アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 現在、SCP-XXX-JPの完全な収容は行われていません。SCP-XXX-JPが発生する演芸場で落語の口演が行われる際には必ず1人以上の職員を派遣し、SCP-XXX-JPが発生した場合ただちにプロトコル"時そば"を実行してください。演目終了後、関係者にはAクラス記憶処置が行われます。
現在、さらに低リスクの収容措置としてエージェント・███よりプロトコル"井戸の茶碗"およびプロトコル"道具屋"が提案され、サイト管理者の承認後に新プロトコル策定のための実験が行われる予定です。
説明: SCP-XXX-JPは黒い着物を着た50代前半の東洋人男性のように見える人型実体です。東京都██区に存在する演芸場████亭において落語の口演会が行われている際、演目と演目の間に突発的に出現し演者の一人として落語を披露します。それに伴い、演者の名前を表示する「めくり」に「笑来亭ふしぎ」という名前が表示されます。SCP-XXX-JPの出現は主催者にとって予定外の出来事であり、それによって本来出演する予定であった演者の出番が遅れる、または飛ばされるといった事態が発生しますが主催者、出演者及び観客はその事に一切違和感を持たずSCP-XXX-JPの口演は円滑に行われます。SCP-XXX-JPの口演中、ほとんどの観客は口演を聴き続ける事を望みます。この傾向は対象が落語に精通しているほど顕著で、ミーム的な特性と言うよりは単にSCP-XXX-JPの噺の質が一般的に高いと判断されるレベルにある事に起因すると推測されています。対象が外部からの命令もしくは便意、尿意等に起因する動機により退場する事は可能です。SCP-XXX-JPの口演を録画、録音する事は可能で、記録された映像および音声は特異性を持ちません。また、「笑来亭ふしぎ」という名前の噺家が存在した形跡は落語の発祥から現在まで確認されていません。
SCP-XXX-JPが舞台上において演目を開始する際、「笑来亭ふしぎ」という芸名を名乗った後に「今日はなんの噺をしようか」という問いを観客に投げかけます。これは一般的な噺家の行動としては非常に不自然なものですが、観客および口演関係者は違和感を感じません。多くの場合、観客は口々に噺のリクエストをSCP-XXX-JPに告げます。SCP-XXX-JPは聞き取れたと思われるリクエストの中から最も早かったものを選択し、リクエストに応じた噺を披露します。リクエスト以外のコンタクトは全て黙殺されます。口演の終了後、SCP-XXX-JPは舞台袖に消えると共に消失します。同時に、演目に応じてSCP-XXX-JPの特異な効果が発現します。特異な効果は演目の内容に沿ったものであり、財団職員がリクエストを行う事で影響をコントロールする事が可能です。
SCP-XXX-JPは19██年に東京都██区の██亭において「幽霊の噺家が出没する」との噂が広まった事から当時の財団に発見され、SCPとしての認定が検討されましたが19██年に██亭が閉鎖されると共に姿を消しました。20██年に████亭で再出現した事が休暇中のエージェント・███によって確認され、現在の特別収容プロトコルが制定されました。████亭以外の演芸場でSCP-XXX-JPの発生は確認されておらず、財団フロント企業を通した働きかけにより████亭を移転もしくは閉鎖させる計画が検討されています。
SCP-XXX-JPの口演を妨害するあらゆる試みは予定されていません。
[実験記録001 - 20██/██/██]
実施者: エージェント・███
実施内容:「寿限無」をリクエスト
結果: エージェント・███の登録名がエージェント・寿限無寿限無五劫の擦り切れ海砂利水魚の水行末雲来末風来末食う寝る処に住む処やぶら小路の藪柑子パイポパイポパイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助に変更される。
補足: 登録名の変更は記憶改変と共に行われ、当初財団は異常性を認識できなかった。複数の職員を用い繰り返し実験を行った所、3名の職員が「エージェント・寿限無寿限無五劫の擦り切れ海砂利水魚の水行末雲来末風来末食う寝る処に住む処やぶら小路の藪柑子パイポパイポパイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助」なる名前を持つ事となり異常性が発見された。3名のうち2名は改名を申請。1名は「エージェント・寿限無寿限無五劫の擦り切れ海砂利水魚の水行末雲来末風来末食う寝る処に住む処やぶら小路の藪柑子パイポパイポパイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助」としての活動を継続する事を希望。
