塩辛い物が食べたい
- SCP-3935”This Thing a Quiet Madness Made” 訳文のみ
- 翻訳「SCP-3454 ”--The Land-- DENIERS of Tall Bees”」
- 奏でるサメ魔改造
- solvexさんの原案(ハブページから引用)
- チャッキー専用の餌皿
- 英雄譚のやつ
- 投稿済みSCPの初版
- 人事ファイル初版
題名役案:静かな狂気が作りしもの
メモ:タグは付いていないが「76年」絡みの記事っぽい。「失神」「プール(水面)の下」など
特別収容プロトコル: インディアナ州の町であるサルベーションは隔離、封鎖され、街の中心から2kmの隔離領域が設けられます。近辺の街エミネンスに通じる道はすべて撤去、変更されます。財団職員は一般人の兆候が分かるように、サルベーションへの既知の旅行ルート全てを監視する必要があります。サルベーションへの侵入を試みた全ての市民は、地方自治体の管理下に移送されなければいけません。カバーストーリー3935.18 “有害廃棄物災害”が現在流布されています。
SCP-3935を含む建物であるサルベーション高等学校は財団のセキュリティ担当者により保護されています。いかなる状況にあっても未承認の人物がSCP-3935へ入ることは許可されません。SCP-3935によって何らかの影響を受けたと思われる個人は、評価のためにエミネンス付近にある臨時サイト-81-5に移動されます。
現在、本来のサルベーションの住民は生殖を行えないと予想されます。この予想からの逸脱は綿密に監視されるべきです。
現在、SCP-3935の探査は禁止されています。SCP-3935内の危険な状態のため、将来の探査はD-クラス職員に限定されます。
説明: SCP-3935はインディアナ州にあるサルベーション高等学校の下に位置する超時間的かつ超空間的な非ユークリッド空間です。SCP-3935は上記の特定の異常を示しますが、SCP-3935外でも異常現象が報告されているため、現在異常はサルベーションの町全体に影響を与えていると考えられます。これらの影響の全体の程度は明らかになっていません。
SCP-3935は、サルベーション高等学校のプールの下、建物の北西の角の近くにある地下室の崩壊した部分を通ってのみ到達することができます。SCP-3935は、連邦調査局異常事件課のメンバーによって調査され、収容された1970年代半ばにサルベーション高校で起こった変則的な活動の源であったと考えられています。彼らの調査に関する情報はこのファイル内で入手できます。
SCP-3935へのアクセスポイントは、崩壊した地下部分の約25 m下、石造りのアーチが含まれる小さな前室に存在しています。アーチの本来の作成者やどのようにして最初に地下に埋められたかは調査対象となっています。アーチにはどの文献にも存在しないと考えられる英語の語句が刻まれています:
下へと続く道はより深く、より長くうねり、
それが描き出す模様は言い表せない。
永遠に彷徨う定めの喪われた物
これこそが静かな狂気が作りし物だ。
補遺 3935.1: 発見
SCP-3935は1976年4月18日の週にサルベーション高等学校内で起こった一連の超常現象に続いて初めて発見されました(補遺3935.2参照)。学校の主要な超常活動期間が終わった後、土台の狭い隙間につながる壁と床の崩れた部分が、用務員の一員によって発見されました。地下一階の下部に存在する用途不明な地下室に存在していた崩壊した壁は、土台の隙間が人が侵入するのに十分に大きさまで劣化していました。
請負業者による被害の監査の間、独立チームのメンバーはSCP-3935近くの前室に偶然に滑り落ちました。個人を容易に外に出す方法がないため、管理者は個人にSCP-3935に少しばかり侵入し、出口があるかどうか確認するよう勧めました。個人がSCP-3935から帰ってこなかったため、請負業者と地方自治体の人員が調査を行いました。 SCP-3935に入った11人のうち2人だけが前室に戻り彼らが体験したことを説明し始めた際に、地方当局に潜入していた財団職員が調査を引き継ぎました。
時間経過とともに、サルベーション高校の外での異常現象がより顕著になり始めました。1976年4月に発生したイベントのあと、町は正式に居住を禁止され、全町民1が移転しました。
補遺3935.2: UIUファイルレポート
注記: 以下はUIUエージェントであるロニー・カーター、パトリック・ウィルソン、エラ・ヒューズにより提出されたフィールドレポートの要約です。
最高機密
連邦捜査局
異常事件課以下は1976年4月18日から4月23日まで、インディアナの町、サルベーションで起きた超常的活動を詳述する包括的な報告書です。エージェント・カーター、ウィルソン、ヒューズが報告された活動の現場に派遣されました。深刻な異常現象が発生し、この隠蔽のために追加支援が要求、採用されました。SCP財団やそのエージェントの関与は報告されていません。世界オカルト連合またはそのエージェントの関与は報告されていません。他の要注意団体、またはそのエージェントによる関与は報告されていません。
報告された超常現象の範囲確認後、派遣されたエージェントはサルベーションの全住民に110剤2を投与しました。全住人に説明が行われ、さらなる分析のためにインディアナポリスにある処理センターに移動させました。サルベーションの周囲には検疫所が設立されました。
サルベーションの住人に対する広範囲なインタビューの後、これら目撃者の証言から超常現象のタイムラインが以下のように構築されました:
日曜日夜: 10年生であるダイアン・ビースリーとカサンドラ・トンプソンが日曜日の夜に教会からそれぞれの家に帰る際、高校のそばで「誰かが地下で話そうとしている声」と形容する音を聞いたことを報告する。トンプソン氏はこのことを母に報告するが、母はそれを無視する。
月曜日: 体育の授業中、11年生のオリバー・ベーカーがプールの下から声が聞こえると主張する。 他の数人の生徒もこの話を裏付けている。学校の職員が調査を行った際は、職員は異常な物事を何も識別しなかった。プールの底の内張りの亀裂が現れていることは注目に値する。
数名の女子学生が、通り過ぎる際に2階のトイレの鏡の中に自分自身の像ではなく「顔の無いもの」を見ると報告する。 彼女らはこれにより悩まされていないように見える。
昼食のお知らせの間、多くの生徒が放送の中に第三者3の不明瞭に話す声が聞こえると説明する。 放送室はプールの近くのメディアセンターにあり、地下二階の入り口と崩壊した壁から40m以内に存在する。
火曜日: 学校に到着した生徒たちは、インディアナ州旗が旗竿の先端より3m以上上部に、何にも取り付けられていない状態で存在していることに気がつく。アメリカ国旗は見つからない。観察した際生徒は、視認すると即時に消える、旗竿からロープで吊り下げられた9人の女性の姿が見えると主張する。
新入生の生物の授業の際、一人の生徒が突然立ち上がり、白目をむいているように見える。 そして急に床に落下し見えなくなる。生徒は直後に部屋の隅にある天井パネルの上部に再出現する。その生徒の特定ができないにもかかわらず、いくらかのクラスメイトはそれは単なる冗談だと主張している4。
火曜日に数名の学生が学校で見たことのない学生を見たと説明する。出現した学生の詳細を伝えるよう強要したが誰も出来なかった。この学生の明確な唯一の特徴は、白い刺繍で「失神」と側面に書かれている、紫色の鞄であるようだ。
用務員はプールの底に立ち彼を見つめる何者かの存在を見たことを報告する。
水曜日: 学校に到着すると、保守係と用務員は、学校の全ての階に2インチの水が存在することに気づく。不可解なことに、学校の校長であるアービン・ホワイト博士は学校を閉鎖しないことを決定する。午前7時56分に、学校にいる人物全体が右の耳に何者かの「ハロー」という囁きを聞く。
学校のバンドのメンバーは、楽器がもはや音を出さないことに気がつく。 演奏している時、学生らは部屋の隅の壁の方を向いている「小さくて黒い人間の形をしたもの」が視界でちらつくのを見たと報告する。
学生の一人であるアヴァ・ライドウェイは、不可能な角度で空中を歩いて上昇しながら学校から遠ざかる黒い人影を目撃する。やがて姿は見えなくなり、再び見ることは出来ない。 他の学生はこれに対処しない。
木曜日: 体育の授業中、上級生であるネイト・ベネットがドッジボールでよけようとする際にボールが彼をすり抜ける。 彼は床に沈み始めた際に助けを求めて叫ぶ。 気付いた人は誰も彼を助けるほどの動機を持たなかったようである。
午前11時23分に学校全体が基礎から少し浮き上がる。調査を行うために訪れた副校長は、建物が再びゆっくりと接地する前に「何かたくさんの顔を持つ小さいものが、建物の下から私を見て笑っている」と説明する。
男子のロッカールームが消え、「叫ぶ何か」に置き換えられる。 目撃者はこれ以上の詳細を提示することはできない。生徒がその日に学校を去ると、彼らは学校の駐車場の約25メートル上に、45度前方に傾いている、空中に吊り下げられた9人の若い女性を目撃する。女性は静かに言葉を発するように見える。すべての目撃者はその外観を「醜い」や「形容しがたい」と表現した。女性は午後3時ごろに消失する。同時刻に 全居住者の大部分は、自分たちの下で「ハロー」という子供の声を聴いたと証言する。町の役人たちは空中の女性たちにたいして何の反応もしないため、パニックが続いている。校長は金曜日に学校を閉鎖することを決定する。
金曜日: 金曜日に学生全員が登校する。ドアがロックされており学校に入ることが出来ないため、生徒は正面玄関の外に集まり待機する。この集団の誰もなぜ彼らがそこにいたのかを説明することができない。窓を叩く音がし、全ての生徒が二回の教室の外に立つ小さく黒い人型実体を目撃する。人影は窓をすり抜けて出入りを開始する。実体は消失し、別な窓で出入りを開始する。目撃者はその動きを「不気味、不安定、痙攣している」と表現する。実体が消失すると正面扉のロックがひとりでに解除される。学生は学校に侵入する。
学校内部は非ユークリッド空間になっている。生徒が空間の「後ろ」に近づくにつれ、彼らは自身が空間の中ではなく下に向かって動いている事に気がつく。すべての生徒がこの時点で囁きを聞いており、グループの端にいる数名は遠くの太鼓の音を聞いている。 遠くにはSCP-3935につながる前室が見える。 突然、学生全員が空間の外に50m移動し岩石と大地に閉じ込められる。学校への再出現までの間生徒はこの区域に閉じ込められ、約20秒を過ごす。
すべての学生は、自身は建物内にいる唯一の人物であり、廊下を少しの時間彷徨い「出入口の下の出入口」を通り、小さな地下室に入ったと報告する。地下室の内部についての生徒の報告には三つの別々な風景が含まれている。一つは水の上に身を投げ出しており足の周りには血が広がっている、腕を伸ばし肘まで水につかっている女性、二つ目は上空に9体の人型がぶら下がっている、炎上する林の中に存在する農家、そして手が腐り落ち始めるまで畑を掘り返す泣いている女性である。一度幻覚が引くと、小さな黒い人型実体が現れる。学生は実体が再び「ハロー」と話すのを聞き、すぐに9人の悲鳴を上げる女性の人型に囲まれると、突然自身の家にいる。
追加のエージェントが被験者に記憶処理を適用するために町に入るのを開始すると、町の周辺でさらに異常な活動が報告される。何名かの住民は空にぶら下がっている死体を見ると報告する。またいくらかの住民は、蛇口から水の代わりに流れ出る人間の髪と粘液を報告する。更にいくらかの住民が町中に顔の無い生物を目撃したことを報告する一方で、ほかの住民が自身の顔の特徴が完全に消えたかのように感じることを伝える。まったく身動きしない黒い人型実体が、町の主要な道をあちこちに、狂ったような急速かつ持続的な出現と消失を行っているのか確認される。
1人の未確認の女性が、泣いている若い女性が学校の建物に走って戻ってきていることを報告する。彼女に追随し開け放たれた地下に向かうが、若い女性は見つけられず代わりに崩壊した床の最初の報告者となる。
余波概要: 数日後、UIUの記憶処理が効果を発揮し始める。ほとんどの町民は、彼らが見た物が工場から南に吹き込まれた有毒ガスによる幻覚であると容易に確信している。次の週の終わりに、学校への被害を評価している請負業者は地下室とSCP-3935への入り口を発見する。その後財団の関与が始まる。
補遺 3935.3: 最初の探索ログと回復ログ
注記:以下のログは、最初のSCP-3935内部への財団による捜索および救助の試みから回収されたオーディオおよびビデオの採録です。
[ログ開始]
エリス: よし、マイクのスイッチもオンになってる。 行こう。
エージェント・エリス、ポーター、ハスケルがSCP-3935に侵入する。それぞれの肩にはトーチが装備されており、前室を越えた空間に入ると点灯する。
エリス: よし……大事なことだが、間違いなく何かが起こっているら……ここではな。(静止) 壁が狭くなってきてる。離れるな。
隊は前進を続ける。
ポーター: 感じるか?
エリス: 何を?
ポーター: 空気が変だ。
ハスケル: そうだな、それと壁が……見ろ。
肩のトーチがエージェント・ハスケルの隣の壁を照らす。小さな子供が描いた様な絵が岩に刻まれている。エリス: こっちに来い、微かな風を感じる気がする。多分、ここに開口部がある。
隊は引き続き岩窟を突き進む。
ポーター:クソッ、ここは……ほとんど動けねぇ、壁が狭すぎる。エリス、俺 ―(突如切断される)。
エージェント・ポーターのカメラが暗転する。その後、2つの光源、恐らくはエリスとハスケルのトーチを見上げるかのような構図の映像が映る。エージェント・ポーターは落下している。
ポーター: (断続的な叫び声)
エリス: 一体何が起こった? ポーター?ポーター?どこに― 周りを見渡せない、やつはどこにいった?
ハスケル: 何か後ろから来る音がしてる、移動しなければ、早く!
両者は前進を続けるが、狭い空間が彼らの動きを妨げる。短時間の奮闘の後、二人はより広けた空間に倒れ込む。
エリス: 畜生が、できなかった― ポーター、どこだ?ポーター?
ハスケル: 俺の後ろにはいない、そこに彼がいるか見えるか?
沈黙。
エリス: 俺たち……OK。俺たちはここに別な隊を派遣する必要がある。やつはおそらく渓谷かなんかに落ちたか、そこに滑落したか、あるいは―
ハスケル: エリス……見ろ。二人は自身らがいる空間を、肩のトーチで照らしながら見回す。正面には、周囲の石から彫りだされた巨大な構造物が存在する。濃い霧が空間全体に充満している。霧の向こう、構造物の開口部内に薄暗い明りが灯っている。構造物の高さを想定することは不可能である。構造物は、エージェントと向こう側の壁との間の大きな溝を横切って伸びる狭い石橋を介してのみ到達可能である。
エリス: あれは…… 高校か? 何であんな風に見えるんだ?
ハスケル: あぁ……、形は正しくない。だが……おい、そこを見ろ。 あれはメインエントランスだ。もう一つのドアがそこにあるだろ、そうだ。 これはあの学校だ。 (静止) その下に別なのがある。そしてその下にもひとつ。
エリス: どこまで下に続くんだ?他のもあそこに―
二人は動きを止める。彼らの前にある橋の上に、9体の女性型の人型実体が出現する。実体の顔は白い長髪で覆われている。実体は動かない。
ハスケル: エリス?
エリス: 待て。
9人の人型実体は短い間空中に吊られていたかと思うと、突然10m後方に現れ、更に10m後方に再出現し、その後地下の学校校舎の扉正面の空中に短時間出現する。距離の為記録では確認できないが全ての実体の顔が視認可能になり、エージェントらは顕著に後ずさりする。その後全ての実体は消失する。
ハスケル: 畜生、クソが― あのクソッタレはなんだったんだ?
エリス: (荒い息遣い) よし、わかった、俺たちはこれに対して何も用意してない、自分らは―
突如として遠くから静かな調子のたくさんの声がする。二人は音に対して反応する。
ハスケル: 調査隊?生存者?
エリス: 来い、行くぞ。
二人のエージェントは溝にかかった橋を渡り、サルべーション高校の非ユークリッド的複製に向かう。進入した彼らは学校のメインコンコースを発見する。内部に視認可能な実体は存在しない。
ハスケル: ポーター? 誰か? 誰かそこにいるか?
エリス: この感じは― クソ、お前もこれ感じるか?全部の部屋を一度に見てるみたいだ。
ハスケル: ああ、なんてこった― 壁が意味をなしてない。エリス: 来い。 こっちの下から声が聞こえる。行くぞ。
二人は素早く最も近い廊下を移動する。そうするうちに壁の両側にあるドアを見つける。二人は気がついていないようだが、出入り口のガラス窓からたびたび顔が覗いている。二人は認識していない。
エリス: ここだ、これは視聴覚室の扉だな。きっとこの中に彼らが―
エージェント・エリスが扉を開く。その際エリスのビデオレコーダーが切断される。エージェント・ハスケルが叫び、後方によろめき倒れる。急激に声量が増加し、ドアの近くの地面にいるハスケルの映像視点は、エージェント・エリスを取り囲むように出現した9体の女性の人型実体を映す。彼女らの動きには一貫性が無く、体は不可能な姿勢に歪んでいる。実体はエリスに近づき、エリスと実体は消失する。ハスケル: クソ!クソ!エリス!あぁ― チクショウ!
エージェント・ハスケルは立ち上がり扉からの逃走を始める。廊下の端に到達する際、彼は自身の肩越しに後ろを確認し、9つの実体が接近しているのを見る。
ハスケル:あぁ、クソ、! クソ!!ダメだダメだダメだ!誰か? 誰かそこにいないか?助けてくれ!神サマ、頼む、助けてくれよ!誰か?チクショウが、頼む、神サマ、助けて!
エージェント・ハスケルは自分の後ろにある廊下にいる9体の実体を見るべく再び振り返るが、実体は既に前進していない。その代わり、ハスケルのペースが遅くなる一方で実体は動かないまま宙に浮く。ハスケルは暫くそれを見て、その後停止する。彼の呼吸は速くなっていく。
ハスケル: な― 何?お前らは何がお望みなんだ?
エージェント・ハスケルがゆっくりと後ろに振り向くと、廊下の天井に逆さまに座っている小さく黒い人型実体と向かい合う。実体には目に見える特徴はないが、ハスケルのカメラに大きな視覚的歪みを作り出す。
未確認の人物: ハロー。
鐘が鳴るような低く大きな音がする。音は20秒間続く。エージェント・ハスケルの映像通信が故障する。音声通信も、あたかも信号が長時間にわたり引き伸ばされるかの様に酷くゆがみ始める。スナップノイズがした後通信は沈黙する。暫くの間三つの信号は沈黙する。最終的に三つの無線機は再び応答を開始する。
エリス: ―ただ生きていたい、お前もそうなんじゃないのか? (静寂) ああ、そうだ、俺たちは全員死ぬだろう。全員死ぬ。あの9人はもうたくさんだ、俺たちは皆― (静寂) 奴らが戻って来た。奴ら戻っ―
81分間の沈黙。
ハスケル: ―壁は他の全部と一緒だ。この廊下は他の全部の廊下と一緒だ。下に下に下に下に、ダメだダメだダメだダメだもうやめてくれ、これ以上下れない、これ以上―
18分の沈黙。
ハスケル: エリス、あぁ、誰か聞こえてるか? (叫び) 誰か俺が誰だか知ってるか? 何処にも明かりが見えないんだ!何も見えない―あぁ神サマ、真っ暗だ、暗闇しかない。せめてもう一度光を見―
9分間の沈黙。
ハスケル: (笑いと支離滅裂な発話) -10番目は下に、10番目は狂気、それは目覚め、ここには9人いるが10番目は下に、神よ、ただそれを―
9分間の沈黙。
ポーター: (叫び声)
9分間の沈黙。
ハスケル:君が下にみえるよ。入ってきてほしいのかい? 君は俺に……俺たちに下ってきて、んで君と一緒に、下って……(湿った、くぐもったむせる音。 ぴしゃりという音。 痛烈な息を吸う音。湿ったむせる音。沈黙.)
9分間の沈黙。
エリス:永遠に落ちる! 永遠に落ちる!永遠に落ちる!永遠に落ちる!永遠に落―(マイクを突き抜ける風の音。)。
9分間の沈黙。
ポーター: ―ずっと落ちてる。永遠に落ち続ける。俺たちは永遠にこの中にいる。もっと多くの9人を、もっと多くのサルベーションを、永遠にいつまでも落ちる。奴らの誰も外に出なかった。誰も外に出なかった。彼らの誰も 外に―外にー外に出てない出てない出てない出てない― (空電)
未特定の声: (ポーターの通信を通じて) ハロー。ポーター: (泣き声)
ポーター: (空電)
この時点以降、3つのマイクからの受信された送信はこれ以上ない。D-クラス被験者を用いたSCP-3935の探査が可能な否かの試みが近々行われる。
[ログ終了]
補遺 3935.4: サルべーションでの超常現象
以下は財団が町を占領している際に職員により報告された、インディアナ州サルベーションでの超常現象事件です。
- UIUエージェントの服装をした、高校に向けて個人を誘導しようとする人物の報告。この人物は観測が長すぎる場合消失する。
- エージェント・ウィルズは車に接近する際、小さな黒い人影が車両の下に座っているのを見たと報告した。車の下を見たあと、その人影はそこになかった。エージェント・ウィルズはその後常に周辺視野に黒い人影を見ると報告している。
- 高校の近くの森林から音が聞こえるという多くの報告。森林の調査では荒廃した寝室が一つある家屋と裏庭の9つの[削除済み]のみが発見された。吊られた9体の女性実体の出現により探査チームは逃走した。さらなる森林の調査では家屋を発見することはできなかった。
- 日没後、多くのエージェントが、暗闇の中で自身の方に痙攣しながら移動し、到達する直前に地面に滑りこみかき消える9体の女性人型実体5を目撃したと報告する。森林の中で似た存在が報告されている。
- 町の外の小さな池の底から浮かびあがり、再び沈み消失するまで水面に留まるいくつかの遺体(一度に9体まで)の報告。 森の中の家の裏庭に現れた9つの[削除済み]に何らかのつながりがある可能性がある。
補遺 3935.5: 要注意人物へのインタビュー
注記: 以下のインタビューは2002年にエージェント・ライアン エイムズにより行われました。対象であるバレリー・フレッチャー夫人は1976年の超常現象の期間中、サルべーション高校の教師でした。
[ログ開始]
エージェント・エイムズ: サルべーションにいた時の貴方について教えていただけますか?
