ミーム汚染がひろがりんぐ

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お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。私はサイト8181附属病院内科の医師の八木と申します。専門は不安定ヒューム場の曝露による晩期障害です。プロトコル作成部の人間ではないですがたまに会議には顔を出してます。よろしくお願いします。

医療スタッフとプロトコル作成者として入職される方々は全員、この就業前講座を受けていただく決まりになっていますが、具体的なことに関しては配属先の研修で教わるかと思いますので、今回総論と銘打ってはいますが、SCiP関連の診療や、プロトコル作成の大原則みたいなものだけ簡単にお話ししていけたらと思います。

皆さん「異常性関連疾患」と聞いてどのようなものをイメージするでしょうか?何人か聞いてみましょう。認識災害、ミーム汚染、そうですね、異常性を持った未知の細菌やウィルス感染症、それもありますね、外傷、いいところを突きますね。そう、実は一番多いのは外傷なんです。…これくらいにしましょうか。結構出てきますね。もうセキュリティクリアランスの低いプロトコルは一通り目を通していただいた感じでしょうか?優秀ですね。

「異常性関連疾患」、規則の文章とかで使うような正式な言葉では「異常性を有するオブジェクトまたは異常現象に起因する全ての疾患並びに外傷」とまあ、長ったらしいお役所感溢れる呼び方をしますが、ミソなのはその症状自体に異常性がある必要はないということです。例えば伝染する認識災害なんかは当然異常を伴う症状ですが、極論を言えば運搬中にぎっくり腰になった、というケースでも、運搬していたものが異常性オブジェクトであれば、これは異常性関連疾患に含まれます。一応既存の疾患概念で説明できない病態を「古典的異常性関連疾患」と呼ぶことがありますが、単に異常性関連疾患と呼ぶ場合は、先ほどの意味であることを知っておいてください。

そしてこれらは発症タイミングによって一次異常性関連疾患と二次異常性関連疾患に分けられます。一次疾患はSCiP出現から収容完了までの間に剥き出しの異常性に曝露されることによるもので、二次疾患は収容後に発生したものになります。プロトコルを遵守すれば二次疾患を発生させないものがSafe、普段は大丈夫だがプロトコルを遵守しても二次疾患を発生させるリスクがあるものがEucrid、プロトコルを遵守しても継続的に二次疾患を出し続けるものがKeterにカテゴライズされるわけです。まあ例外も多いですが一つの目安ですね。ちなみにKeterオブジェクトが発生させる防止困難な二次疾患のことを三次疾患と呼ぶこともありますが、就業直後にKeter案件に配属になることはないはずなので割愛します。またいずれ配属になったらそこの部門の先輩に教わってください。

一次疾患も二次疾患も当然予防が基本なわけですが、一次疾患予防の目標がいかに軽症で済ませるか、つまり「症状の軽減」なのに対して、二次疾患予防の目標はいかに起こさないか、つまり「件数の減少」にあります。ちなみに三次疾患の目標はこのどちらもですね。

疫学の話をすると、一次疾患の主な患者となり得るのは一般人とフィールドエージェントさん、二次疾患の主な患者となり得るのは収容チームと一般人です。件数は本邦では一次疾患が96%を占めますが、意外なことに症例数は二次疾患が約20%になります。これは長期収容のKeterマターの収容違反が一件で一般人を含む大人数の被害者を出しやすいからですね。

一次疾患二次疾患共に最も多いのは外傷で、これを指してAnomaly Related Trauma、略してART、アートと呼んだりします。臨床診療ではめったに使いませんが、SCiP周りの疫学の論文ではよく使う言葉ですし、プロトコル作成の会議では「アート死を減らす」というのは頻出するフレーズなので、覚えておいて損はないでしょう。

これまでは予防の原則や疫学の話をしてきましたが、では起きてしまったらどうするのか。診療の話をしていきましょう。最も多いARTについては外傷自体に異常性があるわけではないことが多いので、一般的な救急診療で行うルーティンで対応することがほとんどです。ただやはりARTに関しては高エネルギー外傷が多く、現場での適切な応急処置がなされないと非常に生命予後が悪いのが現状です。

ART以外の診療については、具体的には各論で他の先生に講義してもらうとして、その大原則はtreatableなもの、すなわち治せるものを見逃さない、ということになります。ART以外の異常性関連疾患は「古典的異常性関連疾患」が8割を占め、またその症状についても不可逆的なものが少なくありません。そのため対症療法、ときに緩和的アプローチが主になるケースが多々あります。ただ思い出していただきたいのは、異常性関連疾患とは、言うなれば発症機転のエピソードにSCiPが登場する全ての疾患であり、すなわち既存の疾患概念で説明がつく病態も多く含まれているということです。

聡明な皆さんならば話の流れで察しているでしょうが、異常性関連疾患の診療の一丁目一番地は、「古典的異常性関連疾患」と決めつけず、既存の疾患との鑑別を怠らない、ということです。

私の経験した事例を紹介します。守秘義務もあるのでぼかしますが、近づいた人間が誘因なくうつ病の症状を呈する、というオブジェクトがありました。担当だったフィールドエージェントさんからの最初の報告では、認識災害の類ではないかということだったのですが、被害者十数名の診察をしたところ、例外なく原発性の甲状腺機能の著しい低下が見られ、甲状腺ホルモンの補充で全員回復した、といったことがありました。甲状腺機能の低下がうつ様の症状を呈することはよくあることですからね。以降そのオブジェクトの特別収容プロトコルには、有症状者の甲状腺ホルモンスクリーニングが項目に加えられました。器質的な疾患を簡単に除外しないことの重要性を語る上で非常に教訓的なエピソードです。

もちろん既存の疾患概念では説明はつかないが、なぜか治療が奏功する、といったこともあります。例えばオブジェクトに起因するミーム汚染が記憶処理によって改善するような事例ですね。しかしながら、記憶処理が有効な機序が解明されておらず、経験則的にある程度有効であるとされてはいるものの、無効例も多く、実際のところエビデンスに乏しいのが現状です。「古典的異常性関連疾患」の中には、有効とされている治療法が存在する疾患もあるにはありますが、残念ながら今のところエビデンスレベルが高いものはそう多くありません。

…以上がプロトコル作成者および医療スタッフの基本となる考え方になります。一次疾患は軽くする、二次疾患は起こさない、treatableなものを見逃さない、この三つをしっかりと頭に入れ、プロトコル作成者と医療スタッフがお互いに適切なフィードバックをしながら、より良い仕事ができるように努めていきましょう。次は別の先生に「古典的異常性関連疾患」の中で最もcommonなミーム汚染について、総論チックなところから解説していただく予定です。一旦休憩にしましょう。


 

思いつき次第書き込んでいく感じで

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