改名を強制する事はしませんが、公式書類では略称として「エージェント・寿限無」を使用して下さい。 -人事部
[実験記録002 - 20██/██/██]
実施者: エージェント・███
実施内容:「時そば」をリクエスト
結果:会場に併設された売店において、売上が売れた商品の合計額より1,613円足りなかった。
[実験記録003 - 20██/██/██]
実施者: エージェント・███
実施内容:「狐の出てくる噺」をリクエスト
結果:SCP-XXX-JPは「王子の狐」を演じる。口演終了後、エージェント・███は即座に消失。捜索活動が行われたが、1日後に自力でサイト-██まで帰還。弁当を食べながら落語を聞いていたはずだったが、気が付くと東京都内の公園で██を食していたという。エージェント・███に軽い胃痛以外の被害は無し。
[実験記録004 - 20██/██/██]
実施者: 66歳の一般人男性(エージェント・███が別のリクエストを行う予定だったが、先を越された)
実施内容:「一眼国」をリクエスト
結果:口演終了後、実施者の一般人男性は即座に消失。現在まで発見されていない。エージェント・███は戒告処分となり、SCP-XXX-JPの実験担当から外される。
[実験記録005 - 20██/██/██]
実施者: エージェント・██ら5名
実施内容:SCP-XXX-JPが壇上に上がると同時に非常ベルを鳴らし、観客を退出させる。エージェント・██らがSCP-XXX-JPの確保を試みる。
結果:SCP-XXX-JPはエージェント・██が壇上に上がると同時に舞台袖に逃げ込み、消失。確保は失敗した。エージェント・██らによるとSCP-XXX-JPは明らかに怒っていた様子で何か捲し立てていたが、早口ときつい江戸弁のため内容は聞き取れなかった。
[実験記録006 - 20██/██/██]
実施者: エージェント・██
実施内容:「時そば」をリクエスト。新たな確保作戦の準備のため、口演中に携帯電話を鳴らすなどの妨害行動を行う。SCP-XXX-JPが観客席の動きにどの程度反応するかを確認する。
結果:SCP-XXX-JP登場時、めくりに「凶来亭おわり」という名前が表示されている。エージェント・██はその時点で実験の終了とSCP-XXX-JPの即時確保を試みるもSCP-XXX-JPが話し始めると同時に椅子から立ち上がれなくなり、声も発せなくなる。SCP-XXX-JPはリクエストを募らず「大丸屋騒動」の演目を開始。
演目終了後、[データ削除]。SCP-XXX-JPの確保作戦は無期限に延期された。
アイテム番号: SCP-2289
オブジェクトクラス: Euclid
収容プロトコル:SCP-2289-1から7はサイト66の生物収容プロトコルに従って収容してください。その施設にはSCP-2289-1から5のために猫用トイレと最低10個以上の隔絶された1m×1m×50cmのねぐらを用意してください。またSCP-2289-6のために止まり木とイカの甲羅を常備し、収容ゲージ上部には営巣可能な箇所を作ってください。さらに、生物収容サイト内の隔絶された部屋にはSCP-2289-7のために扉、ベッド、机、ランプ、トイレ、着替えを常備してください。
食物は、以下の物を毎日提供します。5kg以上の赤身肉、500gのフルーツやナッツを混ぜ合わせたもの、SCP-2289-7が希望する食品のリストからあらかじめ選択され味付けされた、標準的な人間用の食事。収容されている生物群に食欲不振がみられた場合、ただちにサイト66の獣医に連絡し緊急搬送が必要かどうかの診断を受けさせてください。トイレの清掃、イカの甲羅の補充、収容室の清掃は監視カメラによる監視のもとSCP-2289-7が行います。排泄物を含むゴミは必ず焼却処分してください。焼却処分や実験のため収容室外に物質を運び出す際は必ず完全に密閉された収容コンテナを使用してください。さもなくば収容違反が起こり得ます。
収容室は4台以上のカメラで監視し、生物群は常に収容室内に留まるよう維持してください。これらを実験のため収容室外へ出す場合は完全に密閉された収容コンテナを使用し、敵対的肉食動物捕獲訓練を受けレベル4生物汚染スーツを着用した研究員の立ち合いを受ける事が必須となります。SCP-2289-1から7により何らかの傷を負った場合は、サイト66管理者に報告し評価を受ける事になります。
