えていません。書いた内容は昨日(553)にてリセットを確認。またこのDクラスはサイト-8181内の実験室にてSCP-XXX-JP-Aに捕捉させました。
考察:SCP-XXX-JP-B内部の映像はSCP-XXX-JP-Aによって捕捉対象を含めた外部の情報を取得して作られたのではなく、あくまでもSCP-XXX-JP-Aは捕捉対象を取り込むためのデバイスである、と考えていいようです。またスケッチブックと筆記具という「娯楽」を与えたのでしばらくは内部の状況は安定するでしょう。しかし予測していたとは言えあまり有益な情報は得られませんでした。 — ████博士
ファイル名:昨日(559)
内容:13時間15分45秒に全員が一斉に倒れ、そのまま1時間ほど経過してから起き上がりました。その後はまるで「初めてここに来たかのように」外部に出れないことの確認、混乱による小さな諍いが発生しました。また昨日(552)で捕捉させたDクラスはスケッチブックを配布し質問を開始、全員が「SCP-XXX-JP-Aを見た後、今気が付いたらここに居た。」と答えました。
備考:この前日13時15分から1時間ほどかけてSCP-XXX-JP-Bから昨日(78)から昨日(558)までのファイルを容量の確保及び分析のため、移動させました。内容確認後すぐにファイルを戻した。
考察:捕捉対象の捕捉されてからの記憶は全てSCP-XXX-JP-Bの内部データに依存してると考えられ、内部データの移動、削除は捕捉対象に少なくない影響を与えます。
補遺1:「昨日」のファイルの移動、削除を厳禁とします。 — ████博士
補遺2:現在のペースでSCP-XXX-JP-Bの容量が増え続けた場合、残り███日ほどで容量が一杯になります。その際にどの「昨日」を削除するかは現在慎重に検討中です。 — ████博士
SCP-XXX-JP-Bと共に回収されたICレコーダーの音声
(声はとても興奮している様子でまくし立てている)
あの頭でっかちな技術者どもめ!この芸術品を!これほどの芸術品を!「つまらない。」の一言で片づけるなどと!!
永遠の命だぞ!確かに容量の問題はある!だが永遠に!永遠に自らを保てるのだぞ!!
(息切れと深呼吸の音が数秒続く)
それを奴らは「なるほど確かに永遠のものとなりますね、単なる拷問と同意だと思いますが。」と嘲笑いおった!!
ふざけおって!
(再度息切れ、この後はまるで息も絶え絶えのような呼吸音が続く)
もう儂には時間がないのだ・・・この芸術品で・・・儂は解放されるのだ・・・終わりから・・・
人は一人では生きられん・・・だから巻き込むのだ・・・永遠の命だ・・・みな光栄であろう・・・
今は・・・若者が3人か・・・まあ良い、儂には時間がない・・・時間がない・・・
(声に混じってはいるが、背後に足音)
さあ儂の芸術品よ・・・「つまらない。」などと言ったあやつらにその素晴らしさを・・・
「出る方法がなくただ永遠に意識があり続けるなら、それはつまらない拷問手段にしかならない。」と申し上げたはずですが?
