アイテム番号: SCP-XXX-JP - 安息の灯
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは当オブジェクトの封じ込めのため新たに建設されたサイト-81██に収容されます。SCP-XXX-JPは外部から光を取り込むことが可能な開閉式の屋根を備えた収容施設内にて、完全に水没させた状態で留め置かれます。SCP-XXX-JPの効果範囲の外縁に沿う形で高圧電流フェンス、複数の大型照明灯および大型サーチライトが設置され、日没から日出までの間は収容施設周辺を照射し十分な明るさを保つことで敷地内への侵入に警戒してください。SCP-XXX-JPへの接近を試みた侵入者はただちに武装警備員によって拘留・尋問され、現場の判断によって即時の無力化も許可されます。
SCP-XXX-JPの効果範囲内にて作業を行う職員は照明具の点灯を行わないよう十分な注意を払い、また40分以上内部に留まらないようにしてください。当オブジェクトの収容に関わる職員たちは週に一度精神鑑定を受け、SCP-XXX-JPの影響下にないことを証明する必要があります。
説明: SCP-XXX-JPは起源不明の石油ランプです。SCP-XXX-JP内にて燃焼する炎(以下、SCP-XXX-JP-1)は、水中や真空中といった如何なる状況下でも消えることなく燃え続けます。ただし、これを火種として外部へ燃え移らせたSCP-XXX-JP-1は通常の炎と同じく常識的手段で鎮火することが可能です。
SCP-XXX-JPから最低でも1.6km以内の距離に存在するあらゆる発光体は負の影響を受けます。それらは電気系統の故障、急速な消耗や劣化、物理的な崩壊、化学組成の変化、エネルギーの減少など、様々な要因をともなってただちに発光機能を喪失します。これは光を発するものであれば照明を目的としたものに限らず、映像機器や携帯機器といった電子機器、ルミノールやアルミン酸ストロンチウムなどの化学発光体、そして炎、何であろうと影響を受け速やかな消灯・消火に至ります。財団が把握する限り、この影響への耐性を有する光源はSCP-XXX-JP-1だけです。
またSCP-XXX-JPは上記の効果範囲内に存在する人間(以下、被験者)に対して精神的な影響を及ぼします。
曝露からおよそ1時間が経過した初期段階では、被験者は軽度の暗所恐怖症に似た症状を示し、暗所での不安感や恐怖心を報告するとともにそこに留まることへの心理的な抵抗を覚え始めます。この時点でSCP-XXX-JPの効果範囲から離れることができれば、数日から数週間で通常の精神状態に回復できます。
しかし曝露からおよそ4時間が経過した中期段階では、症状はより深刻なものとなり、SCP-XXX-JPの効果範囲から離れても症状は恒久的に残り続けます。中期段階の被験者は100lxを上回る照度の中にあっても、息切れ、発汗、吐き気、震えや動悸など、重度の暗所恐怖症の症状を見せるようになります。
曝露からおよそ6時間が経過することで症状は最終段階へと進行し、被験者は1000lxを超える照度の中でも暗所であると認識するようになります。被験者は暗闇に対する著しい恐怖心から錯乱状態に陥り、より強い明かりを得るためにあらゆる試みを実行しようとします。十分な明るさを確保できなかった場合、被験者は1時間足らずで極度の緊張から脳溢血や心臓麻痺を起こし死亡します。
こうしたSCP-XXX-JPが周囲に及ぼす二つの影響の結果、唯一の光源となるSCP-XXX-JPのもとには必然として相当数の被験者が集います。彼らはSCP-XXX-JP-1を火種とし火を焚くなどして光源を確保しようとしますが、これらの行動は症状の進行にともない徐々に激化し、最終的にはすべてのケースで無差別かつ大規模な放火活動へと発展していきます。
外部に燃え広がったSCP-XXX-JP-1の火勢の強まりに応じて、SCP-XXX-JPはその効果範囲を加速度的に拡大させます。
回収記録XXX-JP:
財団がSCP-XXX-JPが起こす現象を最初に知覚したのは、███の山間部に位置する██村の住人から相次いだ奇妙な停電に関する通報でした。その内容は徐々に狂的な様相を帯び、その後日没とともに完全に途絶えました。財団のプロペラ機が調査のために派遣され、そこでパイロットはあらゆる照明が絶える中ところどころに火の手が上がる██村の様子を報告しました。パイロットはさらなる接近を試みましたが、SCP-XXX-JPの効果範囲に入ったことで発光機能の喪失を招き、それにともなう多数の機器の不全によって機体は制御を失い墜落しました。これを受けて、財団はただちに対策チームの派遣を決定しました。
およそ1時間後に出動した対策チームは、現場から離れた高空域から██村を中心としてSCP-XXX-JP-1が火勢を増しながら延焼していく光景と、SCP-XXX-JPの効果範囲が街明かりを消し去りつつ円状に拡大していく様子を観察しました。この時すでにSCP-XXX-JPの効果範囲は150kmにまで達しており、近隣の4つのコミュニティをその影響下に収めていました。コミュニティの住人らは起きた事態を把握できずに混乱しながらも、やがて遠方で燃えるSCP-XXX-JP-1の薄明かりに誘われる形で██村方面へ移動し始めました。このうちのいくらかは新たに投入された財団の増援部隊によって保護されましたが、ほとんどは道半ばの山中で死亡しているところを後に発見されました。
対策チームが現場に到着した時点で██村の住人は例外なくSCP-XXX-JPによる影響の最終段階にあり、村中の可燃物は放火されるか、もしくは解体されSCP-XXX-JP-1の火勢を強めるための燃料としてくべられていました。村の中心部では力の劣る子どもや老人を炎の中へと投げ込む者、恐怖心から炎へ身を投じる者などで溢れており、とりわけ行動的な一部の者らは村を離れ山林への放火活動に勤しんでいました。彼らは対策チームによる制止に応じることなく、強制的にSCP-XXX-JP-1から引き離そうとする試みは強烈な抵抗を招き失敗しました。
その後O5-█の許可が下りたことで、チームは██村の住人らの無力化に踏み切ります。村民らは財団エージェントたちから銃撃を受けてなお逃亡や隠れようとする様子を見せませんでした。彼らは最期までSCP-XXX-JP-1の前に留まり続け、結果として掃討は極めて容易かつ短時間で完了しました。