説明:SCP-2289はタスマニアデビル(学名Sarcophilus harrisii)に固有の感染性腫瘍「デビル顔面腫瘍性疾患」の新種で、皮膚の裂傷への接触により感染します。SCP-2289の腫瘍は感染した脊椎動物において多数の部位に転移します。腫瘍の85%は顔面や喉の付近に発生し、皮膚上の他の部分に転移します。腫瘍のおよそ2.5%は体内器官にも発生します。この感染性腫瘍による死亡例の多くは餓死によるもので、腫瘍が長期間の間適切な食事を妨げる事に由来します。SCP-2289は3つの異常性を持ち、財団の興味を惹きました。第一に、その腫瘍は眼の機能を有します。腫瘍は最初の発生より5日から7日後に眼のような形を形成し、腫瘍によって塞がれた元々の眼の視界を補います。第二に、SCP-2289は種の壁を越えて感染します。感染実験の結果、全ての脊椎動物に感染しうる事が明らかになりました。第三に、感染者は自身に発生した腫瘍の眼を通してものを見るだけでなく、他の全ての感染者の腫瘍の眼と視界を共有しています。感染者間の視覚情報の伝達方法、及び伝達範囲は現在のところ判明していません。
SCP-2289-1から7は現在までに知られているSCP-2289の感染者です。SCP-2289-1から5はタスマニアデビルで、3匹は雌で2匹は雄です。SCP-2289-6はコンゴウインコ(学名Ara macao)で、実験2289-Dにより感染が確認され経過観察中です。SCP-2289-7は元D-435966だった人間で、SCP-2289収容室の清掃中に感染しました。7個体はそれぞれ顔面に複数の腫瘍を持っており、また腫瘍による眼を有しています。SCP-2289-3は腫瘍による眼を尾に持っており、CP-2289-7は左手に持っています。腫瘍によって形成された新しい眼は他の種類の生物においても、タスマニアデビルのものです。
インタビューログ・2289-12
対象:SCP-2289-7
インタビュアー:ロデリック・アージェント博士
備考:アージェント博士とSCP-2289-7の定期面談。面談はSCP-2289-1から7の健康診断を目的としている。
アージェント博士:やあ、SCP-2289-7。今日の気分はどうかな。
SCP-2289-7:結構いいよ。病気で化け物に変身しちまったにしてはね。
アージェント博士:君の下あごの歯槽にある腫瘍は、食事の邪魔になってはいないかい?
SCP-2289-7:うん?もう一度言ってくれないか。最近左耳の調子が悪くて。聞くより見る方が得意になっちまった。
アージェント博士:君のアゴの腫瘍だよ。食事の邪魔になってはいない?
SCP-2289-7:ああ、全然平気だよ。でもシンコの様子を見てきな。昨日喉の後ろに新しい眼が出来たみたいだから。あいつがウノーと喧嘩してるのを見て気付いたんだ。あと、どっか暗い所に新しい眼が出来てるな。多分ドスの肝臓だと思う。
アージェント博士:ありがとう。獣医に連絡し、確認を取るとしよう。財団はSCP-2289に関する君の働きに対し、本当に感謝しているよ。
SCP-2289-7:大したことねえよ。感染してからこっち、それまでよりずいぶん待遇も良くなってるし。まあ俺は未だに囚人で、猛獣の群れと赤い鳥と一緒に暮らす事にはなってるけど…。でも、俺のママがいつも言ってたんだ。お前はきっと悪魔に囲まれて死ぬ事になるって。こうなる運命だったんだ。毎日トレスのケツの穴ばかり見させられるのはうんざりだけど、俺は生きてるしここはそこそこ快適だ。それで十分さ。
アージェント博士:感染してから、視覚以外に他の感覚を感じたりはしないかね?音とか、臭いとか、味とか、触覚とか。
SCP-2289-7:何だって?ああ、俺の気分の話はもう終わり?病気の話ね。無いよ、そういう事は。でも楽しそうだな、動物とか鳥とおしゃべりできたらさ。俺だって食うのと、寝るのと、ファックするぐらいしか楽しみが無いからさ、獣どもと話は合うと思うよ。
アージェント博士:他には何かないかね?SCP-2289-1から6に命令したりはできないのか?
SCP-2289-7:俺があいつらに、何か命令できるかって?もちろんできるさ。俺たちは家族以上だよ。俺たちが何を見たか、俺たちみんなが知ってる。自分で自分を見てるわけだから、喧嘩をすれば自分と喧嘩してるような気分になる。だから喧嘩も減ったな。でもな、あんたたちは俺らの特別な力に期待して、俺らと仲良くしてるみたいだけどさ、それは無駄だよ。俺たちはじき死ぬ身体だって事は分かってるし、何か欲しいものがあるとしたら、ちょっと同情してほしい。それだけさ。この病気は超能力なんかじゃないんだ。この力で特別な任務をこなせるなんて期待はしない方がいいね。…ああ、ただ1つだけを除けばだが。
アージェント博士:ただ1つ?何かね、それは?