<録音終了>
アイテム番号: SCP-488-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 回収されたSCP-488-JPはサイト-8181にてセキュリティ機能付き中型冷蔵庫に収容されています。実験で使用する場合を除いて飲用は禁止されています。またSCP-488-JPの保存は20本、SCP-488-JP-2はSCP-488-JP-1の1例に対し1本、合計10本まで保存し、それ以上は古いものから焼却処分してください。新たに出現したSCP-488-JPに対処するため機動部隊こ-5"酒豪"が新潟県内の各アルコール飲料販売店を巡回し、回収しています。回収前にSCP-488-JPが購入されていた場合は、「毒物入り飲料の可能性がある」と説明し、購入者より回収してください。またすでに購入者がSCP-488-JP-1となっていた場合は終了させることが許可されています、その後SCP-488-JP-2の捜索及び回収を行ってください。
説明: SCP-488-JPは「銘酒朱ノ湧水」とラベリングされた内容量1800mlの瓶に封入された、アルコール度数15%の日本酒と分類されるアルコール飲料です。使用されている米が未知のもの(ラベルには米(新潟県産)としか書かれていませんでした。)であること以外に成分的に異常な点はありません。製造は新潟県██市██████町内の頂地酒蔵となっていますが、██████町という場所は存在していません。
SCP-488-JPは新潟県内で営業しているアルコール飲料販売店に3日から14日の間隔で出現します。出現箇所は1店舗から1█店舗まで規則性がなく、出現する本数も3本から最大8本まで確認されています。また納品の工程がないにも関わらず、販売する際のレジや店舗の書類上で問題が発生することはありません。
SCP-488-JPは飲用が可能であり、また被験者は全員大変美味で非常に飲み易いと評しています。しかし181ml以上(1合=180.39ml)の量を一気飲みした場合にその特異性を発現し、一気飲みを実施した被験者はSCP-488-JP-1と分類されます。SCP-488-JP-1はまず飲用した量に関わらず微酔期の特徴を示し、この特徴は死亡するまでなくなることはありません。そしてSCP-488-JP-1に変化してから3時間から5時間の間に血液が720ml消滅します(この現象は瞬間的に発現し、SCP-488-JP-1に自覚症状はありません。)。この現象はSCP-488-JP-1が失血死するまで周期的に続き、死亡以外に停止させる手段は判明していません。血液の消滅から24時間経つと、その地点から半径500m以内のアルコール飲料販売店の陳列棚にSCP-488-JP-2と分類される内容量720mlの瓶に封入された飲料が1本出現します。SCP-488-JP-2はその内容量以外はSCP-488-JPと同じ特徴を有しており、特異性もまた同様に発現します。また500m以内にアルコール飲料販売店が存在していない場合は、新潟県内のアルコール飲料販売店に不規則に出現します。
SCP-488-JPは199█年に報告された全国各地での原因不明の失血死により財団の目に留まることとなり、各地でSCP-488-JP及びSCP-488-JP-2を発見、回収しました。しかしながら、SCP-488-JP-1の発現条件が解明されるまではその特性により回収は非常に難航。把握されてる限りで一般人████名がSCP-488-JP-1となり、その倍以上の数の記憶処理が行われました。現在はPOSシステムの普及により購入情報の入手が可能となったことでSCP-488-JPの購入者の特定がある程度可能となり、一般人がSCP-488-JP-1となる事例は減少しています。
補遺1: 現在のところ、国外でのSCP-488-JP-2の出現は確認されていません。
補遺2: 200█年にSCP-488-JP-2から人間のDNA片が検出され、現在DNA片が発生元のSCP-488-JP-1のものであるかを確認中です。 ██%の確率で発生元のSCP-488-JP-1のDNA片であると判定されました。
補遺3: 200█/██/██に回収されたSCP-488-JPに、製造元と考えらていれる頂地酒蔵の電話番号が記載されていました。以下の記録は記載されていた番号に電話した時の記録です。
会話ログ488-JP
付記: 電話口にはぶっきらぼうな口調の男性が応答しました。名前が確認できなかったため、SCP-488-JP-Aと表記しています。
<通話開始>
水原博士: もしもし、頂地酒蔵かね?
SCP-488-JP-A そうだが、何か用かい
水原博士: いくつか質問させてもらいたいのだが?
SCP-488-JP-A: 構わねえよ
水原博士: まずは名前と君が何者なのか教えてくれないか?
SCP-488-JP-A: 俺は名も無い酒造りさ。美味い酒を作る、それだけだ
水原博士: ではこの酒も君のかね?
SCP-488-JP-A: そうだよ、美味いだろ?
水原博士: ああ確かに美味しかったよ。ところで何故こんなものを?
SCP-488-JP-A: 美味い酒のためだ、それ以上でもそれ以下でもねえ
水原博士: 美味い酒のためとはどういうことかね?
SCP-488-JP-A: 言葉通りだよ、もしかして酔ってるのか?
水原博士: いいや、素面だよ
SCP-488-JP-A: ・・・なあ、こっちからも一つ聞きてえんだが
水原博士: 何かな
SCP-488-JP-A: 俺の酒が最近めっきり作れなくなったんだが、何か知らねえか?
水原博士: 作れなくなったとはどういうことかな?
SCP-488-JP-A: [声のトーンが下がる]ああ、飲む奴が減ってるんだよ・・・だからよぉ・・・
水原博士: だから?
