アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP‐XXX‐JPは必ず電池を抜いた上でサイト-██内の低危険度オブジェクト収容ロッカーに収納してください。認可された実験以外の持ち出しは禁止されています。SCP‐XXX~JPのスイッチ部は誤作動防止のため電子錠のついたアクリル製カバーで覆います。カバーを外す錠は現在██博士の管理下にあります。
誤認を避けるため、SCP-XXX-JPには識別用タグが電子錠と別に取り付けられています。また、サイト-██で使用する全ての車両は車体に黄色、ないしそれに類する色を使用してはいけません
説明: SCP-XXX-JPは全長約60㎝、太さは持ち手部分で約5㎝、発光部先端で4㎝程度の、駐車時の誘導に用いる一般的な誘導灯(交通法上の『赤色灯』と呼ばれるもの)に見えます。重量は電池が入っていない状態で約350gですが、これは同型の市販品の約1.5倍に相当します。刻印されている製造番号から、少なくとも本体は国内メーカーの██████社の製品(商品名『██████』)と判明しましたが、製造ラインや企業に特異な部分は見られず、SCP-XXX-JPが異常特性を獲得するに至った理由は不明です。現在、上述の重量の増加から何者かの手によって改造が加えられた可能性が示唆されています。分解、破壊の試みはすべて失敗しました。X線等の非破壊検査の結果、材質や内部構造は同型の製品とほぼ同じであると判明しています。持ち手のケース部分に電池を入れて手元のスイッチをONにすることで、内部のLEDが点灯します。
SCP-XXX-JPは以下の条件を全て満たしたとき、活性化します。
- 人間が手に持ち半径30m以内の、車輪のついた乗り物(自動車、自転車、バイク、着陸時の飛行機等)を誘導する。その際の乗り物(SCP-XXX-JP-1とする)は人間が直接に運転しており、なおかつ全ての車輪が接地している。
- 誘導時、昼夜問わずスイッチがONで点灯状態である。
- SCP-XXX-JP-1の約75%以上が黄色、ないしそれに類する色である。
以上の条件を満たした状態で車両の誘導を行った場合、SCP-xxx-JP-1の運転手(以下ドライバー)は時速150km/h~[削除済み]km/hに瞬間的に加速します。シートベルトなどで体を車内に固定していた場合、それらはまるで射出を助けるように即座に外れるか、切断されます。また、この運転手の射出を補助する効果はSCP-XXX-JP-1全体に及び、明らかに強度的に耐えうるはずのガラスや天井は射出の瞬間極端な脆弱さを示して突き破られ、ドアや窓等の可動する部分であれば自動で開いて『射出口』を作ります。SCP-XXX-JP-1に実験のため増設されたハーネスやベルトも、車内空間にある限り同様の影響を受けると思われます。
大抵の場合、射出された運転手は地面への激突、摩擦によって骨折、打撲、脳挫傷、[削除済み][削除済み]等の重傷を負い、最悪の場合死亡します。また、助手席等の同乗者は射出こそされませんが、方向によってはドライバーが激突して同等かそれ以上の負傷の可能性があります。
また、射出される方向は常に北~北北東の方角(355度~18度)です
複数の実験により、射出方向の法則を割り出すことに成功しました。詳細は補遺SCP-XXX-JPを参照。
SCP-xxx-JPは██県の中学校の入学式で来場した保護者の車両に対して使用され、誘導者と運転手が激突して死亡するという事故により財団の目に止まりました。調査の結果、誘導係の教員が手にしていたSCP-XXX-JPが原因だと発覚したため同校にあった同タイプの誘導灯は全て接収の上で関係者の全てにBクラス記憶処理を行いました。また、カバーストーリー『不幸な事故』が用意されました。なお、接収された誘導灯の内、異常性質を示したものは一本のみでした。
当該中学校の物品購入記録により、SCP-XXX-JPは事件の4年前に購入されていることが解りました。長期に渡り同様の事故が起きなかった理由としては、学校行事の際、昼間のみの使用に限られていたことが大きい理由と推測されます。事故の際は何かのはずみで使用者がスイッチをONにしたと考えられますが、詳細は不明です。
実験記録XXX‐01 - 日付20██/██/██
対象:
一般的な乗用車。運転席にはダミー人形を乗せる。車体は黄色。
実施方法: Dクラス職員にSCP-XXXを活性化状態で使用させる。なお特に記載のない場合、実験はサイト██内の車両実験用ガレージ内で実施された。
結果: 変化なし
分析:実際に人間が乗っていることが重要なのだろう。
実験記録XXX‐02 - 日付20██/██/██
対象: 三輪車。黄色に塗装。荷物運搬に使われる台車。Dクラスをドライバーとして乗せる。
実施方法: Dクラス職員にSCP-XXXを活性化状態で使用させる。
結果: 変化なし。
分析:SCP-XXXにとっての『乗り物』の境界線はどこなのだろう。やはり自転車か?
実験記録XXX03 - 日付20██/██/██
対象: 一般的な乗用車。車体は緑色。ドライバーとしてDクラスを乗せる。
実施方法: 目隠しをしたDクラス職員に『黄色い車が目の前にある』と偽の情報を与えて、SCP-XXXを活性化状態で使用させる。
結果: 変化なし。
分析:SCP-XXXには知覚があると見て間違いないだろう。少なくとも車両の種類と色は判断できるようだ。
実験記録XXX‐04 - 日付20██/██/██
対象: 要人警護に使用される防弾仕様の車両。車体は黄色。ドライバーとしてDクラスが乗車。
実施方法: Dクラスの誘導者に活性化状態で誘導させる。
結果: ドライバーは北の方角へ射出され[削除済み]の欠損を含む重傷、その後終了された。車両の屋根は内部から破られたように外側へ大きくめくれあがっていたが、射出されたDクラスの体重と速度では破壊は不可能と予測されていた。 射出方向は北北東(13度方向)。
分析:ドライバーというよりは、車体全体に影響を与えるものらしい。
実験記録XXX‐05 - 日付20██/██/██
対象: █‐███型旅客機。機体を黄色に塗装。パイロット経験者のDクラスがドライバーとして操縦。なお、逃走防止のため機体は飛行不可能な状態にしている。実験は██県にある財団のフロント企業が所持する滑走路を一時的に閉鎖して行った。
実施方法: Dクラスの誘導者に活性化状態で誘導させる。
結果: [削除済み]。誘導者、ドライバーは共に即死。射出方向は北西(311度方向)の方角だった。
分析:射出方向は限定されているものと思っていたが、違うようだ。他の実験と違うのは、車両のサイズと場所だ。特に『場所を変えたら方角も変わった』という点は関連性を無視できない。サイト██外での実験も検討する必要がある。そういえば、発見時の事故はどうだった?