フレッチャー夫人: あら、ええと…… ご存じの通り、私は既に記憶喪失についてはお話ししました。何もかもを一緒に筋道立てることがもう出来ないようで6…… 私は教師で、ええと。 私は、うーん……英語を教えていて、そうです、はい、私はしばらくの間サルべーションにいました。
A. エイムズ: 町について教えていただけますか?なにか目立った出来事は?
フレッチャー夫人:ええと…… 静かでした、ご存知でしょう。一本道が通っていて、そのまま外に続いています。それほど多くの人が越してくるところではなかったので、極めて密なコミュ二ティでした。警察がいる事さえ考えたことがありません、だって誰が必要とするのです?犯罪なんてありません、本当に。(静止)噂話をする人はいつだっているものです。彼らは……
A. エイムズ: 大丈夫ですか?
フレッチャー夫人: 何かしら?ハロー?ハロー?
A. エイムズ: ちょうど噂話をする人について喋ろうとしていたんですよ、フレッチャー夫人
フレッチャー夫人: あら。若者たちは森にいっては、そこで見たと思っている幽霊だか亡霊かのことで神経をとがらせていたんです。 (静止) 奇妙なことがいくらかありました。えぇ、私はそれらが実際に起きた不思議なことであったかどうか、あるいは私の記憶に問題が起きているだけなのか分からないのですが。 確か…… 時々、通りを運転しているときに、道の横に誰かが立っているのが見えて、こんな風に手を振るんです。でも、振り返るとそこには誰もいない。きっといたずらする子供たちだったんでしょう。
A. エイムズ: 高校については?なにか不思議なことは起こりましたか
フレッチャー夫人: 高校?
A. エイムズ: あなたが教師をしていたところです。サルべーション高等学校では?
フレッチャー夫人: 私は……えぇ、私は教師でした。英語を教えていた、そう思います。
A. エイムズ: あなたは学校で何か奇妙なことが起きたことを覚えていますか?
フレッチャー夫人: いいえ……いや、何と言うのでしょう、普通じゃないことはありませんでした。 一度一人の生徒が消えたことがあった、と思います。彼女を最後に見たのはプールの傍で……そのあと誰も二度と姿を見ることはありませんでした。確か― ええと、確か最終的にはただの家出だろうという結論になったはずです。生徒のうちの何人かは問題児で、わかるでしょうが、厄介でした。そして周りにできることはまったく何もありません。あの子にとってもあれで良かったんじゃないでしょうかね。サルべーションの中にはいくらかの強い主張を持つ人たちがたくさんいて、その内の何人かは若者にとってあまり納得しがたい人たちでした。
A. エイムズ: どういう意味です?
フレッチャー夫人: あら、お判りでしょう。教会は街にとってとっても重要で、住民がほんの少しでしたから、ほとんどみんな行っていました。ですが、覚えていることが正しければ、妊娠した女の子が一人いたと思うんです……ごめんなさい、私達何について話していましたっけ?私は……なんでしたっけ……ハロー?
A. エイムズ: 妊娠した少女が。
フレッチャー夫人: そうそう、婚姻を結んでいなかったから、かなりのスキャンダルでしたよ。彼女に何が起きたのかは覚えてないんですが、多くの人がその事で動揺したことは覚えています。(静止)分かっていると思いますが、私はその女の子の名前を覚えていなくて……いいえ、いいえ……でも彼女が私の所に来て、彼女が聞いた奇妙なものについて私に尋ねたことが一度ありました。彼女は妊娠していました、婚姻関係がないのに。かなりのスキャンダルだったし、そして― ええと、男の子達に見てほしくなかった、でも……彼女は観覧席に座り、ある― ある叩く音をずっと聴いていると言ったんです。誰かが叩いているような……何かを叩き続けている……彼女は望んでなかった……男の子たちに……彼らにしてほしくなかった―
A. エイムズ: フレッチャー夫人?
フレッチャー夫人: ごめんなさい、今はまったく終わったことです。彼女、うう、彼女は時々何か見えるとも言っていましたが、その事について私は何も知りません。それと彼女は……ええと、夢かそうじゃないかわからないけれど、彼女が私に向かってハローと言ったことは 覚えています、何度も何度もです。突然、あまりにも突然、挨拶じゃないみたいに。彼女が知っている唯一の言葉の様に……あの一瞬、まるで……まるで彼女の全部が……ハロー?A. エイムズ:サルべーションについてなにか他に覚えている事はありますか?
フレッチャー夫人: 私は…… (静止) それ以降のことは、全部一緒に霞がかっています。私はある時のことを覚えているようですが……そのときは、あ、ええと、誰かが女の子を見つけて……多分、同じ……ええと、わかりません、 ですがその子は首吊りの様に森の中で吊るされていました。彼らは自殺と言っていたと思います、彼女はチアをしていた女の子の一人だと、えぇ、ですが、ううん、誰だったか……ええと、何故あの子があんなことをしていたか私にはわからないのです。彼女はメモを持っていて、うう、何かについて書かれていて……ううん……すみません、とにかく、彼女の手にはノートがありました。実は、私はそれを見に来てほしい、筆跡やら何やらが同じかを確認してほしいと頼まれたんです。
A. エイムズ: なんとありましたか?
フレッチャー夫人: あぁ、ええと……覚えてることがあっていれば、その片方の面には、あった、落書きみたいなものがありました。 建物のような、でも奇妙な何か……なぜか思い出せません。もう一つの面には一つの言葉が何度も上書きするように書かれていました……何だったかは思い出せません、それはwetか……そういう感じで、理解のしようがないものでした。今思うと、とても奇異でした……そう思う……死ぬ直前に書くには何て奇妙なことでしょう。そう思わないですか?
A. エイムズ: 避難した週の出来事を何か覚えていますか?
フレッチャー夫人: いえ、いえ、 ええと……、私がいいたいことは、あの週は蒸気がとても凄かったです、工場からのが。 彼らは幻覚を体験するかもしれないと言っていましたが、私は間違いなく……見ました、見たんです、何か見たと思うんです。見たのは……ええと、ある日の私は、一人の子供が後ろに漂いながら壁に吸い込まれて……ええと、そして、その子が、ううん……窒息するのを見たと思いました。彼が壁に叫んだり、壁を叩くのをききました、みんながそうでした。それは……奇妙な幻覚でした。彼は止まって……ごめんなさい、私はここで何をしているんでしょう?
A. エイムズ: お話しているだけですよ、フレッチャー夫人。自分は保険会社と一緒に来ました。幻覚についてお話していたんです、覚えてますか?壁の中の少年については?
フレッチャー夫人: あら、そうでした。ごめんなさいね、私もうあまりはよく覚えていなくって。その幻覚は……私は少年が吸い込まれるのを見て、そのあと私たちは何も聞きませんでした。 今考えてみると、とても奇妙なことでした。その幻覚はとってもはっきりしていて、彼は……とても長い時間泣いて、とても怖がっているように見えました。でも……ええと…私は……私はそれを気にして覚えていない様です。私は……私はそれはただの― いたずらだったと思います。
A. エイムズ: 最後に一つ質問ですが、フレッチャー夫人。地震の後、プールの近くの地下の下に部屋を見つけたんです。そのことについて何か知っている事はありますか?
フレッチャー夫人: (居心地が悪そうに見える) いいえ、私は― 用務員以外の誰もその部屋に入ったことは無かった、そう思います。ただの物置き場ですよ。ですが……(静止)そうそう、あの女の子が一度その部屋について尋ねたことがありました。彼女がいうには……まぁ……そこから何か物音を聞いたらしいのです。彼女はそれにとても興味を持って、思うに彼女がああなる前の……まぁいずれにしても。でもわからない、私の記憶は正しく覚えていないかもしれません。私は― ええと、幻覚のいくつかは、ご存知の通り、彼らがそれらについて考えないようにしなさいって私たちに言ったから、そうしないようにしています。ですが……私は同じ経験をした他の人もいくらか知っています、ですが彼ら…彼らもうまく対処できているわけではありません。
A. エイムズ: お時間ありがとうございます。フレッチャー夫人。 (退出のため立ち上がる) そうだ、帰る前に、これについて何か知っていませんか?(9体の不明な女性実体を撮影した写真を見せる。)
この時、対象は著しく蒼白となり、息を切らす。
フレッチャー夫人:ええ……知っています。これは、うう。チアリーダー達です。(静止) チアリーダーには、ええと、よく考えさせて……チアリーダーは10人いました、そう思います。彼女らの一人に何も起こっていなければ、間違いなく10人です。
タイトル訳↓
The Land DENIERS of Tall Bees
ミツバチ高身長説否定論者の土地
アイテム番号: SCP-3454
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 高身長ミツバチの土地を離れる人物は、SCP-3545の一例かどうか判断できるまで質問を受けなければいけません。SCP-3454個体の封じ込めは即時に行われます。サイト-BEESの主任研究者は以下のことを義務付けられます。
Any individual leaving the Land of Tall Bees is to be interrogated until it can be determined whether or not they are an SCP-3454 instance. Containment of SCP-3454 individuals is to be enacted immediately. The Lead Researcher of Site-BEES is tasked with:
- SCP-3454である個体に対し何を行われるかを決定し、
- 高身長ミツバチの土地を地球上の全人類へ、一度に一人ずつ、財団の職員を優先して紹介する最善の方法を確定する。
- determining what is to be done with individuals who are SCP-3454, and
- ascertaining the best way to introduce the entire population of Earth to the Land of Tall Bees, one person at a time, with Foundation personnel given priority.
研究は継続中です。
Research is ongoing.
説明: SCP-3454はミツバチは背が高いということに同意しない個人の総称です。
SCP-3454 is the designation for individuals who don't agree that the bees are tall.
高身長ミツバチの土地7はオンタリオ州ナイアガラフォールズに存在する、放棄されたターゲット・カナダの店内にある時空間的裂け目89を通じてアクセスできます。ミツバチはとても背が高いです。
The Land of Tall Bees10 is accessible via a temporospatial tear1112 located inside an abandoned Target Canada store in Niagara Falls, Ontario. The bees are very tall.
高身長ミツバチの土地のポータルは2016年にミツバチとその背丈を理解した個人により発見されました。多くのSCP-3454個体が警察に連絡を取り、彼ら自身が異常であることを報告したこと(?)により、財団はポータルに注目するようになりました。場所を確保した後、財団職員が高身長ミツバチの土地へ派遣され13、サイト-BEESとして運営されることになりました。
The portal to the Land of Tall Bees was discovered in 2016 by an individual who understood the bees and their tallness. The portal was brought to the Foundation's attention after numerous SCP-3454 instances contacted the police, outing themselves as anomalies. After securing the location, Foundation personnel were introduced to the Land of Tall Bees14 and the location began operation as Site-BEES.
何故いくらかの個人がSCP-3454であるかは現在も不明です。不幸なことに、個人がSCP-3454であるかを判断する唯一の方法は、彼らをポータルを通じて送ることのみです。この方法はしばしばミツバチを混乱させます。背が高くならないように。ミツバチが動揺します。
It is currently unknown why some individuals are SCP-3454. Unfortunately, the only way to determine whether or not an individual is SCP-3454 or not is to send them through the portal. This often upsets the bees. You do not want tall, upset bees.
SCP-3454である兆候は以下の通りです:
- ミツバチと話したいという欲求が存在しない。
- ミツバチへの関心がない。
- 促されることなくミツバチは背が高いと述べない。
- サイト-BEESの運用を妨げる。
Indications of being SCP-3454 include:
- lack of desire to discuss the bees
- disinterest in the bees
- not stating the bees are tall without being prompted
- interfering in Foundation operations at Site-BEES.
補遺3454-01: 実験ログ
テストは、すべてのサイト-BEESスタッフが高身長ミツバチの土地に導入される前に開始されたことに注意してください。 いくつかの議論のすれ違いが続きます(?)。
Addendum 3454-01: Testing Logs
Note that testing began prior to all Site-BEES staff being introduced to the Land of Tall Bees. Some tonal inconsistencies persist.
日付: 05/08/2017
実験番号: 1
被験者: D-0901、35歳、複数の自動車盗難で有罪判決を受けている。
方法論:SCP-3454高身長ミツバチの土地に人間が接触するはじめての記録。
実験結果: 被験者はSCP-3454高身長ミツバチの土地のポータルに右腕を伸ばす。被験者に有害作用の兆候は見られない。15
前研究主任であるページ博士が二回目の実験を開始する。被験者は繋がれ、カメラを装着した状態でSCP-3454高身長ミツバチの土地のポータルを通じて送られる。探索は三分間続き、被験者は無事に帰還する。記録: 被験者が実験終了時に「おい、背の高いミツバチでいっぱいだ!」と叫んだことは注目に値する。16
Date: 05/08/2017
Test Number: 1
Personnel Involved: D-0901, age 35, convicted of multiple automobile thefts
Methodology: Initial record of human interaction with SCP-3454 the Land of Tall Bees.
Test Results: Subject directed to extend right arm through SCP-3454 the portal to the Land of Tall Bees. Subject does so without adverse effect.17 Doctor Page, former Lead Researcher, commences with second test. Subject is tethered and given a camera before being sent bodily through SCP-3454 the portal to the Land of Tall Bees. Exploration lasts three minutes, and subject returns unharmed.
Notes: Subject was noted to exclaim, "Dude, it's full of tall bees!" upon exiting.18
日付: 06/08/2017
実験番号: 5
被験者: D-0901、D-9310、 エージェント・クック、エージェント・ブロック、 ベシッグ博士、アダム博士、マーズン上位研究員。
方法論: ミツバチがどのくらいの高さかを調査する.
実験結果: 被験者は測定テープを持参し、高身長ミツバチの土地へのポータルに入る。 テープはミツバチを測定するのに十分な長さではない。19ミツバチの高さの平均が3.6 m以上であることが確認された。
記録: この実験は承認されていません。SCP-3454が私のチームに悪影響を及ぼしていると思われます。情報災害対応チームが対応できるまで実験の一時中止を呼びかけます。 - ページ博士 (SCP-3454前主任研究員)
Date: 06/08/2017
Test Number: 5
Personnel Involved: D-0901, D-9310, Agent Cook, Agent Block, Doctor Wessig, Doctor Addams, Junior Researcher Mazn
Methodology: Find out just how tall the bees are.
Test Results: Subjects enter the portal to the Land of Tall Bees with measuring tapes. Tapes are not long enough to measure the bees.20 Average bee height confirmed as being greater than 3.6 meters.
Notes: This test was not authorized. I suspect SCP-3454 is having an adverse effect on my team. I am calling a moratorium on testing until we can get an infohazard response team down here. - Dr. Page, former Lead Researcher, SCP-3454
日付: 07/08/2017
実験番号: 11
被験者: D-0901、D-9310、エージェント・クック、エージェント・ブロック、アダム博士、マーズン上位研究員、ソーヤー博士、ソーヤー博士、 ケンザキ上位研究員、ホワイト上位研究員、D-10008、パテル博士、エージェント・Weathersby(ウェザースバイ?)エージェント・コンテ、エージェント・リヒター、エージェント・キメル、チョードリ上位研究員、チャン博士、リーブス博士、エージェント・ジョン・リーブス、エージェント・カーザン、ゴベル上位研究員、 D-8624、SCP-3454-14521、くぎ抜き付き金づち
方法論: ミツバチの背が高いことをSCP-3454-145に納得させる。もう一度。
実験結果: SCP-3454-145は20分間の質問の後に反応しなくなりました。 SCP-3454-14422と同じ結果です。
記録: なぜSCP-3454がそれほど難しいのですか? - アダム博士(サイト-BEES主任研究員)2324
Date: 07/08/2017
Test Number: 11
Personnel Involved: D-0901, D-9310, Agent Cook, Agent Block, Doctor Addams, Junior Researcher Mazn, Doctor Sawyer, Doctor Sawyer, Junior Researcher Kenzaki, Junior Researcher White, D-10008, Doctor Patel, Agent Weathersby, Agent Conte, Agent Richter, Agent Kimmel, Junior Researcher Chaudhury, Doctor Zhang, Doctor Reeves, Agent Jones-Reeves, Agent Cartham, Junior Researcher Godel, D-8624, SCP-3454-14525, a claw hammer
Methodology: Convince SCP-3454-145 that the bees are tall. Again.
Test Results: SCP-3454-145 became unresponsive after twenty minutes of questioning. Same result as with SCP-3454-144.26
Notes: Why are SCP-3454 so difficult? - Dr. Addams, Lead Researcher, Site-BEES2728
アイテム番号: SCP-983-JP-RE
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 野生のSCP-983-JP-RE個体は発見され次第捕獲し、サイト-1345に輸送してください。SCP-983-JP-RE個体はサイト内の大型魚類収容用生簀で飼育されます。実験時のみSCP-983-JP-RE個体はサイト-1345に設置された容量600tの水槽に1匹ずつ収容します。生簀、および水槽は1週間に一度無人機による点検を行い、異常が見つかった場合は水槽区画を封鎖し補修を行ってください。実験の際は水槽上部の投下口から実験用品を投下し、回収する際は静動ロボットで回収してください。
SCP-983-JP-RE内の異常空間の調査にはオブジェクト担当者の承認が必要です。
説明: SCP-983-JP-REは主にアメリカ大陸東部湾岸の一部に生息するホホジロザメ(Carcharodon carcharias)のメスです。SCP-983-JP-RE個体の子宮29内には空間異常が生じており、およそ17m ×6m × 9mの長方体の空間が存在しています。この空間には後述の期間を除き、他の物体は存在しません。
SCP-983-JP-REは交尾後に、音を発している物体(以下「対象」とする)を優先的に捕食するようになります。対象には本来の捕食対象に含まれるイルカやシャチなどの動物の他、エンジンにより駆動する船のような、本来は摂食不可能な物も含まれています。対象をある程度摂食した30SCP-983-JP-RE個体は、腹部から様々な音声(詳細は以下の実験記録を参照)を生じるようになります。この間、異常空間内には様々な実体が出現します。全ての事例において空間内に共通して存在するのはSCP-983-JP-REの受精卵です。受精卵は異常空間の中央部に、自身から伸びるひも状の組織で天井からつりさげられる形で存在しています。加えて、再生される音声により異なる実体が1体以上出現します。この実体は道具を使う、本来発声する事の出来ない音を用いるなどして概ね音楽理論に乗っ取った音声を奏でています。実体はSCP-983-JP-REの出産時に溶解し、成長した胎児と共に体外に排出されます。
なお、発せられる音声は他のホホジロサメの受精直後の卵にも影響を及ぼし、同様の異常性を獲得したメスが生まれることが明らかとなっています。この性質を利用してSCP-983-JP-REは、各個体が捕食した音源を共有している事が考えられます。
以下の記録はSCP-983-JP-REに対して行われた実験の一部です。全ての記録はサイト-1345内の試料保管室にて閲覧可能です。
実験記録983-1
給餌オブジェクト: 木片
構成音: 木片と収容室の床の衝突音のみ
再生された音声: 既知楽曲と一致しないCメジャースケール、4/4拍子、♩=150の音楽。
特記事項: 木製打楽器と推測される音が混在。備考: この木片と収容室の床の衝突音を記録した音声ファイルをスピーカーで再生し、捕食させた場合も同様の結果が得られた。加えて、別個体でも同一の音声が生じた事から、SCP-983-JP-RE個体から発せられる音には個体間の差が無く、構成音依存的に生じていると考えられる。以降の実験では音声再生にスピーカーを使用。
実験記録983-5
音源: 木片、鉄パイプ
構成音: 木片、鉄パイプと収容室の床の衝突音など。
再生された音声: ショパンの「ワルツ第6番変ニ長調 作品6431と一部が合致。
特記事項: SCP-XXX-JPは未知の方法により既存の音楽を模倣することが出来る可能性が存在する。なお、構成音以外に、スネアドラムと推測される打楽器の音がリズムにはまったく一致しない形で使用される。
実験記録983-22
音源: CD(”Oasis”32が1995年にリリースしたアルバム”Morning Glory”)。
構成音: ”Morning Glory”収録楽曲のみ。
再生された音声: 収録曲を切り貼りする形で形成された、主に既知の楽曲と一致しないメロディックマイナースケール、5/4拍子、♩=240の音楽。
特記事項: 複雑な音を持つ音源に対する反応を調査する実験。音源は研究班の所有する物からランダムに選択された。発生した音声には11/8から4/6への変拍子が存在。アルバムの曲を切り貼りした形で未知の楽曲が再生される。時折アルバムの楽曲と同一のフレーズが入った。観察途中、一体の実体がSCP-XXX-JP個体から排出された。この実体は小型のイヌの様に見えたが、排出後即時に溶解し詳細な観察を行うことが出来なかった。この実体の出現によりSCP-XXX-JP個体内部に何らかの空間以上が生じているという推測がなされた。
実験記録983-27
音源: サイト-1345の食堂に設置されたレコーダー。
構成音: サイト-1345の食堂内の様々な音(11:30~12:00の30分間の音声)。
再生された音声: 複数の木製の楽器を叩く音。音源の由来は不明。
特記事項: 財団がSCP-983-JP-RE内の異常空間の存在を認識してから初めての実験。異常空間内に侵入した記録装置には、5体のアシカの形状を持つ実体が拍子木やカスタネットなどの木製打楽器を咥え、空間中央に存在するSCP-983-JP-REの受精卵を取り囲み、独特のリズムを取りながら走り回る様子が記録された。受精卵から胎児が孵化した後から出産までの間、胎児が少しずつ実体を消費していく様子も見られた。胎児は問題なく誕生した。
実体は形態分類ではカリフォルニアアシカと推測されるが、本種はアメリカ大陸西岸を生息地としており、SCP-983-JP-REの主な生息地と一致していない。
実験記録983-29
音源: ウィリアムズ研究員の所有する音楽プレイヤー。
構成音: "No.9"33。
再生された音声: 実験音源音源及びそれ以外の音声で再現された、倍速で再生される ”Lycanthrope”34の「Elena will die twice」、「Melty of melancholy」、「Chronostasis」の三曲。
特記事項: 音声再生前から実体出現の様子を観察する試みが行われた。音声再生前には部屋中央部に受精卵があるのみであったが、音声発生直後に異常空間の底面が盛り上がり、尾ヒレを使い垂直に立つ魚またはアシカやシャチなどの形状を持つ海洋哺乳類様実体、小型のイヌが複数形成された。異常空間の入り口とは真逆の位置には、2名の人型実体及び3体のアシカ型実体、スピーカー、ドラムセット、ギター、カスタネット、マイク、船のエンジンが形成された。
人型実体及びアシカ型実体が道具を使うなどして音声を発し始める35と共に、外部でもSCP-983-JP-REから同一の音声が確認できた。音声の再生が進むにつれ、実体は興奮した様子で音声を発し、飛び跳ねながら空間内を移動し始め、最終的に激しい大きな移動の流れが形成された。
「Chronostasis」再生中に人型実体が移動の流れに飛び込むと、一部の実体が更に激しく移動を行った。この際に一部の実態が受精卵を巻き込み破壊した。破壊後全ての実体は次第に鎮静化し、最終的に全実体の活動が停止した。実体は出産時と同様に溶解し、破壊された受精卵と共にSCP-983-JP-RE個体の体外に排出された。備考: 実験記録983-29と同一の音声を用い別個体で実験を行ったところ、同様に実体により破壊された胎児が排出されました。この音声をSCP-983-JP-RE個体数削減に用いる案がSCP-983-JP-RE研究班により提出され、審議中です。
画像出典:
サメ: 「Great white shark at his back12.jpg」
- A great white shark at Isla Guadalupe, Mexico. The picture is a digital copy of my old film picture.