SCP-488-JP-A: [下がったトーンのままで]こうすれば直接聞けると思ってな・・・てめぇら、飲まずに集めてねえか?
水原博士: ・・・あのような危険なものを放っておくことは出来ないのでね
SCP-488-JP-A: 危険だぁ・・・?
SCP-488-JP-A: ふざけんな!人間の最期の血で作った酒が最高に美味いんだろうが!!
[受話器が叩きつけられるような音]
<通話終了>
終了報告書: この後、記載されていた番号に再度通話を試みても繋がることはありませんでした。また、逆探知を含めた調査も失敗しております。
アイテム番号: SCP-102-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル:SCP-102-JPは現在、サイト-8110の恒温恒湿保管倉庫にてハンガーに吊り下げた状態で収容されています。実験はセキュリティクリアランスレベル3以上の職員の許可を得た上で行ってください。また、実験は目撃されるリスクを下げるために夜間に行ってください。
説明:SCP-102-JPはベージュのトレンチコートです。表地はコットンギャバジンで、裏地には絹が使用されています。またタグの欠如や縫い目などから、ハンドメイドである可能性が極めて高いことも判明しています。炭素年代測定により表地のコットンギャバジンは20年以内のものであり、裏地の絹は1200年以上前のものであることが明らかになっていますが、何故絹の経年劣化が生じていないのかは不明です。
SCP-102-JPは着用した人間の性別により異なる特異性を発現します。
- 男性が着用した場合、着用した瞬間にSCP-102-JPを残して消滅、着用地点の上空に出現します。その後は自由落下し、地面に激突することになります。実験の観測により上空約8000mに出現していることが判明しました。
- 女性が着用した場合も着用した瞬間にSCP-102-JPを残して消滅、その場に雌のアオクビアヒルが出現します。出現したアオクビアヒルは外見、行動に全く異常な点はなく、遺伝子的にもアオクビアヒルであると確認されています。着用した女性が再出現した事例は報告されていません。
着用した人間が性転換をしていた場合は、出生時の性別に合わせた特異性が発現することが実験から確認されました。SCP-102-JPが性別をどのようにして感知しているのかは不明です。
SCP-102-JPは20██/██/██、静岡県静岡市清水区████町にて地元警察に寄せられた「友達が鳥になった」という通報により、財団の目に留まりました。その後の調査により通報した少女たちは地元の銭湯にてSCP-102-JPを盗み、うち1名が着用したことが判明。財団に引継ぎ後、SCP-102-JPとアオクビアヒル1羽は回収され、着用した少女の関係者には全員記憶処理を施し、「交通事故により死亡」として処理しました。
インタビュー記録-102-JP
対象: 20██/██/██に通報を行った少女
インタビュアー: エージェント文月
付記:エージェント文月は話を聞きやすいように警察官と偽り、少女の自宅にて事情聞くという名目で行っている。
<録音開始>
エージェント文月: 何度もごめんなさい、もう一度最初から話してもらえないかしら?
少女: またかよ・・・それよりも[編集済]は治るのかよ・・・。
エージェント文月: 今治療方法を探っているところよ、安心して。
少女: [舌打ち]・・・あの日は学校で嫌なことがあってむしゃくしゃしてて・・・風呂でも入ろうかと思って歩いてたら、あのコートを着てる女を見かけたんだ・・・。
エージェント文月: どんな女性だったか覚えてる?
少女: すげぇ綺麗だった。それだけしか覚えてないくらい。
エージェント文月: その後は?
少女: [編集済]と一緒に風呂へ入って、上がろうとした時にあの女とすれ違った。
エージェント文月: そして脱衣所で彼女のコートを見つけた・・・。
少女: [頷く]それで・・・すごく綺麗だと思って見てたら、いきなり[編集済]が持ってっちゃう?って言いだして
エージェント文月: 盗んだ・・・と。
少女: さ、最初はすぐに返すつもりだった!本当だよ!!
エージェント文月: ・・・それで、その後は?
少女: [編集済]がカバンに入れて・・・二人で出た。その後近くの公園に行って・・・
エージェント文月: [編集済]が着た・・・のね?
少女: [震えながら]・・・なんでだよ・・・なんで服を着ただけであんなこと起きるんだよ・・・
エージェント文月: 大丈夫?落ち着いて・・・
少女: なんでだよぉ!!!