その後、財団の尽力と未明からの降雨によってSCP-XXX-JP-1の火災は消し止められ、幸いにも被害の拡大は最小限で食い止められました。仮に財団の対処があと数時間遅れていたならば、SCP-XXX-JPの影響は[編集済]にまで及んでいたと考えられています。
これら一連の出来事によって██名の民間人と██名の職員が精神に永続的な障害を負い、最終的な犠牲者数は民間人・職員合せ███名に上りました。
インシデントXXX-JP-██レポート
[データ削除]
SCP-XXX-JPを財団が収容してから██年の間に、計4度にわたる効果範囲の顕著な変動が確認されています。とりわけ20██年に発生した3度目の変動では一時的に████に達する効果範囲の拡大によって[データ削除]。これはインシデントXXX-JP-██を引き起こし、重大なセキュリティ違反の原因となりました。
こうしたオブジェクトの挙動は、世界の何処かに未確認のSCP-XXX-JP-1が存在する可能性を示唆しています。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-81██の完全な暗闇とした収容室に、完全に不透明な素材で作られたケース内に施錠された状態で安置されます。サイト-81██管理者の事前の承認なしにSCP-XXX-JPと接触することはその役職や権限に関わらず許可されません。当該施設においては常に十分な量の記憶処理薬の備蓄が徹底されます。SCP-XXX-JP-1への変異が確認された人物は機動部隊ま-4"三猿"によるすみやかな確保の後、手順XXX-EKに従い隔離されます。SCP-XXX-JP-αの流出、あるいは外部においてSCP-XXX-JP-1の出現が確認された場合、該当地域への記憶処理薬の広域散布が許可されただちに実行されます。
説明: SCP-XXX-JPはヒトを含む既知の生物と外見的な共通点を一切持たない未知の生命体を象った一体の模型です。SCP-XXX-JPは主に一般的なマネキン人形に用いられるものと同様の合成樹脂で構成されており、特筆すべき異常な点は発見されませんでした。
現在SCP-XXX-JPおよび後述のSCP-XXX-JP-1を被写体とした画像や映像、あるいはオブジェクトの外見に関して記述された文書など、その形体を把握することが可能な情報群はSCP-XXX-JP-αと総称されLK100機密として扱われています。
SCP-XXX-JP-αは、それを認知する人物に対し不定の確率と期間を経て肉体的な変異を発生させることが知られています。変異した人物(SCP-XXX-JP-1に指定)の外見的特徴は、それぞれ僅かな個体差が存在していることを除けばSCP-XXX-JPのそれとおおよそ一致します。また変異が発生する以前であれば、記憶処理によりSCP-XXX-JP-αに関する知識を抹消することで変異を未然に防ぐことが可能です。SCP-XXX-JP-1個体は自身に起こった肉体的変容を自覚することがなく、なおかつ変異後の容姿が人類として異常のないごく標準的な容姿であるといった認識を抱きます。こうした特性からSCP-XXX-JP-αの大規模な流出が起こった場合、CK-クラス並びにAK-クラス世界終焉シナリオが引き起こされる恐れがあります。また複数のDクラス職員にSCP-XXX-JP-1への変異現象を記録した映像を閲覧させたところ、すべて観察者がその変異プロセスを正確に把握することができませんでした。このことからSCP-XXX-JP-1への変異は現実改変や過去改変など、単純な物理的変容とは異なる要因によって引き起こされているのではないかといった仮説が立てられています。
SCP-XXX-JPは██県██市において近隣住民から“怪物が現れた”との通報により確保されたSCP-XXX-JP-1とともに、現場付近の廃墟にて3体のマネキン人形と並べられているところを発見されました。なおこの際すべての一般人の目撃者には隠蔽のためAクラス記憶処理が施されています。
その後SCP-XXX-JP-αが有する特異性が発覚するまでの間、収容任務と研究業務に携わったエージェント1名と研究員4名のSCP-XXX-JP-1への変異が引き起こされました。
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収容時に撮影されたSCP-XXX-JP |
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SCP-XXX-JP-1として隔離処置を受けるエージェント・██。不鮮明だが、明らかな外見的な異常が見て取れる。 |
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UGVに撮影されたSCP-XXX-JP█████km地点の映像
アイテム番号: SCP-XXX-JP - 真夏日の坂
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはその周囲にフェンスを張り巡らし、民間人を遠ざけてください。SCP-XXX-JP全域を覆う製造工場に偽装した収容施設が建造されており、そこではSCP-XXX-JP内部に投入されたUGVから送られる情報を監視する人員として最低3名以上の職員が常駐しています。またSCP-XXX-JP-α前方10cm地点には施錠可能な開閉扉を設置することで不慮の侵入を防いでください。SCP-XXX-JP内部に人間を投入する実験を行う際には通信機器及び進行距離を計測可能なメーター等を被験者に装備させ、無用な空間拡張効果の発現を防ぎます。現在SCP-XXX-JP内部への人間の投入実験は制限されており、これを実施する場合にはセキュリティクリアランスレベル3を超える職員2名以上の同意が必要です。
説明: SCP-XXX-JPは██県██群に存在する、124mに渡り道に沿う形で展開される幅2.6m、高さ4.1mの時空間異常領域です。外部から観察されるSCP-XXX-JPは異常の見られない緩やかな下り坂ですが、その始端に存在するSCP-XXX-JP-αに指定された縦4.1m×横2.6mの特定範囲をヒトが通過することでその異常性が表れます。SCP-XXX-JP-αを通過した人物(以下、被験者と表記)は特定の環境および景観への急激な変化を知覚するとともに、外部からはその姿が瞬時に消失する様子が観察されます。この現象が時空間が切り離された領域への侵入によって引き起こされるものなのか、あるいは特異空間への転移によって引き起こされるものなのかは判明していません。