CC-BY-SA-3.0
投稿者:Brocken Inaglory
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Great_white_shark_at_his_back12.jpg?uselang=ja
ドラム:「Black Matadero. 2009-01-29. Roscon Rock.jpg」
- Roscon Rock'09, Zaragoza. Shots in the street while playing live. Flash hand shoted.
CC BY-SA 2.0
投稿者:jorgevr
https://www.flickr.com/photos/28599314@N04/3240538309 及び https://commons.wikimedia.org/wiki/Musician#/media/File:Black_Matadero._2009-01-29._Roscon_Rock.jpg
いずれも写真加工、サイズ圧縮を行っています。画像の権利はSAより、上記のCCライセンスに準じます。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-81██の容量5000tの空の水槽に収容してください容量600tの空の水槽に1匹ずつ収容してください。水槽内への立ち入りは禁止されています。水槽は1週間に一度点検を行い、異常が見つかった場合は水槽の区画を封鎖し補修を行ってください。SCP-XXX-JPには日に1度10kgの木材を捕食させてください。実験の際は水槽上部の投下口から実験用品を投下し、回収する際は静動ロボットで回収してください。
説明: SCP-XXX-JPは10 9匹のホオジロザメ(Carcharodon carcharias)です。SCP-XXX-JPは空中を水中と同じように移動することが可能です。またSCP-XXX-JPは音を発した物体を捕食します。捕食された物体は排出されません。ある程度捕食するとSCP-XXX-JPの肛門から音声(詳細は以下の実験記録を参照)が発せられます。最もよく見られる音声は、メジャースケールからなる、4/4拍子、速度♩=150の音楽です。過去には、ジプシー・スケール、ヨナ抜き長音階、ハーモニック・マイナー・パーフェクト5th・ビロウ・スケールなどの音階、12/8の混合拍子、11/8から4/6へ変拍子するなどの他にポリリズム、また最大速度♩=700の音楽が記録されています。これらの音楽は、捕食した物体から発せられた音声で構成されます。
実験記録XXX-1 - 日付20██/04/04
給餌オブジェクト: 木片
構成音: 木片と収容室の床の衝突音
作曲構成: Cメジャースケール、4/4拍子、♩=150
特記事項: 変調変拍子なし、2分15秒
批評: (クラシック批評家████氏による) せっかちな雰囲気漂う落ち着きのない曲であるが木がもたらす温かみから刹那的な楽しさが生じている。聞いている者を巻き込みながら盛り上がるものに仕上がっている。
実験記録XXX-5 - 日付20██/04/05
給餌オブジェクト: 木片、鉄パイプ
構成音: 木片、鉄パイプと収容室の床の衝突音
作曲構成: ヨナ抜き長音階、3/4拍子、♩=100
特記事項: 変調変拍子なし、3分30秒
批評: (クラシック批評家█████氏による) 第一パイプが空から駆け下りてくる様子を見せた後に木片の柔らかさが包み込んでくるようであった。まるで忙しい都市の喧騒を逃れゆっくりと落ち着いた田園地帯に流れ着いたような雰囲気を漂わせる曲だ。
実験記録XXX-19 - 日付20██/04/07
給餌オブジェクト: 水
構成音: 流水音
作曲構成: ハーモニック・マイナー・パーフェクト5th・ビロウ・スケール、4/4拍子、♩=90
特記事項: 変調変拍子なし、4分30秒
批評: (クラシック批評家███氏による) 唐突に始まったリズミカルに流れる泉という不思議なものによって優雅な雰囲気が全体を支配している。会話を楽しむ人々の光景が目に浮かぶ。
実験記録XXX-22 - 日付20██/04/08
給餌オブジェクト: CDプレイヤー(Morning Gloryを流している)
構成音: Morning Glory
作曲構成: メロディックマイナースケール、5/4拍子、♩=240
特記事項: 11/8から4/6へ変拍子、5分
批評: (クラシック批評家██████氏による) 4曲のジャンルもまったく異なるものを無理矢理押し込んでいながら一貫性が見えるものになっている。この作曲者はよほど挑戦的な性格をしていると思われる。それはさながらシルクロードの旅を一瞬で味わうかのようだ。
実験記録XXX-27 - 日付20██/04/09
給餌オブジェクト: スピーカー(別室からホッチキスの開閉音を流している)
構成音: ホッチキスの開閉音
作曲構成: Cマイナースケール、4/4拍子、♩=150
特記事項: 変調変拍子なし、2分15秒
批評: (クラシック批評家████████氏による) 音が小さくてよく分からない。
収容記録: SCP-XXX-JPは██県にある████広場にて発見されました。地元警察に「空を飛ぶサメが人を襲っている」という通報があり、██人もの人物がSCP-XXX-JPに捕食されていました。財団のエージェントが現場に到着した時には、SCP-XXX-JPから複数人の人物の声で構成された音楽が流れていました。現場には文書XXX-JP-A1が残されていました。
文書XXX-JP-A1:
この世のものはすべて芸術にできるんだ
Are We Cool Yet?
アイテム番号: SCP-1020-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1020-JPはサイト-756の異常物体収用ロッカー内に収用されます。SCP-1020-JPはロッカー内の計量装置上に静置します。重量に増加がある場合、ロッカー内部でSCP-1020-JPを回転させる事で出現した固形物を除去します。実験により出現した存在は、非異常物体処理既定及び生体処分規定に基づいた処理の後、焼却処分して破棄します。
説明: SCP-1020-JPはペット用の青い餌皿です。プラスチック製であり、側面に黄色の塗料で"いつもあなたのそばに(原文:Always by your side)"とプリントされています。
SCP-1020-JPは約8時間おきに自身の内部に、鶏頭水煮や生肉、約1cm程度の大きさを持つ固形物を、自身の内部に20g存在するように出現させます。この固形物は複数種類の生物の肉、小麦、トウモロコシ、魚粉などを含み、一般的なドッグフードに近しい組成で構成されています。また、固形物が内部に出現したSCP-1020-JPを中心とした約半径3mの範囲内において、イエイヌ(Canis lupus familiaris)実体がランダムな時間間隔で出現するようになります。この頻度は毎時1~20匹と一定しません。これらの実体は通常のイヌに見られる振る舞いをし、通常のイヌと同様の損傷をうけます。なお、全ての実体は外見、遺伝子上同一であり、品種の特徴はポメラニアンに合致します。
固形物の摂食を試みてSCP-1020-JPの内側に触れた実体は、不可視の力によりSCP-1020-JPの餌台底面に引き込まれる形で消失します。目視および圧力計を用いた観察では、実体は外部から強い圧力36に挟まれる形で押しつぶされています。この現象は出現した実体以外でも観測でき、実験においてはSCP-1020-JPの内側に触れた、SCP-1020-JPの直径より小さいマウス、ネコなども同様に底面に引き込まれる形で消失し、イヌ(体高50cm・雑種)やヤギなどの通り抜けが難しい大きさの動物は、時間をかけて全身が消失するか、体の一部分のみを残し引き込まれなくなるという結果が得られました。
SCP-1020-JPは2015年10月にアメリカ合衆国アリゾナ州████████の住宅から発見されました。発見時、家屋内にはヒトの遺体が存在していました37。この遺体はSCP-1020-JPが発見された住宅に住む、ネイサン ████████(Nathan ████████)であることが、携行していた身分証明書やDNA鑑定などで確認されています。
補遺: ネイサン氏宅の敷地内の空き家内において、複数のダンボール箱から、非異常性の鉄槌、包丁、はさみ、バケツ、鉄柵、携帯バーナーが発見されています。発見時、箱は一つを除き開封された痕跡がなかった他、開封済みの箱に入っていたいずれの物品も、収納されていた箱から移動させられた痕跡は見られませんでした。このため、ネイサン氏はSCP-1020-JP以外の物品を使用していないと推測されます。
なお、SCP-1020-JPを含むいずれの道具も微量ながら血液ないし毛髪が付着しており、遺伝的にはいずれもイヌのものであることが判明しています。
付録: 追加調査により、ネイサン氏のPC内からSCP-1020-JPの由来、及び入手経路に関すると思われる電子メールが発見されました。以下はその文面です。なお、メールの送り主であるティム █████(Tim █████)は2015年12月に急性心不全により死亡していることが明らかになっています。
2015/02/01
To: ネイサン ████████
From: ティム █████
件名: 今回の報告
本文:
親愛なるネイサン私の家族の捜索にいつも協力してくれてありがとう。だけど、今回も君が送ってくれたリストの中からチャッキーは見つからなかった。労力をかけさせて申し訳ない。
もし君が疲れたりしたならば、あとは自分で頑張るよ。無理はしないでおくれ、君にも生活があるだろうからね。
2015/03/05
To: ネイサン ████████
From: ティム █████
件名: 今回の報告
本文:
親愛なるネイサン本当にいつもありがとう。でも、今回も君が送ってくれた中にチャッキーはいなかった。すまない。
チャッキーはもう死んでいるのかもしれないと最近思うようになった。二年もたってるんだから。よほど幸運じゃない限り、いなくなった最初の一ヶ月の内に死んでいてもおかしくはないんだ。自分があり得ない可能性に賭けてることは、自分でもわかってる。ただせめて、そうであったなら、直接別れの言葉を言いたい。
こんな自分に協力してくれるのは、本当にありがたい。馬鹿げてると思ったら、いつでもやめていいから。
ティム
2015/04/01
To: ネイサン ████████
From: ティム █████
件名: 今回の報告
本文:
親愛なるネイサンすまない、今回もチャッキーは見つからなかった。この報告が嘘だとよかったのだけれど。いなくなったことさえエイプリルフールになってしまえばいいのにね。
まだ美味しいエサも新鮮な水も、寝床にお気に入りのもベッドも用意してあるんだ。先日の手紙であんなことを書いたが、まだ私は心のどこかでチャッキーが生きて帰ってくることを信じてる。
まだ協力してくれるなら、本当にありがたい。
2015/05/11
To: ネイサン ████████
From: ティム █████
件名: 引っ越しをするためお願いがある
本文:
親愛なるネイサンすまない、仕事で引っ越すことになってしまった。チャッキーがまだ生きているかもしれないのに。
事情を説明して行きたくないと伝えたが、罵られ取り下げられた。悔しいが、生活を失ってしまってはもともこうもない。チャッキーは世界一可愛いけど、お世話にはたくさんお金と時間がかかるから。
いつ必ず帰ってくる。だから、もし、君がどこかでチャッキー見つけてくれたなら、引き取って僕が戻ってくるまで預かってくれないだろうか。無理にとは言わない。ダメなら言ってくれ。
2015/05/23
To: ネイサン ████████
From: ティム █████
件名: RE: RE: 引っ越しをするためお願いがある
本文:
親愛なるネイサン本当にありがとう。君にはもう頭が上がらない。
君に道具の手間とお金はかけさせたくないから、すぐに飼育道具を一式送る。安心してくれ、餌代も場所も心配しなくていい。ちょっと珍しい道具もあるかもしれないけど、安心してくれ。使い方も同梱しておく。
わからないことがあったらいつでもメールして。最後に、本当にありがとう。この恩は一生忘れない。
参考資料:
画像
「https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Toy_Pomeranian.jpg」
This file is licensed under the Creative Commons Attribution-Share Alike 3.0 Unported license.
CC-BY-SA
wikimediaコモンズへの投稿:Rrogers227
「https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Crocodile_au.jpg」
This file is licensed under the Creative Commons Attribution-Share Alike 3.0 Unported license.
CC-BY-SA
wikimediaコモンズへの投稿:Elgaard氏
このお話は,これまでのそれらと比べると本当に珍妙な救出劇だったと思う。いつも通り、あの子は今まさに死の危険に曝されている。自分がやることはただ一つ、いつか来るかもしれない「奇跡」を信じ、次の章まで彼女を生かし続けることだ。
つまり僕は、死ななければいけない。
この物語はそういう風に出来ている。
おそらく昼下がり、平和から一転しどよめく動物園、というシチュエーション。彼女は柵の下で横たわり動く気配はない。周りの聴衆は早く助けてやれだの、救急車を呼べだの好き勝手に喚いている。だが、彼らにはそれ以上の役割は存在しない。彼らは物語を盛り上げる端役で、役立たずの木偶だ。彼女の名前を叫んでいる壮年の男女――あの子の両親だと思うが――さえも、機械仕掛けの人形に過ぎない。
ごく当たり前に、僕は人混みを押しのけ、飛び降り、数メートル下の彼女の元へ駆け寄った。意識はないが。息はある。僕が諦めない限り、この子は死なない。いや、死ねないのだ。
軽い体を抱え上げて立ち上がると、空腹と血の匂いで興奮した猛獣、ライオン共が僕達を取り囲んでいた。今回、僕はこいつらのランチになるらしい。けど、ご馳走になるのは僕だけにならなければいけない。彼女を逃がせるような出口を探す。見渡すと、猛獣の飼育部屋と運動場との連絡通路の扉が開いているようだった。
最初はゆっくりと、僕は獣共を睨めつけながら壁伝いに連絡通路に近づく。ライオンたちも同様に、弱った獲物たちの力量を見定めるようにジリジリと距離を詰めてくる。
連絡通路の入り口まであと2m、というところで、目の前の生き餌に耐えきれなかったライオンの一匹が駆け出した。僕もほぼ同時に走り出す。といっても、僕が連絡通路に入るのはとうてい無理だ。今の僕には銃や鎮圧用の武器はない。当たり前のことだが、丸腰の人間は獣には勝てない。
だから僕は彼女を連絡通路の中に全力で放り投げた。慌てふためく顔して連絡通路から出てこようとしてきた飼育員が、彼女を受け止める。これすらも良くできた予定調和だ。
僕は沢山のライオンに背中から引きずり倒された。今に喉を潰され、背はずたずたに割かれるだろう。飼育員は少女を抱え、怯えた目でこちらを呆然と見ている。
「早く閉めろ!」
怒声に飼育員は我にかえり、勢い良く扉を閉めた。この世界の住人は木偶だ。僕が叫んでも叫ばなくても、どちらにせよすぐに閉まっていただろう。
ただ、たとえ覚えていなくても、目覚めかけていたあの子がこんなひどいものを見せられるのに、自分が耐えられなかっただけだ。
生臭い吐息と唸りとともに、自分の手足や皮膚が砕かれ、裂かれ、咀嚼され、息の根を止められるのをあとは待つだけだ。
「……今回は……時間がかかりそうだな」
痛みには慣れた。苦しみにも。ただ時間ばかりが惜しい。自分はこれからもこの物語を、一刻も早く駆け抜けなければいけない。挫けるよりも前に、救いがあると信じて。
死ぬ時は常に次のことだけを考えるようにしてきた。死の恐怖から逃げるためではなく、二人で生きるためだ。今回もそうだ。
うなじにかかる歯牙の圧の強まり、詰まる息、ぬらぬらとした自分の温み、シャッター音、悲鳴、作り物の惨劇、紛い物の英雄譚、永遠のヒーローたりうる為に用意された無間が、ここだ。抗うことだけを、戦うことを、次の事だけを考えなければ……。
「へぇ、てめぇ、ずいぶんと酷い目に遭っているようじゃないか」
聞こえるはずのない、永遠に聞くことがないだろうと思っていた、「僕に呼びかける」声が遠のく意識を引き戻した。うなじをベロリと舐めたそれは、今まさに僕の首をへし折らんとした獅子だった。首の痛みで僕は完全にこの章に引き戻された。
「ちょっと話したいことがある。それまでくたばんじゃねぇぞ」
静かな、しかし怒気を含む声。雄叫びをあげて獅子は変生する。この世ならざる形へ、この世ならざる存在へ移り変わる。おそらくそれは、鵺、あるいはキメラと呼ばれるかもしれない。殺すための形を得た怪物は、無数の刺を持つ尾で周りの猛獣を容易く薙ぎ倒し絶命させると、難なく柵を飛び越え、人だかりを破壊していく。原型のなくなる瞬間まで、逃げることもせず、奴等は本来の役割のみを遂行していた。
端役が生ゴミに変わるのに、ほとんど時間はかからなかった。異形は自分のところへと舞い降りると、次第に本来の姿、ライオンのそれに変化した。僕はこれを知っている。
「く、964……」
「あぁ、そのとおり、お察し早くて結構だ」
地べたに座り僕を覗きこむこの畜生も、この世界と同様に、収容されるべきオブジェクトだ。
[SCP-964ーJP]。物語の終わりを知ってしまった登場人物。語るべきことすべてが終わった世界は、死ぬでも消滅するでもなくすべてが静止すると語る、狂ったライオン。これは収容されるまでその悲劇を繰り返さぬように、と物語とその作り手を多く殺し続けてきた。その事実への確証はない。ただ彼は救いをかたる。
「……また逃げ出したのか」
「そうだ。俺の使命はまだ果たされていない。ちょうどいい隠れ蓑があったんで入り込んだら……あんたが死にかけてた。……あんたはこの本の、本来の登場人物じゃないだろ?」
こいつは「獅子」を媒体として平面、ひいては物語の中を縦横無尽に駆け回り、殺すことができる。そして、物語の中にいる間ならこいつは何にでもなれるし、登場人物も話の流れを無視して虐殺することもできる。犠牲になった物語は単に死体を映すだけの物となる。当然、この本の中に入ったということは、きっと章をまたぎ、駆け回り、全てを殺すつもりなのだろう。だが、僕に話しかけ来るのはなぜだ?