[何かが割れる音]
エージェント文月: 落ち着きなさい!ああ、もう!!
少女: [編集済]は治るのかよぉ!!!
<録音終了>
終了報告書: 調査資料なども加味すれば、これ以上の聞き取りは必要なしと判断。この後すぐに記憶処理を施しました。 — エージェント文月
補遺:銭湯の主人から、女性はSCP-102-JPが盗まれたことを知った後、逃げるように出て行ったという証言を入手。監視カメラの映像分析により三保方面に向かったことが確認されていますが、その後の足取りは不明です。また指紋、モンタージュ写真、監視カメラの映像などの情報があるにも関わらず、女性の身元も不明であり、こちらも現在調査中です。
倉庫。
注意: SCP-711-JP-HWはその特性のために、サイト内に居る全職員に遭遇する可能性があります。このためサイト-██に勤務するDクラス以外の全ての職員は、本報告書を少なくとも1度は読まなければなりません。
アイテム番号: SCP-771-JP-HW
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 全てのSCP-771-JP-HWは通常サイト-██の標準的な収容ロッカーに個別に収容されています。各収容ロッカーの鍵を受領する場合はセキュリティクリアランスレベル3以上の職員の許可を得てください。
毎年10月31日午前9時までに全てのSCP-771-JP-HWはDクラス宿舎に移動させることになっています。この移送に関しては出来るだけ宿舎の中心に近い位置に設置してください。SCP-771-JP-HWが活性化後は宿舎を完全施錠し、監視カメラによって常に内部の状況を把握及び記録してください。もしDクラス職員以外が目標となった場合は、出来る限りDクラス宿舎に接近し、次の目標がDクラス職員となる様に努力してください。非活性化後は回収し、収容ロッカーへと再収容してください。
説明: SCP-771-JP-HWは一般的なハロウィン様式のくりぬきを施され、黒のとんがり帽子をかぶせられたペポカボチャ(Cucurbita pepo)です。オブジェクトは一般的な素材で構成されており、移送、帽子の着脱は自由に行えます。またカボチャの下面には「treat or trick」という文字が刻まれています。
毎年10月31日になるとSCP-771-JP-HWは活性化します。活性化のタイミングに規則性は確認されていませんが、10時から19時の間のいずれかのタイミングで同時に活性化し、約2時間ほどで非活性化することが判明しています。活性化したSCP-771-JP-HWはカボチャ内部に蝋燭を出現させ点火します。この蝋燭に対する調査は、後述のSCP-771-JP-HW-1の特性のために成功していません。しかし蝋燭の消灯と同時に非活性化するため、何らかの関連性がある事が確実視されています。
SCP-771-JP-HWは活性化中、SCP-771-JP-HW-Aと分類される存在を形成します。SCP-771-JP-HW-AはSCP-771-JP-HWを頭部とした人型の存在で、帽子を含めた全長は151cm、黒いローブ、先端に金色の星の飾りをあしらった黒い杖を装着しています。SCP-771-JP-HW-Aは目視及び撮影によって観測は可能ですが、頭部であるSCP-771-JP-HWを含めて物理的接触をすることができません。SCP-771-JP-HW-Aは発生後、おおよそ半径50m以内に居る人物1名を目標として移動を開始します。目標を選ぶ基準は判明しておらず、無作為に選ばれているものと考えられています。移動は徒歩で行われ、基本的には構造物に従って行動します。しかし扉などの迂回不能な障害物と遭遇した場合、SCP-771-JP-HW-Aはそれらをすり抜けることが確認されています。
SCP-771-JP-HW-Aが目標に接近すると、10代と考えられる女児の声で「treat or trick!」と発言します。目標がこの声を無視して移動したとしても、SCP-771-JP-HW-Aはその後ろを追いながら「treat or trick!」と言い続けます。
目標が「trick」と回答した場合、SCP-771-JP-HW-Aは杖を振り「イタズラ」を行います。「イタズラ」は一瞬で行われ、そのプロセスを観測する試みは成果を上げていません。行われる「イタズラ」は多岐に渡りますが、顔やノート、部屋への落書き、びっくり箱の配布、水をかける、金ダライを落とすなどの軽微なものです。「イタズラ」後、SCP-771-JP-HW-Aは笑うようにSCP-771-JP-HWを揺らし「Happy halloween」と言いながら、次の目標へ向かいます。次の目標もおおよそ半径50m以内から無作為に選ばれます。
