- ネズラ
- 秘匿作戦(改稿前)
- 伝言ミーム(ボツ案)
- 支離滅裂な告悔室(メモ)
- 世界終末時計
- SCP・Taleアイデア一言メモ
- Tale おせっかい
- Tale 必要知原則
- Tale SCP-326-JP 回顧
- 来栖研究員のメモランダム
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Kether- Keter
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは現在収容されていません。予想される20██年のSCP-XXX-JP襲来に対し、財団はWHO並びに各国政府に対し「大規模鼠害」をカバーストーリーとした迎撃体制を構築させて下さい。NBC含むあらゆる手段が必要と十分に認識させることが死活的に重要です。
説明: SCP-XXX-JPは平行世界踏破能力を獲得し、集団行動性を持つドブネズミ(学名:Rattus norvegicus)の集団です。SCP-XXX-JPはあらゆる物質を消化し活動エネルギーとできる消化器官と代謝系を持ちます。代謝効率は悪く、そのため多量の食料を必要とします。また、SCP-XXX-JPは非常に多産で、現在の総数は10×██匹と推定されます。
当初SCP-XXX-JPは第██平行世界の日本生類創研によって創りだされたオブジェクトでしたが、脱走しその後第██平行世界の財団に収容されました。しかしSCP-XXX-JPの特性を完全に把握する前に大規模収容違反を起こし、その飽くなき食欲と多産性により第██平行世界の地球におけるあらゆる地上物質を喰らい尽くし、XK-クラス世界終焉シナリオをもたらしました。その後SCP-XXX-JPは犀賀派の創造したSCP-YYY-JPとの交雑を経て、平行世界を移動する能力を保有しました。これにより、SCP-XXX-JPは第██平行世界をはじめとする██個の平行世界をXK-クラス終焉に追いやっています。
SCP-XXX-JPの出現直前には、かならず「警告者」と仮に呼称されるSCP-XXX-JP-1が現れ「逃げて!」と叫びながら何処かの並行宇宙へと転移していきます。その直後から数ヶ月の間に、SCP-XXX-JPはSCP-XXX-JP-1の出現した世界に現れます。SCP-XXX-JP-1の「警告」とSCP-XXX-JPの出現が同じルートをたどっていることから、財団平行世界監視部門は「SCP-XXX-JPの本来の目標はSCP-XXX-JP-1の追跡・捕食ではないのか」という仮説を立てています。
補遺1:SCP-XXX-JP-1が20██/██/██に[編集済]に出現し、「逃げて!」と告げた後、他の並行宇宙へと転移しました。これにより、基底現実世界もSCP-XXX-JPの脅威に晒されていることが判明しました。
――大規模脱出が不可能な以上戦うほかないが、ヴェール・プロトコルは依然として守られ続ける。GOCのピチカート・プロシージャ適用に関しては最大限の努力を持ってこれを阻止する。O5-█――
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはその性質のため現在収容されていません。財団は、SCP-XXX-JPが接触する可能性のあるすべての米陸軍退役軍人に対し、米退役軍人省の重篤な社会不適応者への常時監視プログラム「アイビー作戦」1により監視を徹底してください。SCP-XXX-JPが当該作戦対象である退役軍人に接触を図った場合、直ちに最寄りのフィールドエージェントならびにサイト-21に待機中の機動部隊シータ-4(「ライ麦畑の捕獲者」)によりSCP-XXX-JPの確保・収容・保護を試みてください。
説明: SCP-XXX-JPは米陸軍特殊作戦群大佐の正装を着た、S.████陸軍大佐と名乗る外見年齢50歳前後の中肉中背の人型実体です。SCP-XXX-JPは米陸軍に所属していた兵士のうち、過去█年以内の失敗した作戦によって軍を退役せざるを得なくなり、その結果として重篤な社会不適応を示す人物の前にランダムに姿を現し、説得対象とします(以下説得対象となった人物をSCP-XXX-JP-1とします)。
