igarasiの本棚

tale「タイトル考え中」下書き

妻が失踪した。もう十日が経とうとしている。彼女と彼女の身の回りだけがすっぽりと消失してしまったかのようだ。何か思い当たる節もない。今日、妻が開けてはならないと言っていた引き出しから手紙を見つけた。手がかりがあるかもしれない。開けてみる。

私があなたに隠していた10のこと。
ところどころ右上に上がる、彼女の文字でその文章は始まっていた。

1.実は私はタバコが苦手だったの。頭痛がするから。けど、あなたはきちんと私に配慮してくれていたし、何よりあなたがタバコを吸う姿は好きだったの。

2.あなたは誕生日にいつもテディベアをくれていたわね。でも実はあんまり好きじゃないの。でも、ニコニコの笑顔でテディベアを渡すあなたに言えなかったわ。部屋にあなたの思い出といっしょにすわる彼らを見るのも嫌いじゃなかった。

3.本当はお揃いのペアリングをつけたかったわ。センサーに反応するし、装身具の苦手な私を思ってのことよね。少し後悔してる。

4.甘いものが好きなわけじゃない。脳の活動のためとあなたが買ってくるものが美味しそうなだけよ。甘党はあなたでしょう?

5.朝、開いた新聞が右手に届くようにしてあったでしょ。実は私がしていたのよ。褒めてよ

6.いつもすっぴんだと思ってたでしょ。ちゃんと化粧してたのよ。でも新しい口紅ってごまかしてたけれど、急に唇の色が濃くなったの。あれは何でかしら。

7.私は靴嫌悪者じゃない。だから裸足も本当は嫌だった。けど、朝起きるとなぜか足の裏が汚いから、他に思いつかなかったのよ。本当よ。

8.食欲がなかったのは本当。でも不思議と満足感はあったの。けどいつも生臭い嘔吐感が胃からせり上がってた。ダイエットってのもウソ。私はスレンダーな体型なんかに憧れてない。

9.急な調査旅行もあれは嘘。カモフラージュよ。あなたに危害が及ぶ前に私はあなたから離れなきゃ。しっかりして、あなたに辿られないようにきちんと行くわ。

10.開けてはいけないと言った引き出しも嘘。実は何も入っていない。本当に空っぽ。この手紙を入れるまではね。

お別れを言えなくて、ごめんなさい。
愛しているわ。あなただけを。