補遺SCP-XXX:
██博士の指摘により、財団がSCP-XXXを発見することとなった中学校の事故で、射出された方角が北から大きく外れる事実が確認されました。データを詳細に分析した結果、射出方向の線を延長すると██県██市のある一点で交差しており、そこは現在は使用されていない自動車教習所の廃墟でした。
現地にエージェントを派遣しましたが、場所そのものに明確な異常性は認められませんでした。しかし文書SCP-XXXが発見され、また放置されていた教習車と思われる廃車が黄色であったことから、現在は財団の監視下に入っています。
また、当該廃墟内でSCP-XXX-JPを活性化させる実験が申請されており、現在承認待ちです。
文書SCP-XXX
補遺SCP-XXXにおける廃墟内で、元は事務室だった部屋の壁面にペンキで書かれていた文章です。
御目出度う御座います
貴方は見事、紅に輝ける聖剣の守り手と、金糸雀色をした鉄馬を駆る騎手の導きによって、この場所を見出しました
呪文を唱えてください。それこそが、かつて栄華を極めた帝国の財宝を手に入れる、最後の手続きです。
『呪文』に該当すると思われる記述は現在においても未発見であるため、本文書に関する判断は保留されています。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
object class: Euclid Keter
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはその性質上、特定施設への収容が困難であるため出現地域の都市開発へ財団が干渉する形で収容されています。一般店舗への転移を防ぐため、財団所有のフロント企業が当該地域に██ヶ所の店舗を営業しています。これらの店舗は街頭から店内が見えない設計にした上で、壁掛け型の『お品書き』を設置します。また、営業時は財団規格のPOS端末を使用し、もし注文にSCP-XXX-JPが確認された場合、緊急ネットワークを通して財団に通知されます。通知を確認した担当者は店舗を2時間封鎖し人員の出入りを制限した後、関係者に記憶処理を実施してください。その際、店舗内への侵入は禁じますが、非致死性麻酔ガス等の使用は許可されます。また、必要に応じて周辺地域に適切なカバーストーリー(設備の改修、店主の急病等)を流布してください。
当該地域で営業をする財団所有以外の店舗は従業員や経営アドバイザーとして潜入したエージェントにより、食券販売機による営業を行うよう誘導されます。万一財団所有以外の店舗でSCP-XXX-JPの出現が確認された場合は機動隊み-24(“口うるさい常連客”)が該当店舗を封鎖した後、関係者にクラスB記憶処置を実施してください。
実験はセキュリティクリアランス3以上の承認を得た上で、財団のコントロール下にある店舗のみで行ってください。SCP-XXX-JP-Aの摂食にはDクラス職員のみを用い、店舗周辺の完全封鎖が可能であることが条件となります。20██/██/██追記 事件SCP-XXX以降、一切の実験は禁止されています。
説明: SCP-XXX-JPは現在██県██市内の██駅周辺の繁華街で営業している、主にラーメンを取り扱う飲食店に出現する壁掛け型の『お品書き』として実体化する存在、およびそれに付随すると見られている一連の現象です。素材や形状、書体はその店舗に最も馴染むものとして出現しますが、メニューは『頑固オヤジのバリカタラーメン』に統一され、必ず価格も一緒に記載されます。なお、価格は出現の度に変化します。
SCP-XXX-JPが出現した店舗内の空間は厨房やバックヤードを含めて影響下に置かれ、店舗内空間に存在する全ての人間はSCP-XXX-JPを認識しながらもその存在、及び引き起こされる現象に違和感を抱かず通常通りに振る舞います。防犯カメラなどの監視手段はすべて未知の手段で機能しなくなるため、現在のPOS端末を利用した特別収容プロトコルが考案されました。SCP-XXX-JPの内容が注文されると、5~15分程度で厨房にSCP-XXX-JP-Aが出現し従業員はそれを通常の手順で客に提供します。(以下、SCP-XXX-JPを注文した人物を注文客と指定)
SCP-XXX-JP-Aはその店舗で通常使われている食器に盛り付けされた物品で、大まかに麺、スープ、具材に分けることができます。また、SCP-XXX-JP-Aは、記載された価格におおよそ釣り合う価値の材料から構成されます。しかし、以前と『お品書き』に記載された価格が同じでも、SCP-XXX-JP-Aの具材や内容が異なる場合があり、一般にラーメンと呼べない物品や、食品ではない物品が含まれる場合もあります。
注文者はSCP-XXX-JP-Aの内容に関わらず完食しようとしますが、苦痛や嫌悪感を感じている様子はありません。また、SCP-XXX-JP-Aが物質として持つ性質はそのままであるため、内容物によっては食中毒や消化器系への負傷を経て、最悪の場合死亡します。食事を妨害しようとする行為に対しては、注文者は元々の性格に関わらず極端な攻撃性を持って排除しようとします。この行動には自傷行為や相手の殺害も手段として含まれるため、制圧には注意が必要です。
以下の条件のうちどれか1つを満たしたとき、SCP-XXX-JPは店舗から消失します。
- 注文者がSCP-XXX-JP-Aの体積の内95%を胃に収める。
- 注文者が死亡する。
- SCP-XXX-JP-Aが完食されないまま、提供から2時間が経過する。
- SCP-XXX-JPが注文されないまま出現から2週間が経過する。
消失後、不定期の休息期間(1週間~3ヶ月程度)の後に半径1km以内の他の店舗に移動します。転移を防ごうとする全ての試みは失敗しました。
以下は財団で確認できたSCP-XXX-JP-Aの例です。
価格 |
内容(麺、スープ、具材) |
被験者の感想 |
摂食後の経過 |
800円 |
中太の縮れ麺、ごく一般的な味噌味、ブロック状のチャーシューともやしを主とした大量の具材 |
非常に美味 |
異常なし |
200円 |
インスタントと思われる麺、極めて薄い塩味、ゴマ |
伸びていて変に酸っぱい |
摂食後軽度の腹痛および下痢。一般的な処方で完治 |
7500円 |
細麺、豚骨、伊勢エビとフォアグラ |
豪華で不味くはないが全体的にちぐはぐな印象 |
異常なし |
2300円 |
直径1mmの鋼線、水銀、ネジや蝶番などの金属部品 |
なし |
水銀中毒で[編集済み] |
10円 |
[編集済み]の体毛、血液(後の分析で被験者のDNAと一致)、[編集済み]の皮膚組織 |
(データ削除済み) |
食中毒により[編集済み]日後に衰弱死した |
[編集済み]円 |
直径2mmの[編集済み]、ガソリン、工業用ダイヤモンド |
なし |
[編集済み] |