SCP-XXX-JPは、SCP-XXX-JP-1に対し、先の作戦は失敗したがそれはSCP-XXX-JP-1のせいではないこと、次の作戦にどうしてもSCP-XXX-JP-1の力が必要であること、SCP-XXX-JP-1の陥っている窮状に対し同情を禁じ得ないこと、しかしその窮状は次の作戦に成功すれば改善され、国家はSCP-XXX-JP-1にふさわしい敬意と報酬を払うことを、紳士的かつ粘り強い態度で説得します。SCP-XXX-JPによる説得にはミーム的影響力がないことが判明しています。SCP-XXX-JP-1が説得に同意した場合、SCP-XXX-JP及びSCP-XXX-JP-1は同時かつ瞬間的にその所在地から消滅します。同時にGPS、マイクロフォンも機能を停止します。SCP-XXX-JP-1がSCP-XXX-JPの説得を拒否し続けた場合、SCP-XXX-JPは2時間ほどで説得を諦め、SCP-XXX-JP-1の前から徒歩で立ち去り、1km程度を歩いた後消失します。
SCP-XXX-JPがSCP-XXX-JP-1に提案する作戦は、現在の世界における米陸軍の展開と一致した地域における、極めて危険であるが高い価値を持つ秘匿作戦である、ということのみが判明しています。これについてSCP-XXX-JPは、SCP-XXX-JP-1が説得に応じた場合、作戦の具体的内容を説明するとSCP-XXX-JP-1に発言します。多くの場合、SCP-XXX-JP-1はこの発言を受け入れます。なお、200█年から、米陸軍が介入している紛争地域で、米陸軍装備ですが、米陸軍とも米陸軍が軍事役務を外部委託している民間軍事企業とも異なる軍事勢力による作戦行動が確認されるようになりました。これら作戦行動には必ず[削除済][編集済]などの戦争犯罪が含まれています。財団はこれら作戦行動とSCP-XXX-JPの関連を調査中です。
補遺1
財団は数次に渡りSCP-XXX-JPの捕獲を試み、一度はサイト-██に収容することに成功しましたが、インタビューの直後、SCP-XXX-JPはサイト-██から消失しました。以下はその際のインタビュー記録です。
対象: SCP-XXX-JP
インタビュアー: ██博士
付記: このインタビューはSCP-XXX-JPが自発的に応じたものと推定されるインタビューです。
<録音開始, 200█/██/██>
██博士:それでは録音を開始します。SCP-XXX-JP、あなたはS.████大佐と名乗っていますね? そのような人物は米国陸軍には存在しませんが。
SCP-XXX-JP:名前は秘匿作戦上の偽名にすぎない。しかし私は合衆国陸軍の軍人精神を体現していると考えてもらって構わない。
██博士:それはいかにも大仰な話に聞こえるのですが。
SCP-XXX-JP:私は数知れぬ兵士たちが戦場で傷を負い、故郷でも認められず、誇りも希望も失った状態にある事を看過できない。だから彼らに、兵士として生きられる場所と任務を提供し、彼らが国家のために再び報いられるように計らっているのだ。名誉と忠誠と義務。それこそが我々の拠り所だからだ。
██博士:本題に移りましょう。あなたは一体何者で、あなたの提案を受けた兵士たちは一体何処に行ったのですか?
SCP-XXX-JP:私が何者であるか、兵士たちが何処に行ったのかについては秘匿作戦である以上、言及できない。ただ、我々は合衆国の平和を守るための必要悪として、秘匿作戦についているということは理解してもらいたい。
██博士:それらの作戦はなぜ秘匿されなければならないのですか?
SCP-XXX-JP:合衆国の平和を守るには公の武力行使や外交努力だけではなく、公にできない世界の裏側で、汚れ仕事を引き受ける人間がどうしても必要なのだ。世界は常に混沌に満ちている。ときには、混沌に立ち向かうため、自らも混沌となるべき時もある。君たち「財団」も、そうした必要悪の原理で動いていると、私は理解している。
██博士:なぜ我々財団のことを知っているのですか?
SCP-XXX-JP:それも秘匿事項だ。
<録音終了, 200█/██/██>
終了報告書: SCP-XXX-JPはこのインタビュー直後サイト-██から消失しました。
補遺2
以下はSCP-XXX-JPと接触しながらも説得を拒否した、元米陸軍特殊作戦群所属████退役少尉のインタビュー記録です。
対象: ████退役少尉
インタビュアー: エージェント・シュシュニコワ
付記: インタビュー時現在、████退役少尉は清掃作業員の仕事と退役軍人年金で辛うじて生活している状態です。
<録音開始, 200█/██/█>
エージェント・シュシュニコワ:それでは録音を開始します。
████退役少尉:ああ、なんでもいい、聞いてくれ。
エージェント・シュシュニコワ:あなたはS.████陸軍大佐と接触しながら、その説得を拒否しました。なぜですか?