目標が「treat」と回答する、または「treat or trick!」を2分以上無視し続けた場合、SCP-771-JP-HW-Aの近辺からSCP-771-JP-HW-Bが出現します。SCP-771-JP-HW-Bはハロウィン様式のくりぬきを施されたペポカボチャ(Cucurbita pepo)を頭部とした全長190cmほどの人型存在です。SCP-771-JP-HW-Bは筋肉質な男性体で、ジーンズ、ハロウィン柄のシャツを身に着けています。SCP-771-JP-HW-BはSCP-771-JP-HWが非活性化した場合でも、消滅するまで存在し続けます。
SCP-771-JP-HW-Bは出現後、目標に向かって殴る、蹴るの暴行を始めます。SCP-771-JP-HW-Bは接触が可能です。しかしこの行為に対して目標が抵抗したとしても、SCP-771-JP-HW-Bにダメージは観測できず、更なる暴行をもってそれに応えます。しかし、この行為によって目標が死亡にまで至ったケースは現在までありません。なおSCP-771-JP-HW-Bの暴行を止めようする外部者からの拘束行為は、拘束からのすり抜けを誘発し、目標に対する暴行時間の延長をもたらします。おおよそ10分から20分(拘束脱却による延長がなかった場合)で暴行は終了し、SCP-771-JP-HW-Bは消滅します。暴行を受けた目標は例外なくカボチャに対する重度の恐怖症を植え付けられます。この恐怖症からの回復、軽度化は報告されていません。またこの際SCP-771-JP-HW-Aは「Happy halloween」と発言せずに前述のルールに沿って次の目標に向かいます。
事件記録711-JP-HW: 19██/10/31に感知範囲に人間が居ない場合の動作についての実験が行われました。その結果、SCP-771-JP-HWは設置個所から移動していないにも関わらず半径40mから50mの範囲にSCP-771-JP-HW-Aが4体出現しました。全てのSCP-771-JP-HW-Aは出現と同時に目標に向かって移動を開始し、通常通り「treat or trick!」を行い非活性化しました。非活性化後、5個のSCP-771-JP-HWは回収されました。SCP-771-JP-HW-Aの「イタズラ」によって█件の小規模な収容違反が発生しましたが、死者、重傷者はありませんでした。
補遺: 事件後の精密検査により全てのSCP-771-JP-HW下面の文字の周辺から血液を意図的に付着させた痕跡が発見されました。DNAは劣化により検査不能でしたが、少なくとも█名分の血液ではないかと推測されています。内容は以下の通りです。
- 「treat or trick」の左側に「ill-」の文字列 ill-treat
- 「trick」の「r」を「n」と読める様な書き足し
- 「treat」の「r」、「a」、「or」、「trick」の「r」、「c」への血液の塗布 rancor
また、全てのSCP-771-JP-HWにおいて自然的な傷跡、「ill-」及び書き足しの筆跡が一致したことから、SCP-771-JP-HWは自己の複製を行ったものであると研究員たちは結論付けました。
[[>]]
[[module Rate]]
[[/>]]
**アイテム番号:** SCP-XXX-JP
**オブジェクトクラス:** Safe/Euclid/Keter (適切なクラスを選んでください)
**特別収容プロトコル:**
[SCPオブジェクトの管理方法に関する記述]
**説明:**
[SCPオブジェクトの性質に関する記述]
**補遺:**
[SCPオブジェクトに関する補足情報]
__**実験記録XXX - 日付YYYY/MM/DD**__
> **対象:**
> **実施方法:**
> **結果:**
> **分析:**
[[collapsible show="+ テキストを表示" hide="- テキストを隠す"]]
[テキスト]
[[/collapsible]]
小技。
文字の中央寄せ、右寄せの方法
中央寄せ
右寄せ
[[=]]
中央寄せテキスト
[[/=]]
[[>]]
右寄せテキスト
[[/>]]
注: 他の構文と違い、[[=]]テキスト[[/=]]の形では使えません。
ちなみにこれ
中央寄せ
真ん中に寄せます。
左寄せ
別名デフォルト
右寄せ
右に寄せます。
このように枠内でも使用可能です。
> [[=]]
> 枠内中央寄せ
> [[/=]]
注:右寄せも同様
脚注を白文字にするやり方3
[[footnote]]##white|(テキスト)##[[/footnote]]
もう一つ
[[span style="color:white"]][[footnoteblock]][[/span]]
前者は脚注の文字の色変更、後者は脚注そのもの4の色変更です。
私が作成したいくつかの記事についての解説、裏話など
いわゆる「あとがき」です。各記事読了後の閲覧を推奨します。先に読んで記事の面白みが無くなっても私は責任を負いかねます。
読みにくい?仕様ですよ。
SCP-138-JP 田んぼに入るな!