SCP-XXX-JPはラーメン店で発生した客同士の奇妙な諍いにより、財団に発見されました。両者は知人同士でしたが、注文者が被害者を執拗に殴打して殺害。その後警察が来るまでSCP-XXX-Aを食べ続けましたが、塩酸、[編集済み]を含む劇薬を摂取し、死亡しました。従業員へ対するインタビューによると、被害者が『コショーを取ってくれ』と頼んだところ、注文者が激昂し殴り合いに発展したとのことです。この情報が正しければ、食事を僅かでも中断させるような頼み事さえも妨害と見なされる模様です。インタビュー終了後、目撃者を含む関係者全員に記憶処理を実施しました。
SCP-XXX-JPは食券販売機や卓上型のメニューに擬態しないことが確認されています。また、██県██市内の繁華街より外の転移は行われていません。
付記: 一連の実験は全て財団フロント企業経営の店舗にSCP-XXX-JPの出現が確認された後、D-XXX-JPを移送する形で行った。イレギュラーな事態に対するSCP-XXX-JPの反応を引き出すことが目的である。
実験D-XXX-JP-01- 日付20██/09/13
実施方法: Dクラス職員に『頑固オヤジのバリカタラーメン』を注文し、その後2時間食べずに待機するよう指示。また指示に反した場合処罰される旨も通達。
SCP-XXX-JPの表示価格: 750円
内容物(麺、スープ、具材): 細い縮れ麺、豚骨醤油スープ、たっぷりの背脂と白髪ネギと味付け卵。
結果: 指示に反し25分で完食。実験終了後の経過も異常はなかった。
分析: こちらからの単なる強制では食事を止めることは出来ないようだ。
実験D-XXX-JP-02- 日付20██/10/25
実施方法: Dクラス職員にSCP-XXX-JP-Aが提供されたタイミングでSCP-XXX-JPの特性を説明した上でエージェント██を派遣し、提供されたSCP-XXX-JP-Aを奪取して店外へ持ち出すよう指示。なお、エージェント██は近接格闘の熟練者であり、財団標準の暴徒鎮圧用装備を着用。
SCP-XXX-JPの表示価格: 300円
内容物(麺、スープ、具材): 細いストレート麺、アルコール度数25%の焼酎、██個のマアジと見られる魚類の眼球。
結果: エージェントは入店後Dクラスの方に向かわず従業員に案内され着席し、通常のメニューを注文。そのままDクラスの食事が終了するまで、自身の食事を続けた。実験後のインタビューでエージェントは『指示通りにしようとしたが体の自由が利かなかった。唯一行動できたのがラーメンを注文し食べることだけだったのでSCP-XXX-JP以外を頼んだ。またDクラスが食べていたものについては普通のラーメンに見えた』と説明。
D-XXX-JPは急性アルコール中毒を発症しながらも84分で完食。その後医療施設へ搬送され、治療を受けて生存。アルコール中毒に関してはD-XXX-JPの体質的な問題の模様。インタビューに対して、自身が食べたものについては『見た目に難ありだが美味いラーメンだった』と供述。
分析: どうやら、店内にいる者はラーメンを食べる以外の行動を封じられた上に誤った認識を植え付けられるようだ。まぁ、ラーメン屋は普通ラーメンを食べに来るものだから、体の自由が奪われていると気付くことは難しいだろう。推測になるが従業員や出入りの業者等も通常の業務以外の行動は出来なくなると思われる。店外から直接の目視で観察することは可能だが、店内に侵入して直接制止するのは無理ということだな。
実験D-XXX-JP-03- 日付20██/██/██
実施方法: 摂食を妨害するために、D-XXX-JPにハーネスとロープを装着。ハーネスにはロックを掛けて自分で外せないようにする。SCP-XXX-JPをSCP-XXX-JP-Aが提供された後、店外からロープを引っ張ってD-XXX-JPを強制的に退店させる。
SCP-XXX-JP-Aの表示価格: 30000円
内容物(麺、スープ、具材): 鉄製の有刺鉄線、[編集済み]の尿、剃刀の刃及び[データ削除済み]の胎児
結果: ロープが引っ張られた瞬間、D-XXX-JPはハーネスを外そうと抵抗。自ら左肩を脱臼させて無理矢理引き抜こうと試みるも、右足にハーネスが絡みつく。店外のエージェントが続けて引っ張るが、D-XXX-JPは[編集済み]を用い右足を粉砕してロープを全て取り去り、114分で完食。その後、財団医療施設へ緊急搬送されたが、到着前に死亡。
補遺SCP-XXX-JP-01: 実験D-XXX-JP-03の翌日、死亡したD-XXX-JPの遺体が遺体安置所から消失しました。現在捜索中です。捜索は打ち切られました。
補遺SCP-XXX-JP-02: 補遺SCP-XXX-JP-01の消失事件から6ヶ月後の実験-xxx-JP-██により、具材として以下の文章が書かれたチラシが出現しました。
この度██市に暖簾分けした支店を開くこととなりました。自慢の弟子による『頑固オヤジ直伝のバリカタラーメン』を██市でも是非ご賞味ください。本店も引き続きご愛顧の程をよろしくお願い申し上げます。
██市はD-XXX-JPの出生地であることが確認されました。現在、██市内でSCP-XXX-JPが確認されていないか特別警戒中です。
なお、事件D-XXX-JPを受けてEuclidからketerへのクラス引き上げが提案されました。
SCP-XXX-JPのketer引き上げは承認されました。―日本支部理事
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-8173の低危険度収容ロッカーに、SCP-XXX-JP-A~Fをそれぞれ個別に収納してください。いかなる理由があろうとSCP-XXX-JPを海水中に曝露することを禁じます。また、現在SCP-XXX-JPの性質は十分に解明済みとされており、これを目的としたDクラスを用いる実験は不要です。
説明: SCP-XXX-JPは、スキューバダイビング用の道具一式で、SCP-XXX-JP-A~Fで構成されます。SCP-XXX-JPはA~Fは全てを同一人物が着用し、海中で水面から5mの水深に達したときに活性化し以下の特性が発現します。以下、SCP-XXX-JPを身につけた人物を『ダイバー』とします。個別での使用、プールでの使用、水深5m以浅での使用においては異常性はなく、問題なく使用できます。また、使用中にダイバーが死亡した場合も即座に異常性は失われます。いずれも素材や構造は一般的な製品と変わりはなく、これらの特性が発生する原理は未知です。通常のメンテナンスの範囲での分解は可能ですが、それ以上の破壊は不可能です。
アイテム番号 |
物品 |
活性化時の特性 |
SCP-xxx-JP-A |
ウエットスーツ。長袖のワンピース型スーツでサイズ表記は『L-M』となっており、ごく平均的な男性用ウエットスーツに見えます。黒と青の生地で、胸元に『Diving For You!』とデザイン化されたロゴがプリントされています。グローブとブーツが付属します。海中での身体保護と体温の保持を受け持ちます。 |