████退役少尉:あいつは軍務にさえ復帰すれば過去の汚名は灌がれ、国家は俺に敬意と代償を払うと言ってきた。しかし俺はそうしたキレイ事で踊らされてきた連中を沢山見てきた。
エージェント・シュシュニコワ:それだけですか?
████退役少尉:いや、それだけじゃない。秘匿作戦というのが……気にいらなくてな。
エージェント・シュシュニコワ:秘匿作戦、と、いいますと?
████退役少尉:俺は秘匿作戦の一環で、グアンタナモでテロリスト容疑者たちの尋問に関わったことがある。ろくな証拠もない相手に、頭に袋をかぶせて水責めするんだ。裸にして四つん這いにし、動物みたいに扱ったことや[削除済]したこともある。国家は何かというと名誉と忠誠と義務を尊ぶが、そんな仕事の何処に名誉があって、何処に忠誠心が抱けて、何処に義務感が持てると思う?
エージェント・シュシュニコワ:ですがそれは必要悪なのではありませんか? 少なくとも米国にとっては?
████退役少尉:いや、違うな。俺が見た……そしてやったのは……。必要悪をお題目にした、際限ない人間の堕落だったよ。自分より弱い立場の人間をいたぶるサディストに、人間は容易に堕ちてしまうんだ。あの後異動になったアフガンでの秘匿作戦でも、俺達は[削除済]や[編集済]を……だからあの作戦は失敗すべきだったんだ。
エージェント・シュシュニコワ:その結果、今のような窮状に陥ってもですか?
████退役少尉:それは多分……。俺に課せられた罰なんだ。必要悪を免罪符にしてグアンタナモやアフガンでやった事の報いが、俺に降りかかっているんだ。俺はこれを甘んじて受けなければならない……。
エージェント・シュシュニコワ:分かりました。ところで、S.████大佐の説得に応じた兵士は、いまどうしていると思いますか?
████退役少尉: ……死んでりゃ問答無用に地獄行きだし、生きてりゃ俺達がやったような最低の作戦に属しているんだろうよ。罪もない民間人や容疑があるだけという人間を[削除済][編集済]するような。
エージェント・シュシュニコワ:ありがとうございます。質問はここまでです。
<録音終了, 200█/██/█>
終了報告書: ████退役少尉にはAクラス記憶処置が施され解放されました。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPが記録されている記録媒体はサイト-81██の標準収容ロッカーに収納してください。SCP-XXX-JPによる実験はレベル3職員の許可のもと、Dクラス職員を用いて行ってください。
未収容のSCP-XXX-JP記録媒体が存在する、あるいは新規に出現する可能性があるため、日本支部各サイトはエージェントによる捜索と、プログラムによるインターネットのリアルタイム巡回を実施し、速やかに確保・収容・保護してください。
説明: SCP-XXX-JPは████百科事典日本語版の████年に発行された█~█項を扱っている巻の乱丁部に記された、████という異世界の概要です。
SCP-XXX-JPの異常性は、精神汚染によるミーム拡散効果です。SCP-XXX-JPを理解した人間(以下SCP-XXX-JP-A)は、SCP-XXX-JPに対する好感を持つと共に、SCP-XXX-JPを真実と信じ、他者に伝播しようとする使命感を持って行動します。この好感、信念、伝播の意思は、SCP-XXX-JPの理解度が高いほど強くなります。SCP-XXX-JP-AによってSCP-XXX-JPを理解した人間(以下SCP-XXX-JP-B群)も、SCP-XXX-JP-Aと同じ性質を持ちます。行動には、口頭での伝達、文書伝達、webサイトへのアップロード、脅迫による理解の強要、[編集済]、[データ削除済]など多様な種類があります。
上記性質から、SCP-XXX-JPは一部の理解でも精神汚染効果を持つと判明していますが、1回伝播するごとに理解度が下がり、精神汚染効果も低減していき、全内容の10%以下までSCP-XXX-JPの理解度が下がった場合、精神汚染効果は消失することが判明しています。また、SCP-XXX-JP-A及びSCP-XXX-JP-B群にAクラス記憶処置を施すことで、彼らからSCP-XXX-JPを取り除くことが可能です。ただし、SCP-XXX-JPの収容違反が発生した場合、SCP-XXX-JP-A並びにSCP-XXX-JP-B群は社会不安を起こす可能性があります。