SCP-XXX-JP内で観測される天候、気温、湿度、風速、雲量、太陽高度、および北東方向上空に残存する航跡雲などの情報は、オブジェクトの発見当日である200█年8月18日14時10分前後で環境が固定されている可能性を示唆しています。
SCP-XXX-JP内外から、SCP-XXX-JP-αを除いた道の横手や上方、あるいは地面の掘削によって脱出・侵入しようとするあらゆる試みは原理不明な圧力に阻まれ失敗しました。
SCP-XXX-JP内で被験者が坂を下る方向に"前進"するとき、距離を延伸する形での空間拡張が被験者を中心として引き起こされます。この拡張の度合いは被験者による個人差が認められており、SCP-XXX-JPの距離に対して抱く主観的な長さの差に応じて変動するものと考えられています。
またSCP-XXX-JP内を"前進"している移動物には時間の経過とともに通常起こる物理的、肉体的、精神的な変化が表れません。これに伴い進行中の被験者には距離感覚と時間感覚の極端な鈍麻が見られ、SCP-XXX-JPの異常性に関する知識を持たない場合、時間の経過や進行した距離の膨大さを認識できずに半永久的に行進し続けようとするという事態を招きます。
SCP-XXX-JP内部では財団にその存在が確認されてから今日に至るまで、1日あたり████kmを超える空間拡張が発生し続けており、これにより20██年現在その総距離は████████kmにも達すると見積もられています。
SCP-XXX-JPは200█/8/18、前日に外出した後に行方不明となった当時11歳の少年2名の捜索を行っていた男性によって発見されました。狼狽した様子で昼に変わる道があるとの証言を行う男性の情報を、付近に潜伏していた財団エージェントが捕捉し調査が行われました。また同日、付近に住む当時11歳の少年2名が消息を絶っており、この少年らとSCP-XXX-JPの異常性の関連性は不明です。
その後関係者にはクラスA記憶処理が施され、少年らの失踪に対してはカバーストーリー“水難事故”が適用されました。
補遺: 20██/█/██、SCP-XXX-JP内に投入され探査を行っていたUGVによってSCP-XXX-JP-αから████km地点にて複数の遺留物が発見されました。以降███kmに渡り点在するこれらの物品は、後の調査によって行方不明になった少年の一人である大野██の所持品であると断定されています。
以下、発見された遺留物の一覧となります。
- 空の500mlペットボトル2本(████地点、および████km地点)
- スナック・甘味など、空の菓子袋(████~████km地点)
- 麦稈帽、リュックサック、およびその内容物(████km地点)
- 空の水筒
- 携帯ゲーム機
- 市販の手持ち花火数点
- 玩具用ゴムボール数点
- 筆記用具数点
- 小学生向けの問題集数冊
- 大野██の手記
ブレーキを一度もかけずに走る。これにぼくだけがまだ一度も成功してない。ぼくは速いのはダメなんだ。だからかんらん車は大丈夫でも、ジェットコースターは苦手だ。
ぼくはブレーキをかけた。自転車は止まって
なにが起こったのかわからない。
いったいぼくは何年、この坂を下りつづけてたんだ?
となりを走っていたはずの███はもうどこにも見えない。
今は坂を反対方向にのぼっている。なのに、何時間も進んだのに、まったく進んでない。景色がぜんぜん動かない。
ぼくはこれからどうなるんだ
景色は動かないのに、捨てたペットボトルは遠ざかっていく。頭がおかしくなりそうだ。
いまはこのままのぼっていくしかない。こわくてふりむくことができない。
自転車のブレーキをかけたときの感覚を思い出す。きっと、この坂を下るとまたぼくはなにもわからないまままた何年も進み続けるんだろう。
それだけは絶対にいやだ
この坂道はいつまでも続くと思っていた。本当に、永遠に終わらないとだって感じていた。
██は今もこの坂を下り続けているんだろうか。バカみたいにさけびながら、ぼくと同じように、この坂道が永遠に続くと信じながら。
勇気をふりしぼってうしろを見る。おかしなところなんてどこにもない。ただの坂道。
それとも、もしかして、あいつはいつもそうだったように、この坂を下りきった先で途中でブレーキをかけてしまったぼくをバカにしてやろうと待ちかまえているんだろうか。
足がいたい。のどがかわいた。おなかがすいた。食べ物はもうない。飲みものもなくなりそうだ。
はやく家に帰りたい。
これをよんでる人 おかあさんとおとうさんにつたえてください
ウソをついてごめんなさい
かってに出ていってごめんなさい
ぼくをそだててくれてありがとう
ああ そうだ
今度こそ ブレーキをかけずこの坂をくだりきってやる
SCP-XXX-JPの内部空間は現在も両名の進行とともに拡張され続けているものと考えられています。内部空間の拡張を最小限に留めるため、200█/█/██をもってSCP-XXX-JP内への人間の投入実験は制限されてました。UGVによる両名への接触が成されるには最低██年を要すると見積もられています。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPが存在する洞窟周辺はフェンスで囲うとともに、警備員2名を常駐させることで民間人の立ち入りを防いでください。また必要に応じSCP-XXX-JP-1に対して精神カウンセラーによる問診が行われます。
瓦礫の撤去によるオブジェクト回収案は、崩落によるオブジェクト喪失のリスク、並びに対象が長期間にわたる安定した実質的収容状態にあることを踏まえ保留されています。
説明: SCP-XXX-JPは██県██市山中の崩落した洞窟内に存在する異常な実体の総称です。
SCP-XXX-JP-1は洞窟入口から23m地点に存在する成人男性です。SCP-XXX-JP-1の活動は洞窟壁面から剥離し崩れかける岩壁を押し留めることに終始しており、それにより対象は両手両足、および首筋から後背部にかけて絶え間なく損傷を負い続けています。これを除いて、対象が見せる特筆すべき行動は定期的に行われる祈祷文の歌唱だけです。