私の初そうさくです。ほぼ初期稿通りですが、改訂によりインタビューを入れてます。
特性としてはかなりオーソドックスに、領域内に入ったらしぬ。パターンです。
最後の[削除済]に関してはそうですね・・・案山子が新しく9体出現したということです。
構成と言うかオチとしては「特性の解釈」オチ・・・と個人的名付けています。
侵入者を飲み込む田んぼですが、ではその侵入者と解釈される範囲は?という問いとその答えですね。
追記したインタビューはディスカッションのツッコミで書いたのですが
ただ台詞部分を独立させるだけでは内容が薄すぎるので、最後の[削除済]の動機づけとして作成しています。
ちなみに某所のツッコミとディスカッションで泥田坊という存在を知りました・・・。
SCP-323-JP 活動写真
この作品で人事ファイル要件を満たしたので思い出深い作品です。改訂により記事の構成、実験記録の付与などそれなりに手を加えてます。
こちらも特性としてはかなり平凡なものですね。
こちらも[削除済]を使っていますが、こちらは別にオチでもなく実験の一環です。多重露光でググるとなんとなく内容は察しはつくかもしれません。
きっと現像室はすっぱい匂いで充満していたでしょう・・・。
改訂に関しては、「語らずに語る」というやり方を翻訳してから決めました。(改訂前はあまりに率直に「怪異を示している」と考えたので。
改訂による記事の質の向上のために実験の追加しました。
実験追加で留意した点は以下の二点
・Taleに繋げること。(改訂前にすでに投稿していたため。
・本文中からいくつか記述を削除したため、その補完。(差異についてはまあ適当に見てください。
オチは「原因はどっち?」ですね。
読み手に対して「謎」を提供する形になっています。
ちなみに本文中に「魂」という言葉を一切使っていませんが、それを実証するのが大変難しいので意図的に抜いてます、写真の中から脱出できませんし。
なお、改訂後にRateがちょっと伸びてます。(前は+5・・・だったかな?
若き新人への講義
忘年会シリーズ以外では初めて書いたTaleです。
内容としてはガイドよりな感じではありますが・・・一応長夜博士のキャラの掘り下げも兼ねてます。
書こうと思った理由としては、オブジェクトクラスの誤解に関しては私も読み始めたばかりの頃はあったので・・・面白そうだから自分の作った記事使って解説してみようかなーと思って。
エージェント餅月を入れた理由は、財団の組織的な側面ですね。いくら主任研究員とはいえ、研究外の持ち出しは「監視」なしでは難しい・・・ということです、相手は何も知らない新人ですし。
ちなみに、エージェント餅月は講義の開始からずっと居ましたよ。(いくつか描写も入れてあります。
SCP-234-JP 孫の手
AアイテムをSCPとして再分類するにはどうすればいいの?と思って書いた作品です。
もちろん、回収部分に記述してもいいんですが・・・それだけだと何か面白くないかなぁ・・・と思いまして。
組織的な面から危険視するオブジェクトとして書きました。
こちらは微調整レベルの改訂しかしてません。
・・・まあ人は選びまくる内容ですね。
SCP-101-JP Peach tree
特性は単純明快です。ただ動く木であり、元は人間であった。
この作品に関しては「構成」に頼りまくってます・・・特性が単純ですから、読み手にどれだけ「驚き」と「後味の悪さ」を提供できるか、それだけです。
まず前半は「人間」を出さない様にしてます(説明の果実の部分までです。)。もちろん、白衣や医療器具に対してのトラウマのような描写はありますが・・・これは「運動能力と知性を備えた改造植物」・・・と解釈できなくもないでしょう、多分。