SCP-XXX-JPが記載されている████百科事典日本語版は、199█/█/██に██県██市の古書店で発見されました。発見された経緯は次の通りです。発見██日前、古書店主████が最初にSCP-XXX-JPに暴露し、SCP-XXX-JP-Aに変化、妻████にSCP-XXX-JPを伝播し、妻はSCP-XXX-JP-B1に変化しました。二人は知的ではあるものの内向的な性質でしたが、SCP-XXX-JP暴露後、古書店に訪れる客や周辺住民にSCP-XXX-JPを積極的かつ熱心に伝播し、発見1日前にはSCP-XXX-JP-B群は周辺住民██名、全国███名まで拡大しました。
この段階で、SCP-XXX-JP-AとSCP-XXX-JP-B1は、当時実家へと帰省したばかりの娘████にSCP-XXX-JPを伝播しようとしましたが、娘は途中でSCP-XXX-JP-Aの前から脱出。その後SCP-XXX-JP-B群とも複数回接触し、異常事態を察知して、当時在籍していた██大学の指導教官██教授に「模倣子としてひとつの物語が急激に広がっています。急激な人格変化をもたらす類の模倣子です、どうしましょう」と相談しました。
教え子の相談を受けた██教授が財団潜入エージェントであったことから、財団は事態を察知。「ミーム汚染である」と判断し、ミーム拡散対策の専門機動部隊████を派遣、SCP-XXX-JP-AとSCP-XXX-JP-B1、周辺地域のSCP-XXX-JP-B群██名を収容しました。その過程で起きた混乱は「集団ヒステリー」のカバーストーリーを用い隠蔽しました。その後、█日をかけた収容作戦により、全国に散在していたSCP-XXX-JP-B群███名をも収容しました。
以下は、SCP-XXX-JP-1-Aと接触してなお、SCP-XXX-JP-B群に変化しなかった████へのインタビュー記録です。
対象: ████(SCP-XXX-JP-Aの娘)
インタビュアー: ██博士
付記: 当インタビュー記録は初期収容2日後に行われた第2回のインタビューです。インタビュー後、████はAクラス記憶処置を受け解放されました。
<録音開始, 19██/██/██**>
██博士: それでは録音を開始します。
████:あっはい、お願いします……。
██博士: 事態の推移については以前お聞きしましたね。今回はあなたが何故異常事態に巻き込まれなかったかを、聞かせてください。
████: え……? たしかに異常でしたけど、巻き込まれるようなものだったんですか?
██博士: 今回の異常事態の原因は、情報要素以外の何らかの理由で強い伝染性を持つ模倣子です。
████: ありえません! そんなこと! 非科学的です! ……すみません、主観的すぎました。ごめんなさい。
██博士: 話を続けます。強い伝染性を持つ模倣子に暴露して、あなたが何故影響を受けなかったかが疑問です。
████: それはその……多分……。
██博士: 何でしょう?
████: その……私がその話を理解しようとしなかったからじゃないかと思います。普段のお父さんとは全く変わった様子でしたから、最初から警戒してました。そしたら、いきなり熱心に変な話をするんですよ。聞く耳持てるわけないじゃないですか? どっちかというと怖いですよ! ……いえ、ごめんなさい。
██博士: ありがとうございます。
<録音終了, 19██/██/█**>
終了報告書: 聞く耳を持たなければ伝播しないとの仮説が立てられる。実験申請をしてみよう。――██博士――
補遺
伝播するごとに精神汚染能力を減じていく弱いミームだと言って油断してはいけない。初期収容の成功は、SCP-XXX-JP-A及びB1のコミュニケーション能力の低さと偶然によりかかったものだ。SCP-XXX-JP-AがSCP-XXX-JPを完全に理解し、なおかつ世界中のメディアが注目し、数百万人の支持者を持つカリスマであった場合を考えよう。SCP-XXX-JP-Aは一度の伝達努力で数百万人をSCP-XXX-JP-B群にしてしまうかもしれないのだ。それがもたらす混乱は極めて大きなものになるだろう。最悪の事態に備えて行動せよ。確保・収容・保護。
――サイト-81██管理者――
補遺2
SCP-XXX-JPには序文として以下の様な文章が書かれています。