SCP-XXX-JP-1は少なくとも19██年にその存在が確認されて以降一切老化の兆候を見せることがなく、また食事や睡眠に対する欲求を通常通り有する一方でそれらを得られずとも生存することが可能です。また高い治癒能力を有しており、自身の負傷を通常の数倍程の速度で回復させ続けています。
なおSCP-XXX-JP-1の支えが失われ岩壁が倒壊した場合、洞窟全体におよぶ決定的な崩壊が引き起こされる可能性が専門家によって指摘されています。
SCP-XXX-JP-1の証言から、その起源は18██年代、潜伏しつつ当時の禁教の信仰を続けていた集団の一人であるとされています。財団が行った調査では近隣の村落において複数の住人が同時期の失踪したという対象の証言を裏付ける記録が複数確認されています。
対象: SCP-XXX-JP-1
インタビュアー: ██研究員
付記: インタビューは小型無人機に搭載された通信機を通して行われた。適宜現代語に翻訳済み。
<録音開始, 19██/█/██**>
██研究員:ではSCP-XXX-JP-1。あなたが置かれているこの状況に至るまでの経緯を簡潔に説明して頂けますか。
SCP-XXX-JP-1:その前にもう一度だけ。あなたは本当にはんじょう様ではないのですね。
██研究員:その問いには既に何度も返答したはずです。経緯の説明を、SCP-XXX-JP-1。
SCP-XXX-JP-1:すみません。
██研究員:声、ですか。それは具体的にどのようなものでしょう。
SCP-XXX-JP-1:"殉じろ""逃げるな"そして"支えろ"と。率直なものでしたが、私はすぐにこれは御前様の声に違いないと確信しました。確信とともに身体は自然に動きました。賜ったお言葉のまま、私は崩れかけていたこの岩へと縋り付きました。以来、私はここで殉じています。ずっと、ずっと、気が遠くなるほど。
██研究員:逃げ出したいと思ったことはなかったのですか。
SCP-XXX-JP-1:それはもちろん、数えきれないほど。ですがそのたびに仲間たちと祈りを唱え己の心を律しました。この苦難は私一人では到底耐えられなかったでしょう。
██研究員:あなた以外の存在が洞窟の深部にいることは私たちも把握しています。崩落が起こった際、何人がこの洞窟内にいたのですか。
SCP-XXX-JP-1:友人が二人、そして妻と、息子です。おそらく彼らも私と同じように御前様の声を聴き、それを信じて殉じ続けているのでしょう。だというのに、私一人が逃げ出すなどいったいどうしてできましょうか。
SCP-XXX-JP-1:なにより、御前様は最後にこうおっしゃられたのです。この苦難を100年耐えて乗り越えれば、ぱらいぞに召し上げてくださると。ゆえに私は仲間たちとともに、何があってもこの岩を支え続けると誓ったのです。
██研究員:しかしあなたたちがここに閉じ込められてから少なくとも2██年が経過していますが。
SCP-XXX-JP-1:[12秒沈黙]
██研究員:SCP-XXX-JP-1、聞こえていますか。応答してください。
SCP-XXX-JP-1:そんなはず…そんなはずは…
<録音終了, 19██/█/██**>
終了報告書: その後SCP-XXX-JP-1は小声で祈祷文を唱え始め、以降4日間に渡って呼びかけに対し無反応となりました。対象はその後も同様の話題に関して言及を拒んでいます。
SCP-XXX-JP-2は洞窟入口から41m地点に存在する全長25cmの木造の観音像です。SCP-XXX-JP-1らの信仰の対象として祀られていたものであると推測されており、礼拝堂として用いられていた洞窟の最奥部に配置されています。SCP-XXX-JP-2の周囲一帯は崩落にともなう落石で覆われていますが、簡易な神棚に納められていたことから対象に目立った損傷は見られません。
SCP-XXX-JP-2は7日に一度、数時間にわたって不明な原理により発声を行います。これまでに年齢・性別の異なる4種類の声音による発声が確認されており、その内容のすべてが祈祷文の歌唱です。
対象: SCP-XXX-JP-2
インタビュアー: ██研究員
付記: インタビューは小型無人機に搭載された通信機を通して行われた。
<録音開始, 19██/█/██**>
██研究員:SCP-XXX-JP-2の活性化を確認しました。これよりインタビューを開始します。
SCP-XXX-JP-2:[男性Aの声音]ああ、前はな前は泉水やなあ。後ろは高き岩なるやなあ。前も後ろも潮であかするやなあ。
██研究員:私の声が聞こえていますか。聞こえているのなら、これから行う質問に答えてください。
SCP-XXX-JP-2:[男性Bの声音]ああ、この春はな、この春はなあ。櫻な花かや、散るじるやなあ。また来る春はなあ、蕾開くる花であるぞやなあ。
██研究員:岩壁を支えている男性は崩落の際、何者かの声を聞いたと証言しています。それはあなたのものですか。
SCP-XXX-JP-2:[女性の声音]ああ、参ろうやな、参ろうやなあ。ぱらいぞの寺にぞ、参ろうやなあ。
██研究員:その男性は明らかに異常な性質を有していますが、それに関して心当たりはありますか。
SCP-XXX-JP-2:[男児の声音]ぱらいぞの寺と申するやなあ、広い寺とは申するやなあ。広いか狭いかは、わが胸にあるぞやなあ。
██研究員:その声はあなたの周りの者らの生前のものを模したものでしょうか。
SCP-XXX-JP-1:[微かに]ああ、しばた山、しばた山なあ。いまはなあ涙の先なるやなあ。先はなあ、助かる道であるぞやなあ。
██研究員:[沈黙]
SCP-XXX-JP-2:[4種の声音による混声]ぱらいぞと申するは、天月星、もろもろのはんじょう、びわとにかぎり、おのれの喜びこうむる処なり。
██研究員:あなたは自分の身を守るためあの男性を利用しているのですか。
SCP-XXX-JP-2:[4種の声音とSCP-XXX-JP-1の混声]いんへりどと申するは、大地な底に、暗き処に、かの天狗に、もろもろ天狗にまた天狗のしたがい、人間のありま限りなし、苦しみ受くる処なり。
██研究員:ダメだなこれは。インタビューを終了する。
<録音終了, 19██/█/██**>