活性化すると背中のファスナーが固定され、未知の原理で脱ぐことが不可能になります。この効果のみ一旦水深5mに達すると、浮上しても海水から出ても継続します。ただし、水深200m以上の深海に到達すると脱ぐことが可能になります。 |
SCP-XXX-JP-B |
オクトパス・レギュレーター。タンク内部の高圧の空気を呼吸のために適切な圧へと減圧する部分です。タンクに接続されるファーストステージと、そこから延びる3本の70cm程度のホースで構成されています。ホースの内1本目はダイバーが口にくわえるセカンドステージ、2本目は残圧計につながっています。3本目はBCジャケットにつながるインフレ―タホースです。 |
SCP-XXX-JP-Eに接続すると、タンク内のガスを未知の原理によって一酸化炭素、硫化水素、[編集済み]等に変換してダイバーに供給します。毒性が極めて高いガスを高濃度で吸うことになるため多くの場合ダイバーは中毒死します。 |
SCP-XXX-JP-C |
BCジャケット。タンクを背負うためのジャケットで、インフレータホースを通して内部に空気を供給することで中性浮力を保持するものです。サイズ表記は『L』となっています。 |
活性化した状態で吸気弁を操作し内部へ空気を供給すると、膨張せず着用者に接している部分が約-20℃まで冷却されます。即座に脱げばこの特性は収まりますが、長時間の着用は凍傷の危険を招きます。海水が瞬時に凍結する温度ではありませんが、流動のない場所で留まった場合は氷で覆われ、脱着が非常に困難になります。 |
SCP-XXX-JP-D |
フィン。ゴムとプラスチックを組み合わせて作られた、いわゆる足ひれです。フィン部の中央に切れ目が入っていますがこれはバイオフィンと呼ばれ市販されているもので、形状に特異性はありません。サイズは『27.0』と刻印されています。 |
活性化した状態で水を蹴り出すと、水中で時速80km/h~[編集済み]km/hに急加速します。ダイバーは水圧に耐えきれず[編集済み]。 |
SCP-XXX-JP-E |
タンク。呼吸用のガスを充填するタンクで、容量は12リットルです。一般的なコンプレッサーで充填可能です。超音波検査などで内部の構造を把握する試みはすべて失敗しています。 |
活性化すると、タンクの内部からおよそ120~[削除済み]デシベルの音が発生します。実験に立ち会った職員の感想では『頭を思い切り殴られたような』『爆弾が内部で爆発したような』音である表現がされました。結果としてダイバーおよび周囲の生物は鼓膜・内耳を損傷し多くの場合失神します。また失神しても死亡するまでは鳴り続けるため、救助者に対して高確率で二次被害をもたらします。 |
SCP-XXX-JP-F |
マスク。顔に装着する水中マスクです。 |
活性化すると、マスク内部に未知のフジツボに似た生物(以下、SCPXXX-JP-F1に指定)が顔面表皮に癒着する形で発生し、異常な速度で成長・増殖します。SCP-XXX-F1はその後大量の強酸性の粘液を分泌し、マスク内を満たします。この粘液は強酸性でダイバーの眼球及び皮膚表面を大きく損傷します。SCP-XXX-JP-Fの使用を中止するとSCP-XXX-JP-F1の増殖と粘液の分泌は止まりますが、すでに発生した部分は大部分が残留します。DNA解析の結果、ダイバーのDNA同一のものが検出されたため、ダイバーの皮膚組織を未知の原理で変換していると推測されています。 |
SCP-XXX-JP-G |
ウエイトベルト。腰に巻いて浮力を調整する鉛製のおもり(2kg×4個)と、それを体に固定するベルトで構成されます。全てのおもりがベルトに装着されて居なければ活性化しません。 |
活性化すると自動的に脱落し、ウミヘビを模したような動きで遊泳します。ダイバーに危害を加えることはなく、食事や排泄はしませんがイエイヌ程度の知能を持っていると思われ、時折じゃれつくような動きを見せます。ダイバーが死亡すると非活性化し、活動を辞めます。 |
SCP-XXX-JPは███諸島のダイビングショップでレンタル用として使用されていましたが、不幸な偶然でライセンス講習受講者がSCP-XXX-JP物品を全て身につけてしまい異常な死を遂げたため、財団に発見されることとなりました。直接の死因はSCP-XXX-Bから発生した有毒ガスによる中毒でしたが、各SCP-XXX-JPの作用により遺体は著しく損壊されており、またSCP-XXX-Eから発せられた音により█名の死者、██名の負傷者が生じました。SCP-XXX-JPが当該ダイビングショップの備品として使用されるまでの経緯は、死者の内にオーナーが含まれたため不明です。致死性の高い効果が同時に複数作動する上、活性化の条件そのものが溺死の危険を含むため、各オブジェクト効果の確認は困難を極めました。
補遺SCP-XXX-JP: 20██/██/██の実験において、SCP-XXX-JP-Eから発せられる音が、モールス信号を用いたメッセージになっていることが発見されました。解読の結果、メッセージは以下のものでした。
ホモ・サピエンス おことわり
限りなく没に近い保留中
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPを含む船舶は財団フロント企業が買い取り、通常通りクルーズ船として営業します。客室稼働率が80%を下回らないように適宜コマーシャルや広告等で一般向けに宣伝を行い、出航までに目標に達しないことが懸念される場合は財団職員を宿泊客として動員してください。ただし、乗船する一般客については要注意団体の侵入を防ぐため事前に身元調査を行います。整備、点検、検査のための入渠は年間航海日数が200日を下回らないようにスケジュール調整をしてください。SCP-XXX-JPへ一般客が無断で立ち入る可能性は低いですが、万が一財団職員以外の人員がSCP-XXX-JPに立ち入りその異常性を認知した場合は、船舶職員として潜入したエージェントが確保し記憶処理を行ってください。実験にはセキュリティクリアランス3以上の許可が必要です。
SCP-XXX-JP-Aに対しては、1日3回のルームサービスによる食事を提供し、必要に応じて寝具類と衣服の交換及びクリーニングを行ってください。娯楽・嗜好品は予算の範囲で与えて構いません。SCP-XXX-JP-Aは収容に協力的ではありますが、一般客を招き入れることがないように厳命し、違反した際にはSCP-XXX-JPから強制的に退出させ別個に収容する旨を通達しています。また、短時間であればインタビューは可能ですが、終了後インタビュー担当者は血液検査を含む健康診断を受診してください。