我々の世界は消滅しようとしています。その存在の記録だけでも残したいと考え、このような形になりましたことをお詫び申し上げます。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはカバーストーリー「施設老朽化」により一切の人員の立ち入りを禁止します。立入禁止の徹底のため、常時6名の警備員による3交代制警備を行って下さい。
説明: SCP-XXX-JPは██県██市██に存在する、元ローマ・カトリック教会礼拝堂の告悔室です。SCP-XXX-JPに人間が立ち入ると、特異性が発揮されます。告悔者は必ず「過去に犯した犯罪」について神父に告白しようという衝動に駆られます。その結果として、ほぼ全ての告悔者が、過去に犯した犯罪を告白します。その内容は軽犯罪から殺人・外患誘致・内乱罪に至るまで多様ですが、全て真実だと判明しています。あまりにも多い犯罪の告白に、沈黙の誓約を破った神父の警察への通報が起こり、それにより財団はSCP-XXX-JPの異常性を察知、収容しました。
SCP-XXX-JPにおいて成された告悔は以下のとおりです(以下表、ほにゃらら)
19██年█月██日より、告悔內容が以下のように変化しました(不能犯列挙、しかし同様の事件は実際に起こっている)
オチ:現実改変シナリオ引き起こしてるんじゃないか?>実験中止
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-81██の最も強靭な、O5権限でしか解錠できない対爆金庫に保管して下さい。対爆金庫内にはSCP-XXX-JPの状態を常時監視するカメラを設置し、監視を怠らないで下さい。SCP-XXX-JPを用いたあらゆる実験はO5理事会により禁止されています。
説明: SCP-XXX-JPは直径8cmの、真鍮のような外装で覆われた、ねじ巻き式懐中時計型のオブジェクトです。ネジを巻かれていない状態(以下、非活性状態)では、時計の針は11時██分██秒を中心に大きく前後していますが、未だ12時を指したことはありません。現在は11時55分██秒を表しています。
ネジを巻かれた状態(以下、活性状態)では、正確に1秒毎に秒針が、1分毎に分針が進みます。時針が動いたのは未だ確認されていませんが、おそらくこれも正常に作動すると思われます。それ以外の物理的手段で、SCP-XXX-JPの時針・分針・秒針を動かすことはできません。
非活性状態のSCP-XXX-JPは地球上の人類の存亡に関わるあらゆる危機を察知し、それを時計盤上にリアルタイムで反映します。1962年のキューバ危機の際、SCP-XXX-JPは11時59分██秒を指しました。キューバ危機が終息すると、SCP-XXX-JPは11時52分██秒まで時計の針を戻しました。19██年のSCP-███の収容違反事故によるKクラス世界崩壊シナリオ発生直前時には、SCP-XXX-JPは11時59分5█秒まで針を進めましたが、財団の総力を上げた封じ込めの結果、11時43分██秒まで針を戻しました。
活性状態のSCP-XXX-JPは地球上の人類の存亡に関わるあらゆる危機を加速させます。また、活性状態時に進んだ針を戻す方法は確立されていません。20██年の収容違反時において、██博士が意図的な収容違反を起こした結果2、████紛争及び[削除済]が発生しました。その結果、SCP-XXX-JPの指し示す時刻は11時53分██秒まで進みました。これを進む前の時刻に戻すあらゆる試みは成功していません。サイト-81██からの連絡を受けたO5理事会は、SCP-XXX-JPに対するあらゆる干渉を禁止し、厳重な観察下に置く指令を下しました。
現在、SCP-XXX-JPは非活性状態で、年に5ないし10秒前後の割合で秒針を進めています。このペースであれば、100年以内に12時に到達するでしょう。しかし活性化さえさせなければ、この針を最後の活性時時点まで戻すことは可能と考えられます。
SCP
愛は破壊的に、繰り返す十相図、破壊的クオリア検出器、天使の輪、落下してくる全裸中年男性、悪意的北京の蝶、偉人の肖像、軌道上爆撃兵器、人喰い迷路、迷い牛(人喰い迷路のバリエーション)、寿命変換器、万国生命博覧会、ゆらぎ、ロールシャッハ・テスト
Tale—
Harazinだいすき光芒ちゃん、SCP-326-JP初期収容記録
財団で挨拶回りをする職員というのも珍しい存在だから、その噂は来栖研究員の耳にも届いていた。もとより倫理委員会の監視官でもある彼女の情報収集能力は、その見かけと性格にそぐわない高さだ。