アイテム番号:SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル:SCP-XXX-JPの周囲20kmはフェンスで封鎖され、常に武装した警備員による定期巡回と監視が行われます。またこの領域上空は常時飛行禁止空域とみなされ、どのような形であろうと許可なく侵入を試みた存在に対しては武力行使が認可されています。SCP-XXX-JPの様子は常時記録され、異変が確認された場合にはすみやかに連絡が行われ機動部隊れ-2『揺り籠』の出動、あるいは対象エリアへの空爆が行われます。SCP-XXX-JPに対する実験はO5の承認を受けた場合にのみ許可されます。
説明:SCP-XXX-JPは██県の山間部に存在する、SCP-XXX-JP-1、SCP-XXX-JP-2、SCP-XXX-JP-3の三つの要素から成るオブジェクトです。
SCP-XXX-JP-1は直径約8.6mの淡く発光する白色の球体です。SCP-XXX-JP-1は未知の原理で地上から約6.7m上空に浮遊しており、反作用による移動などが一切見られないことからその場で強力に固定されていると推測されています。SCP-XXX-JP-1からは常時数百もの長大な人間の腕が生え出ており、周辺で活動する存在を無差別かつ効率的に破壊・殺傷します。攻撃手段は平手・拳による殴打といった原始的なものがほとんどですが、それらの最大速度は時速████kmにも達するため極めて高い殺傷力を発揮します。手のサイズはおよそ0.8mから3mまで様々ですが、腕の長さは自由に伸縮しその攻撃範囲は最大で約80m無制限であると推測されています。一定以上の損傷を受けた腕は崩れ落ちて消滅する様子が確認されていますが、即座に新たなものに生え変わるためSCP-XXX-JP-1は一定の攻撃能力を維持します。
SCP-XXX-JP-2はSCP-XXX-JP-1の直下の地上に存在する直径約6.3mのオブジェクトです。その外観は黒を基調としたハス科の花に酷似していますが、これが巨大な生花であるのか精巧に形を模しただけの造花であるのかは判明していません。SCP-XXX-JP-2はその花床にあたる部位から種子に似た物体を非常に早いペースで途切れることなく射出し続けています。それらはSCP-XXX-JP-2から30mから50mほど離れた地面に落下すると速やかにSCP-XXX-JP-3へと成長し活動を開始します。
SCP-XXX-JP-3はSCP-XXX-JP-2から射出された物体を起源とした生物群です。成長後のSCP-XXX-JP-3はヒトを含む哺乳類、鳥類、魚類、爬虫類、昆虫類、甲殻類、クモ類などといった様々な生物に似た姿をとりますが、ほとんどの場合通常では考えられない巨体や奇形といった明らかな異常を有しています。ほとんどのSCP-XXX-JP-3は発生と同時にSCP-XXX-JP-1SCP-XXX-JP-2に向かって接近を試みますがSCP-XXX-JP-1による妨害を受け数秒足らずで殺害されます。致命的損傷を受けたSCP-XXX-JP-3は黒い泥状の物質に変化した後、形跡を残さず消滅します。
これらの三要素が組み合わさることで、オブジェクトを中心とした半径80mほどの勢力圏でSCP-XXX-JP-1が常時百を超えるSCP-XXX-JP-3を殺傷しつつSCP-XXX-JP-2が減少分を補充するという均衡を維持します。少なくともこの状態はSCP-XXX-JPが財団の管理下に置かれた██年前から継続しています。
実験XXX-1 - 日付19██/██/██/
内容:遠隔操作型の無人装甲車によるSCP-XXX-JP勢力圏への侵入。
結果:SCP-XXX-JP中心部から約65m地点にまで接近した時点でSCP-XXX-JP-1からの攻撃を受け、装甲車は破壊され機能を停止した。
付記:実験から20分以内にSCP-XXX-JP勢力圏からSCP-XXX-JP-3が脱する事例が三件相次いで発生した。三体のSCP-XXX-JP-3は、いずれも瀕死の重傷を負いながらも相対した機動隊員に対し強い敵意を示し攻撃を行った。研究のため捕獲が試みられたが負傷と拘束を省みず激しい抵抗を見せたためその場で焼却処分された。死体は他と同様に消滅した。
分析:SCP-XXX-JP-1の攻撃はSCP-XXX-JP-3に限らず、付近で活動する存在すべてに対し行われるようだ。加えてSCP-XXX-JP-3がSCP-XXX-JP-1の攻撃から逃れ勢力圏から脱するのは初めてのケースであり、当然この実験と無関係ではないと思われる。引き続き実験を継続する。
実験XXX-2 - 日付19██/██/██/
内容:Dクラス職員による無作為に選択したSCP-XXX-JP-3への狙撃。
結果:行われた計5度の狙撃はいずれも命中し、標的となった5体のSCP-XXX-JP-3はそれにより負傷、もしくは死亡した。
付記:実験からおよそ4分後、SCP-XXX-JP-1の腕の一本が勢力圏から脱し、およそ130m離れた地点で実験に参加したDクラス職員2名と、さらにその後方100m地点で待機していた機動隊員1名を殺害。その後腕はすぐさま勢力圏に戻り通常通り破壊活動に戻った。
分析:SCP-XXX-JPの三要素は完全に近い拮抗状態にあり、外部からの干渉で一要素が減耗することで別の要素に生じた余力が勢力圏外に向くという仕組みなのではないだろうか。引き続き実験を継続する。
さらなる実験の申請は却下します。現状で安定している当オブジェクトに対し干渉する危険性を鑑み、これ以降行われる実験は観測実験に限定するものとします。- サイト管理者
補遺XXX-1:19██年、監視チームによって行われた高性能熱線映像装置による観測でSCP-XXX-JP-2内に体を丸めた態勢で横たわる身長90cmほどの人間らしき存在が確認されました。その体温や呼吸動作などの挙動から対象は深い睡眠状態にあると推定されていますが、その他詳細な情報は得られていません。
補遺XXX-2:20██年以降、SCP-XXX-JP-1の攻撃能力とSCP-XXX-JP-2によるSCP-XXX-JP-3の供給能力の双方は同率の弱化・減少傾向を見せています。これが同じペースで継続すると仮定した場合、SCP-XXX-JPの全機能は20██年までに失われると考えられています。またこれとほぼ同時期からSCP-XXX-JP-2内に存在する人型存在に僅かな体温の上昇、筋肉の痙攣などといった、睡眠段階の移行による覚醒レベルの上昇と思われる状態の変化が認められています。