後半はマッドサイエンティストの祭典ですね。
コピーは生まれる、そのコピーは途中で樹木になる、試作品だから廃棄されてる。極めつけに人間が素材。
読み手に思う存分後味を悪くなってもらうように仕上げています。
ただコレ、最初から人間であることが分かるような作りにしてあれば・・・おそらく「ふーん。」で終わってたでしょう。
前半と後半で書く内容をはっきりと分けた分「後味の悪さ」や「驚き」が増した・・・と私は考えてます。
特性と背景の見せ方、大事。
一発ネタ以外の何物でもない。
まあ製造系の要注意団体からすれば、財団は目の上のたんこぶです。ならばゴミ箱として利用してやろうじゃねーか!!って思うことはある・・・とは思います。
東弊重工にしたのは単純に造りそうなところがそこしかなかったからです。
Special Control Productsは適当に付けました。
もう最後の台詞以外に言うことないですね。
減りません。それと財団はゴミ箱ではありません。
情報局局長はもうちょっとちゃんと書きたかったなぁ・・・って思わなくはないですが。
思い付いたので仕方ない。こんなの即興じゃなきゃ書けません。
ふと思いついて書いてみたものの、日常的すぎたのでここに・・・
とある週末
200█/██/██ PM5:38 サイト-8181
「それでは、解剖結果はまとまった部分から順次私の研究室の方に。報告は端末へお願いします」
お疲れ様でした、と言葉を掛けながら第4解剖室を後にする。
先ほどのDクラスの様子を見るに第一次報告がまとまるまで3時間か4時間か・・・
そう目算を立てた私は時間を潰すため、図書室に向かう。
国内でも大型のサイトであるここサイト-8181では図書室もそれ相応の大きさがある。
蔵書のジャンルも様々、ある意味私にとっての極楽のような場所だ。
オブジェクトを研究するにあたって知識はいくらあっても足りることはないし
知識の不足は死につながることもある。
静寂、本の匂い、窓からの斜陽
目に痛くない朱に染まった部屋は人もまばらで、ゆっくりできそうだ。
司書と会釈を交わし、カウンター端末の新着図書の一覧を見る。
電子書籍のチェックを解除、折角来たのだから紙媒体で読みたいですので。
さらさらと斜めに眺め、いくつか興味を持った本のステータスをチェックする
どうやら全て貸出可能なようだ。
2冊ほど書庫に保管されているようなので、用紙に必要事項を記入しカウンターに出す。
20分ほどかかるとのことなので、その間に開架にある本を探すことにしよう。
と、開架に向かう最中に端末が震えた。
現在PM6:02
報告にはあまりにも早過ぎる。
少々嫌な予感がしつつ端末を見ると
着信 前原博士(通常端末)
の文字が
・・・今日は金曜日・・・スルーですね。
ポケットの中の端末の震えが止まるまで待たずに、私は開架に向かう。
地理学、電子工学、情報科学、医学、薬学、数学、物理学・・・
まるでウィンドウショッピングを楽しむように、私は開架の中を探索する。
目に留まった何冊か手に取りまえがき、目次、発刊年数をチェックし
先ほど調べた本と共に必要だと思う本や興味の湧いた本を手に抱える。
あっと言う間に6冊の本が腕の中に収まった。
端末の震えもいつの間にか止まり、静けさの中で私は本探しを楽しんだ。
結局、10冊の本を抱えて私はカウンターに戻った。
私は職員カードと共に本をカウンターに降ろすと
「全部で12冊、貸出お願いします」
といつもの調子で言った。
そしていつものように司書が手続きを行って・・・
・・・?