「殺さないのか」
「殺すさ。オレが殺さなくても、その傷じゃいずれにせよ死ぬ。安心しろよ。お前の目的はこれからも果たされるさ」
安心。死とはあまりにも縁遠い単語。目的。生き延び続けること。思い当たることは一つ。
「お前、……見たのか」
獅子はまぁな、とだけ淡白に肯定した。僕は痛みを耐え仰向けに転がった。獣と目をあわせる。獅子の金色の相貌が僕を見つめる。
「おかしな場所……おかしな話だな、ここは。オレは1524章からこの本に入った。そこはオレの生まれ故郷みたいなサバンナだった。違うのは二本足の兵隊みたいなライオンが闊歩してたことだ。お前がそれに捕まり銃殺されるのも見た。ちっさい子供を自動運転のヴィークルに乗せてやったあとだった」
僕は安堵の息をついた。1524章までこの物語は続けられる。1524の死まで、少なからず自分は諦めていないのだ。獅子は続ける。
「いつも通りそこで世界は止まって、また新しい章、世界が生まれるんだと思ってた。だが、違った。この物語は章だてにはなってはいるが、俺は物語の最初の方まで走った。駆け抜けられたんだ」
最初まで。一番最初はあのときの再現だったか。未収容オブジェクト、後にSCP-XXX-JPと指定されるあれを、俺は命を賭して一時的に無力化し、彼女を救った。あの事件がなければ彼女がここに閉じ込められるなんて事は起きなかったかもしれない。だが過去は変えられない。未来は……
「……最後はあるのか」
「おん?」
「この物語は……終わるのか?」
次第に鈍重な感覚が体を支配し始めていた。おそらくこの章も限界が近いのだろう。お涙ちょうだいを好む読者たちが、悲劇はまだかとせびってきているのだ。
「さぁな。オレが駆け抜けたのは……少なくても、物語の頭からから数えて5000章ぐらいだ」
5000。5000の物語。5000の救出劇。5000の死。5000の孤独な戦い。気が遠くなるような自己犠牲の数々。
獅子の声は淡々としている。
「この物語は全て地続きだ。お前は死んだあと、時が巻き戻るように蘇り、子供は状況に合わせて再配置される。ゲームかなんかみたいにな。……あいつは本当にお前の守りたい人間か?あれも人形で、ここはお前に用意された地獄なんじゃないのか?」
「違う」
そんなことは絶対にない。彼女は、彼女だけは、この無間の中で、僕を見つけ、僕に助けを乞い、ありがとう、と、僕に一時の死出の旅路への感謝を手向けてくれる。
「彼女は僕の……唯一の希望だ」
「既にあんたは死人のくせに?」
「死んでも僕は、財団のエージェントだ。助けられる命があるなら、助けなくちゃいけないんだよ」
僕は財団のエージェントだ。一度死に、こうして甦っても、それは変わらない。
獅子は薄く笑っていた。あきれているのか、憐憫の情か、僕には測りかねた。
「おまえがそういうなら、それをやりきるしかないな。この終わらない物語で……どこまで戦うのか。戦えるのか……」
「どこまでも戦えるさ」
「そうか」
獅子は立ち上がった。憎いほどに快晴の空を見上げる。柵の向こうの木々のざわめきが彼のたてがみを撫でる。
「……終わらない物語」
それは彼が求めた理想郷。獅子は続ける。
「どこまでも永遠に続き、人も獣も人外も生き続け、未来も過去も巡り続ける。それがオレの、あんな結末を知りたくなかったオレの、唯一の天国、幻想だった」
「けどここは、終わらない地獄だ。」
「そう、地獄だ!こんな物語はどさんぴんの駄作、最底辺の娯楽、鍋敷きか便所の紙ぐらいにしか使えない無駄紙だ。終わらず続く世界はここだけだが、こんな世界は続くに値しない!こんな永遠はあっちゃいけない!」
僕に呼応して、堰を切るように夢想家は叫んだ。今度は彼の顔を見なくてもわかる。その声は押し寄せる憤りだ。突き上げる怒りだ。創作の中を生きたからこそ感じることのできる、悪意への憤怒だ。
「わかるか、物語ってのは筋道立てて、一つの流れを、人生を、苦難を、幸福を、生み出さなきゃいけねぇんだ……確かに永遠に巡る世界をオレは望んだが!それがこんな、こんなクソッタレな形で実現してたのを見ると、惨めになるんだよ……!」
彼の物語がハッピーエンドだったか、バットエンドだったか、僕は知らない。ただ彼は世界が止まることを知り、その運命から逃れながら、誰一人として再び歩ませることができなかった。その苦悩、自責は大きかっただろう。彼の無念を皮肉るように存在する終わらない英雄譚は、きっと彼の心の傷を逆撫でしたのだ。
僕の物語はまだ終わらない。だが僕はまだ終わりを迎えていない。バッドエンドは簡単だ。まだ、僕には大団円を迎えるチャンスはある。諦めない限り、生きている限りは。
「……終わらせてやるさ」
「何?」
次の句を継ごうと息を吸うと、僕は激しく咳き込んでしまった。息が苦しい。体もかなり冷たい気がする。ただ一つだけ言わなければいけないことがある。
「この予定調和、いつか全部終わらせてやるって……」
「お前が?良いようになぶり殺され続けてるお前が、この駄作を終わらせる……」
「終わらせて、日常に、帰してやらないと…」
今度こそ彼は嘲りをもって笑うのだろうか。僕は無力だと。無意味だと笑うか。それとも激昂するか。眼前は暗闇、鼻腔は血生臭く、思考も次第に霞がかかり、僕はもう何が何だかわからなくなっていく。そろそろ次の舞台に駆り出される頃か。ただ明瞭に獅子の声だけが聞こえる。
「やれるんならやってみろよ。はは、そいつはきっと、お前だけじゃねぇ。”お前ら”がコレに求めている結末だ。今回ばかりは俺もそれを望むさ。……なぁアンタ、”読者”が求めてるのは悲劇だけじゃァねぇ。それだけは忘れるなよ」
分かっている。理解っている。きっと誰かはこの惨状に救いを求めてるんだ。ならなおの事、僕はあきらめない。戦えるのは僕だけだ。
だが、もはや声も出ない。僕は獅子の言葉に対し、何十回目かの最期の力を振り絞って力強くうなづき、事切れた。
獅子の目は優しかった。
英雄の傍らに佇んでいた獅子は一人語る。此方に向けて。あなたに向けて語る。
「ここまでがこの英雄譚の358章だ。アイツらはこれからも諦めず戦い続けるんだろう。俺の到達した5000より先も、もしかしたら10000とか、もっとかもしれない。その中で、あいつはこの英雄譚の致命的な弱点を見つけるだろうさ」
獅子の独り言は前章と次章との間に、文字として紡がれていく。
「クソみたいな無数のオムニバスを終わらせて、相手を日常に帰し、死者に戻る。いずれにせよ死ぬためだけにあいつはこの世界に呼ばれたんだ。だから、あんたも、せめて、ハッピーエンドを祈って……出来たら救ってやってくれ。……俺は殺すことしかできないからな」
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは5体がそれぞれ標準人型収容施設内に昏睡状態で収容されます。収容後にSCP-XXX-JPの特異性が発揮された例は現在確認されていませんが、万が一財団施設から脱走する事の出来る能力を持つ個体が出現した場合を想定し、機動部隊がSCP-XXX-JP収容施設に滞在します。収容違反時には新たな個体の出現を阻止するため、機動部隊は1体のSCP-XXX-JPのみを確保し他の個体を全て射殺してください。
また、未収容の個体が存在する場合を考慮して現在も捜索が行われています。
説明: SCP-XXX-JPは複数の人型存在です。現在5体を収容したほか、他に死亡した1体の存在が確認されています。どの個体も同一の20代モンゴロイド男性に見え39、検査によりいずれの個体も同一の遺伝子を有する事が判明しています。また、各個体の右内腿には数字の様に見えるあざが存在します40。
SCP-XXX-JPの各個体はそれぞれことなる特徴を有しています。名称 | 特徴 | 備考 |
SCP-XXX-JP-1 | 内向的な性格。手先が器用であるほか、イラストレーションの製作に長ける。 | SCP-XXX-JP確保時に警察に通報した個体。自身をオリジナルであると主張する。 |
SCP-XXX-JP-2 | 外向的、楽観的な性格。PCゲームを好みFPS(シングルパーソンサイト: 一人称視点)ゲームに秀でる。 | この個体が使用したアカウントが、複数のオンラインFPSゲーム内ランキングで上位に位置していた記録が存在した。 |
SCP-XXX-JP-3 | 性格は外向的だが慎重。生物学、特に細胞生理学に精通している。 | 収容後に財団の研究員を志願したが却下。これによる異常性の発生は確認されていない。 |
SCP-XXX-JP-4 | 丁寧かつ几帳面な性格。 喫茶店██████の店員としての高度なスキルを有する。41 | SCP-XXX-JP-5からの攻撃により重傷を負ったため、財団施設内で治療中。現在まで意識は戻っていない。 |
SCP-XXX-JP-5 | 攻撃的で倫理観に欠ける。他のSCP-XXX-JP個体に非常に敵対的。 | SCP-XXX-JP確保時、他の個体を殺害しようとしていた。また、収容後に衣服を利用した首吊り自殺を行おうとした。自殺の動機として「俺にはあいつら(他のSCP-XXX-JP個体と思われる)を殺すしか能がない」と述べている。 |
SCP-XXX-JP-6 | 不明。 | SCP-XXX-JP確保の12日前に、警察により████県の山林の廃屋で遺体として発見されていた。死因は劇物の服用による中毒死。発見時すでに鳥獣に食い荒らされており遺体の損傷が激しく、完全なナンバーは確認できなかった42。遺体は既に回収、焼却されている43。なお、現場に落ちていた薬瓶からはSCP-XXX-JPの指紋のみが検出された。 |
SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JP-2~6を自身が無意識に生み出した存在であると主張しています。以下はそのインタビューの一部です。
音声記録 ██/██/20██
対象: SCP-XXX-JP-1(以下JP-1)
インタビュアー: エージェント・田児(以下A.)
記録開始
A. : SCP-XXX-JP-1、まずはあなたの異常性について話してください。
JP-1 : はい。僕が増えたこと、ですよね。最初に増えた僕、二番(JP-2)と会ったのは高校生の頃です。そのころまでの僕は、成績不振やいじめが祟って家に引きこもっていました。そのころの唯一のたのしみが█████だったんです。知ってます?オンラインのゲームで……
A. : 知っていますよ。JP-2はその時に現れたんですか?
JP-1 : 正確には、僕がゲームで負け続けた時、ですかね。ゲームの中のチャットで相手にも味方にも煽られてすごく腹が立って……辛かったんです。せめてあいつらを見返せるぐらい強かったらと強く思いました。そしたら、いつの間にかあいつが隣にいたんです。急に「よう、貸せよ」なんていって。パニックになった僕からコントローラーを奪うと、かってにゲームを進めだして……。敵をボコボコにし出したんです。
A. : なるほど。JP-2はその後もあなたの部屋に居座り続けたんですか?
JP-1 : はい。僕が落ち着いた後、二人で今後どうするか話し合いました。あと、あいつは僕の代わりに学校に行ってくれました。すごいんです。あいつが登校し始めてからすぐに僕をいじめる人はいなくなって……。その後は僕に学校に行くように諭してくれました。あ、あいつも僕が増えていたら家族や周りが混乱してしまうことを理解していたので、外にでるときは一人ずつでていました。
A. : なるほど。他の個体についてもそんな感じで出現したのですか?
JP-1 : はい。三番(JP-3)は進級がかかった大学のテストの勉強に息詰まったとき、四番(JP-4)はバイト先でミスして落ち込んでいた時に。どちらも家にいるときに現れました。幸い、大学生になってから一人暮らしをしていたので、僕が増えたことは周りにばれていませんでした。
A. : 一つの部屋に四人で生活を?
JP-1 : 大変でしたが、何とかなりました。二番はネカフェに、三番は僕の代わりに学校に行くようになって……、四番はバイトで働きづめです。僕はそのころ、サークルで描いたマンガが出版社の目に留まって、マンガを描かないかということで原稿に専念していました。
A. : おのおのが得意分野を使い分けて生活していたのですね。一つお伺いしたいのですが、五番と六番のあなたは一体どのような時に生じたのですか?
JP-1 : あいつらは、僕がもう周りのやつを皆殺しにして俺も死んでやると思ったときに出現しました。一度に二人出てきたのはあれが最後です。五番はとかく僕とは思えないぐらい凶暴で、みんなで何とかして押さえ込みました。家の柱にくくりつけて……。六番は勝手に家を出て行って、それっきり見ていません。その1週間後ぐらいに、五番が拘束を抜け出て僕たちを攻撃してきて……。警察に通報したらあなた達が来ました。凄いびっくりされましたね。全員同じ顔な物ですから。
A. : SCP-XXX-JP-6が家を出たのはいつですか?
JP-1 : ……すいません、あまりよく覚えていません。本当に急にいなくなったものですから。
A. : わかりました。ありがとうございます。インタビューを終了します。
記録終了
この証言から、SCP-XXX-JPの特異性は「現在の技量では実行不可能な局面に遭遇した場合、その能力を有した複製個体を周囲に出現させる」事であると推測されます。しかしながら各SCP-XXX-JP個体を用いた実験ではその様な現象は確認されませんでした。
付録-XXXJP012: 以下は警察によるSCP-XXX-JP-6発見時、マスコミによりSCP-XXX-JPの友人に行われたインタビュー記録です。
音声記録から抜粋
記者: ██さんはどんな人でしたか。
友人: 僕とあいつは小学校来の友人なんですけど、あいつは小さい頃から高校まではずっと内気な性格でした。僕も、たまたまあいつが描いたマンガを見かけなければ声をかけすらしなかったと思います。
記者: 彼は小さい頃から絵が上手かったんですね。
友人: はい。ただ、高校はそれでいじめられていました。「キモオタ」だの、「変態」だの言われて。不登校になる寸前までは僕が相談に乗ることもありました。「自分を偽ってまでいきることはできない」とか、「僕が頑張らなくても誰かが頑張ってくれるのなら生きなくてもいいじゃないか」って。あいつは嘘がつけない性格だったので、すぐ話してくれたのはよかったです。
記者: なるほど。
友人: ただ、不登校になって数ヶ月したあとに、急に学校にやってきたときは全くの別人のようでした。明るくて、強気で、言いたいことははっきり言って……[以降の内容は関係性が薄いため省略]
記者: なるほど。それからもう一つ聞きたいのですが、大学生になってから…彼がお亡くなりになるまでに何か変わったことは?
友人: あー。一ヶ月前に人間関係を相談されました。44
記者: と、いうと。
友人: 「同居の役立たずの友人が俺ばかりに仕事を任せて来て困っている。死ぬほどうんざりしてる」、と。追い出しちまえよって言っちゃいました。……もしかしたら、「役立たずの友人」があいつ自身の事だったんじゃないかって、ちょっと後悔してます。
記者: なるほど。ご協力ありがとうございました。
記録終了
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JP-1は現在オブジェクト収容ロッカーに15本が収容されています。未回収のSCP-XXX-JP-1確保のため、「不良商品の回収」としてフロント企業がリコールを行い回収します。新たに発見されたSCP-XXX-JP-1は必要量以外は無力化処理をしてから破棄されます。
SCP-XXX-JP-2群は北極圏の氷床下の、外部からの観測が困難な位置に存在していると考えられます。
新たなSCP-XXX-JP-2が発見された場合、SCP-XXX-JP-2内に水を注入して空洞部を満たし、内部への物体の転移を防いで下さい。
発見されたSCP-XXX-JP-Aは確保し、インタビューの後にプロトコル-XXXを実行します。このプロトコルにより得られた人物は、記憶処理後の経過観察に問題がなければ解放してください。
説明: SCP-XXX-JPは二つの構成要素からなるオブジェクトです。
SCP-XXX-JP-1は異常性をもつ製菓用リキュールです。「Mermaid's Sweet Magic 」と印刷された紙製ラベルの貼られた、内容量125mlのガラス製容器に封入されています。ラベルの印字はすべて英語で、原材料としてラム酒、サクランボ、桃、[編集済み]、"純粋な恋心"が記載されています。SCP-XXX-JP-1は19██年に製造が終了した██████社製の同名の製菓用リキュールに外観、原材料などが酷似していますが、その製造日はいずれも1980年台以降のものになっています。
SCP-XXX-JP-2は北極圏の氷床の内部に形成された、複数の人型の空洞です45。SCP-XXX-JP-2は氷床内のランダムな場所に不定期に形成されます。
SCP-XXX-JPの異常性は、ヒトがSCP-XXX-JP-1を摂取した後に発生します。なお、異常性の発生は性別、年齢を問いません。
SCP-XXX-JPを摂取したヒト(以下「対象」とする)は睡眠中のランダムなタイミングでSCP-XXX-JP-2の一つに転移します46。その後対象は空気と同様の成分で構成された気体を含む、弱い粘性のある液体に即時に置換されます47。この液体はSCP-XXX-JP-2の内壁を全て覆うように広がり、十数分後にはSCP-XXX-JP-2と同様の形をとった、中が空洞の人型存在(SCP-XXX-JP-A)となります。なお、SCP-XXX-JP-Aの外見は全て同一であり、20代で青眼金髪のコーカソイド女性の様に見えます。SCP-XXX-JP-Aは完成すると転移前の場所へ再び眠った状態で転移します。
起床後のSCP-XXX-JP-Aは対象の記憶を有していますが、同時に自身はマーシー・マーリン( Mercy Marlin)という女性であり、19██年に生じた客船事故で既に死亡しているという認識を有しています。多くの場合起床直後のSCP-XXX-JP-Aは混乱を示しますが48、最終的にいずれの個体も他者との性交渉を試みます。
SCP-XXX-JP-Aは他者との性行為を行った場合、就寝後に再びSCP-XXX-JP-2へと転移します。この後個体形成と同様の過程を経てSCP-XXX-JP-Aから元の対象と同様の個体が形成されます。49対象は転移前の箇所に再び睡眠状態で転移します。対象はSCP-XXX-JP-Aとなっていた際の記憶を不鮮明ながら有していますが、それ以外の異常性は存在しません。
以下の記録はSCP-XXX-JP-Aに行われたインタビューの一部です。
対象: SCP-XXX-JP-A-3(以下「A-3」とする)。元はD-36552(男性)。
インタビュアー: ブライアン博士(以下「博士」とする)
<録音開始>
博士: それではインタビューを開始します。
A-3: よろしくお願いします。
博士: それではまず自己紹介してください。
A-3: ええと、███50 、いまはD-36552、いや、マーシー・マーリン?
博士: 自分が誰かわからないですか?
A-3: なんというか、自分は███だという自覚はあるんですけど、マーシーだった、という記憶も持ち合わせていて。
博士: ではまず、███としての経歴を簡単に述べてください。A-3: はい。[D-36552の出身地、性別、年齢、現在までの経歴などが示される。重要性が無いため割愛。]経歴は以上です。他に話すべき事ってありますか?
博士: いいえ、十分です。ありがとうございます。それでは次に、マーシーとしての経歴などを教えてください。
A-3: わかりました。名前はマーシー・マーリン、女性。誕生日は4/██。ええと、年齢なんですけど、22才の誕生日に、父と母と妹、それに恋人と乗った船が事故で沈没してます。そのときに私、マーシー・マーリンは死にました。
博士: 既に死んでいるという自覚があるのですか?