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アイテム番号:SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはその周囲30mまでを専有面積とした収容施設を製造工場に装い建造し収容されます。SCP-XXX-JPの全面は厚さ30mmの鉄板を被せ、覆いが外れないよう両端を溶接し固定してください。出入り口には常に武装した警備員2名を常駐させ侵入に備えさせます。実験XXX-4の結果を受けて、保安上の理由から現在SCP-XXX-JPを用いた実験は禁止されています。
説明: SCP-XXX-JPは██県██市に存在する幅約5.8m、長さ約10.3mの公道です。SCP-XXX-JPには黒灰色の石畳が敷き詰められ、その中に黄橙色に染色された石畳が点在するという形で舗装されています。この道路は元々コンクリートで舗装されていましたが、20██年8月に行われた工事で現在の形へと整備されました。この工事を依頼した地方自治体、工事を請け負った施工業者、SCP-XXX-JPを構成する材質、そのいずれにも異常な点は見当たらず、SCP-XXX-JPがなぜこのような異常性を発現させたのかは不明です。
SCP-XXX-JPはこの道を徒歩で通行した人間がその進行方向に関わらず染色された石畳の部分のみを踏み場所として渡りきった場合、その人物(以下、被験者)に対して永続的な異常性を発現させます。被験者がSCP-XXX-JPの染色された石畳以外の部位に触れた場合、衣服などの装備品を含めた接触部分が別空間へ転移されます。その際に被験者は一切の抵抗や違和感などを覚えず、「地面をすり抜けていくようだ」と評します。この特性により被験者はSCP-XXX-JPを通常通り進行しようとすると足場を失ったかのように“転落”してしまうため、唯一接触が可能な染色された石畳部分を飛び移るようにして進まなければならなくなります。
SCP-XXX-JPが引き起こす転移には二つの段階が存在し、まず被験者の装備品を含む体の一部でも地表に出ている場合、その転移は完全な暗闇の異空間へ行われます。この空間での生命活動に問題はなく、また転移した部位を地表に引き戻すことで問題なく復帰が可能です。しかし装備品を含む被験者全体が異空間に入り込んでしまった場合その時点で復帰は不可能となり、同時に被験者は地球上のいずれかの地点へと再転移します。その転移先は深海や砂漠、高空、密林といった、いずれも人間が生存することが困難な場所であることが実験で確認されています。
SCP-XXX-JPは20██年9月、この経路を通学路に指定する██小学校の児童██名が下校時に一斉に行方不明になるという事件がきっかけとなり財団に発見されました。現在行方不明となった児童の所在は不明です8歳の女児1名のみ明らかとなっています。
SCP-XXX-JPの異常性を発現させたDクラス職員を用いて実験を行う。Dクラス職員にはGPS追跡装置を装備させる。
実験XXX-1
被験者:D-XXX1
内容:自転車に乗車させた状態でSCP-XXX-JPに進入させる。
結果:D-XXX1は自転車ごと転落するようにして消失。GPS測位により対象の█████の山頂付近への転移が確認された。
分析:乗り物も服装などと同じく被験者の一部とみなされるらしい。その後の乗用車を用いた実験でも同じ結果が得られた。染色された石畳部分に乗り上げ落下はしなかったが。
実験XXX-2
被験者:D-XXX2、D-XXX3
内容:両者を背中合わせに拘束した状態で転移させる。
結果:D-XXX2は南極大陸█████湖付近、D-XXX3は█████島████火山の火口付近への転移が確認された後、即座に反応がロスト。
分析:その状態にかかわらず、一人一人が別の場所へと飛ばされるらしい。拘束がどのように分離されたかは気になるが、それを確認するのは無理そうだ。
実験XXX-3
被験者:D-XXX4
内容:D-XXX4に命綱を装着しクレーンで降下させ転移させる。
結果:D-XXX4の頭頂部まで転移が完了した時点で命綱は切断される。██████への転移が確認されたが、その4分後に反応がロスト。
分析:命綱は装備品とみなされないようだ。どのような基準でそうした判断が行われているかは不明。
実験XXX-4
被験者:D-XXX5
内容:落下地点と転移先の関連性を確認するため、D-XXX4とまったく同じ地点にD-XXX5を降下させる。
結果:D-XXX5はサイト-81██内のSCP-███の収容室内に出現。D-XXX4はSCP-███の[編集済]を受け死亡。
分析:この結果を受けて本部と各国支部に調査確認を依頼した結果、行方不明になっていた児童の一人である████の所在とその生存が確認された。しかしあれでは…何の救いにもならないな。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは低危険性植物収容ユニットの温室内で栽培し、定期的な給水と植え替えを行ってください。
説明: SCP-XXX-JPはアロエ科アロエ属に分類される多肉植物の一種です。SCP-XXX-JPの葉内部のゼリー質には未知の有機化合物が含まれており、これをヒトを含む脊椎動物が経口摂取した場合即座に昏睡状態全身麻痺状態に陥ります。これは摂食者の神経細胞・筋繊維細胞膜へ作用し骨格筋の動きを反射レベルまで抑制しているものと考えられていますが、その強い毒性に反して心筋・呼吸筋を始めとする生命活動に必須な一部機能は低下に留まり停止には至らないためこの効能自体によって死亡することはありません。なおDクラス職員を用いた臨床実験での脳波測定の結果から、対象の意識・痛覚は麻痺状態にあっても明瞭な状態を保っていると推測されています。
SCP-XXX-JPは水分補給などを目的に自身を摂食し麻痺状態に陥った生物に対して特異な挙動を見せることが知られています。SCP-XXX-JPは横たわる対象にもっとも近い葉へ内在する水分を集約させると同時に、気孔からゲル状の粘液として分泌させ始めます。この粘液は空気と反応することで一般的なステンレス程度の硬度にまで急速に硬化しながら外皮をコーティングし、一時的に極めて鋭利な刃物に似た形状をとります。その後自重で垂れ下がることで対象の表皮を切開し、小型の生物であれば殺害、大型の生物であれば出血を引き起こし、それを養分として利用していると考えられています。