説明: SCP-XXX-JPは以前はクルーズ船企業████株式会社所有だった、全長約186m、総トン数約26600トンの大型客船『█████・███』(以下、収容船と指定)内にある二等船室(部屋番号███)です。右舷側船体中央付近に位置し床面積は約15.3m^2で、収容船内の標準的なダブルの二等船室と同等の設備が備わっています。
SCP-XXX-JP内に持ち込まれた水は、未知の原理で海水へ変化します。これにはドアを通して持ち込まれたもの以外に、船内の配管を通して供給される水も含みます。海水中のプランクトンを分析した結果、収容船が存在する海域の海底付近のものと判明しました。ドック等に上架された場合は最も近い海域の海底付近のものが出現します。これらの塩分による室内の建材や調度品の傷み、テレビなど電化製品の故障は見られませんが、外部から持ち込んだものに関してはその限りではありません。
海水へと変化する速度に量は関係なく、変化前の水の純度に相関が見られます。水道水程度ならばほぼ瞬時に海水になりますが、生物の体内の水分(血液等)は非常に時間がかかり、人間がSCP-XXX-JP内に入った場合、塩分の上昇による自覚症状が現れるまで平均して3ヶ月を要することがDクラスを用いた実験により判明しています。
また、SCP-XXX-JPの収容船は、客室稼働率が70%を上回った状態で年間180日以上の航海を行う必要があり、この条件が満たされない場合、変化する液体が海水から無作為な別種のものへ変わります。供給される液体の例としては、コーヒー、魚類の血液、ジエチルエーテル、濃硫酸、SCP-███が確認されました。これらの液体は未知の原理で外部から供給しているるため周辺地域の混乱を招く上に、SCPオブジェクトの収容違反に繋がるケースがあったため、特別収容プロトコルの変更に至りました。現在SCP-XXX-JPを含む客船は財団フロント企業である『スイートクルーズ・パシフィコ(Sweet-Cruise-Pacifico)』に買い取られ、非常時以外は旅客船として営業しています。
SCP-XXX-JP-AはSCP-XXX-JP内に滞在するアカウミガメの頭部を持った身長約170cm、体重約120kgの人型存在です。首から下の体は肥満した日本人20代の男性のものに見えますが、DNA鑑定や指紋からは身元を特定できませんでした。また、やや甲高い声で日本語と簡単な英語を話すことができます。性格は非常に快活で財団の収容にも協力的ですが、記憶喪失であると主張しており、自身の来歴を語ることは出来ません。
SCP-XXX-JP-Aは、海水しか使用できない環境にも関わらずSCP-XXX-JP内で快適に生活する一方で、一歩でも外へ出ると激しい発作を起こして呼吸困難に陥ります。この発作の最中、SCP-XXX-JP-Aは大量の涙、鼻水、唾液、尿と言った形で全身の水分を異常なスピードで排泄し、およそ30分から1時間でミイラのような状態(以下、乾眠状態と指定)となり生命活動を停止します。乾眠状態のSCP-XXX-JP-Aに意識はなく生命の兆候は見られませんが、SCP-XXX-JP内に収容すると蘇生します。発作中は無論、蘇生についても激しい苦痛が伴うようで、室外での実験に対しては強い抵抗を示します。これらの異常な特性以外は、おおむね体型に見合った運動能力と外傷への耐性を持っており、加齢も人間と同程度にしているように見えます。
SCP-XXX-JPは客船として営業開始直後の収容船に不審者が侵入した事件という形で、財団に情報がもたらされました。当初、SCP-XXX-JP-Aは船員によってSCP-XXX-JPから強制的に排除され乾眠状態へ移行したところでエージェントに引き渡されましたが、一般客の目を避けるため一時的に室内へ戻したところ蘇生しました。また、関係者にはクラスB記憶処置が実施されました。なお、営業前についてはSCP-XXX-JPについての異常は確認されていません。
インタビュー記録SCP-XXX-JP-██ 日付20██/██/██
インタビュアー: ██博士
対象: SCP-XXX-JP-A
<録音開始, (日付20██/██/██)>
博士: こんにちは、SCP-XXX-JP-A。
SCP-XXX-JP-A: こんにちは。お茶は……いらないか。あんたらにはしょっぱいもんな。
博士: お構いなく。いくつか、質問させてください。
SCP-XXX-JP-A: どうぞどうぞ。
博士: まず、あなたの名前を教えてください。
SCP-XXX-JP-A: いやぁ、解らないね。
博士: 記憶がない、ということですか?
SCP-XXX-JP-A: う~ん、思いつくのはいくつかあるけど、なんだか変でね。日本人の名前っぽくないんだ。そもそも、自分の名前がいくつも思い浮かぶってのが変だろ。
博士: 念のため、それらの名前を教えてください。
SCP-XXX-JP-A: えぇと、[編集済み:名字のみだったが同姓の世帯は国内で発見できず]、[編集済み:イギリスの海洋学者と同姓同名だが、本人は健在であることが確認できた]、[編集済み:文字に起こしがたい喉を絞って咳き込むような発音]。
SCP-XXX-JP-A: 嘘じゃない。信じてほしい。
博士: 大丈夫です。
SCP-XXX-JP-A: 解ってほしいのは、俺が一番怖いのはどんな理由であれ話し相手が居なくなるってことだ。
博士: 私たちはあなたが現在の状況になった原因をお聞きしたいのです。なにか、きっかけになった事件があれば教えてください。
SCP-XXX-JP-A: そうは言ってもなぁ。自分の名前も曖昧なのに。気がついたらこの部屋に居たんだよ。そんで、不審者だって部屋から引きずり出されて、そしたら滅茶苦茶苦しくなってさぁ。実感ないけど一回死んだんだよな、俺。部屋に戻されなかったら、そのまま火葬だったのか? そう考えると怖いな。いや、ごめん、話が横に逸れた。ともかく、思い当たることがないってことは確かだ。この顔(自分の顔を指さす)で産まれてきたのか、もともとはあんたらみたいに人間だったのか、それすらも解らない。
博士: そうですか。それでは、何か他に気になることはありますか? すべて叶えるとお約束はできませんが、我々に対する要望でも結構です。
SCP-XXX-JP-A: あ……そう言えばさ、関係ないかもしれないけど、夢を見るんだ。
博士: 夢、ですか?
SCP-XXX-JP-A: そう。週に3回くらいかなぁ。おんなじ夢さ。砂浜に女が倒れててさ……若い女。海水で全身びしょびしょで……美人だったよ。
博士: 続けて。
SCP-XXX-JP-A: いや、本当美人で、思わず駆け寄って助け起こすんだ。そうすると、人工呼吸とかする前に相手は目を覚まして、俺の目をじっと見て、それで……言ったんだ。
SCP-XXX-JP-A: “お前じゃない”
SCP-XXX-JP-A:……俺は、な、なぜかその一言にすごく腹が立って……だって……いや、待て、それ……
(30秒ほどの沈黙)
博士:……SCP-XXX-JP?