司書は確かに手続きをしている、しかし何故かこちらを見ようとしない。
いつもなら会釈くらいあるものだけれども・・・
疑問に思った瞬間
私の肩に手がかかった。
「電話に出ないから心配したわよ?」
・・・原因判明。
「すいません、すでにここに居たもので・・・通常端末からの着信だったので緊急性はないと思っていました」
「まあ確かに、ここは通話ご遠慮くださいって書いてあるものね」
用意しておいた適当な 理由を伝えると前原博士はあっさりと頷き、更に言葉を続けた。
「でも、メールは見てほしかったわ」
「メールですか?」
答えながら私は端末を取り出しメールボックスを開く。
今日合コンするのに面子が一人減ったの。返事がないなら参加ね。
「・・・あの、私これから借りた本を・・・」
「返事なかったわよ?後、明日休みよね?」
「・・・」
「・・・」
二人の間に沈黙が下りる・・・
最も近場で見ることになった 不幸な 司書が身体を強張らせるのがお互いの視界の端に入っている・・・
・・・ふぅ
「分かりました。すいません、借りた本を私の研究室の方に送っておいてもらえますか?」
「は、はい。分かりました」
お願いします、と告げて私は踵を返し
テンションが上がっている前原博士と共に、私は私の楽園を後にした・・・
前にツイッターで「長夜博士が前原博士に合コンに連れて行かれている」というのを見たので思い付いたもの。
ちょっとギャグ寄りと言うか真面目な感じではないです。
800に入れようかと思ったら余裕で文字数オーバーになったよ。
天王寺と長夜のハロウィン
「trick or treat!」
「今年のハロウィンは先ほど終了しました」
今日は10月31日、ハロウィンである。
もちろんここサイト-8181でも、いたるところで職員たちがハロウィンを楽しんでいる。
今決め台詞を一刀両断された天王寺博士もその一人だ。
「いやいや、まだ夕方やで!?」
「終了しました」
食い下がるカボチャマークの紙袋に上から目線(文字通りの意味で)で二の太刀を入れたのは長夜博士、ここサイト-8181に勤務するお菓子を常備していることで有名な女性である。
「まあ、正確に言えば・・・先ほど串間保育士たちにあったので持ち合わせがありません」
そう言いながら彼女は白衣のポケットを裏返して見せる。もちろんクッキーの欠片一つ出てくることはなかった。
天王寺博士は紙袋の後ろからガァーン!!という擬音が聞こえそうなほど見事に硬直し、ヨロヨロと後ずさり
はたと気づいた。
「ん?なんか調子悪いん?」
「え?」
先ほどのおちゃらけた雰囲気とはうって変わって、紙袋越しではあるがしっかりと相手を見据えながら尋ねた。
「ああ、実は昨日の夜資料整理してたので結構遅くて・・・午前中も一応実験有りましたからね」
「そらあかんわ。しゃーない、ほい」
天王寺博士は白衣のポケットからそれを取り出し、長夜博士に投げた。
「板チョコ・・・?」
「いや、変な意味ちゃうで?疲れてる時は甘いもんがええやろ。それ食べてちょっと休んできぃ」
しばらくの沈黙の後、ありがとうございますと感謝の言葉を述べて長夜博士はチョコを片手に研究室に戻っていった。
2時間後、長夜博士は研究室のソファーで目を覚ました。
先ほどの天王寺博士の助言を受けて少し休養を取ったのだ。
頭もすっきりし、机の上のチョコの包み紙をゴミ箱に投げ入れると彼女は研究室のドアを開き
外のノブに掛かっている「出張土産 by 天王寺」と書かれている紙袋を見つけた。
そういえば、先日出張で高知県に行ったとどこかで聞いたことを彼女は思い出しつつ
紙袋を開ける。
そこには
No 肋骨! Yes 腹筋!
のメッセージカードと共に
見事な洗濯板が入っていた。
10月31日 PM23:54
長夜博士に粛清として連れ去られた天王寺博士をサイト内洗濯室にて発見。
両手足が拘束され上半身半裸の状態であり、首から
洗濯板です。ご自由にお使いください。 長夜
と書かれたプラカードを下げていた。
なお、天王寺博士の証言により複数名の職員が使用したとのこと。長夜博士の笑みが眩しすぎて直視できませんでした。 — 連れ去り現場に居た職員
Am I OMOSHIROI Yet?って最期に言ったんです。 — 連れ去り現場に居た職員
汚れは落ちなかったけど楽しかったです! — 匿名希望(女性)
天王寺×長夜が欲しいと言うご要望に可能な範囲でお応えしつつ
腹筋が欲しいと言う需要を満たし
なおかつハロウィンにしたいと思ったらこうなりました。
こちらも日常的なのでここに。