体内に取り込まれた麻痺毒はその後の時間の経過とともに分解され、対象はおよそ140分から180分ほどで麻痺状態から回復します。しかしこの過程で新たに生じる化合物の組成は財団で用いられるクラスA記憶処理薬に含まれる[編集済]に類似しており、これは対象に意識の混濁に加え、麻痺状態間・およびその前後短時間の記憶の喪失をもたらします。結果、対象は負傷の原因がSCP-XXX-JPにあることを学習できず、以降もSCP-XXX-JPの摂食を繰り返すことで定期的に養分を供給し続けることになります。なおSCP-XXX-JPの粘液は一般的なアロエベラのそれより優れた消毒・殺菌作用、および治癒促進効果を有しており、これは負傷個所からの感染症などによる死亡を予防しています。
現在、財団によってすべてのSCP-XXX-JPの野生種が収容、もしくは駆除されています。
SCP-XXX-JPの存在は2006年、“マナによる慈善財団(MCF)”との関係が疑われる██県内のNGO団体施設を襲撃した際に明らかになりました。財団の機動部隊が踏み込んだ時にはすでに施設は引き払われており無人でしたが、破棄された記憶媒体から一部のデータファイルの復元に成功したことでSCP-XXX-JPの生態・生息地といった情報が得られ当該オブジェクトの収容に繋がりました。
復元された文書(一部抜粋)
[広範なデータ欠落]により1997年にスーダン北部の砂漠地帯において発見され、前述の特性から現場では手術草(surgical weed)などと呼ばれ非常に重宝されています。これは医療物資の不足に悩むウクライナ、シリア、パキスタンなど計11ヶ国で帝王切開術、虫垂切除術、重篤な外傷手術、その他全身麻酔が求められる[データ欠落]そして即席の医療器具として転用できるという有用さも含め広く[データ欠落]手術前後の記憶に僅かな混乱が見られる以外に目立った副作用は報告されておらず、また中毒性も僅かです。事実、これまでに6000を超える外科手術で使用されてきたという実績に裏打ちされた[データ欠落]にせよ、これからも我々の活動を行う上での大きな助けとなってくれることは間違いないと言えるでしょう。
補遺: MCFに対して当該オブジェクトの実験データを一部譲渡・開示することによりSCP-XXX-JPの自主的な放棄を促す案は、機密保持の観点から承認されていません。
アイテム番号: SCP-XXX-JP - 触れ合える男
オブジェクトクラス: SafeEuclidSafe
特別収容プロトコル:
SCP-XXX-JPは国内最大のDクラス職員収監施設中央部に位置する標準的人型収容ユニットにて収容されます。収監施設内に存在するDクラス職員は常時600名を下回らないよう調整してください。週に1度Dクラス職員への聞き取りによって、特異性の影響が及ぶ人数の計測が行われます。SCP-XXX-JPには精神カウンセラーによる問診を週に1度、映像モニターを通して受けさせてください。
SCP-XXX-JPはサイト-81██区域内山中に建設された特別収容施設にて、薬物により昏睡させられた状態で収容されます。施設内で生育される生物はリストXXX-OZに含まれるものから最低4種、それぞれ3000体を常時下回ることのないよう調整してください。年に一度、施設周辺の環境調査が行われ、必要と判断された場合にはリストXXX-OZへの新たな生物種の追加が許可されます。
説明: SCP-XXX-JPは身長1.68m、現在██歳の男性です。本人の証言と調査から、██県███市に在住していた████氏本人であることが確認されています。
SCP-XXX-JPは自身と、自身にもっとも近い位置に存在する12名複数のヒト、その双方を対象として皮膚感覚および受容細胞に限定した異常現象を常時引き起こすことが知られています。SCP-XXX-JPの特異性の対象となった者らは40~250㎠ほどの範囲で、体表のいずれかの部位がSCP-XXX-JPの体表の不定の部位と接触する感覚を覚えます。この触覚的異常はそれに対応する形でSCP-XXX-JPにも表れ、そのためSCP-XXX-JPは常時複数個所を触れられているかのような感覚に見舞われています。この部位や面積、形状は数分から十数分で不規則に変化し、接触部位が重複した場合SCP-XXX-JPは「同一の個所を複数人に同時に触れられているような」感覚を報告します。また接触する部位に応じて、体表に生える体毛、汗や唾液などの体液、体温差による冷温などといった質感も知覚しますが、両者間に粘液や熱エネルギーの移動は認められていないことからあくまで感覚的な異常にすぎないと考えられています。この影響は如何なる服飾品、遮蔽物、遠距離で両者を隔てても防ぐことが不可能であり、現在までに有効な対抗策は見つかっていません。
インタビュー記録XXX-001(19██/██/█)
対象: SCP-XXX-JP
インタビュアー: █博士
付記: インタビューは収容から3日後、映像モニター越しに行われた。SCP-XXX-JPには現状が治療のための措置であると伝えられている。
<録音開始>
█博士:こんにちは、██さん。気分はいかがですか。
SCP-XXX-JP:どうも先生。気分は…正直良くないです。今日もろくに眠れなかった。ただ今はマシです。この感覚が眼や口の中にくると、本当にきつい。
█博士:その感覚ですが、改めてどのようなものか説明していただけますか。
SCP-XXX-JP:[顔を顰め体を揺する] 体のあちこちをベタっと触られているような感覚です。骨ばってたり、湿ってたり、[左肩に触れ] あとここのは毛が生えてるな…とにかくそんな感じで、人のどこかしらがへばり付いてる感触が止まらない。先生、俺の体はいったいどうなってるんですか。
█博士:それを確かめるため今こうしてお話を伺っています。では██さん、その原因に何か心当たりはありませんか。あなたがそうなる前に起きた出来事、見たもの、会った人、思い当ることがあれば些細なことでも構いません。
SCP-XXX-JP:心当たりと言われても [5秒沈黙] 本当に、朝起きたらこうだったんです。前日だって少し飲みすぎたくらいで…あ、あと女の人と会いました。変わったことといえばそれくらいです。
█博士:女性?