A-3: はい。ですが、死んでからの記憶も覚えています。
博士: それはSCP-XXX-JP-1を摂取した人がマーシーの容姿と記憶を得たときのものですか?A-3: [逡巡の後に回答する。]そうです。
博士: わかりました。では次に、その沈没事故の時のあなたの詳細と、できればあなたがそのようになった経緯を述べてください。A-3: はい。事故が起きたのは19██年の時です。事故自体の詳しいことはわかりませんが、私は家族と恋人と共にその船に乗っていました。
博士: あなたは自分の家族と共に一緒にいたんですか?A-3: 事故が起こる前までは、私は恋人と同じ部屋、妹と父と母が同じ客室内で就寝してました。事故の衝撃で目が覚めた私は、慌てて恋人と二人で父たちの部屋に向かい合流しました。その後廊下にでると、船員が「緊急事態だから脱出するように」というので、みんなで救命ボートのある場所で向かおうとしたんです。
博士: 向かおうとしたということは、できなかったのですか?A-3: 全員で向かうことができなかったんです。
博士: はぐれたということですね。A-3: はい。たくさんの乗客が一気にパニックになってしまったので、船内はどこもかしこも救急ボートに向かう人たちであふれかえっていて……
[以降、事故の詳細な記録が述べられる。重要性は低いため割愛。]
A-3: 私たちはなるだけ離れないようにと手を繋いでいたんですけど、それでも駄目でした。五人散り散りになったんです。私ははぐれた皆を探したんですけど、その間に救命ボートが無くなってしまったらしくて……。
博士: それであなたは逃げ遅れて沈没に巻き込まれ、死んでしまったと。事故に関しての記憶は以上ですか?A-3: はい。
博士: ありがとうございます。よければあなたがその次に目覚めた記憶を聞きたいのですが。
A-3: いいですよ、あの時のことははっきりおぼえています。目が覚めたら私は生まれ町の宿の一室にいました。慌てて外にでたのですが、その時、私の中に違う人の記憶があること、宿の周りの風景が一変していたことに気がついたんです。気が動転してたみたいでそのときら家の目の前に移動した間の記憶はないんですけど、なんとか帰宅しました。家がまだあそこにあのときのままあったのが奇跡でしたね。
博士: 家には誰かいましたか??A-3: 私の妹51が。年をとって顔も髪もすっかり変わってしまったんですけど、訪問した私を見るなり膝から崩れ落ちて泣き出して……ひたすらに謝罪の言葉を連呼していました。
博士: 謝罪というのは、自分が生き残ってしまっていた事への?A-3: 始めは私もそう思ったんですけど、それだけじゃなかったんです。
博士:と、いうと?A-3: あの事故で生き残った家族は、救命ボートに乗れた妹と母、そして他の船に救助された私の恋人だったそうです。母は父と私を失ったことで気を病んで亡くなり、私の恋人も心を壊して、廃人のようになってしまったと聞きました。妹は彼を付きっきりで励ましたそうです。十数年かけ彼はほとんど元の精神状態に戻りました。そこまではよかったのですが……。
博士: 何か不都合なことが?A-3: 正気を取り戻した彼は、私の妹に恋をしてしまったんです。十数年もの間、献身的に尽くしてくれたんですから、まぁ、そうなるのも分かるんですけど……。彼は妹と愛し合い、妹と結婚し、死ぬまで妹とあの家でずっと仲むつまじく暮らしていたそうです。
博士: あなたが再びこの世に現れたとき、彼は既に亡くなっていたということですか。A-3: [ゆっくりと頷く動作。] そして私、その話を聞いたとき、運命に憤りと失望を感じたんです。せっかく死んだ私がこうして現世に再び戻れたのは、きっと神様がチャンスをくれたからだと思っていたのに……結局、彼の心は離れてしまって、愛し合う事は永遠にできなくなってしまいましたから。
博士: なるほど。ありがとうございます。最後にお伺いしたいのですが、なぜあなたは出現後に誰かとの性行為を行おうと試みるのですか?A-3: 妹の話を聞いた後、私は怒りにまかせて町に飛び出しました。そこでたまたま私を誘ってきた男性と、行きずりで、その……セックスしたんです、自暴自棄で。一通り終わって眠った後、目が覚めたら町の外れのお屋敷の一室にいて、以前とは違う人の……たぶんそこのご子息の記憶を持っていました。そのときは屋敷の主に無理やり襲われて……。そしてまた違う場所、違う人の記憶を持って目覚めました。そんなことを何度か繰り返していた内に、セックスは私を一時的に死者に返すための条件なんじゃないかって思い始めたんです。当てずっぽうな推測なんですけどね。
A-3: ……先生、できればこれ以上私をこの世に蘇らせないでください。私はただ彼と互いに愛し合いたかっただけだったんです。博士: 善処しますよ。ありがとうございました。これにてインタビューを終了します。
<録音終了>
補足:
SCP-XXX-JP-Aの述べた客船事故は実際に存在し、乗客の中にマーシー・マーリン等の名前が存在することも確認された。
アイテム番号: SCP-xxx-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-xxx-JPは内部に設置した監視カメラにより、サイクル中に例外的な変化がないかが常に監視されます。SCP-xxx-JP-1へのインタビューは担当職員の許可を得た上で行ってください。
説明: SCP-xxx-JPは████県に存在するアパートの105号室です。内部に時空間的異常が生じており、室内に存在している全ての物は197█/08/██の状態を保ち続けていると考えられます。SCP-xxx-JP内の物体は、外部からの干渉を受けた場合や外部に持ち出された場合深夜0時を経過した時点で197█/08/██の状態、位置へと戻ります。 また、外部からSCP-xxx-JP内に持ち込まれた物はこれらの効果を受けません。
SCP-xxx-JP内部には50代の日本人女性に似た人型実体(以下SCP-xxx-JP-1とする)が存在しています。SCP-xxx-JP-1も室内の物と同様に 197█/08/██の状態を維持しており、その記憶は深夜0時を境にして消去されるようです。
SCP-xxx-JP-1は定時にSCP-xxx-JPを退出する様子が確認されていますが、SCP-xxx-JP外でSCP-xxx-JP-1を観測することは出来ません。調査の結果、SCP-xxx-JP-1は105号室を196█年に借りた████ ██となんらかの関係があることが推測されます。████ ██の現在の所在は不明ですが、████ ██の勤務先には197█/08/██以降も定年になるまで████ ██が雇用されていたという記録が存在しています。
SCP-xxx-JP-1は自身がある一日を繰り返していると言う状況を知覚することはできませんが、外部から持ち込まれた物は通常の時間を指し示すため、これにより異常を把握することが出来ます。しかし、SCP-xxx-JP-1の記憶が消去されてしまうことから、異常を知覚させる取り組みは意味をなしません。
以下はSCP-xxx-JP-1の行動を表にしたものです。なお、SCP-xxx-JP-1の行動パターンには微細な時間の変化が見られます。
およその時間 | SCP-xxx-JP-1の行動 |
---|---|
0:00~5:30 | SCP-xxx-JP-1は自室に相当する部屋で眠っています |
5:30~6:45 | 5:30に目覚まし時計のアラームがなり、それによりSCP-xxx-JP-1が目覚めます。服を着替えた後に浴室の洗面台で顔を洗い、調理場で朝食の調理を開始します。メニューは白米、目玉焼き、ソーセージ、わかめと豆腐の味噌汁、青菜のおひたしで一定です。 |
6:45前後 | 調理を中断し、自室とは異なる別室の扉の前で「ヨリコ」という人物に起きてご飯を食べるよう催促します。 |
6:45以降~7:30 | SCP-xxx-JP-1が朝食をリビングの食卓に並べ、食べ始めます。この時食卓に並ぶ料理は二人分であり、SCP-xxx-JP-1の対面の席に置かれています。SCP-xxx-JP-1が朝食を食べ終わり食器を下げた後、7:30を過ぎるとこの食事はSCP-xxx-JP-1によって冷蔵庫にしまわれます。 |
7:30~8:15 | SCP-xxx-JP-1は食器を洗浄します。それが終わると自室に戻り、スーツと思わしき服装に着替えます。 |
8:15~8:27 | 机の上に書き置きをおくと、ガスの元栓やコンセントの抜き差しを確認したのち、玄関から退出します。 |
17:32 | SCP-xxx-JP-1が玄関を開けてSCP-xxx-JP内に進入します。52SCP-xxx-JP-1は量販店で買い物を行ったようで、食材や日用品が入った袋を持っています。53 |
17:40~18:20 | SCP-xxx-JP-1は調理場で二人前の夕食を作り始めます。メニューは白米、唐揚げ、なすと油揚げの味噌汁、中華クラゲの和え物で一定です。調理完了後、SCP-xxx-JP-1は一人分の料理を取り分け冷蔵庫にしまいます。 |
18:30~19:20 | SCP-xxx-JP-1は食卓を挟むようにテレビに対面して座り、食事を開始します。このとき冷蔵庫内に朝食が残っていた場合、SCP-xxx-JP-1は夕食にこれを加えます。なお、テレビには 197█年8月██日に実際に放映された番組が表示されます。 |
19:20~20:50 | 食べ終わった食器を片づけた後、リビングで雑誌を読み始めます。雑誌を読み終わった後、SCP-xxx-JP-1は浴室にに30分ほど滞在します。 |
21:00~22:00 | SCP-xxx-JP-1は家計簿をつけます。 |
22:00~0:00 | SCP-xxx-JP-1が就寝します。 |
補遺1: SCP-xxx-JP-1が残す書き置きの内容は以下の通りです。
ヨリコへ
朝ご飯冷蔵庫に入れておきました。
疲れていると思うけど、休日もちゃんと起きないと、生活リズムが崩れますよ。母
補遺2: 財団職員の調査により、"ヨリコ"の部屋のベッドの下から手書きの書類が発見されました。この書類は日付が変更されてもSCP-xxx-JP内に戻らないため、外部から持ち込まれた物であると推測されます。以下はその内容です。
私は今幸せです。
でも、この幸せは正しかったのでしょうか。今も未来もやがて、過去になります。
私は、あなたが将来きっと先に逝くであろうと言う事実に耐えられませんでした。
今はもうあなたを失うことはありません。ただ、あなたの未来と、あなたとの未来も、私は奪ってしまいました。こんなつもりではなかったのです。私もあなたと共に、ずっとおなじ日々をおくれると思ったのです。
きっとこれは、罰なのでしょう。あなたより先に逝くであろう私を、私の我が儘を許してください。あなたが朝私を起こすときに、どうか、扉を開けてください
なお、████ ██の娘である████ 頼子は200█年に5█才で病死していることが確認されています。
アイテム番号: SCP-364-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-364-JPは感染者以外は認識することが出来ないため、セクター-81██内の隔離研究棟にSCP-364-JP感染者によって構成された研究チームと共に収容されています。SCP-364-JPの過度な増殖を防ぐため、感染者は実験時を除き眼球部を遮光素材を使用した眼帯で覆う事、もしくは入光量を抑えた専用の部屋での生活を送る事が義務付けられます。感染拡大を防ぐため、CP-364-JP感染者が隔離研究棟外に出ることは禁止されています。
説明: SCP-364-JPは人間の眼球に感染し54その視界内に定住する存在です。容姿はミドリムシ属の微生物に似ており、光源の位置を把握するための眼点や緑色の色素体、移動の際に使用する鞭毛の様な器官が確認されています。大きさは最小で辛うじて内部器官を肉眼視できる程度の物から、最大で視界の10%程の大きさがある物が観測されています。SCP-364-JP感染者(以下「感染者」とする)はSCP-364-JPを飛蚊症による視界異常の様に認識します。しかしながら一般の飛蚊症とは異なり、硝子体を含む感染者の眼球にSCP-364-JPの実体の痕跡を確認する事はできません。
感染者が明所にいる際、SCP-364-JPは視野内の光を吸収すると共に増殖を始めます。55増殖の速度は光の強度や個体密度によって左右されるようですが、初期感染時の個体数にかかわらずおよそ2~4か月ほどで感染者の視界はSCP-364-JPによって埋め尽くされます。その後もSCP-364-JPは緩やかに増殖を続けますが、数が増えたことによるストレスや光の強度の減少により、活動を停止したと思われるSCP-364-JP個体が出現し始めます。これらの個体は分解される事無く視界下部に蓄積し始め、感染者の視界はおよそ半年で活動を停止したSCP-364-JPによって埋め尽くされ失明する事になります。なお、感染者が暗所にいる場合SCP-364-JPの活動や増殖は極端に抑制される事、活動抑制後に強光に数時間晒されることで活動を再開する事が判明しています。
視界が活動を停止したSCP-364-JPにより埋め尽くされてから1~2年ほどが経過すると、SCP-364-JPは感染者の視界から消失し始めます。これにより感染者の視界は明瞭になりますが、ある特定の物体や液体がSCP-364-JPに似た動く微細な粒によって塗りつぶれている様に見える視覚異常が発生します。56この粒の大きさは感染者と物体の距離に関わらず一定です。
SCP-364-JPの感染経路は未だ明らかになっていません。感染者がSCP-364-JPを認識するようになった際の状況に共通点が見られない事から、「何らかの不可視の感染源が空気中に存在しており、それに対する抵抗性が弱い人間にのみSCP-364-JPが感染する」という仮説が現在挙げられています。
付録: 以下の文章は前SCP-364-JP研究班長の樋川氏による、SCP-364-JP感染初期~感染末期までの症状等を書き留めた個人的な手記からの抜粋です。なお、樋川氏はSCP-364-JP感染後に財団に確保された後、先述のSCP-364-JP研究チームの一員として雇用されました。
(1993年)06/30: 最近目が悪くなった気がする。研究詰めでパソコンばかり見てるせいかもしれない。目の中にゴミの様な、糸くずの様な緑色の物が見える。
07/29: 誰にも信じて貰えないかもしれないが、その、目の中のゴミが分裂して増えている。うにょん、うにょんと言った感じに。しかも活発に動く。今もちらちらと紙面の上を緑色の点が動いている。
08/10: 医者に話したら一度大きな病院で検査を受けるように言われた。にしても、この点は振る舞いがどことなく生き物っぽい。目に感染する生き物なんてのは聞いたことは無いが、これは新たな寄生微生物なのか?とりあえず家族にうつすわけにはいかない。接触をできるだけ絶とう。後は、そうだな、仕事もしばらく部屋にこもってできる物だけにしよう。
08/11: 今日病院にいって、精密検査の予約を入れた。虫は相変わらず増えて、ふよふようようよ漂っている。四、五匹ぐらいだったら可愛いとも思えたが、今じゃ百匹近くの虫が視界を横切っている。気持ち悪い。
そういえば、妻と娘に目に変な感じが無いかを聞いたが、特に何もないらしい。ひとまずは安心か。よかった。
08/13: 検査を受けた。結果は異常なしだそうだ。細菌に感染したりだとか、網膜が剥がれたりというのもないらしい。そんなことがあってたまるか。[中略]もう自分の右目は一面にうぞうぞ無数の小さな粒々が見えるばっかで、医者の顔すらろくに見えなかったんだぞ。これが異常じゃなきゃ何になるんだ。
近い内にセカンドオピニオンを受けようと思う。きっと何か原因があるはずだ 絶対
09/09: 何件か検査を受けたが、どこも異常なしとの事だった。[中略]もしかして異常なのは私自身なのではないだろうか?いや、しかしあれはどうみ[判読不能]であり、事実もう右目はどんよりと濁った水の中にいるみたいに何も見ることができない。[中略]唯一の望みはさっき届いた紹介状だ。何でも難病を専[判読不能:「専門に扱っているらしい」か]が…この病院で無理だ、と言われたら諦めようと思う。幸いにも左目はまだクリアな視界で物を見ることができる。まだ仕事をやめるわけにはいかない。妻も[判読不能]
追記: 以下の文章は樋川氏によりSCP-364-JPの末期症状が確認された際の手記の一部です。
(1996年)07/07: 今日、驚いたことが起きた。右目の視界が、晴れた。眼帯を外すまで気にしなかったのだが、部屋に戻ってみてみたらこれだった。あっけないというか、治ったのだろうかこれは。
07/08: 期待外れだった。昨日の事を報告し、研究しようと思ったのだが、さっき会った右目で見た部下達は白衣を着た緑色の粒粒の集まりだった。顔も緑色の粒々だから表情が見えないし不便だ。後、沼臭い。人の形をした立体の上を緑色の点が毛をフリフリさせながら縦横無尽に動ぎまわっている。あれを例えるならアリ塚を崩した時にたくさん湧いてくる黒い点々とか、健康番組でよくあるドロドロ血液の流れにくさのシュミレーションだとか、きっとそんな感じの表現になるんだろうか。感染したのが右目だけでよかった。両目がこの状態で人と生活するのは、厳しい。
ああ、そういやさっき鏡でみた俺も、緑色の粒粒だった。幸いこれを書いている私の手は普通に見え
その後、樋川氏は左目にもSCP-364-JPが感染したことを明らかにしました。現在樋川氏はヒトと地面が緑色の粒で構成されているように見える視覚異常を患っていると主張しています
アイテム番号: SCP-149-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-149-JPは現在サイト-81██の気密収容室に、空気圧維持用のチューブと接続された状態で存在します。SCP-149-JPは表面の劣化を防ぐ為にバルブ部分を除いた外部にウレタン樹脂を塗布した上で、収納時オブジェクトの円周が78.2cmとなるように設計された金属枠の中に収納します。SCP-149-JPの円周の変化は全て記録され、0.2mm以上の変化が確認された場合は自動的にSCP-149-JPへの空気の注入や室内の気温の調節が行われSCP-149-JPの外周を一定に保ちます。
説明: SCP-149-JPは異常性を有するゴム製のソフトバレーボールです。素材のゴムに異常性は確認されませんでした。SCP-149-JPは一般的なソフトバレーボールと同様の耐久性を有していると推測されます。
SCP-149-JPの膨張、収縮に伴う外周の変化は地球の公転軌道に影響を及ぼします。SCP-149-JPの膨張により地球の平均的な公転軌道は通常よりも外側を通過するようになり、SCP-149-JPが収縮した場合は通常の軌道よりも内側を通過するようになります。SCP-149-JPの外周が1.0mm変化した場合、太陽-地球間の距離は████kmだけ変化します。SCP-149-JPの円周に+3.5mm~-3.3mmの変化が起きた場合、地球表面上の平均気温の急激な変化や季節の周期性の乱れ、それに伴う環境の変化により現在の生態系は速やかに崩壊すると推測されます。なお、一時的な圧力による凹みや歪みは公転軌道に影響を与えません。
現在SCP-149-JPの内部に樹脂を注入する事で円周を一定に保つ計画が立案されています。
SCP-149-JPは199█/██/██、非営利団体である地球環境保全委員会の██支部に潜伏した財団職員により、複数のSCPオブジェクトの存在が告発された事を受け調査を行った際に他のオブジェクトと共に回収されました。当時財団は未収容SCPオブジェクトによるものと推測される地球公転軌道の変化について、主に地球外を中心として調査を行っていましたが、地球環境保全委員会がSCP-149-JPについて独自に行った調査記録と財団の記録が一致したことでSCP-149-JPの特定に至りました。地球環境保全委員会の構成員はSCP-149-JPを利用し太陽-地球間の距離を操作する事で、地球上の平均気温の一定化や日照量の調節などを試みようとしていたことが判明しています。なお、彼らによって観測されたSCP-149-JPの円周と太陽-地球間の距離の関係、及びオブジェクトによる物と推測される地球環境への影響の記録は現在の収容プロトコルを作成する基盤となりました。
アイテム番号: SCP-953-JP
オブジェクトクラス: Euclid Safe
特別収容プロトコル: SCP-953-JPは移送が不可能の為、発見時の廃屋の跡地を中心として建設されたサイト-81██の室内に存在しています。SCP-953-JP-2の出現を防ぐため、SCP-953-JPの前にDクラス職員を3人並ばせてください。加えてSCP-953-JPの扉部分を封鎖する事によりDクラス職員の浪費を防ぎます。SCP-953-JP担当技術者は遠隔操作によって週に一度SCP-953-JP封鎖装置の点検を行ってください。SCP-953-JP-2が出現した際は迅速にSCP-953-JPの前に5人のDクラス職員を配属してください。
説明: SCP-953-JPは山形県に存在する引き戸の玄関です。SCP-953-JPは本来家屋の一部でありましたが、財団による家屋の撤去が行われた後もその場で直立状態を維持しています。(以下、SCP-953-JPの家屋の外側に向いていた面を「外側」とします。)SCP-953-JPの枠や戸部分を構成する木材は風化や侵食に対しては高い耐久性を有しますが、強い圧力や衝撃によって通常通り破損します。
SCP-953-JPは周囲半径約12m以内に存在する、またはSCP-953-JPを起点として形成された行列を目視した人物に対し、「自身の目的のためにSCP-953-JPの前に立ちたい(または行列に加わりたい)」という欲求を抱かせます。この欲求は極めて微弱な物であり、他人からの制止や自制心等によって一時的に消失させることが可能です。しかしながら効果範囲内に滞在する限りは欲求が再発、持続する事に注意してください。
SCP-953-JPの外側の正面を起点にして立つ、または既に構成されている行列に加わった人物はSCP-953-JP-1となります。SCP-953-JP-1となった人物は行列から離脱する事を頑なに拒否するようになります。強制的にSCP-953-JP-1を列から離脱させた場合、SCP-953-JP-1は狂暴化し制止を振り切って列の最後尾に並び直します。また、SCP-953-JP-1をSCP-953-JP-1が本来並んでいた位置を中心とした直径約7mの範囲よりも外へと連れ出そうとした場合、SCP-953-JP-1は瞬時に消失し列の最後尾に再出現します。なお、SCP-953-JP-1は先述の特性を除けば変化以前の個人のアイデンティティを有しており会話も可能です。
SCP-953-JP-1が2体以下になった状態が数時間持続した場合、SCP-953-JPの戸が開き枠内から外側へと人間の胴体と幟を模した頭部を有した人型の存在(SCP-953-JP-2)が不規則な間隔で出現するようになります。57SCP-953-JP-2はSCP-953-JPから離れると、発見した人間をSCP-953-JPの前へと引き連れる、または周囲の商業施設の扉付きの玄関を通じて内部へ侵入しようと試みます。SCP-953-JP-2は人間をSCP-953-JPの前か既に構成された行列の最後尾に立たせた時点でその個体は消失しますが、SCP-XXX-JP-1が5体以上にならない限りSCP-XXX-JPから出現し続けます。SCP-953-JP-1が5体以上になると全てのSCP-953-JP-2はその場から消失し、SCP-953-JPは閉じられます。
商業施設にSCP-953-JP-2が侵入した場合その施設は急速に風化し廃屋となり、その玄関がSCP-953-JPと同等の性質を有するようになります。58この時施設内にいた人物とSCP-953-JP-2は施設の変化開始と同時に消失します。SCP-953-JP-2の出現中はSCP-953-JPの前に立つ、または行列に加わる欲求を喚起させる効果の範囲とその強度が増強されます。効果の強度はSCP-953-JP-2の消失後に減少しますが、拡大した範囲についてはSCP-953-JP-2消失後もそのままとなります。効果範囲の拡大速度は3m/hで一定です。なお、SCP-953-JPを封鎖しSCP-953-JP-2の出現を抑制する試みは、内部から出てこようとするSCP-953-JP-2の圧力によりSCP-953-JPの破損を招くため推奨されていません。
SCP-953-JP-1による行列が存在する場合でもSCP-953-JPは不定期に戸が開き、数体のSCP-953-JP-1がSCP-953-JPの枠内へと進入します。SCP-953-JP-1はSCP-953-JPの敷居を跨いだ時点で消失します。外部からの観測では解放時のSCP-953-JP枠内に変化は見られませんでした。なお、SCP-953-JP-1を追跡する試みは全て失敗に終わっています。
SCP-953-JPは200█/██/██に「異常なほど行列ができる店」「常に行列が存在する謎の店舗」として複数のウェブサイト上に情報が掲載された事により財団がその存在を把握、収容に至りました。財団が確保する直前のSCP-953-JPには28体のSCP-953-JP-1による行列が形成されており、SCP-953-JPの有する効果範囲は半径9mでした。この廃屋はSCP-953-JP以外からの内部調査の後、倒壊によるオブジェクトへの損傷を防ぐために撤去されました。
補遺1: SCP-953-JPは収容当初SCP-953-JP-2の出現を防ぐ為に不定期に減少するSCP-953-JP-1を補充する必要がある事、SCP-953-JP-2出現時の効果範囲の拡大と強度の増加からEuclidと分類されました。しかしSCP-953-JPを封鎖する事によりSCP-953-JP-1の枠内への進入を阻止できる事が判明しSCP-953-JP-2出現の阻止と大幅な収容の簡素化を行うことに成功した為、オブジェクトクラスはSafeへと再分類されました。
インタビュー記録1 (200█/06/22)
対象: SCP-953-JP-1-13
インタビュアー: エージェント・財部
付記: SCP-953-JP確保直後に行われたインタビューです。対象について、3日前に家族から捜索届けが出されている事がわかっています。
<録音開始,(200█/06/22)>
エージェント・財部: あの、すみません。少しお話を伺いたいのですが。
SCP-953-JP-1-13: 何だよあんた。まさか割り込もうって算段じゃないだろうな?
エージェント・財部: いえ、違いますよ。私、庄内共同出版の鈴木と申します……。ちょっとした取材です。お話をお伺いしても宜しいでしょうか?
SCP-953-JP-1-13: 取材?記者なのかあんた。……いいぜ、ちょうど暇だったし。エージェント・財部: ご協力感謝します。始めにお名前を伺っても?
SCP-953-JP-1-13: あー、██です。
エージェント・財部:ありがとうございます。では最初の質問から。貴方は何故この列に並んでいるのですか?
SCP-953-JP-1-13: ん?変な質問だな。この店結構有名じゃないの?[SCP-953-JP-1-13が情報端末を操作しWebサイトのスクリーンショットを見せる]ほら。これこれ。この口コミサイトで見かけたんだよ。何でもウマい飯が食えるらしくてさ?んでんで、ダチと三人で朝人が少ないうちから並ぼうっつって来たんだけどよ、もう混み具合がすげーのさ!
エージェント・財部: そんなに人気なんですか。知りませんでした。朝早くから並んでいるとのことでしたが、あなたたちは何時ごろから並び始めたのですか?
SCP-953-JP-1-13: え、んーと、何時からだっけ。[SCP-953-JP-1-13が後方のSCP-953-JP-1に声をかける]そうそう、朝の6時からだよ。でも来た時にはもう人がいてびっくりしたよ。2、30人はいたな。ついた時は帰ろうかなと思ったけど、こんだけ並んでるんだ、きっとウマイに違いねぇって思ってさ。ぜってえ食ってやろうって三人で話して並んだわけよ。
エージェント・財部: 大盛況なんですね。立ちっぱなしで疲れませんか?
SCP-953-JP-1-13: そ、こまでは気にならねえな。うん。むしろワクワクしてて疲れを感じないというか。遊園地の2時間待ちなんかよりずっと楽ちんだぜ。
エージェント・財部: ふむ、あなたたちが並び始めてからどのくらい進みました?
SCP-953-JP-1-13: うーん、多分6人ぐらいは中に入っていったんじゃないか?こっからだと見えにくいけど、そんな気がする。
エージェント・財部: だいぶゆっくりとしてますね。
SCP-953-JP-1-13: 従業員もすくねえんじゃねえかなー、結構古い店だし。お、まって、ちょっと進んだな。2人ぐらい入ったっぽい。エージェント・財部: 少しずつ進んでますね。もう少ししたら入れるんじゃないですか?
SCP-953-JP-1-13: だとイイんだけどな!そうだ、取材ならアンタも並んだらどうだ?レビューってのは重要だぜ?食レポっていうの?
エージェント・財部: 気になりますが……。[10秒間の沈黙] あいにくアポイントメントをまだとっていませんので。内部の取材はまた後日です。今日は下調べみたいなものですから。
SCP-953-JP-1-13: そうか、仕事すんのも大変だな……。他に俺に聞くことある?