SCP-2289-7:173の任務に、俺たちはすごく向いてるんじゃないかと思ってね。
アージェント博士:やってみるかね?
SCP-2289-7:やめとくよ。
<インタビュー終了>
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-8173内の電子ロック付き保管庫に収容してください。持ち出し及び実験には2名以上のセキュリティクリアランスレベル3以上の職員の許可が必要です。実験中に発生したSCP-XXX-JP-1は実験後ただちに終了し、死体は焼却処分してください。新たなSCP-XXX-JPが発見された場合は現地フィールドエージェントによって直ちに収容し、SCP-XXX-JP-1が発生した場合は終了処分を行ってください。また、現在血圧測定器に似た外見の爆弾を用いた爆弾テロが多発しているという情報を財団フロント企業、各種マスコミから流しSCP-XXX-JP-1の発生を抑制しています。
説明: SCP-XXX-JPは████社製20██年モデルの機種に酷似したアームイン式血圧測定器です。製造元を表す製造番号、刻印等は存在しません。通常の血圧計は液晶パネルの横に「最高血圧」「最低血圧」といった表記がなされ単位はmmHgが用いられますが、SCP-XXX-JPの場合は「借金」と書かれており単位は「円」が用いられています。被験者がSCP-XXX-JPに腕を入れると、アームイン部分が収縮し測定を開始します。数分後に測定が完了し、液晶パネルには被験者の現時点での合計借金額が表示されます。この額は銀行、消費者金融等から借り入れた借金の他に借用書を伴わない個人間での借金も加算されています。被験者が記憶していない借金の算出も行われており、SCP-XXX-JPがどのような形で被験者の借金額を把握しているかは不明です。現金以外の物品の貸し借りはSCP-XXX-JPに影響を与えません。
SCP-XXX-JPの液晶パネルに借金額が表示されると同時に、被験者の半径1メートル以内にSCP-XXX-JP-1が出現します。SCP-XXX-JP-1は既知の動物に似た外見の生物実体で、被験者の借金額が多いほど巨大かつ既知の動物から逸脱した外見を持つ傾向があります。SCP-XXX-JP-1が出現すると、被験者の借金は無くなります。貸し手は被験者に金を貸したという事実自体を忘れてしまうか、既に返済されたと思い込みます。借用書等のデータは消失するか、返済が為されたという形に書き換えられます。これらの現象は貸し手側に起こり、被験者の記憶は改変されない事に注意してください。
SCP-XXX-JPは現在まで14個が収容されており、その多くは弁護士事務所や司法書士事務所が入居する雑居ビル、もしくは銀行や消費者金融の店舗内のトイレ等一般的に多くの借金を持つ人間が訪れると考えられる場所で発見されました。SCP-XXX-JPを製造、配布している人物または団体に関して調査が行われていますが、現在まで成果は得られていません。
[実験記録001 - 20██/██/██]
実施者: エージェント・吉井
備考: エージェント・吉井は実験の1日前、エージェント・岡田にジュース代として100円を借りた。
結果: 「100円」が表示され、眼が3つあるショウジョウバエに似た外見のSCP-XXX-JP-1が出現。解剖後、焼却処分された。後日、エージェント・岡田に事実確認を行った所エージェント・吉井にジュース代を貸した事実は無いと主張した。
[実験記録002 - 20██/██/██]
実施者: エージェント・████
備考: エージェント・████は一切借金が無いと主張。
結果: 「79,000円」が表示され、トノサマバッタの後肢を持つドブネズミに似たSCP-XXX-JP-1が出現。エージェント・████に飛び掛かるも、銃撃によって死亡した。負傷者は無し。後日行われた調査によると、エージェント・██は給料日前たびたび同僚から借金をしていた事が判明。その全ては既に返却されたと貸し手・借り手双方が主張したが、いくつかのケースではSCP-XXX-JPによる記憶改変が行われた可能性が高い。
コメント: あいつに借金が無いなんておかしいと思ったんだ。ずぼらな人間はこの実験から外すべきだ。 ―██博士
[実験記録003 - 20██/██/██]
実施者: D-5099
備考: D-5099は闇金業者等から多額の借金をしている。額は借りた時点では数百万、法外な利息により今は数千万円にのぼると言う。
結果: 「21,355,000円」が表示される。首周りに8本の人間の腕、臀部にワニの頭部を持ち背中に無数に生えた管から絶えず汚水を排出するシマウマに似たSCP-XXX-JP-1が出現。拳銃による銃撃では死亡せず、重火器で鎮圧。エージェント2名が負傷し、D-5099は死亡。後日██市の公団住宅に居住していたD-5099の妻子に聞き取り調査を行った所、毎日のように訪れていた借金取りが██月██日を境に全く来なくなったと言う。
コメント: D-5099は生前、シャバに残した家族の事をずいぶん気にしていた。やつも少しは浮かばれるかな。 ―██博士
[実験記録004 - 20██/██/██]
実施者: エージェント・████