「波戸崎壕研究員――今季入ったばかりの新人、ですか」
彼との直接の面識はない。本来であれば勤務以外で他の財団職員と関わり合いになりたくないのだが、彼との接触は勤務上の一定の必然性を持っていた。故に来栖は重い腰を上げた。
今季入団の新来の警備員に胡乱な顔をされながらも、首からぶら下げたセキュリティクリアランスレベル2:Cクラス職員のIDカードを提示し、指紋認証で幾つかの検問をクリアする。白く細長く、そして折れ曲がった通路のそこかしこに、監視カメラや歩哨機銃が設置されている物々しさは、収容違反や要注意団体の襲撃に対し、研究員クラスの生命安全保障を行うためのものだが、来栖は、それが気休め程度のものであること、上席研究員やサイト管理者のためにはより高度なセキュリティと優先脱出権が与えられていることを理解している。
やがて来栖は目的地にたどり着いた。「波戸崎壕研究員」と名札のついた白い隔壁ドアに取り付けられたインターホンを通じ、内部の人物に話しかける。
「波戸崎壕研究員はこちらにおいででしょうか? 私は来栖朔夜研究員、セキュリティクリアランスレベル2:Cクラス職員、認識番号████-██です。よろしければ、少しお話がしたいのですが」
波戸崎の在室は既に把握している。しかし返答はすぐには返ってこなかった。やや焦れた彼女は再びインターホンを押し、同様のセリフを口にしようとした。そこで、疲れきった声で「入ってください」と返答が聞こえ、隔壁ドアの電子ロックが内部から解錠された。
来栖はドアをくぐり、波戸崎研究員のオフィス内部に入った。新人職員らしい簡素なオフィスの事務机に、半ばうつ伏せるようにして波戸崎は肘を突き、頭を抱えていた。その姿は、危険なオブジェクトの連続実験に晒されたベテラン職員のように疲弊し、到底新人の溌剌さは伺えない。さもあらん、と、来栖は感じた。彼が今日遭遇した研究員やエージェントはみな非常に個性的な人物たちであると理解していたからだ。
波戸崎は来栖の入室後、おずおずと顔を上げた。顔色は悪く、やはり疲弊している。彼女を見る目も落ち着かなく、よく見れば僅かに顔を痙攣させている。そんな彼を刺激しないよう、来栖は細心の注意を払って事務的な口調で語りかけようとして――
「あ、あのですね」
どもった。彼女はけして人付き合いが得意な方ではない、いや苦手な部類なのだ。その様子に波戸崎は少しだけ気色を取り戻して言った。
「はじめまして、来栖研究員。波戸崎です……本来ならこちらからご挨拶に向かうべきだったんですが……」
「あ、その、そういう気遣いはご無用です。私もいろいろと忙しくて、ろくなお構いもできないでしょうから」
「はあ……いや、お忙しいところわざわざ来て頂いて、ありがとうございます。どうかこれからよろしくお願いします」
波戸崎が立ち上がり、頭を下げようとするのを制し、来栖は本題に移った。
「いや、その、そういうのは結構です」
「と、いいますと……」
怪訝そうな顔をする波戸崎に、来栖はかしこまった態度で問うた。
「財団の基本理念は何か、ご存知ですよね」
「それはもちろん……確保・収容・保護、ですよね?」
再び不安そうな顔をする波戸崎。それに構わず、来栖は言葉を継ぐ。
「そうです。確保・収容・保護。人類の世界観と生存を守るため、財団は時として必要悪としてもこの理念を貫きます。危険な存在を確保し、安全に収容し、本質が解明されるまで保護すること。ここで研究員に必要とされるのは、オブジェクトの本質の解明なんです」
「つまり……?」
「波戸崎研究員。あなたは財団では本質的に必要のないことをしてるんです」
「そんな! 挨拶回りは社会人の常識……」
波戸崎の抗議を遮り、来栖は気弱な口調で、厳しい内容を告げた。
「財団においては、社会の常識は通用しないことを、あなたは既に知ってるでしょう? それに、財団の研究員同士が過度に慣れ合うようだと、機密保持の観点からも、収容違反時対処の観点からも、情に流されて機密漏洩や誤判断を犯すという潜在的危険性をもたらすんです。ですから――今後このような事は謹んで、研究に専念して頂ければ、と、私は思うんです」
来栖はそんな事を言う自分に嫌悪感を覚えていた。大半の人と事務的にしか接することのできない自分、任務に没頭することでかろうじて財団での立場を得ている自分をも。だが、財団にとって波戸崎の有用性が損なわれるような事態になることは、財団にとっても波戸崎自身に取っても不利益だと判断しての、これは彼女なりの気遣いだった。