SCP-XXX-JP-A: ごめん、今日はここまでにしてくれ。
以降、SCP-XXX-JPは夢の内容について話すことを拒否しています。
SCP-XXX-JPの収容船をDクラスの収容や財団職員の慰安に使う案が提出された。非常に魅力的な案なのは解るが、このクラスの旅客船を維持するのに年間█億円の予算を計上しなければならない。財団は確かに裕福だが予算は無限ではないのだよ。―日本支部理事
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは標準的な人型オブジェクト収容室に収容します。右腕は肘から先を右肩から先をセラミック製のギブスで固定し、必要に応じて拘束具を増やしてください。ただし、SCP-XXX-JP-Aの給餌の妨げとならないように、手首から先は開放状態にしてください。通常の食事とは別に、SCP-XXX-JP-Aの発現例に応じた食糧を与えます。
また、SCP-XXX-JPは現在精神的に非常に不安定です。週に1回必要に応じて週に2回以上のカウンセリング、心理療法を行い、必要に応じて最小限の睡眠薬を処方することが認められています。収容室内から金属は極力排除し、万一自傷、自殺の兆候が見られた場合は即座に非致死性の手段で無力化してください。
説明: SCP-XXX-JPは、身長176cm、体重78kgで30代の日本人の男性です。本人が自称した姓名により身元が確認され、DNA検査や歯の治療跡から本人と確定されています。後述の右腕以外に特異性はありません。家族や職場にはカバーストーリー『登山中の遭難』が適用され、対外的には行方不明扱いとなっています。
SCP-XXX-JPの右手首から先の部分は、1週間から20日の不定期な周期で、地球上で確認される様々な生物の頭部(SCP-XXX-JP-Aと指定)に入れ替わります。変化の過程はほぼ一瞬で、その生物本来のサイズは無視され、右腕の断面から生えるのに適当な大きさへ拡大・縮小された状態で現れます。SCP-XXX-JP-Aの例としては、イエイヌ、ホホジロサメ、ナイルワニ、アフリカゾウ、ハダカデバネズミ、アナコンダ、グレビーシマウマ、コウテイペンギンなど財団に収容されている約6か月間で██種が確認されていますが、脊椎動物以外は発生していません。これはSCP-XXX-JPの尺骨を脊椎代わりにしているためと思われます。また、SCP-XXX-JP-AとSCP-XXX-JPは循環器系、神経系を共有しているため、不用意な攻撃はSCP-XXX-JPへのダメージ、出血として現れます。SCP-XXX-JP-AのDNA検査結果はSCP-XXX-JPのものと同一であり、これら動物の頭部はSCP-XXX-JPの肉体が変異しているものと推測されます。
SCP-XXX-JP-Aはその頭部の生物が常食する餌料と睡眠を必要とし、もし給餌が成されない場合はSCP-XXX-JPから未知の原理で直接栄養を吸い上げます。これは通常の飢餓状態に比べ異常な速さで進行し、およそ12時間でSCP-XXX-JPは体重を最大██kg減少させ、脱水症状から昏倒し、放置すれば死亡するものと思われます。単純な栄養点滴では吸収のスピードに追いつくことが出来ず、この現象を止める手段はSCP-XXX-JP-Aへの適切な給餌のみです。X線検査では食道は途中で途切れており胃や腸などの消化器系は確認されず、摂食した物品の行き先および排泄については未解明です。
また、SCP-XXX-JPはSCP-XXX-JP-Aと大まかな感覚を共有しており空腹や適切な食糧を察知することができますが、右ひじから先のコントロールを失っています。肉食動物がSCP-XXX-JP-Aとして出現し飢餓状態へ陥った場合、SCP-XXX-JPそのものが(上記の栄養吸収とは別に)直接の捕食の対象となる場合があります。現在SCP-XXX-JPの肉体には█ヶ所の、異なる生物の噛み傷があります。また睡眠においてもSCP-XXX-JPと時間帯が一致しないケースが多く、睡眠不足に陥ることも珍しくありません。
インタビューログSCP-XXX-JP-12
対象: SCP-XXX-JP SCP-XXX-JP-Aはインタビュー時、セキセイインコの形態を示す
インタビュアー: ██研究員
< 録音開始, (日付20██/██/██)>
SCP-XXX-JP: 俺の頼みは聞いてくれるのかい?
研究員: その結論を出すために、もう少しインタビューをさせてください。
SCP-XXX-JP-A: インタービュ! インタビゥー!
SCP-XXX-JP: [約20秒の沈黙][ため息]わかったよ。
研究員: 貴方の腕について、どうしてそのようになったのかの経緯を聞かせてください。
SCP-XXX-JP: 何回も言ったはずだけど。
研究員: 再度、確認したいところがあるので。
SCP-XXX-JP: ……[約30秒の沈黙]。俺は山歩きが好きで、その休日も。
研究員: すみません、正確な日付をお願いします。
SCP-XXX-JP: [苛だったようなため息]もう半年前だ。20██年の██月██日。俺は██山に昇ったんだが、迷った。これに関しては別に妙なことはない。慢心してただけだ。よくある登山者のミスって奴だ。とにかく天候が予想を超えて急変して、それに対する備えは足りなかったし、俺は一人だった。
SCP-XXX-JP: 土砂降りで、どうしようもなかった。予定通りの下山は難しかったから、途中にある山小屋に入ったんだ。そしたら先客が居た。居たんだけど、そいつはそいつでどう見ても山登りに来たように見えなくて……医者みたいな白衣を着てた。
研究員: それで?
SCP-XXX-JP: そいつは俺が入ってきたことに相当驚いたようだったが、すぐに笑って暖かいコーヒーを勧めてきた。大きめのマグカップにたっぷりで……まて、今思い出した。マグカップに漢字で何か書いてあったんだ。
SCP-XXX-JP-A: オモイッシタ! オモッダシタ!
研究員: 漢字ですか?
SCP-XXX-JP: あぁ、普通に土産物屋で売ってる奴じゃなくてこう……ほら、会社の創立何十周年とかで記念品を作ったりするだろ? そんな感じの品だ。
SCP-XXX-JP: そうだ……日本生物……何とか研究所……みたいな。
研究員: ……続けてください。コーヒーを飲んだ後は?
SCP-XXX-JP: 何か薬が入ってたんだろうな。すぐに意識がなくなって、目が覚めたら山小屋の外に放り出された上に、右腕が……。あの目が合った瞬間は一生忘れられないな。それで、ひどく腹が減って……でもそれは、俺じゃなくて、腕の奴の空腹だったんだ、それで……。
研究員: なるほど、解りました。それでは、インタビューを終わります、ありがとうご
SCP-XXX-JP: ちょっと待てよ。俺の頼みはどうなった?
研究員: 今回のインタビューを元に検討して
SCP-XXX-JP: [立ち上がり身を乗り出す]ふざけるな!! 難しいことじゃないだろ!! 俺の同意もあるし、こんなもの治しようがないに決まってる! 俺は元の生活に戻りたいんだ!
研究員: 落ち着いてください、貴方の提案は貴方自身への負担が
SCP-XXX-JP: そんなこと解ってる!! 馬鹿にするな!![罵倒]
[椅子を蹴り倒す]
SCP-XXX-JP-A: フジャケナ! フザケルナ!! イエニカーリタィ!!
SCP-XXX-JP: [悲鳴]。うるせぇんだよ! この[罵倒]の[罵倒]鳥が!!!
[逆上し、SCP-XXX-JP-Aをギブスごと机に打ち付け始める。SCP-XXX-JP-Aはそれに抵抗するような動きを見せる]
研究員: やめてください! 落ち着いて! 鎮静剤を!!
[警備員が鎮静剤の注射を取り出し、SCP-XXX-JPに接近する]
SCP-XXX-JP-A: キリオトセ! キリオトシテクダサイ!
SCP-XXX-JP: 俺に触るな! [研究員に対して]この[罵倒]。俺の腕がワニならてめぇを食わせてやるとこだ! インコで良かったな、えぇ!? [罵倒]が!!