結果: 実験は██博士により却下。
コメント: あいつが██研究員に20万円の借金をした事はとっくに調査済みだ!今度実験を申し出てきたら懲戒処分にしてやる! ―██博士
[事故記録001 - 20██/██/██]
内容: 20██年██月██日、東京都███区の██氏自宅より体長約50メートルで8本の首を持つキリンに似た生物実体が出現。8本の首のうち7本はタランチュラの頭部を有しており、民間人に対し無差別に噛みついたため██人の死者と██の重軽傷者が発生。関係者にはAクラス記憶処理を行いカバーストーリー「爆弾テロ」及び「ペット用有毒動物の脱走」を流布した。██氏自宅跡より破壊されたSCP-XXX-JPと思われる破片が見つかった事、██氏が経営していた会社の財務状況が同日より不自然に好転していた事からSCP-XXX-JPが使用されたと思われる。██氏がSCP-XXX-JPの性質を知っていたのか、偶然発見した装置を興味本位で使用したのかは不明。
補遺1: 事故記録001以降、SCP-XXX-JPが発見される場所の性質が明らかに変わっています。弁護士事務所等ではなく、富裕層の集まるレストランや貴金属店の近辺が多くなりました。SCP-XXX-JPの製造元調査に充てられる予算は増額されました。早急に結果を出すことが求められます。
補遺2: 20██年██月██日、首相官邸に多数のSCP-XXX-JPが設置されていた事が潜入中のエージェント・██により報告されました。首相や側近に多額の個人的借金を持つ者は確認されておらず、またSCP-XXX-JPが判断する「借金」の範囲がどこまでなのかは不明ですが、現地エージェントは現職首相がSCP-XXX-JPに触れる事が無いよう細心の注意を払ってください。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 現在、SCP-XXX-JPの完全な収容は行われていません。SCP-XXX-JPに遭遇する可能性のある者には現地に医者もしくは宗教者として潜伏したエージェントが定期的に面談を行い、SCP-XXX-JPとの遭遇が確認されれば内容の記録とAクラス記憶処理を行ってください。財団施設内においては、Dクラス職員の定期健康診断の際にSCP-XXX-JPとの遭遇の有無を確認してください。遭遇が確認された場合は、財団施設外の場合と同様に内容の記録とAクラス記憶処理を行ってください。財団施設内でSCP-XXX-JPが何らかの発話を行った場合、必ずサイト管理者へ通達してください。
説明: SCP-XXX-JPは日本国内の██拘置所、██拘置所の死刑囚監房及び財団所有施設のDクラス職員宿舎で不定期に発生する事象です。SCP-XXX-JPの最も頻繁に確認される例は死刑囚監房に拘置されている受刑者に甲高い革靴の足音が聞こえるというもので、午前7時00分から午前7時30分の間に起こります。この時間は受刑者に対し当日の死刑執行が告知される時間と一致しており、この時間に足音が聞こえる事は多くの場合受刑者に強い恐怖を与えます。また、一部の事例では独房の外で人が立ち止る気配、窓から見える人影、扉をノックする音等も確認されています。いずれの場合も事象を確認した者は強い恐怖を覚えますが、SCP-XXX-JPは精神影響的特性を持たずこれは単に対象の死刑への恐怖に起因するものと思われます。過去の事例において、死刑を待ち望んでいる拘置者等はSCP-XXX-JPに恐怖を覚えない事が確認されました。詳細は記録SCP-XXX-JP発生記録-27を確認してください。
SCP-XXX-JPは稀に、発話を行い対象へ直接語りかけます。内容は多くの場合絞首刑に伴う苦痛に関するもので、「床が落ちると同時に首の骨が折れ、非常に痛い」「長い間、息ができずに苦しむ事になる」「その様子を看守が見て笑う」等といった例が報告されています。
財団収容サイト内のDクラス職員宿舎で発生するSCP-XXX-JPは、一般拘置所のケースと異なり発話を行う例が多く確認されています。これは財団内でDクラス職員の終了を行う時間が定められておらず、特定の時間の対象への接近が必ずしも恐怖を与えないからだとする仮説が立てられています。財団収容サイト内で発生するSCP-XXX-JPは他のSCPに関する知識を持っており、機密漏洩の危険があります。
SCP-XXX-JPは音声、気配、窓に映る影等しか確認されておらず、その実体を見た者はいません。SCP-XXX-JPは死刑囚及びDクラス職員が単独でいる時にしか発生せず、録音機器等による記録も行えない事が全貌の解明を困難にしています。
[SCP-XXX-JP発生記録-52 - 20██/██/██]
対象: D-79611
備考: SCP-XXX-JPは録音機器による記録が行えないため、以下はD-79611の面談で得られた情報を元にした書き起こしとなります。また、D-79611はSCP-XXX-JPの喋り方を「薄ら笑いを浮かべながら喋っているような、いやらしい喋り方」と供述しています。
(SCP-XXX-JPがD-79611の独房をノックする。D-79611は甲高い革靴の音が聞こえたと報告している。)
D-79611:なんだ?飯の時間か?