だから波戸崎の次の台詞に、来栖は深く傷ついた。
「……あなたは、冷たい人ですね」
内心の動揺を押し隠して、来栖は答えた。
「……こんな言い方しかできなくてごめんなさい。でも……」
来栖の答えを遮り、波戸崎は怒りのこもった声で告げた。
「……話はよく分かりました。帰ってください」
「すみません……。ですけど、この原則は絶対に忘れないで下さい」
「分かりましたよ! だから帰ってください!」
波戸崎の剣幕に押しやられる形で、来栖は研究室から退出した。
数時間後。来栖は自身の研究室で、垂直に立てた煙草をアロマ代わりにしながら、果たして波戸崎に対する態度が正当なものだったかどうか考え込んでいた。倫理委員会監視官としての立場を危うくするような行動ではなかったろうか、波戸崎に対する忠告は適切だったろうか、彼に悪意を抱かれたのではないのか――様々なネガティヴな考えが脳裏をよぎる。思考の整理がつかないまま、彼女はベッドに倒れ込み、枕に顔を埋めた。煙草が自然に消える頃には、彼女は眠りに落ちていた。
広々とした財団食堂の片隅、カフェテリア形式のテラスに唐揚げ定食を載せたトレーを運び、シンプルな丸いテーブルの上に置いて、私は椅子に座る。ここなら私の心を悩ませる喧騒も遠く、一人で静かで豊かな昼食を取ることができる。
「もしもし虎屋博士ですか!」
恒例の行事を済ませ、割り箸を割り、皿の上に盛られた唐揚げを口に含むと、塩気と脂身の甘さとが渾然一体となった味わいと、香ばしさが口の中いっぱいに広がった。財団食堂の唐揚げは、苦学生だった頃の冷えた唐揚げ弁当なんかよりはるかに美味しい。固まった肉と脂身、そして適当な味付け。それでもあの頃はあれが一番のごちそうだったのだ。
1つ目を丁寧に感で味わい、そして嚥下する。ご飯を一緒に合わせると米の甘味もまざり、実に得も言われぬ旨味だと、いつも思う。そして2つ目の唐揚げに取り掛かろうとしたところで、コトリと小さな音がして、相席に誰かが座るのがわかった。
貴重な孤独の時間を遮る人の気配にビクリとして、私は顔を上げたが、わたしを悩ませる恐れは立ち上がらなかった。彼――体型から男性と知れる人物は、黒いピッチリとしたスーツの上にあるはずの顔の部分に、奇妙なカラスの面をつけていたからだ。
その奇矯な姿の人物を、わたしは知っていた。海野一三。渉外担当エージェントで、内部監査部門への異動を具申されている、前途有望な人物。彼は以前ある事件で私の属する倫理委員会の監視下に入っていたことがあり、その事件は私など知らない上のレベルと彼の活躍により解決され――そして彼は記憶処理を施された。たとえ功労者であっても、セキュリティクリアランスレベル上の問題があれば記憶処理を施される。財団は冷徹だ。
私は彼が関わっていた事件の一部についてしか知らない。GOCと彼らの粛清対象に関わる何事かであるとしか。事件当時のサイト-8181が対GOC臨戦態勢に入っていたこと、GOCが粛清対象を追跡していることは私のセキュリティクリアランスレベルで把握できたが、何故そうなったのか、どう解決したかについては断片的な資料しか入手できなかったからだ。それもまた財団の冷徹さを表している。
しかし私は財団職員として財団の冷徹さを受け入れていた。以前私も記憶処理を受けたことがある「らしい」。それを恐ろしいとは感じない。財団の記憶処理技術は高度で安全なものだからだ。それに――記憶処理を受けるほどの重要な機密というのは、往々にして極めて恐ろしいものである可能性が高い。私が正気を保っていられるのも――エージェント・海野が正気を保っていられるのも、そのおかげだと、私は感じる。
そんなことを考えていたので、唐揚げを食べる手が止まっていた。心配そうな声が、カラスの面の向こう側からかかる。
「あの、大丈夫ですか? もしかしてこの面のせいで気分を悪くされたとか……」
穏やかな物腰と声は、私を気遣う心遣いに溢れていた。だから、私は安心と節度を持って、柔らかく応えることができた。
「いえ、大丈夫です。決してあなたのせいではありませんから――ですけど、どうして相席を?」
「実はGOCの昨今の行動について、少しばかり納得がいかないことがありまして、来栖監視官」
私は箸を取り落としかけた。もしや記憶処置が――と思ったものの、彼のセキュリティクリアランスレベルは3であり、私の人事ファイルを読む権利がある。
「納得のいかないこととは?」
私は平静を装い問う。