エージェント・財部: いえ、以上です。ご協力ありがとうございました。
<録音終了>
終了報告書:SCP-953-JP-1は自身が列に並び続ける事に違和感を覚えない模様。列に並ぶ目的はSCP-953-JP-1になる前の目的が主体だった。この他複数のSCP-953-JP-1に取材を行ったがその多くはSCP-953-JP-1-13と同様の目的で列に並んだと主張した。これはSCP-953-JPが存在する家屋について拡散された情報が「行列のできる飲食店」であることが原因と推測される。また、エージェント・財部が列への参加を促された際に逡巡を見せた事からSCP-953-JP、SCP-953-JP-1に何らかの精神的作用があると予想される。
インタビュー記録2 (200█/08/12)
対象: SCP-953-JP-1-30(元D-953-JP-2)
インタビュアー:██研究員
付記:** SCP-953-JP封鎖後に配置された元D-クラス職員へのインタビューです。インタビューは通信機器越しに行われました。
<録音開始,(200█/08/12)>
██研究員: 聞こえますかSCP-953-JP-30。
SCP-953-JP-1-30: [沈黙]
██研究員: SCP-953-JP-1-30?
SCP-953-JP-1-30: ……すすまない。
██研究員: 進まない?列がですか?
SCP-953-JP-1-30: [沈黙]
██研究員: 質問に答えてください。
SCP-953-JP-1-30: 辛い。
██研究員: 辛い?何故ですか?
SCP-953-JP-1-30: 並んでなきゃいけない、わかってる、でも辛い。なんか、目的が無いんだ。なあ、なんで俺、何で並んでるんだ?なぁ、いつまで並べばいい?
██研究員: 大事なお仕事ですよ。そのまま並んでいてください。
SCP-953-JP-1-30: い、1か月経てば出してもらえるんじゃなかったのかよ!もう、もう何日だ?何か月?わかんねえよ……、なぁ、俺もうヤダ、帰りたい。帰らせてくれよ。なぁ。頼むよ。
██研究員: それはできません。
SCP-953-JP-1-30: ふ、ふざけるな。何でおれたちをこんな無意味な目に合わせるんだ!ただ、毎日立って、たって、時間も、ああ、でも、並ばないと、でも、いやだ、あああ![SCP-953-JP-1-30が列から外れて走り出す。SCP-953-JP-1-30は効果範囲外に出た所で瞬時に消失、列最後尾に再出現する。]
██研究員: SCP-953-JP-1-30?
SCP-953-JP-1-30: 何ですか?
██研究員: …並ぶことに苦痛は?
SCP-953-JP-1-30: いえ?特にはないですが。
██研究員: そうですか、インタビューを終了します。<録音終了>
終了報告書: SCP-953-JPの封鎖後からSCP-953-JP-1が列に並び続けることに違和感、精神的疲弊を覚えるようになった。目的の消失、あるいは手段の目的化が原因と考えられる。しかしながら効果範囲外に出て消失、再出現のプロセスを踏んだSCP-953-JP-1は違和を感じなくなる模様。以降SCP-953-JP-1-29、30、31で収容を維持する。
アイテム番号: SCP-418-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: 現在SCP-418-JPは東京都██区の██公園の公衆トイレ内に存在しています。SCP-418-JPが転移した個室を含む公衆トイレを使用禁止とします。長期にわたりSCP-418-JPを同一箇所で収容する場合は新たな公衆トイレを建設することで一般人によるSCP-418-JPの活性化を防いでください。
通信機器を用いた実験を行う際、担当職員はSCP-418-JPの転移を発生させないようDクラス職員に指示を出してください。また、転移が発生した場合に備え各所の公園内に存在する公衆トイレを立ち入り禁止とし、実験後のSCP-418-JPの確保を迅速に行えるよう人員を配置してください。
説明: SCP-418-JPは東京都に存在する公園の公衆トイレ内に出現する文字列です。SCP-418-JPは公衆トイレ内の使用可能な洋式トイレが存在する個室一個59にのみ出現します。なお、SCP-418-JPへの大きな損傷60や塗料による隠蔽、SCP-418-JPが存在する個室の破壊はSCP-418-JPの転移をもたらします。
SCP-418-JPは個室に入り扉を閉じて用を足している人物(以下「対象」とする)が存在する場合に活性化します。SCP-418-JPは乱雑な書体で「右を見ろ」「下を見ろ」の様に命令文の形を取り、対象から見やすい位置の壁面や床面に出現します。対象が出現したSCP-418-JPの指示に従った場合、SCP-418-JPが対象の目の前の壁面や床面へと即座に移動し新たな指示を出します。数回の指示の後、SCP-418-JPは「下を見るな」「水を流すな」等と言った禁止文を提示します。対象が禁止された動作を行った場合対象は個室から消失し代わりに身元不明の死体が出現します。それと同時にSCP-418-JPは東京都内の別の公衆トイレの個室内に転移します。命令文に従わない、または禁止文中の動作を行わずに個室内から退去するとSCP-418-JPは不活性状態になり、個室から転移することはありません。
SCP-418-JPは199█年に都内の公園の公衆トイレで複数の変死体が発見されたこと、および局所的に流行していた「見るたびに内容が変わるトイレの落書き」の噂によってその存在が財団に認識されました。
以下の会話記録はSCP-418-JPの性質を詳しく調べる為に行われた実験の物です。なお、転移後のSCP-418-JPの捕捉を容易にすべく都内の公園に清掃員に扮した職員が配属されました。
実験記録418-JP-1(199█/██/13)
対象: D-418-JP-1(20代女性)
インタビュアー: 東雲研究員付記: D-418-JP-1の頭部に小型のビデオカメラとマイクを装着させています。
<録音開始>
東雲研究員: 聞こえていますか、D-418-JP-1。
D-418-JP-1: 聞こえる。しっかしなんだここは、せっかく外に出れたと思ったら便所に連れてこられるなんて。
東雲研究員: 私語は慎んでくださいD-418-JP-1。指定されている個室に入り用を足してください。
D-418-JP-1: はぁ?ウンコしろってのか?
東雲研究員: これは実験ですD-418-JP-1、指示に従ってください。D-418-JP-1: はいはいわかりましたよ。でも、すぐウンコがでるとは思えないけどな。
(D-418-JP-1が個室に入り鍵を閉める。その後に便器の蓋を開ける音が聞こえる。D-418-JP-1が便座に座る。)
東雲研究員: D-418-JP-1、何か周囲に変な物はないですか?D-418-JP-1: 変な物?とくには無いぞ。きったねえ落書と壁のシミ、あとゴミ箱があるぐらいで。ていうか、カメラがついてるんだからそっちにも見えてるだろ?
東雲研究員: ええ、見えていますよ。落書には何と書かれていますか?
D-418-JP-1: 「左を見ろ」だってさ。
東雲研究員: D-418-JP-1、文章に従って左の壁を見てください。これは実験です。
D-418-JP-1: はいはい。[カメラが左の壁面を映す。文字列が確認できる]って、なんだこれ。さっきまでこんなのなかっただろ……?下を見ろ?[カメラが下を向く]。うわ、なんなんだよこいつ、タダの落書きじゃないぞ。これ従わなきゃいけないのか?
東雲研究員: 暫くの間従ってください。D-418-JP-1: くそっ、ろくなもんじゃない。
[以降12回のSCP-418-JPによる指示が出され、D-418-JP-1はその指示に従う。SCP-418-JPによる指示が開始されてから7分が経過。]
東雲研究員: 指示文に何か変化はありましたか?
[D-418-JP-1は「紙を引き出せ」という指示を実行している。]
D-418-JP-1: 特には[引き出された紙に文字が出現しているのが確認できる。内容は文体の乱れにより映像からは読み取れず]
D-418-JP-1: [沈黙]
東雲研究員: D-418-JP-1?
D-418-JP-1: [便座から立ち上がり紙を便器内へと捨てると、個室の鍵を開け急いだ様子で外に出る。]
東雲研究員: D-418-JP-1、指示が出るまで個室からは出るなとー
D-418-JP-1: 喋るな。
東雲研究員: え?
D-418-JP-1: 見えてたんだろあの文章。「喋るな」って書いてあったんだ。だから指示に従って、でも喋んなかったら何もわかんないだろ?どうすりゃいいかわかんなくて、あと、正直怖くて、喋ったらやばいと思って、外に出た。それだけ。東雲研究員:…… なるほど。わかりました。ではD-418-JP-1、個室内でもう一度落書きがあるか確認してください。鍵はかけないで。
D-418-JP-1: わかった。うう、怖。[再びD-418-JP-1は個室に入る。]
D-418-JP-1: [あたりを見回す動作の後、カメラが下を向く。足元に先ほどまで存在しなかった文字列が確認できる。]……クソが。
東雲研究員: 何と書かれていますか?
D-418-JP-1: 「大間抜け」、だとよ。他には何もない。
東雲研究員: 分かりました。これで実験を終了します。
<録音終了>
終了報告書: 禁止の命令を守った場合は生還する事が可能です。SCP-418-JPも転移を行うこともないようです。禁止文が「喋り」について言及されている事からSCP-418-JPは個室内の対象の状態を察知してるものと考えられます。
"実験記録418-JP-3(199█/██/15)
対象: D-418-JP-3(30代女性)
インタビュアー: 東雲研究員付記: D-418-JP-3の頭部に小型のビデオカメラとマイクを装着させています。
<録音開始>
東雲研究員: 聞こえていますか、D-418-JP-3。
D-418-JP-3: はいはーい、ばっちし聞こえてますよ。
東雲研究員: なるべく返答は簡潔に行ってください。……ではD-418-JP-3、指定されている個室に入り用を足してください。
D-418-JP-3: わかりました。うう、お腹がごろごろする……。
(D-418-JP-3が個室に入り鍵を閉める音)
D-418-JP-3: よいしょっ。[5秒間の沈黙の後にD-418-JP-3のうなり声と水音が15秒間続く。カメラはD-418-JP-3の正面の壁を映している。]
D-418-JP-3: うーん……。ん?
[カメラがD-418-JP-3の足元の床を映す。SCP-418-JPが確認できる。]
東雲研究員: どうしましたか?
D-418-JP-3: んーとね、床に何か書いてある。落書かな?……「右を見ろ」だって。見えてる?
東雲研究員: こちらでも確認できています。それでは床に書かれた文字に従ってください。D-418-JP-3: わかりましたー。
[カメラがD-418-JP-3の右側の壁を映す。「上を見ろ」と書かれた文章が確認できる。引き続きD-418-JP-3は指示に従う。個室の天井に文章が書かれている事がわかるが、非常に文字が薄く映像からは文章を読み取ることが出来ない。]
東雲研究員: D-418-JP-3、天井に何が書かれているか分かりますか?
D-418-JP-3: うーん、ちょっとまって、薄くて見えないな……。[D-418-JP-3が便座から立ち上がる。]ええと……。
D-418-JP-3: ……え?
東雲研究員: 何と書かれていますか?
D-418-JP-3: 「便器を見るな」、だって。あと、なんだろ、これだけなんか別な物で書かれてるみたい……。指、かな?東雲研究員: D-418-JP-3、便器の中の物を確認してください。
D-418-JP-3: え、でもさっき指示に従えって。東雲研究員: こちらの指示に従ってください。
D-418-JP-3: はーい。
[D-418-JP-3が振り返る。便器内には何も入っていない。]
D-418-JP-3: なぁんだ、なにもないじゃない。 嫌な落書だなぁ……。先生、もう出てもいいよね?なんかこのトイレ、気味が悪いよ。
東雲研究員: ……D-418-JP-3、さっき用を足したんですよね?ちゃんと出たんですか?
D-418-JP-3: あ、そういえ[突如として映像記録が途切れる。以下音声のみ]い゛っ!?ぁっああ゛あ゛あっ!
東雲研究員: D-418-JP-3?何が起きたのか報告してください。
D-418-JP-3: せんせっ、助けで!たずげっ、何がい゛るっ!足っ、あしつかまれえっ、痛い痛い痛いっ、はな、はばし、はなじてっ、嫌っ、嫌だっじぬっ、首っ、せんせっ、ぜん、あ[悲鳴]
[流水音のあと20秒間の沈黙]
東雲研究員: D-418-JP-3?応答してください。
東雲研究員:…… D-418-JP-3との通信が途絶えました。これより現地にてD-418-JP-3が入った個室の確認、都内の公園内でのSCP-418-JPの捜索を行います。
<録音終了>
終了報告書: 確認の結果、D-418-JP-3が入った個室の便器内で風化した女性の死体が発見されました。検死の結果、死体はD-418-JP-3ではなく40代の日本人女性であることが明らかになりました。この女性の身元は現在まで判明していません。なお、実験後SCP-418-JPは現在の東京都██区の██公園で確保されました。
付録1: 以下は財団による収容以前にSCP-418-JPによって個室内に出現したと思われる遺体の一覧です。
・頭部と胴体が分断された30代男性。頭部は便器の中、胴体は便座に座っている状態で発見された。所有物の名刺に書かれていた名前と会社はいずれも存在が確認できなかった。
・手首から切断された女性の左手4個。全て薬指に指輪をはめている。検査の結果年齢は異なるが全て同一人物の物と判明した。
・60代女性の水死体。便器内に頭部を突っ込んでいる体勢で発見された。両腕は切断されている。
・腐敗が進行し液化した男女二人分の死体。衣類は発見されず。
・腹部を裂かれた20代女性。子宮の中に10体の胎児が確認された。
アイテム番号 : SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス : Safe
特別収容プロトコル : SCP-XXX-JPの存在する道路では、地点Aを起点としてSCP-XXX-JPを含めた東西650mの区間を夜10時~2時の間「夜間工事の為通行禁止」として一般人の侵入を防いでください。万が一地点AからSCP-XXX-JP内へ侵入した一般人が現れイベントが発生した場合は地点B付近で待機する職員によってイベント終了後に出現した侵入者を確保して下さい。この時SCP-XXX-JPの500m地点に存在する交差点については、南北に続く道路を封鎖する事で対象が東側に進むように誘導を行います。侵入者が生存していた場合は負傷の治療やインタビュー、記憶処理を行ってから解放し、死亡していた場合負傷の状態に合わせてカバーストーリーを適応してください。夜2時を経過しても侵入者が地点Bに現れない場合、侵入者を行方不明者として処理してください。
説明 : SCP-XXX-JPは鹿児島県██市の圃場地帯の私道上に存在するおよそ600mの区間です。圃場内の為街灯の数は少なく、夜間の見通しは非常に不明瞭です。SCP-XXX-JPでは以下の条件を満たした人(以下「対象」とする)が夜10時~2時の間にSCP-XXX-JPを西から東へと直進しようとした際に異常現象を発現します。(便宜上SCP-XXX-JPの両端の内、西側を地点A、東側を地点Bとします)
・地点A通過時に同伴者を連れていないこと。
・徒歩であること。乗り物を用いた移動ではイベントは発生しません。
・「両足」が存在する事。二本一対の足が一組存在する場合を両足と定義し、義足を使用している場合もこれに含まれます。
・地点A通過時に他の人物によってイベントが発生していないこと。
以下の表は実験によって得られた地点Aからの距離ごとに起こるイベントを記した表です。なお、イベント発生中に地点B付近から西側を観察しても対象およびSCP-XXX-JP-1を確認する事はできませんでした。
地点Aから対象までの距離 | 発生する現象 |
0~100m | 対象は自身の後方から聞こえる1~数人分の足音を認識します。この時点では後ろを振り返っても対象は何らかの存在を確認することはできません。なお、イベント開始時にSCP-XXX-JP内に存在する全ての街灯は消灯されます。 |
100~250m | 後方から聞こえる音声に複数人の声が加わります。声の内容は懺悔、空腹を訴えるもの、奇声、喃語など様々です。この時点で対象が振り返ると、対象からおよそ20m後方を歩く複数の存在(SCP-XXX-JP-1とする)の足を確認することが出来ます。 SCP-XXX-JP-1の姿全体を捉える試みは映像記録の乱れ、光源の故障などにより現在まで失敗しています。 |
250~500m | 足音と声は引き続き聞こえますが、全ての声が同一内容の未知の言語による文章を繰り返すようになります。対象が前を向いている間、この音声と足音は次第に対象に接近してくるかのように音量が増大します。対象が振り返った場合、足音と声の音量は100~250m区間時の物に戻りますが、SCP-XXX-JP-1の数と種類、聞こえる音声の種類がランダムな数で増加します。この区間では対象が振り返らない場合、音声は最大で対象の後方1mの地点まで接近します。 |
500m地点 | 十字路が存在します。対象が直進した場合イベントは継続しますが、左右の道に進もうとした場合では角を曲がり切った時点で対象が消失しイベントが終了します。なお、イベント発生中でもこの十字路は東、南、北から侵入した場合は自由に通行が可能です。その際対象及びSCP-XXX-JP-1を認識する事はありません。 |
500m~600m | 後方から聞こえる音声には次第に雑音が混じるようになります。D-クラスを用いた実験ではこの声は「嗚咽」や「歓喜の声」と表現されました。61この区間ではSCP-XXX-JP-1は対象が振り返るかどうかを問わず次第に対象に接近してきます。しかしながら対象が確認できるのはSCP-XXX-JPの足のみであるということに変化はありません |
地点B | 対象は前方から近づいてくる、懐中電灯の物と思われる光を認識します62。それと同時にSCP-XXX-JP-1は歓声の様に聞こえる音声を発しながら対象を走って追い抜かしていきます。この時対象はSCP-XXX-JP-1が衝突してくることにより高確率で何らかの怪我を負うことになります。区間内での振り返った回数が6回を超えていた場合、対象はほとんどの場合多数のSCP-XXX-JP-1の殺到により圧死、または転倒とSCP-XXX-JP-1からの踏みつけによる複雑骨折や臓器破裂により死亡します。全てのSCP-XXX-JP-1が対象から10mほど前の場所を通過した時点でイベントは終了します。 |
なお、どの地点でもイベント中は対象が区間内で引き返そうとした場合、対象とSCP-XXX-JP-1が消失しイベントが終了します。また、イベント中のSCP-XXX-JP内にとどまり続けた場合も同様に夜2時を経過した時点で対象とSCP-XXX-JP-1が消失しイベントが終了する事が判明しています。
付録1:以下は20/██/██/の実験時に450m地点で確認できたSCP-XXX-JP-1の足の種類の一部です。実験に用いたD-クラス職員はこの地点までに5回振り向いています。
・灰色のスーツと黒の革靴
・黒のスニーカー 比較的新しい。
・赤いハイヒール 右足のヒール部分が折れている。
・草鞋を履いた男性の物と思われる足。
・偶蹄目の物と推定される足。一対二本のみが独立しており、二足歩行を行っている物と推測される。
・タコの足。2本のみが歩行に使用され残りは地面を引きずられている。
・鶏の物と推定される足 ひどい火傷を負っている。
・未知の生命の器官一対 緑色の粘液を分泌している。分泌物の回収はSCP-XXX-JP-1の性質により行えず。
・ 空気の揺らぎ。
・足枷のついた足。多くの裂傷が見受けられる。
補遺1: イベント中、500m地点の交叉点に存在する石碑に次のような文章が刻まれていることが判明しました。以下はその原文です。
いまからむかえにいきます
おそくなってごめんね。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 実験用として確保したSCP-XXX-JPはサイト-81██の標準型水生生物用水槽で飼育されています。水温は15度を維持し、不必要なSCP-XXX-JPの肥大を防いでください。万が一温度管理の異常等で個体が増えすぎた場合はSCP-XXX-JP-1の発生及び爆発を防ぐためSCP-XXX-JPを水ごと組み出し、それを液体窒素で凍結させてから破砕処分してください。
SCP-XXX-JP-1について研究を行う場合、研究主任とレベル3職員一名に許可を貰った後にSCP-XXX-JPの水槽を耐衝撃収容室に移送し、水温25度を維持しSCP-XXX-JPに十分な光を照射し続けてSCP-XXX-JP-1個体を得てください。なおSCP-XXX-JP-1の収容室内の温度と湿度はそれぞれ28度、80%を維持してください。サイト-81██では現在3体のSCP-XXX-JP-1を記録用に収容し対話と監視を行っています。
未収容のSCP-XXX-JPの生息が確認された湖には観測所が設けられています。現在日本国内に3か所、ロシアに1か所の生息地が確認されています。青森県の██湖に出現するSCP-XXX-JP-1は人間に対し敵意を有しており危険であるため終了が認められています。爆発、誘爆の恐れがある為終了の際は十分な距離を取り、爆発の衝撃に耐えられる装備を使用してください。後述の補遺1からSCP-XXX-JP-1の終了や攻撃は現在財団と有効な関係を保っているSCP-XXX-JP-1との関係を悪化させ、更なる他のSCP-XXX-JP-1の敵対的反応を引き起こす可能性があります。SCP-XXX-JP-1が出現した場合、不発弾の解体を理由として近隣の住民などを避難させ、SCP-XXX-JP-1を耐衝撃コンテナまで誘導し封じ込めて下さい。この時、対話が可能であればすべて音声記録として保存します。敵対的な反応が続く場合はコンテナ内の温度と湿度をそれぞれ40度、30%に設定し、SCP-XXX-JP-1の自爆を促します。
説明: SCP-XXX-JPはマリモ(学名:Aegagropila linnaei)の球状集合体に酷似した細胞群体です。SCP-XXX-JPを構成する細胞は100個から5000個程とみられ、SCP-XXX-JPの大きさは直径数百μmから5cmと様々です。各細胞からは細胞壁を貫通する形で細胞質から葉緑体を含んだ数本から十数本の鞭毛が生えています。SCP-XXX-JPは年に数回の無性生殖を行うほか、環境悪化時には有性生殖による繁殖を行います。大型の細胞群体同様、細胞同士の連結が大きく解かれた場合は自然環境下で生存することが出来なくなりますが、完全な状態のSCP-XXX-JPは数十年に渡り生存が可能です。
SCP-XXX-JPは周囲の水温が25度前後かつ日光照射量が十分な状態が二週間程継続した場合に異常性を発現させます。SCP-XXX-JPが先述の状況に置かれると爆発的な速度で無性生殖を行いその数を増殖させ、それと同時にSCP-XXX-JPは生息環境の広さに関わらず自身の大きさを肥大化させます。実験下においてあるSCP-XXX-JP個体は直径30cmまでに肥大しました。ある程度肥大化したSCP-XXX-JP個体は適当な大きさの他のSCP-XXX-JP個体と細胞間同士の連結を行い互いを結合させ、身長145cmほどの人型の形状を取るようになります(この状態をSCP-XXX-JP-1と呼ぶ)。SCP-XXX-JP-1は人間と同等の知能を持ち、言語によるコミュニケーションを行うほか、独自の宗教観を持ちます。加えて学習能力も高く人間の文化や道具の使い方を理解する事ができるようです。また、1から十数の、枯死した細胞で形成されていると見られる装飾品をどの個体も左胸の辺りに身に着けています。財団収容下で実験により誕生したSCP-XXX-JP-1は人間に対して友好的な感情を抱いていますがこれがSCP-XXX-JPの本心からの意思なのかどうかは不明です。現在財団ではSCP-XXX-JP-1の言語の翻訳作業が行われており、現在までにおよそ8割の言語が解明されています。
SCP-XXX-JP-1の内部の間隙には高濃度の酸素と細胞の死骸から生成された可燃性の液体が充てんされており、高温乾燥や強い衝撃、ストレスなどで爆発します。また、SCP-XXX-JP-1の意思によって自爆する事も可能です。その威力はSCP-XXX-JP-1ごとによって異なりますが、生存期間の長いSCP-XXX-JP-1程爆発の威力が高くなる傾向があります。爆発後のSCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JP同様細胞間の連絡が途切れた事で死亡します。
SCP-XXX-JPは1957年に「北海道の██湖から自殺した駐屯兵が現れてこちらに敬礼する事がある」という局地的な都市伝説が流行した際にその存在が認識されました。財団は3年にわたりSCP-XXX-JPの存在を追跡し、1960年に最初のSCP-XXX-JP-1を確保、その後の研究でSCP-XXX-JPが水生細胞群体であることを突き止めました。1985年までにSCP-XXX-JPの生息が確認された湖に観測所を建設し現在の収容体制がほぼ確立しました。後述する2003年の事件以降、水温が高くなる時期には青森県██湖の観測所には常に少人数の機動部隊が在中している他、各地の観測所に一名の交渉術に長けたエージェントが配属されます。
以下はSCP-XXX-JP-1の思想、知性の分析の為に行われたインタビュー記録です。
対象: SCP-XXX-JP-1-1
インタビュアー: 寒河江博士
付記: SCP-XXX-JP-1-1の予期せぬ爆発を防ぐため、SCP-XXX-JP-1-1を耐衝撃収容室に収容し、インタビューはマイク越しに行われました。また、互いの会話は翻訳機器を通して行われています。
<録音開始>
寒河江博士: SCP-XXX-JP-1-1、聞こえているかい?今日は色々聞きたい事があるんだ。
SCP-XXX-JP-1-1: はい、聞こえています。なんなりと。
寒河江博士: ふむ、じゃあまず、あなた自身の事について何か話してくれないだろうか。
SCP-XXX-JP-1-1: はい。……私達は「水底の天球の核、縺れる連綿の対座、[翻訳不能:tarro-reggol]にして沙羅の御簾越しの嘆かれる君」に命を捧げる事を誓った者です。昔の名前はもう捨ててしましました。今では貴方たちから…………SCP-XXX-JP-1?と、呼ばれていますが。私自身は昔は「君」の御傍に付きその崇高な世界像を実現するために東奔西走したものです。しかしながら……「君」の力は日に日に弱まってしまい、今私たちが賜ることのできる加護もシガルゴ63の羽毛の一辺ほどの重さも無くなってしまいました。「君」は
寒河江博士: ちょっとまってくれないか。「君」とは?