SCP-XXX-JP:知らない人です。だから自分でも珍しいなって思うんですけど…俺、なんていうか、これはあまり話したくないことなんですけど [3秒沈黙] とにかく良い人との出会いに恵まれない人生だったんですよ。だから昔からずっと人が苦手で…なのに会ったばかりのその人には何故かそんな身の上話をぶちまけてたんです。でも本当に話をしただけですから、関係ないとは思うんですけど。
█博士:続けてください。
SCP-XXX-JP:彼女はそんな俺の話を何十分も、うん、うん、って頷きながらひたすら聞いてくれて、だからまともに話してすらないな…それで話し終わった後、最後に手を握られたんです。なんか俺、分かんないけどそれで泣いちゃったんですよ。そしたら彼女は笑って「君が欲しかったのはこういう触れ合いだったんだね」って。
█博士:ふむ。
SCP-XXX-JP:本当に、ただそれだけです。かなり酔ってたから、もしかしたら夢かなんかだったのかもしれないですし、それより、あの、先生。
█博士:なんでしょう。
SCP-XXX-JP:俺、俺、彼女と話して、もしかして変われるのかなって思ってたんです。彼女みたいな優しい人もいるんだって。俺が彼女みたいに思いやれる人間になれば、もうちょっと良い人生になるんじゃないかって。だからあの日帰り道で吐いてた酔っ払いには水飲ませてやったし、公園で猫や鳥にエサやってみたり、寝る前に部屋にでかい蜘蛛が出たけど逃がしてやった。それで得なことなんて何もなかったけど、や、やってみたら意外と気分良かったんですよね。[4秒沈黙] だったのに突然こんな、体おかしくして…これ、治りますよね、先生。
█博士:今はまだなんとも。ですがいま私たちも全力で治療法を模索しています。ですので、あまり思い詰めないようにしてください。
SCP-XXX-JP:ありがとうございます、先生。本当に、どうかお願いします。
<録音終了>
終了報告書: 言及された女性に関して、SCP-XXX-JPの証言や調査から有益な情報を得ることはできなかった。SCP-XXX-JPはその容姿などの詳細を述べることができず、飲食店でSCP-XXX-JPを見かけた者はいてもそれに付き添う女性を記憶している者はいなかった。この結果がSCP-XXX-JPの言うとおりその存在が酩酊の産物であることを示しているのかは不明。調査は引き続き行われる。―█博士
情報更新: 19██/█/██、SCP-XXX-JPが影響を与える対象の数が収容当初の12名から21名へと増加しました。以降この特異性の拡大は継続的に進行したため、収容プロトコルの更新と対象のEuclidクラスへの再分類が行われました。
現在SCP-XXX-JPが影響を及ぼす規模は400名を越え、このまま異常性の拡大が進行し続けた場合3年以内にその数は1000にも達すると予想されます。Dクラス職員を用いた封じ込めは限界に近づいており、状況の改善が見られない場合にはDクラス職員の調達がより容易な地域への移送、Keterクラスへの再分類、あるいは対象の終了までを含めた措置の検討を要請します。―█博士 20██/█/██
要請を承認する。―サイト-81██管理者 20██/█/██
情報更新: 20██/█/██、収容施設上空で観察された鳥類の異常な挙動から、SCP-XXX-JPの特異性がイエネコ(Felis silvestris catus)、ハシブトガラス(Corvus macrorhynchos)、イエユウレイグモ(P. phalangioides)など、ヒト以外の一部の生物種にも及んでいることが判明しました。こうした事実とインタビュー記録XXX-001を併せ、SCP-XXX-JPの影響を受ける対象はSCP-XXX-JPと直接接触することを条件として選択されているのではないかといった仮説が立てられ後の実験で証明されました。これを受けて収容プロトコルの大幅な更新が行われ、20██年付けで対象はSafeクラスへと再分類されました。
現在特異性の対象となる生物種は収容を容易かつ確実なものとするため、上記のものに加えハツカネズミ(Mus musculus)、ヨーロッパイエコオロギ(Acheta domestica)、ギンブナ(Carassius auratus langsdorfii)などを始めとする40種以上が追加されています。その詳細はリストXXX-OZより参照してください。
情報更新: SCP-XXX-JPはその特異性の影響から軽度の鬱症状を呈しており継続的な治療が行われてきましたが、現形式の収容プロトコルへの変更とともにその精神状態は急速に悪化しました。そのためSCP-XXX-JPは20██年をもって常時薬物による昏睡状態に置かれることが決定されました。