「GOCの行動に関して、記録に抜け穴が沢山あるんです。それにあの頃はサイト-8181全体が緊急即応体制だったのに、僕は通常通り渉外任務を続けていたことになっている。全資源を諜報に振り分けるべき非常事態において、そんなことがありうるのかと」
「非常事態だからこそ渉外任務は重要でしょう。我々が隠蔽しなければならない事柄と相手はあまりにも多いんですから」
「そうですか。そうですね。しかし抜け穴の件は気にかかります。まるであってはならないデータを急いで消したかのように、不自然な痕跡が僅かながら残っているんです。これは、もしかして財団の内部監査部門の隠蔽工作みたいだ。そこまでして隠蔽しなければならない事態が、GOCとの緊張関係中にあった――そうとしか思えない。場合によっては、財団倫理違反かもしれないと思って、ご相談に参ったわけです」
なるほど。彼はその優れた捜査能力を持って、内部監査部門の些細なミスを見つけ出し、そこを手がかりに事態の真相へと迫ろうとしているのだと、私は理解した。
「来栖監視官、この件について、倫理委員会の秘匿監視官としての意見を伺いたいのですが」
エージェント・海野は真剣な声音で私に告げた。私はしばし考えた後、こう答えた。
「現状で把握できる範囲では、財団倫理違反は起こっていません。内部監査部門の処置は確かに存在しますが、それは必要知原則に基づいた正当なデータ処分です。これ以上捜査を独断で続けても、得られるものは何もないと思います」
「――必要知原則、ですか」
「釈迦に説法ですが、我々が必要以上のことを知ることは任務においても防諜においても大きな問題をもたらしますから。ご理解いただけると幸いです」
つい口調が固くなるのは、過剰に職務熱心であるがゆえに必要知原則から逸脱しかけている彼に対する警戒心か、それとも必要知原則を口実に隔離された部分的な認知の世界にとどまろうとしている自身への不満か、私にはわからなかった。つい、こんなことも言ってしまう。
「もし気になされるようでしたら、内部監査部門に入られては?」
エージェント・海野はなぜか少し動揺したように見えた。
「それについては、あなたには話せませんが、僕の処遇についてはかなり高いレベルでいろいろ動いているらしいです。上司からそれとなくほのめかされました」
つまり、あえて聞くなということだと私は解釈した。これもまた、必要知原則といえるだろう。
「わかりました。とりあえず、この件については、私達のレベルにおいては既に終わったということでよろしいですか?」
「――そういうことになるでしょうね」
エージェント・海野は不満気な声で、しかし応諾した。彼はそのまま立ち上がると、足早に私の元を去っていった。あたかも、最初からそこにいなかったかのように。
私はひとり、冷たくなった唐揚げを頬張った。その味は、苦学生としてひたすら閉じた研究室で研究していた頃の、狭い世界にいた頃の自分を思い起こさせる味だった。
「ミード少将のロールプレイとしては上出来かな」上首尾に終わったゲティスバーグ攻防戦のプレイを振り返り、ぼくは思った。
史実ではミード率いるポトマック軍は1日目のユーウェル軍団の攻撃によって北部防衛線を打ち破られ、2日めのロングストリートによる西南からの攻撃で包囲殲滅されていたのだ。その2つの危機をしのぎ、強固な防衛線を築いて、3日目まで戦闘を持込み相手プレイヤーのやけくそめいた中央突撃を誘引できたのは満足だった。
だけど、この戦いでできた可能性のひとつ――セジウィックの増援を用いたロングストリートの第2軍団の包囲殲滅まで試せなかったのは面白くなかった。だから、最初に言ったような台詞も出た。
そこでふと違和感を覚えた。周りの人間が、まるでぼくらのプレイしたゲームを史実と捉えているような。バカバカしい。ミードは惨敗し、ワシントン全面まで南軍が殺到したのは揺るがし得ない歴史的事実なのに。
ぼくはそれについて、温和そうな担当職員から説明を受けた。あのゲームは過去改変オブジェクトの可能性があって、今では実験自体が禁止されているらしい。
ぼく達のプレイもまた、過去改変を引き起こした可能性があるそうだ。それを聞いて、ぼくは大変楽しく思った。ただ人が世界の歴史を遊びで改変できる、そのオブジェクトの可能性と、その可能性を偶然とはいえ引き出してしまった自分の立場を愛しく思った。
世界は、こんなにもでたらめな方法で書き換えられる――それが愉快で仕方がなかった。
タブが多すぎるので整理すること。