[警備員を振り払い、左腕で研究員に掴み掛る]
研究員: 急いで!!
SCP-XXX-JP-A: オネガイデッス!! カミサマ! モトニモッドシテ!! ヒドイ、ヒドイヨ! オカーチャン!
SCP-XXX-JP: てめぇらは俺を治そうなんて考えてねぇんだ! 俺を閉じ込めておきたいだけだろうが!!
SCP-XXX-JP-A: ツカマエル! トジコメル! ゲンジョウイジ!!
SCP-XXX-JP: 俺が食ったんじゃない俺が食ったんじゃない俺が食ったんじゃない俺が食ったんじゃない俺が食ったんじゃない……
[SCP-XXX-JPは鎮静剤を注射されて無力化される]
< 録音終了 >
インタビュー内に現れた山小屋の存在は現在確認できていません。また、要注意団体である日本生類創研の関与が疑われます。エージェントは捜査を進めてください。
SCP-XXX-JPは██県██山3合目付近において全身が血塗れの状態で登山客に発見され、その右腕の異常性から山岳救助隊に潜入中のエージェントが調査を行いました。結果、発見地点のすぐ近くに大部分の内臓、大腿部、臀部、肩の筋肉が欠損した別の登山客の死体が見つかり、傷はSCP-XXX-JP-Aの歯型と合致しました。発見時、SCP-XXX-JP-Aは[編集済み]の形態をとっており、関係者にはカバーストーリー『猛獣との不幸な遭遇』を流布したうえで記憶処置を実施済みです。
また、収容上の懸念からSCP-XXX-JPに対するカウンセリングと拘束の強化を提案します。
提案は承認されました―日本支部理事
アイテム番号: SCP-297-JP
オブジェクトクラス: Euclid Safe
特別収容プロトコル: SCP-297-JPの死亡以降SCP-297-JP-Aの変異は見られません。SCP-297-JPはサイト-8173内冷凍保管チャンバーにて収容されています。詳細は冷凍標本保全マニュアルほ-08を参照してください。死亡前の特別収容プロトコルは以下の通りです。
SCP-297-JPは標準的な人型オブジェクト収容室に収容します。右肩から先をセラミック製のギブスで固定し、必要に応じて拘束具を増やしてください。ただし、SCP-297-JP-Aの給餌の妨げとならないように、手首から先は開放状態にしてください。通常の食事とは別に、SCP-297-JP-Aの発現例に応じた食糧を与えます。
また、SCP-297-JPは現在精神的に非常に不安定です。週に1回必要に応じて週に2回以上のカウンセリング、心理療法を行い、必要に応じて最小限の睡眠薬を処方することが認められています。収容室内から金属は極力排除し、万一自傷、自殺の兆候が見られた場合は即座に非致死性の手段で無力化してください。
説明: SCP-297-JPは、身長176cm、体重78kgで30代の日本人の男性の遺体です。以下の記述は全て存命時のもので、SCP-207-JP-Aの変異は死亡と同時にウシガエル(Rana catesbeiana)の状態で停止しています。
本人が自称した姓名により身元が確認され、DNA検査や歯の治療跡から本人と確定されています。後述の右腕以外に特異性はありません。家族や職場にはカバーストーリー『登山中の遭難』が適用され、対外的には行方不明扱いとなっています。
SCP-297-JPの右手首から先の部分は、1週間から20日の不定期な周期で、地球上で確認される様々な生物の頭部(SCP-297-JP-Aと指定)に入れ替わります。変化の過程はほぼ一瞬で、その生物本来のサイズは無視され、右腕の断面から生えるのに適当な大きさへ拡大・縮小された状態で現れます。SCP-297-JP-Aの例としては、イエイヌ(Canis lupus familiaris)、ホホジロサメ(Carcharodon carcharias)、ナイルワニ(Crocodylus niloticus)、アフリカゾウ(Loxodonta africana)、ローランドゴリラ(Gorilla gorilla)、グレビーシマウマ(Equus grevyi)、コウテイペンギン(Aptenodytes forsteri)など財団に収容されている約6か月間で██種が確認されていますが、脊椎動物以外は発生していません。これはSCP-297-JPの尺骨を脊椎代わりにしているためと思われます。また、SCP-297-JP-AとSCP-297-JPは循環器系、神経系を共有しているため、SCP-297-JP-Aへの攻撃はSCP-297-JPへのダメージ、出血として現れます。SCP-297-JP-AのDNA検査結果はSCP-297-JPのものと同一であり、これら動物の頭部はSCP-297-JPの肉体が変異しているものと推測されます。
SCP-297-JP-Aはその頭部の生物が常食する餌料と睡眠を必要とし、もし給餌が行われない場合はSCP-297-JPから未知の原理で直接栄養を吸い上げます。これは通常の飢餓状態に比べ異常な速さで進行し、およそ12時間でSCP-297-JPは体重を最大██kg減少させ、脱水症状から昏倒し、放置すれば死亡するものと思われます。単純な栄養点滴では吸収のスピードに追いつくことが出来ず、この現象を止める手段はSCP-297-JP-Aへの適切な給餌のみです。X線検査では食道は途中で途切れており胃や腸などの消化器系は確認されず、摂食した物品の行き先および排泄については未解明です。
また、SCP-297-JPはSCP-297-JP-Aと大まかな感覚を共有しており空腹や適切な食糧を察知することができますが、右ひじから先のコントロールを失っています。肉食動物がSCP-297-JP-Aとして出現し飢餓状態へ陥った場合、SCP-297-JPそのものが(上記の栄養吸収とは別に)直接の捕食の対象となる場合があります。現在SCP-297-JPの肉体には複数種の生物による咬傷が█ヶ所存在しています。また睡眠においてもSCP-297-JPと時間帯が一致しないケースが多く、睡眠不足に陥ることも珍しくありません。
インタビューログSCP-297-JP-07
対象: SCP-297-JP SCP-297-JP-Aはインタビュー時、セキセイインコ(Melopsittacus undulatus)の形態を示す
インタビュアー: ██研究員
< 録音開始, (日付20██/██/██)>
SCP-297-JP: 俺の頼みは聞いてくれるのかい?
研究員: その結論を出すために、もう少しインタビューをさせてください。
SCP-297-JP-A: インタービュ! インタビゥー!
SCP-297-JP: [約20秒の沈黙][ため息]わかったよ。
研究員: 貴方の腕について、どうしてそのようになったのかの経緯を聞かせてください。
SCP-297-JP: 何回も言ったはずだけど。
研究員: 再度、確認したいところがあるので。
SCP-297-JP: [約30秒の沈黙]。俺は山歩きが好きで、その休日も。
研究員: すみません、正確な日付をお願いします。
SCP-297-JP: [苛だったようなため息]もう半年前だ。20██年の██月██日。俺は██山に昇ったんだが、迷った。これに関しては別に妙なことはない。慢心してただけだ。よくある登山者のミスって奴だ。とにかく天候が予想を超えて急変して、それに対する備えは足りなかったし、俺は一人だった。
SCP-297-JP: 土砂降りで、どうしようもなかった。予定通りの下山は難しかったから、途中にある山小屋に入ったんだ。そしたら先客が居た。居たんだけど、そいつはそいつでどう見ても山登りに来たように見えなくて……医者みたいな白衣を着てた。
研究員: それで?