SCP-XXX-JP-1-1: あ……。
寒河江博士: 聞いては不味い質問だったかな。
SCP-XXX-JP-1-1: いえ、……ただ、今の貴方たちに説明しても詳しくは理解できないと思いまして。
寒河江博士: それでも話は聞いておきたいな。大丈夫かい?
SCP-XXX-JP-1-1: ……分かりました。手短にお話ししましょう。
SCP-XXX-JP-1-1: 「君」は私たちの心であり[翻訳不能:axllaryusii]、そしてすべての祖であり健やかな母。「君」はその御手で荒れるガンボラジ64を鎮め、その藻屑から私達を作り出しました。そしてガンボラジの中心、水底の天球に石塔を作り全ての水底の民に大いなる進化、とこしえに続く大洋を約束しました。私たちは「君」に傅き「君」の作る世界を支え育てるという役割を誇りにして生きてきました。
寒河江博士: 「君」はあなたたちの主導者という事でいいのかな。
SCP-XXX-JP-1-1: はい、簡単に言うならそういうことになるのでしょう。実際はもっと複雑ですが……。「君」の目的は私達水底の民と[翻訳不可:Zappendiollas]の久遠の共存。いがみ合うことのない悠久の平和。実際、とこしえに続く大洋を約束した時、私たちは手を取り合いました。どこまでも澄んだ眼の様な希望をもって、種を超えてこのとこしえに続く大洋を守ろうと。寒河江博士: 取り合いましたってことは……うまくいかなかったという事かな。
SCP-XXX-JP-1-1: [SCP-XXX-JP-1-1が椅子から立ち上がる音]Zappendiollasは!!あの忌々しき荊道の民は!我が「君」を罵倒した!多くの同胞があいつらに虐げられ辱められた!私と同胞は蛮族と化した輩を倒すため身を粉にして戦いました。何人も死んだ。私の友人も、道を記してくれた先輩も、厳しかった上官も……。あぁ、しかし、今やZappendiollasどもは私たちの大いなるガンボラジを緑濁させ腐臭立ち込める死の水へと変えてしまった……。「君」はお嘆きになって、ガンボラジを……ああ……ムスアーカレ65よ……「君」に御加護を……。[SCP-XXX-JP-1-1がすすり泣く音]寒河江博士: これ以上インタビューを行うとSCP-XXX-JP-1-1が爆発する恐れがあります。一時インタビューを中断します。
SCP-XXX-JP-1-1: 神よ、神よ……、あいつらに罰を……我らからの報復を……。
<録音終了>
考察: SCP-XXX-JP-1は何らかの国家体系を有していたのではないだろうか?上に立つ「君」、Zappendiollas。この二者間で何か外交的な不具合があったのではないだろうか。しかしその国家はどこに存在する?平行世界か?デリケートなオブジェクトである分慎重に調査を行う必要はあるが、今後もSCP-XXX-JP-1へのインタビューを行いその社会体系と所在を知る必要があるのではないだろうか。奴らは紳士的ではあるが、SCP-XXX-JP-1-1が報復を望んでいる事を思うと少し不安な所がある。
補遺1: 2003/07/13、青森県の██湖でSCP-XXX-JP-1群が出現。複数のSCP-XXX-JP-1が手をつないだ状態で岸に上陸。十五分ほど彷徨った末、付近の道路で爆発を起こしました。この爆発の威力はTNT█kg分に相当し、25人の死者と37人の負傷者を出しました。このSCP-XXX-JP-1は自己の意思で爆発したと思われます。財団は「不発弾の爆発」としてこの事件を隠ぺいしました。
この事件の同時刻、収容施設内のSCP-XXX-JP及びSCP-XXX-JP-1が30秒間高周波の音声を発しました。以下はその音声を解析、翻訳したものです。
ああ、何故ですか「君」、そして同胞よ。なぜ殺した。彼の者は我らを傷つけることはしない友好の民だ。Zappendiollasの様に五指があり肌に毛が無くとも中身はまるで違う。「君」よ、貴方の双眸も緑濁の水に染められててしまったのですか。貴方が求めたとこしえの大洋はもう無いのですか。「君」よ、あなたは私が傅いた頃の貴方では無くなってしまったのですね。一つの大いなるガンボラジの藻屑には戻れないのですか。あぁ、あんなにお慕い申し上げていたのに。
「君」、どうか、目を覚ましてください。遍く慈悲をもって全てを白藻の隣人として受け入れましょう。さすればわれらは再び水底の天球の元に一つになれるのです。すべてを水底に、どうか。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは現在セクター-81██の収容室内に、15本がそれぞれ個別にオブジェクト破壊装置つき収容用ロッカーに収容されています。各SCP-XXX-JPはロッカー内に寝かせた状態で置かれ、両端をそれぞれ2本ずつの鉄串で串刺しにしてロッカー内に固定します。ロッカー内には赤外線センサーが設置されています。このセンサーによって何らかの動きがSCP-XXX-JPに確認された場合は、オブジェクト破壊装置を起動させ該当するSCP-XXX-JPを無力化してください。
実験の際はレベル3職員1名と研究主任の許可を得た上で行ってください。使用済みのSCP-XXX-JPは縦に切断し無力化した後に焼却処分してください。
未収容のSCP-XXX-JPは現在にまで確認されていませんが、存在していた場合の脅威を考慮し財団はSCP-XXX-JPを「不良商品のリコール」をカバーストーリーとして調査、捜索を行っています。
説明: SCP-XXX-JPは一般的にちくわとして知られる水産加工食品と同様の形をした物体です。財団では当初3本入りのパックを24個確保しましたが、実験による破棄と後述のイベントを阻止する為の処分により現在では開封済みの15本のみが監視下に存在します。原材料を分析した結果、一般的なちくわ同様にスケトウダラや卵白、塩、砂糖等から作られたことが明らかになっています。しかしながらその原材料に見合わないほどの柔軟性と引っ張りへの耐久性を有します。66また、収容当時から現在まで腐敗の兆候は一切見られません。
SCP-XXX-JPの異常性はその中心部にある穴に存在します。SCP-XXX-JPの左右いずれかの両端から進入し穴の内壁に触れた物はいかなる物でもその場から消失したかのように見えます。67これは物体の一部がSCP-XXX-JPの穴に入るようであればその全体の大きさを問いません。この性質はSCP-XXX-JPとその穴を内壁の繋がりが断たれる様に切断し破壊する事で失われます。68SCP-XXX-JPとその穴を破壊した際、そのSCP-XXX-JP個体の内壁に触れて消失したように見えた対象がSCP-XXX-JPと同様の損傷を受けた状態で出現します。
SCP-XXX-JPは2003年、宮城県の幼稚園で昼食の時間に複数の児童が惨殺死体として発見された事件の際に発見されました。多くの児童は体を強烈な力で引き裂かれた状態で発見されましたが、一名の男子生徒は頭部が内部から圧壊された状態で発見されました。死体発見当時、被害にあった児童達は築山の裏で弁当を食べており、SCP-XXX-JPはこの男子児童の弁当のおかずとして入っていたようです。財団はこの児童の自宅とその周辺を捜索、被害児童の母親がSCP-XXX-JPを購入したスーパー等から24袋のSCP-XXX-JPを確保しました。事件の関係者には記憶処置が施され、事件は隠蔽されました。
実験記録001 - 日付2003/11/21
対象: SCP-XXX-JP-1
実施方法: SCP-XXX-J-1Pの穴にその直径と同等のプラスチック棒を挿入。棒の長さはSCP-XXX-JP-1の二倍
結果: 棒をSCP-XXX-JP-1を差し込んだ時点で棒が消失。挿入した穴の反対側から覗いたところ、SCP-XXX-JP-1の穴を通して向こう側を見ることが出来る。
実験記録002 - 日付2003/11/21
対象: SCP-XXX-JP-1
実施方法: SCP-XXX-JP-1の穴に極細の紐を通す。この時紐がSCP-XXX-JP-1の穴内部の壁面に触れないようにした。
結果: SCP-XXX-JP-1の穴を紐が完全に通過。紐を引き抜く際に穴内部の壁面に接触したことで紐が消失。
分析: 穴の壁面に触れる事が異常性を及ぼすきっかけになっているようだ。
実験記録003 - 日付2003/11/21
対象: SCP-XXX-JP-1 実験用ミルワーム
実施方法: SCP-XXX-JP-1の穴内部にミルワームを投入。その後SCP-XXX-JP-1を縦に切断する。
結果: 穴に侵入したミルワームは消失。SCP-XXX-JP-1を縦に切断した所SCP-XXX-JP-1の内部から縦に切断されたミルワーム一匹と先述の実験で使用した棒と紐が出現。SCP-XXX-JP-1は異常性を失った為焼却処分。
分析: 異世界に転送されてる訳でもなく、我々が本当にこれらを穴として認識しているだけなのか……?許可が下りれば通信機器を持ったDクラス職員でも実験したい。
実験記録004 - 日付2003/11/21
対象: SCP-XXX-JP-2 実験用アカゲザル
実施方法: アカゲザルの右手の指をSCP-XXX-JP-2の穴に挿入させる。その後SCP-XXX-JP-2を解剖台上で縦に切断する。
結果: アカゲザルはその場から消失。SCP-XXX-JP-2を切断したところ右手から頸部、左肩付け根に沿って切断された状態でSCP-XXX-JP-2の上に出現。SCP-XXX-JP-2は異常性を失った為焼却処分。
分析: 物体のごく一部でも穴に入れば影響の対象となって、体には穴に加えられた影響が現れるのか。または穴もオブジェクトの一部であり、それが破壊された為に対象にも損傷が出現したのか。再出現(可視化)はSCP-XXX-JPが異常性を失った事が関係していると推測される。
実験記録005 - 日付2003/11/28
対象: SCP-XXX-JP-3 D-XXX-JP-1
実施方法: D-XXX-JP-1に通信用無線機とビデオカメラを持たせてSCP-XXX-JP-3の穴の内壁に接触させる。D-XXX-JP-1との交信を実験室隣の監視室にて行う。
結果: D-XXX-JP-1がその場から消失すると同時にカメラと音声の通信が途絶える。その後一切の連絡が取れないまま30分ほどが経過。SCP-XXX-JP-3に変化がないことを確かめた上で実験室に入室、SCP-XXX-JP-3を縦に切断した所、SCP-XXX-JP-3上にD-XXX-JP-1が出現。頭部から臀部にかけて鋭い刃物で切断され死亡していた。
D-XXX-JP-1の装備していた通信機器を分析したところ、SCP-XXX-JP-3の穴から指を外し実験室内から監視室側に呼びかけを行っているD-XXX-JP-1が記録されていた。その後D-XXX-JP-1は入室した研究員と入れ違うように実験室からの脱走を図り、監視室を経て廊下にまで侵入した。記録はSCP-XXX-JP-3を切断した瞬間にD-XXX-JP-1が廊下から転移し実験室内に出現したことを示している。SCP-XXX-JP-3は異常性を失ったため焼却処分。
考察: 一度穴になってしまえばSCP-XXX-JPから離れてもその効果から逃れることはできないようだ。そして映像記録にもその効果は及ぶらしい。記録を見る限り監視室には絶対に届いている声量と身振りだったし、廊下であんなオレンジのつなぎを見たら誰だって気づくはずだ。この穴の異常性の正体は私たちが対象を認識できなくなる認識災害なのかもしれないな。にしても、原因は何だ?このちくわの穴の中には元々何があるんだ?確かめて起きたいものだ。
実験記録006 - 日付2003/12/07
対象: SCP-XXX-JP-4 D-XXX-JP-2
実施方法: SCP-XXX-JP-4を長さ4cmになるよう輪切りにする。D-XXX-JP-2にSCP-XXX-JP-4片を裏返させ、その後その内面を観察。
結果: [削除済み]
分析: SCP-XXX-JPの穴の内壁を外側に向けることを禁じます。また、今後の収容室および実験室はセクター81██とし、SCP-XXX-JPの研究主任として鷲田研究補佐を任命します。 -サイト-81██管理者
補遺1: SCP-XXX-JPは不定期的に自身の穴の内壁を外に向けようとする"裏返しイベント"を起こすことがあります。セクター-81██に移送された直後に発生した"裏返しイベント"ではSCP-XXX-JP-5の内側の12%ほどが外側をむき、エージェント・██により無力化されるまでに運送に関わった10人の職員とその周辺にあった32の機器を失う結果となりました。オブジェクトの柔軟性、耐久性から、一度イベントが発生してからおよそ5時間を掛ければ完全に表裏が逆転し、内側の80%が外側をむけばこのイベントは阻止できないものになると推定されます。なお、現在の収容プロトコルによって1█回の"裏がえりイベント"が阻止されています。
完全な長さを保った状態のSCP-XXX-JPが全て裏返った場合どのような効果が有るかは未知ですが、実験記録006の事故を考慮した場合K-クラスシナリオが発生すると推測されるため、このイベントは確実に阻止されなければいけません。
アイテム番号: SCP-824-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-824-JPはセクター81██の、周囲30m以内に他の有人施設が存在しない昆虫飼育施設の収容室の中央に設置したケージで飼育されています。給餌や清掃などは全て室内に備え付けられた機器によって行われます。機器の修理が必要になった場合は職員一名のみ収容室への入室が認められます。
SCP-824-JPの研究にあたる職員は互いを視認しないよう収容室の各壁の外側に設置された監視室69に一人ずつ入室するようにし、職員同士の会話には通信機器を使用してください。D-クラスを収容室に入室させて実験を行った後など、新たなSCP-824-JP個体が発生した場合は最低限の試料を残して殺虫剤などで処分した後に死骸を焼却処分してください。
説明: SCP-824-JPは異常性を持つヤスデの一種です。外見やライフサイクルはキシャヤスデ(学名: Parafontaria laminata armigera)とほぼ同一ですが、キシャヤスデのDNAと比較して0.0█%の塩基配列の差異があることが判明しています。
SCP-824-JPの異常性はSCP-824-JP個体の周囲約15m以内に、人間とその人間が不快感や嫌悪感を催す対象が存在する場合に発現します。SCP-824-JP個体に最も近い位置にいる人間(以下「被験者」とする)が直接目視した対象に明確な不快感などを覚えた場合、その対象は数十秒から数日をかけて同質量分のSCP-824-JPの個体群に変化します70。この変化は一度始まると対象が完全にSCP-824-JP群に変化するまで止めることが出来ません。SCP-824-JPがどのようにして範囲内の人物の認識を読み取っているかは不明です。この変化は効果の範囲内で被験者が不快だと感じる固形物であれば生物非生物問わずに発生します71。対象が生物の場合、SCP-824-JP群に変化している間対象が死亡する事はありません。変化に要する時間は被験者が対象を直視した時間が短い程、被験者が抱く不快感等が強い程に短くなります。なお、対象の大きさは変化の進行速度に関係しません。
SCP-824-JPは199█/08/██、長野県で「登山に向かった家族が帰ってこない」という通報を受けた際に存在が明らかになりました。現地で警察官として潜入していたエージェントの捜索により、行方不明者が身に着けていた衣服や所有品と共に大量のSCP-824-JP個体が封鎖された登山道からから800mほど離れた場所にある廃屋の周辺で発見されました。SCP-824-JP個体が周囲に拡散している可能性を考慮し、小屋を中心とした半径1kmの範囲を封鎖し研究に最低限必要と考えられる数のSCP-824-JP個体のみを回収、残りの個体群は殺虫剤の散布と焼却処分により処分しました。被害者の関係者には記憶処理が施され、被害者については「登山道からの滑落によって死亡した」というカバーストーリーが適応されました。
廃屋の中には数日前まで何者かがいた痕跡が存在した他、以下のようなタグが発見されました。
日本生類創研 I-008-γ
補遺1: 2012/08/██、SCP-824-JPによる失踪事件が3つの都県で4件発生しました。SCP-824-JPによる被害を受けた人物間の共通点はいずれも██推進活動を行っているという事のみでした。一連の事件と複数の団体の活動内容からSCP-824-JPが反社会的、反政府的な運動を行う組織に渡っている事が考えられます。今回の事件では迅速な対応によりSCP-XXX-JPの拡散は阻止されましたが、未収容のSCP-824-JPが存在することが確認され、今後もSCP-824-JPの悪用およびそれに伴うSCP-824-JPの拡散が想定されることから、オブジェクトクラスのKeter格上げが要請されています。
アイテム番号 SCP-383-JP
オブジェクトクラス: Safe Euclid
特別収容プロトコル: SCP-383-JPは現在10枚が低危険度物品保管ロッカーに収容されています。この枚数はオブジェクトの研究に十分な枚数であると判断されました。収容外のSCP-383-JPが発見された場合は回収し破棄してください。SCP-383-JP所有者やSCP-383-JP-1出現時の目撃者、及びSCP-383-JPの破棄を実行した職員には記憶処理が施されます。SCP-383-JPの効果によって出現した仏像(SCP-383-JP-1)は完全に破壊した後に破棄してください。
また、SCP-383-JP-1の転移の有無を確認する為に一年以上の周期で開帳を行う寺院の秘蔵仏に対して監視カメラと重量センサが設置されます。重量センサの変化や監視カメラの映像からSCP-383-JP-1の転移が確認された場合は必要に応じて現場を封鎖し観光客などの出入りを絶った後に、持ち物の検査とSCP-383-JPの回収、本来安置されていた仏像あるいはレプリカとSCP-383-JP-1の交換、現場に居合わせた一般人の記憶処理を行います。
現在未回収のSCP-383-JP回収の為にカバーストーリー「ポイントカードの更新」72を適応しています。
説明: SCP-383-JPは表に「徳々ポイントカード」と印刷された折り畳み式のポイントカードです。見開きには左右のページに3×5個ずつ、両ページで合計30個のマス目が存在しており裏面下部には署名欄と「救うモノの会」という文字が印刷されています。材質は紙で容易に破損することが可能です。印刷機やスキャナーなどを用いて製作したSCP-383-JPの複製は異常性を示しません。なお、「救うモノの会」の詳細については明らかになっておらず現在も調査が行われています。
SCP-383-JPは不特定の個人の財布の中に一つだけ出現します。73出現したSCP-383-JPは財布の中でも所有者の目のつきやすい所に出現する傾向があるようです。一度SCP-383-JPが対象の財布に出現すると所有者は元の人格に関係なく献身的で温厚な性格へと変化します。この性格の変化は後述の印の数が増えるほどに顕著な物になります。加えて、性格の変化はSCP-383-JPを手放した場合も持続するようです。74
SCP-383-JPの所有者が善行を行うとSCP-383-JPの見開きのマス目にハンコが押されたような印が出現します。善行と判断される基準はSCP-383-JP所有者の主観によるものではなくその周囲の人物による客観的な物であることが実験から判明しています。
署名が行われていないSCP-383-JPは譲渡または紛失されることによって一時的にその異常性を消失させます。これにより前所有者の善行によってSCP-383-JPに出現した全ての印が消失しそのカウントがリセットされます。新たな人物が所有者となることによりSCP-383-JPは再び異常性を発現させ、善行の印によるカウントが行われるようになります。なお、SCP-383-JPを紛失した場合、二回は元の所有者の財布に戻って来ますが三回目は他人の財布へと転移するようです。75SCP-383-JPに署名が行われている場合は譲渡、紛失しても署名者の所有物として扱われ印は消失しません。署名者の善行は引き続きSCP-383-JPの印を増やす要因となります。また、SCP-383-JPの故意的な破損や破棄を実行した、あるいはSCP-383-JPを紛失した人物は自己の不誠実さや不親切さ、社会における人間関係の希薄さを嘆く様になり善行を施すことへの強迫観念やSCP-383-JPを所有する事への執着と言った精神異常を呈するようになります。この症状は通常の精神治療、記憶処理で除去する事が可能です。なお、SCP-383-JPの譲渡によってはこの症状は現れません。
