haruharu

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-81██の低脅威度物品収容ロッカー内に保管します。実験時を除き物理的な直接接触及び1cm未満の物体を隔てた接触は禁止されています。

説明: SCP-XXX-JPは、高さ60cmの直立し地面に向けて指を差す姿勢をとるイエス・キリストの彫像です。SCP-XXX-JPは一般的な彫像に使われている大理石で構成されています。彫像の底面には“Let any one of you who is without sin be the first to throw a stone at her.”1と記されています。

SCP-XXX-JPに直接、または1cm未満の薄い物体を隔てて触れると、被験者のみが知覚できる無数の白色の「手」が被験者の眼前に出現します。「手」は被験者の挙動に関わらず常に被験者を取り囲むように相対位置を取り続けます。「手」は被験者に向かって人差し指を突きつける姿勢を取り、徐々に被験者に近づいていきます。曝露した被験者は激しいストレスを感じて錯乱状態に陥り、数秒から数分後に心不全等で死亡します。アイマスク等で視界を遮った場合も性質及び死亡までの過程に変化はありません。

SCP-XXX-JPは19██年8月██日に「触れると罰が当たって死に至る像」の噂話を察知した財団が、青森県██村で発見し、収容しました。

事案-XXXーJP調査報告: 2012年8月23日、SCP-XXX-JPの運搬作業中に誤って作業員の1人がSCP-XXX-JPに接触し、曝露しました。しかし通常とは異なり作業員の眼前に「手」は出現せず、錯乱状態に陥りませんでした。以下は曝露した作業員に対して行われたインタビューです。

対象: ██作業員

インタビュアー: 土佐博士

付記: ██作業員は事案以降軽度の鬱状態であり、人との邂逅を可能な限り避けています。インタビュアーとの対面の際も動揺を示しました。
 
 
 

土佐博士: つまり君は間違いなくSCP-XXX-JPに接触したが、眼前に「手」は出現していない。そうだね?

██作業員: はい、間違いありません。

土佐博士: あの後君が偶発的に接触した時と同じ条件で何度かDクラス職員で実験を繰り返したが、君と同じような結果は得られなかった。君は特別変わった点の無いごく普通の人間だ。それなのに何故君が生きているのか不可解でならない。

██作業員: ……思ったんですが、Dクラス職員だと駄目なんじゃないでしょうか

土佐博士: どういうことかね?

██作業員: 実験に使われたDクラス職員達は、確か元々死刑囚とかの大犯罪者ばかりでしたよね?

土佐博士: おおよそその通りだ。

██作業員: 彼らはそれだけ罪深い人間だった。憎まれ、蔑まれる人間だった。だからあのたくさんの「手」に殺されたんだと思います。

土佐博士: なるほど。つまり君は犯罪者ではなかったから曝露しても「手」が出現しなかった、ということかね?

██作業員: いいえ、きっと私も彼らと同じように指をさされています。私は彼らに比べれば見えてないだけです。でも間違いなく指を差されているのを感じます。私は罪のない完璧な人間だなんて絶対に言えませんから。

土佐博士: そうだな、清廉潔白な聖人なんてのはまずいないだろう。つまるところ、その「手」は人にいわば罰を与えているようなものか。

██作業員: いやそんな厳正なものじゃありません。あの「手」からはそういう雰囲気を感じない。どちらかと言えばむしろ……悪意と言ったほうがいいかもしれない。できればもう二度と見たくないです。

土佐博士: 悪意?

██作業員: ええ。どんな人間にだって……それこそ私やあなたにだって、多かれ少なかれあるでしょう。誰かに対してちょっとムカついたりとか、良くない印象を抱いたりとか。そういう怒りや憎しみの類を、あの「手」からは感じます。

土佐博士: ……少し気になっているのだが、もう一度聞く。君は間違いなくSCP-XXX-JPに接触したが、眼前に「手」は出現していない。そうだね?

██作業員: ……はい、間違いありません。

土佐博士: では何故眼前に「手」は出現していないのにも関わらず、見る事を忌避する程の「手」についての詳細を話せる?

██作業員: それは……今だって指を差す「手」がいくつも見えているからですよ。例えばあなたの背後にもね。