SCP-297-JP: そいつは俺が入ってきたことに相当驚いたようだったが、すぐに笑って暖かいコーヒーを勧めてきた。大きめのマグカップにたっぷりで……まて、今思い出した。マグカップに漢字で何か書いてあったんだ。
SCP-297-JP-A: オモイッシタ! オモッダシタ!
研究員: 漢字ですか?
SCP-297-JP: あぁ、普通に土産物屋で売ってる奴じゃなくてこう……ほら、会社の創立何十周年とかで記念品を作ったりするだろ? そんな感じの品だ。
SCP-297-JP: そうだ……日本生物……何とか研究所……みたいな。
研究員: ……続けてください。コーヒーを飲んだ後は?
SCP-297-JP: 何か薬が入ってたんだろうな。すぐに意識がなくなって、目が覚めたら山小屋の外に放り出された上に、右腕が……。あの目が合った瞬間は一生忘れられないな。それで、ひどく腹が減って……でもそれは、俺じゃなくて、腕の奴の空腹だったんだ、それで……。
研究員: なるほど、解りました。それでは、インタビューを終わります、ありがとうご
SCP-297-JP: ちょっと待てよ。俺の頼みはどうなった?
研究員: 今回のインタビューを元に検討して
SCP-297-JP: [立ち上がり身を乗り出す]ふざけるな!! 難しいことじゃないだろ!! 俺の同意もあるし、こんなもの治しようがないに決まってる! 俺は元の生活に戻りたいんだ!
研究員: 落ち着いてください、貴方の提案は貴方自身への負担が
SCP-297-JP: そんなこと解ってる!! 馬鹿にするな!![罵倒]
[椅子を蹴り倒す]
SCP-297-JP-A: フジャケナ! フザケルナ!! イエニカーリタィ!!
SCP-297-JP: [悲鳴]。うるせぇんだよ! この[罵倒]の[罵倒]鳥が!!!
[逆上し、SCP-297-JP-Aをギブスごと机に打ち付け始める。SCP-297-JP-Aはそれに抵抗するような動きを見せ、けたたましく鳴く]
研究員: やめてください! 落ち着いて! 鎮静剤を!!
[警備員が鎮静剤の注射を取り出し、SCP-297-JPに接近する]
SCP-297-JP-A: キリオトセ! キリオトシテクダサイ!
SCP-297-JP: 俺に触るな! [研究員に対して]この[罵倒]。俺の腕がワニならてめぇを食わせてやるとこだ! インコで良かったな、えぇ!? [罵倒]が!!
[警備員を振り払い、左腕で研究員に掴み掛る]
研究員: 急いで!!
SCP-297-JP-A: オネガイデッス!! カミサマ! モトニモッドシテ!! ヒドイ、ヒドイヨ! オカーチャン!
SCP-297-JP: てめぇらは俺を治そうなんて考えてねぇんだ! 俺を閉じ込めておきたいだけだろうが!!
SCP-297-JP-A: ツカマエル! トジコメル! ゲンジョウイジ!!
SCP-297-JP: 俺が食ったんじゃない俺が食ったんじゃない俺が食ったんじゃない俺が食ったんじゃない俺が食ったんじゃない……
[SCP-297-JPは鎮静剤を注射されて無力化される]
< 録音終了 >
補遺SCP-297-JP-01:インタビュー内に現れた山小屋の存在は現在確認できていません。また、要注意団体である日本生類創研の関与が疑われます。エージェントは捜査を進めてください。
SCP-297-JPは██県██山3合目付近において全身が血塗れの状態で登山客に発見され、その右腕の異常性から山岳救助隊に潜入中のエージェントが調査を行いました。結果、発見地点のすぐ近くに大部分の内臓、大腿部、臀部、肩の筋肉が欠損した別の登山客の死体が見つかり、傷はSCP-297-JP-Aの歯型と合致しました。発見時、SCP-297-JP-Aは[編集済み]の形態をとっており、関係者にはカバーストーリー『猛獣との不幸な遭遇』を流布したうえで記憶処置を実施済みです。
なお、複数の目撃者によりSCP-297-JPは当時交際中だった女性を伴って入山したことが判明していますが、本人からの言及は未だありません。何らかの記憶処理を受けている可能性が非常に高く、当該女性は現在行方不明であることが確認されています。また、SCP-297-JPは現在重度のうつ及び強迫神経症を発症しており精神的に非常に不安定であるため、同行者についての通知及び質問は現在許可されていません。
また、収容上の懸念からSCP-297-JPに対するカウンセリングと拘束の強化を提案します。――██研究員
提案は承認されました――日本支部理事
補遺SCP-297-JP-02:20██/██/██、SCP-297-JPが突如として給餌係のDクラスに襲いかかり、重傷を負わせました。その後、鎮圧部隊が突入する約30秒間の間に収容室の壁面に頭を10数回打ち付け、頭蓋骨骨折及び脳挫傷により死亡が確認されました。
監視カメラログSCP-297-JP-20
カメラID:サイト8173は-8号カメラ
参照日時:20██/██/██ 17:05~17:08
<再生開始>
[SCP-298-JPは給餌係のDクラスを左手で殴打している。Dクラスは既に意識を失っている]
SCP-297-JP: てめぇら、██(人名:追調査によりSCP-XXX-JPの交際相手の女性と判明)に何をした!!! 何をしやがった!!!
SCP-297-JP: [罵倒]! [罵倒]!! 思い出しちまった! どうして!!
SCP-297-JP:俺は、俺の腕に、あいつが、あいつの頭が生えてきて!! [罵倒]!
SCP-297-JP:お、俺が悪いんじゃない! 俺が食ったんじゃない! 俺の。
SCP-297-JP:俺の空腹じゃない。
[SCP-297-JPが壁に頭を打ち付け始める]
[15秒後、顔面を壁に埋めて崩れ落ちる]
<再生終了>
収容室内の監視カメラからは事件当時SCP-297-JP-Aはウシガエル(Rana catesbeiana)の形態を取っており、ヒトの頭に変異した形跡は見られませんでした。そのため、監視カメラログSCP-297-JP-20における主張は耗弱状態による幻覚である可能性があります。
補遺SCP-297-JP-03:20██/██/██、██県██山6合目の断崖下から成人女性と思われる白骨化した遺体が発見され、歯の治療跡などからSCP-XXX-JPの交際相手であることが確認されました。現場の状況から滑落した後、足を骨折して動くことが出来ずそのまま餓死したと推測されています。骨からは複数の動物の歯形が見つかりました。それらの中には現地の生態系に存在しない種や草食動物ものが含まれています。関係者には記憶処理および適切なカバーストーリーの流布を実施済みです。