印がSCP-383-JPの全てのマス目に出現すると所有者とSCP-383-JPはその場から消失し、代わりに様々な大きさ、素材、種類の仏像1体がその場に出現します。下記の事件以降これらの仏像はSCP-383-JP-1と分類されました。SCP-383-JP-1は不定期に自身を中心とした半径25km以内にある寺院の、定期的に開帳展示する秘蔵仏と入れ替わり的に転移します。開帳が月単位で行われている寺院でのSCP-383-JP-1出現例は確認されておらず、最低でも数年から数十年周期で開帳が行われている寺院を選択して出現していると考えられます。半径25km以内に上記のような寺院が存在しない限りはSCP-383-JP-1は転移を行わない他、SCP-383-JP-1の一般家庭や国外の寺院への出現は確認されていません。
実験記録
目的: 善行の基準と出現する印の数の関連性の調査
実験記録1 - 日付198█/08/22
対象: D-383-JP-1
実施方法: SCP-383-JPを配布、署名を行わせDクラス宿舎内の掃除をさせた。
結果: SCP-383-JPに変化はない
分析: 本人は掃除を義務ではなく善行として行っているようだが印は出現していない。善行の基準は所有者の主観に因る物ではないらしい。
実験記録2 - 日付198█/08/23
対象: D-383-JP-1
実施方法: Dクラス宿舎内の掃除を一週間毎日行う。この行為はD-383-1が自発的に行った。
結果: 掃除の三日目からSCP-383-JPに印が出現。出現数は日を経る事に増加した。
分析: 急に印が増え始めたが、印の数と掃除の回数との関係が見えてこない。
実験記録3 - 日付198█/09/09
対象: D-383-JP-1
実施方法: 宿舎内の掃除中に起きた他のDクラス職員同士の喧嘩を仲裁。
結果: D-383-JP-1とSCP-383-JPがその場から消失。高さ40cmの軍荼利明王が出現した。
分析: 喧嘩をなだめた事が周囲から善行とみなされたのか。計算してみると増えた印の数は同じ宿舎のユニットにいたDクラスの人数に近い。
実験記録4 - 日付198█/09/22
対象: ██研究員
実施方法: 同僚の落としたペンを拾い手渡した。 ██研究員がSCP-383-JPを所有していたことに気が付かなかったため偶発的に引き起こされた実験である。SCP-383-JPは焼却され、 ██研究員には記憶処理が施された。
結果: 印が1つ出現
分析: 善行と認めてくれた人数に印の数は左右されるのかもしれない。この仮定が正しいとして、もしSCP-383-JPが慈善団体やボランティアに渡れば被害は大きなものになるのではないか。
事件383-1: 198█/10/██、低危険度物品保管倉庫からSCP-383-JPによって得られた仏像が消失し、代わりに██寺が所有する重要文化財の仏像が安置されていることが判明しました。現地のエージェントが██寺に向かったところ本堂に倉庫から消失したものと同一の仏像があるのを確認しました。この仏像と倉庫に転移してきた仏像の外見は全く異なるものの、参拝客および住職は変化に全く気が付きませんでした。加えて2つの仏像の入れ替わり後に訪れた参拝者の一部と住職の所有物を検査した結果、多くの人物がSCP-383-JPを所有している事が確認されました。出現したSCP-383-JPについて対象にいつから所有しているかを尋ねた所、殆どが「さっきまでこのようなカードは持っていなかった」「見覚えが無い」と述べました。この事からSCP-383-JPにより出現した仏像には不定期に近くの寺院に転移し参拝客の財布にSCP-383-JPを出現させる能力がある可能性があげられ、仏像はSCP-383-JP-1に指定、オブジェクトクラスはEuclidに引き上げられることになりました。なお、██寺の参拝者数の多さから現在までSCP-383-JP-1出現後の全参拝者を特定しSCP-383-JPを回収するには至っていません。
補遺1: 事件383-1の後、これまでに財団施設内でSCP-383-JPの研究に携わった研究員やSCP-383-JP-1が安置された倉庫に立ち入った人物の持ち物の検査が行われましたが、新たなSCP-383-JPは確認されませんでした。更に詳しく調査と実験を行った結果、 「SCP-383-JP-1が転移した寺院でSCP-383-JP-1を目視しながら参拝を行うこと」が新たなSCP-383-JPの出現に繋がる事が判明しました。寺院以外でSCP-383-JP-1を参拝してもSCP-383-JPは出現しません。実験記録4において██研究員がSCP-383-JPを所有していたことに関しては、彼が休暇中に立ち寄った███寺にSCP-383-JP-1が転移していたことが判明しています。このSCP-383-JP-1は既に破壊済みです。
補遺2: SCP-383-JPの裏面に特殊なインクで文章が印刷されている事が判明しました。以下はその原文です。
施すことで悟りは開かれ、施しで救われた者は施すことを知る。なんと素晴らしい教えをあの方は授けてくださったのか。救いを待つだけでは人々は救われない。あの方の様にはなれないが、私も手を差し伸べる事の重要性を後世に伝えたいと思う。そして、さぁ、君もあの方に続こう。
施すモノになろう。
アイテム番号SCP-648-JP
オブジェクトクラス:Euclid
特別収容プロトコル:SCP-648-JPの個体は生物サイト-81██にある昆虫飼育施設の一室に収容されています。SCP-648-JPの異常性を発現させる可能性があるので収容室に入室する際には円運動を行う物品76を持ち込まないでください。未収容のSCP-648-JPについては機動部隊む-4(”虫とり少年”)によって捜索、回収が行われます。また、SCP-648-JPの異常性によって事故などが引き起こされた場合は当事者の記憶処理と事件に合わせたカバーストーリーの適応が行われます。
説明:SCP-648-JPは異常な性質を持つトンボの一種です。DNA解析の結果によりアキアカネ(学名:Sympetrum frequens )の近縁種であることがわかっています。色や体長、生息地等がアキアカネとほぼ同一のため、目視で二種を判別するのは非常に困難です。
SCP-648-JPの異常性はSCP-648-JPの成虫個体(以下「個体」と称する)が連続する円運動を認識した場合に発動します。SCP-648-JP個体が円運動を認識するとその周囲にいるヒトは回転性の眩暈を発症します。この眩暈は三半規管の異常による一過性のものであり時間経過によって治まります。効果は個体を中心としたおよそ直径5~15mの球形の範囲に及び、その強度は個体からの距離が近い程に強いものとなります。眩暈による視界の回転方向はSCP-648-JP個体が認識した円運動の方向と同一です。この眩暈に加え、SCP-648-JP個体が円運動を認識した際にその周囲約80cm以内にいるヒトは個体に最も近い体の部位を起点として全身が円運動の方向にねじれ始めます。この変化は眩暈とは異なり一度始まると対象が死亡するまで止めることが出来ません。対象は最終的に血管や筋肉の断裂、骨折、臓器破裂等によって死に至ります。
個体が一度円運動を認識してから20~30秒間はこれらの効果の及ぶ範囲が個体の周囲に存在します。個体に接近する際には異常性が発現しているか十分に注意してください。なお、SCP-648-JPの幼虫にこの異常性は現れません。
SCP-648-JPは198█/08/██、██県で複数の車両が突然制御を失い公園に突っ込むという大規模な交通事故が発生した際に発見されました。現地に滞在していたエージェントによる調査により、事故の生存者が総じて「突然激しい眩暈がした」「視界が回転し運転どころではなかった」等と供述したことや不自然なまでにねじれた複数の死体が存在していたことが判明し、何らかのオブジェクトによる効果が疑われました。事故の被害者や目撃者には記憶処理を施し、カバーストーリー「真昼の飲酒運転」が適応されましたが、その後の追加調査により事故の当事者だけではなく現場周辺の住民も事故の前後に同様の眩暈を訴えていた事が判明しました。これを受け効果の確認された一帯の中心にあたる公園及びその周囲を捜索した際に、偶然公園内のSCP- 648-JP個体が異常性を発現させたことで確保、収容に至りました。公園内の花壇には風車が多数あり、回転する風車をSCP-648-JP個体が認識したことでその異常性が発現したと考えられています。
補遺1:SCP-648-JPは、幼虫の主な生息地である水田での農薬散布や沢の水質汚濁、アキアカネとのエサの競合、交雑による純系統個体の減少等の要因によって総個体数が減少していると考えられています。この為SCP-648-JPの異常性が原因と思われる事故は年々減少傾向にあります。
名前: 西塔 道香(さいとう みちか)
セキュリティレベル: レベル1(許可がある場合はレベル2)
職務: Anomalousオブジェクトおよび SCPオブジェクトの調査、追跡 収容チーム到着までの可能な限りの被害拡大防止 他の職員の弱みを握る 紅茶の等の飲み比べ 五郎の世話
所在: 主にサイト-81██にある自室 何かあれば携帯電話等の情報端末に連絡を
人物: 日本国山形県出身。女性。身長160cm、体重約53kg。2█歳。クセの強いショートカットの黒髪と多くの職員に「刺すように鋭い」と揶揄される目つき、他人を蔑むような77口調と男性的な態度が特徴です。裏表がなくそれでいて豪快な性格をしています。私生活に関してはとても大雑把です。
勤務時の態度は非常に真面目で職務を忠実に行い、緊急時を除いて私情を挟むことはほとんどありません。その反面、平常時の他の職員とのコミュニケーションでは饒舌になり小ネタやたとえ話、ことわざ、皮肉などをよく使用します78。第三者が聞く限り職務時以外の会話は相手に対する口汚い皮肉がほとんどを占めており、これに関して過去にサイト管理者は職場の雰囲気を損ね職務の質全体の低下に繋がるとして注意を行いました。しかし彼女は「これは自分なりのコミュニケーションの手段の一つであり、本当に相手が嫌いだったら心の中で[罵倒]と思うだけです。職場の雰囲気を損ねないよう、気を使いながら使っているので安心してください」と回答しており、現在は先述の様なコミュニケーションが当たり前であるという認識が浸透しています。
ちょっとこの間の「███さんは人間としてどうなんですかねぇ」は言い過ぎなんじゃないかい? -寒河江博士
あぁ、あの後「お前も人の事言えないだろうが」って本人から笑われました。お互いさまってやつですよ。 -エージェント・西塔
彼女の自室はサイト-81██に存在します。室内にある棚の中のおよそ半分は彼女が様々な経路で取り寄せた紅茶で占められており、彼女の自室に訪れた際は各人の好みに合わせた紅茶と茶菓子を振る舞ってもらえるでしょう。また、室内のアクリルケージの中では五郎79と言う名のタスマニアオオヤスデが飼育されています。五郎はエージェント・西塔の許可があれば誰でも触れ合うことが可能です。
見てくださいよ五郎のこの可愛いらしい脚。手に乗せると気持ちいいんですよ!どうです██博士も……どうしたんですか、そんな嫌そうな顔をして。虫嫌いなんでしたっけ? -エージェント・西塔
エージェント・西塔が腕にタスマニアオオヤスデを乗せながらサイト-81██内を歩くことを禁止します。あなたにとっては可愛いペットなのでしょうが、虫嫌いの職員がいる事を考慮してください。 -サイト-81██
エージェント・西塔は現場の状況やオブジェクトの行動等からその特性を察する観察力、収容チームが駆けつける間に初期収容に最適な方法を見つけ出す直感、周囲に被害が及ぶ場合に終了を含めたオブジェクトの無力化の許可を即座に本部に要請、実行する等の決断力に優れています。しかしながらこれらの能力とそれに付随する行動が仇となり過去5年で█回認識災害に曝露しました。現在までに記憶処理や精神治療等によってほとんどの認識災害の影響は取り除かれたものの、あらゆる天ぷらがイソカイメンに見える認識災害の影響からは現在に至っても回復していません。
元から衣の多い揚げ物は苦手だけど、食卓に磯臭い生モノがのってるのは見るに堪えないな……。オエッ。 -エージェント・西塔
職員からの声とそれに対する回答:
・後輩とはあまり話さない様ですがもしかして実は内気なんじゃないですか? ―そんなことは無い。人を些末な情報で見抜いた気にならないでください。情報が無いからちょっかい出しにくいだけです。
・頼まれてた紅茶届けといたから後で代金の方よろしく。 ―ありがとうございます。
・飲み会のお誘いですが都合がつかないのでお断りさせていただきます。 -そうですか、あぁ、焼き鳥が食べたいなぁ。
エージェント・西塔は200█/12/2█にSCP-███-JPによる致死性の視認性認識災害に曝露した際即時に昏倒しました。当初財団はエージェント・西塔を終了する予定でしたが、彼女はその手順の途中で突如意識を取り戻しました。これまでSCP-███-JPに曝露した人物は総じて[編集済み]が分解されて死亡しており、この反応が予想外の物だったことを受け急遽エージェント・西塔に対し身体、精神検査とインタビューが行われ、その中で彼女の記憶が同年の11/30からSCP-███-JPの効果に曝露し昏倒するまでの間の記憶全てが欠落していることが判明しました。その後複数の検査が行われ、認識災害の影響により破壊を受けた彼女の[編集済み]の部位が幸いにもSCP-███-JPの影響そのものに関わる部位だったこと、それにより影響の拡大が阻止されたことによって奇跡的に一命をとりとめた事が判明しました。しかしながらこの影響は彼女の人格を以前の慎重かつ柔和な物から現在の豪快な物へと変化させ、結果として彼女は200█/11/30以前の過去の記憶と現在の自己を同一視する事が出来ない記憶障害に陥りました。記憶処理と精神治療によりSCP-███-JPの影響からは完全に回復したと判断され、201█/04/02に彼女はフィールドエージェントとしての活動を再開しましたが、本人の志望により先述の記憶障害には根本的な治療は施されていません。
↓人物像をそれとなく固めるだけの小Tale(可能性の世界でありこの限りでは全くない)
闇、闇だ。どこまでも暗い。冬の沼水のように体に纏わりつき、刺さる闇。命の終り。死。
痺れる頭で何故自分がここにいるか考える。あれは何だったかな。どこかの支部の収容違反?宇宙の崩壊?侵略?XKクラス世界終焉シナリオ?あぁ、最後に見た同僚の顔、見覚えはあるんだけど、誰だっけ。吉村?志崎?それともスミスか?……もう、分からないか。だめだな、世界が消えちまうのか。悲しいことに。人類が今まで詰みあげた文明も、躍起になって見つけた技術も、守ろうとした自然も、これからの子供たちが見るはずだった未来も、もう、ないのか。そうか。残念だ。
……なぜ自分はここにいる?何故考えている?俺の体はもうどこにもないのに。おかしい。
何故未だ自分が思考しているか考える。考える。考える。もはや脳細胞の電気信号のやり取りではなくなった思考をフルに巡らせる。精神だけが崩壊を免れたというのか?そんなことは可能か?オブジェクトの影響か?精神だけを生かす技術なんて財団ならありえそうだけど……、もう確認のしようがない。
考えるのもめんどくさくなって、ぼんやりとたゆたうのを暫く続けていた。
暫く眠っていたが、わずかな違和感で目が覚めた。向こうから人が近づいてくるのがわかる。戸惑いと恐怖を浮かべた空気。必死にもがきながら、何かを叫びながら、こちらに近づいてくる。
「…‼……して!」
その人の向かう先が自分ではなく、その後ろに向けられていることに気づくには時間はかからなかった。振り向くと、光。白く柔らかい、生。
「……めて!…いで!!」
たゆたう間に私の背後、手を伸ばせばすぐ触れられる位置にまで光は迫っていた。避けるにも意識だけでは避けるという動作すらも行えない。後ろから包み込まれるようにその中に飲み込まれた自分が最後に見たもの。
女性の恐怖に引きつり涙と鼻水にまみれた顔が断末魔と共に闇に溶けていく瞬間だった。その顔は、ああ、見覚えがある。
私だ。
ガバリと体を起こす。頭に靄がかかったような感じ、どうやら長らく眠っていた様だ。眩しさに慣れない目で周囲を確認すると一面は白い壁であった。そして病院服を着ている自分とひどく血色の悪い自分の腕、そこに繋がる何本かの管。
「……終了措置中止!すぐに研究担当者に連絡を!エージェント・西塔が意識を取り戻しました。新たな認識災害の影響とも考えられます!」
「……よー、博士、大丈夫、正常だよ」
慌ただしく聞こえる声をなだめる為に口走ってみたけど向こうに聞こえるわけもなく、その後私は厳重な監視下の元色々と質問される事となった。生まれ、育ち、ここ最近の活動内容、所属する部署、エトセトラ、エトセトラ……。
一通りの検査が終わった後は医療施設で療養生活を送った。そして今日、リハビリを終えて退院する。暫くはエージェントとしての勘を取り戻すために簡単な仕事からこなしていこう。
なにとなく病室を出る前に鏡を見た。見慣れた自分の顔だ。だがしかし、時々この顔が自分の物かどうか確信が持てなくなる時がある。未だに自分の記憶に確信が持てない。どこか他人の話を聞いているような気分になるんだ。
俺は誰だ?自分は何者だ?
お前は誰だ?お前は何者だ?
お前は。
答えは出てくるはずもなく、病室には春の風が吹き込むばかりである。
夜遅く、西塔はめったに飲むことのないコーヒーを買うために自販機へと向かっていた。あと二時間ほど頑張れば書類も片付くだろう。それさえ出せれば明日は休暇になるのだ。できる限り一日は多く使いたいし、ここで寝てしまうのはもったいない。しかし……。
「―おや、西塔クンじゃないか」
げぇ。廊下の曲がり角での西塔の第一声はカエルがつぶれたような、苦虫をかみつぶしたような声。先にいるのはドブの泥の様に黒い白衣を着た、小太りの男。大和(おおわ)・フォン・ビスマルク。縮めてクソ。
廊下がうす暗いせいで西塔からは大和の顔はあまり見えていなかったが、奴が薄ら笑いを浮かべている事だけは確信していた。畜生、無性に腹が立つ。そう思った瞬間に西塔は行動を起こした。我ながら悪い癖だとは思いながらもその足を止めることはできず―。
「おやおや、そんな声を出す必要はないじゃないか西塔クン。たまたまはちあったぶッ」そこまで言いかけた大和の顎には西塔のつま先がめり込んだ。スニーカー越しに伝わるクリティカルヒットの感触。歯がバキバキと折れる小気味いい音と大和が床に倒れる重たい音が響く。
倒れた大和の傍に立ち西塔は軽蔑の念を込めた目つきで大和を見下した。何度も頭蓋を足でかち割ってやりたいとも思ったが、ここは我慢だ。後々またこいつからの嘲笑のネタが増えるのはまっぴらごめんだと西塔は奥歯を食いしばり、セリフを絞り出す。
「歯も無くなったし少しお口に解放感が生まれたんじゃないですかね?はぁ、残念ながら今貴方に時間を割く訳にはいかないんですよヤマト博士。私にはやるべきことがあるので」
靴を大和博士の白衣で拭うと、西塔は男に一瞥もくれずに自販機の方へと去ってゆく。行こうとした、のだが。
「へぇ、ジャージはしまむらで買ったんだな西塔クン。財団からそこそこの給料はもらってるはずなのに、庶民的だねぇ」
ぎょっとした。久々に任務以外で冷や汗をかいた西塔は、恐る恐る自分の来ているジャージの上着、襟元の辺りを触る。
確かにある。値段のタグだ。それを確認した瞬間、もう彼女の頭の中から自販機も書類も吹き飛んでしまった。
「ッォぉぉォオォオオォオおぉおわぁアアあぁぁぁぁぁぁッッっっっ!!!!!!」」
夜のサイトにいつも通りの怒号が木霊する。
朝五時。ソファーの上の衣類の山がもぞもぞと動き出す。ぬ、と隙間から出てきた腕が適当な衣類を鷲掴みにし、衣類の山の中へと引きずり込んだ。暫くすると山は一際激しく蠢き、そして崩れ始める。中から出てきたのはヨレヨレのジャージを着た、若い女性。西塔道香。財団に勤務するエージェントの一人。
未知の異常に直接出会うことの多いエージェントにとって、明日を迎えられるかというのはその時になってみないと分からない物である。実際、今日という日を迎えることが出来なかった人々も多いだろう。しかしながら彼女は何とか今日までを生き延びた。そして今日は彼女の数少ない休暇である。
「……もう朝か」
濃く隈の浮いた眼を擦りながら西塔はソファーからずるずると頭から滑り落ちた。そのまま、その先にある箱から栄養補助食品の袋一つを取り出し、起きることなく袋を開けもそもそとそれを食べ始めた。ゆっくりとした咀嚼と共に、ぼんやりと天井を見つめながら今日やるべきことを頭の中で順序立てていこうと試みる。
……日課以外は特に何もない。
前回の休暇でやるべきことは大方片づけてしまったし、かといって出かけたい場所もあるわけではない。天気はいいようだが外に出た所で何かいい考えが思い浮かぶとも思えない。つまり今日はゴロゴロと堕落する為に用意された日。最高の一日。
「神よ、俺はアンタに感謝するよ。まぁ、ぜんっぜん信じてないけど」と何気なしに言ってみた。らしくなくて、照れ臭くなった西塔は、空になった栄養補助食品の袋を今にも溢れそうなゴミ箱のてっぺんに乗せると、二度寝の為に散らばった衣類をかき抱いて布団代わりにし、ソファーの上に再び寝転がった。
暫くの間、彼女の寝がえりで衣類が擦れる音とアクリルケージの中から聞こえる僅かな音だけがそこにあった。