SCP-XXX-JP:君は明日、SCP-███の実験に使用される事が決まった。
D-79611:何だって?
SCP-XXX-JP:SCP-███だ。
D-79611:何だよそれ。ちゃんと説明しろ。
SCP-XXX-JP:まあ要は、麻酔無しで生きたまま手術をされるという事だ。楽しみだな。
D-79611:はあ?[罵倒]野郎。何を言ってんだ。
SCP-XXX-JP:前にあれの実験に使われたDクラスの末路は、こうだ。まず奴は生きたまま腹を裂かれ(以下、SCP-███の第█回実験と一致した内容が語られる)
D-79611:[罵倒]
D-79611が大声を出したため、エージェント・██が現場に急行しました。エージェント・██は異常存在を発見できず、監視カメラ及び録音装置にもD-79611と会話を行っていた存在は記録されていませんでした。SCP-███は海外収容のオブジェクトであり、実験記録を閲覧する事が可能な職員は日本国内では非常に少数です。何故SCP-XXX-JPがその内容を把握できたのかは解明されていません。また、D-79611がSCP-███の実験に用いられる予定であるといった事実は無く、D-79611は通常通り月例の解雇処分を受けました。
[SCP-XXX-JP発生記録-68 - 20██/██/██]
対象: ██元死刑囚
備考: 他の発生記録と同様、この記録は面談で得られた情報から書き起こされたものです。██元死刑囚はSCP-XXX-JPの喋り方について他の刑務官と変わらないと供述しました。また、██元死刑囚は█年後の再審によって冤罪が確定しています。
(SCP-XXX-JPが██元死刑囚の独房をノックする。??元死刑囚は靴音などは聞こえなかったと供述している。)
██元死刑囚:何か用か。
SCP-XXX-JP:明日は、遊園地に行くぞ。
██元死刑囚:は?
SCP-XXX-JP:遊園地に行って、帰りは焼肉を食べよう。
██元死刑囚:ふざけてるのか?
SCP-XXX-JP:焼肉は食べ放題だ。好きなだけ食べていい。焼肉が嫌いなら、寿司屋でもいい。
██元死刑囚:人を馬鹿にするのも、大概にしろよ。
SCP-XXX-JP:遊園地でたくさん遊んで、たくさん美味しい物を食べられるぞ。
██元死刑囚:[かなり強い罵倒の言葉]
SCP-XXX-JPがこのような挙動を見せた例は他に無く、通常と異なる内容の発話を行った理由や██元死刑囚が冤罪であった事との関係性は解明されていません。
補遺1: SCP-XXX-JPが発生記録-68と類似した発話を行った場合、日本政府を通じて検察に捜査の見直しを要求すべきとする██博士の提案は機密保持の観点から却下されました。
補遺2: SCP-XXX-JPは少なくともSCP-███、SCP-███、SCP-████に関する知識を有していることが現在までに判明しています。また、発生記録66においてSCP-XXX-JPの発話内容にはセキュリティクリアランスレベル4以上の職員に限定された情報が含まれていました。SCP-XXX-JPが情報災害的特性を持つSCPに関して述べる事により大規模な収容違反が起きる可能性は0ではありません。Dクラス職員の対応に当たる部署への注意喚起が予定されています。