shigyouakira
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SCP-xxx-JP-GOI:愛に時間を

オブジェクトクラス:Safe

特別収容プロトコル:SCP-xxx-JP及びそこから取得したデータは、インターネットその他有線・無線を問わず外部との通信機能を有する機器と接続されてはいけません。通信機能を有しないコンピュータ及び記憶媒体に取得する場合も、セキュリティクリアランス4以上の職員の許可を要します。SCP-xxx-JPの研究担当者には忠誠度診断65以上の職員を充てることとします。担当から外れる場合、本人が希望する場合には記憶処理を受けることができます。

説明:SCP-xxx-JPは財団が地球愛星者同盟との交戦の際、破壊した研究所跡から接収したスーパーコンピュータに保存されていたデータです。当初このコンピュータは「測定不能の演算速度と記憶容量を持つコンピュータ」としてanomalousアイテム指定されていましたが、その後コンピュータは通常の優秀性を持つのみで特異性はなく、特異性を持っているのはその中の一部のデータであるという説が浮上し、研究者間の意見が一致を見たために同データがSCP-xxx-JPに指定されました。
SCP-xxx-JPは自己の内部に、電子的に表現された仮想的ブラックホールを作り出していると考えられています。高重力に見られる時間の遅れのため、SCP-xxx-JP内ではブラックホールからの距離によって、時間の流れにずれが生じます。SCP-xxx-JPは非演算中のデータを事象の地平面の内部に置き、その極めて時間の流れの遅い領域を、現実時間にリンクさせています。そして演算中のデータをブラックホールから離れた領域に位置させることにより、相対的に超高速演算を可能にしているというのが研究者の意見です。さらにブラックホールに接続されている平行宇宙からデータの出し入れをすることで事実上無限の記憶容量を保有しています。この平行宇宙も仮想空間内に存在するか、または現実の平行宇宙であるのかは研究者間でも意見が分かれています。
仮想存在であるブラックホールが、現実存在であるコンピュータ回路そのものの時間に影響を与え、演算を高速化できるメカニズムは不明です。また現実に時間的干渉を行っているブラックホールが、高重力による被害を周辺に及ぼさずコントロールできる仕組みについても、未だ未解明のままです。

「理不尽に聞こえるだろう。『ビデオゲームの中で雷の魔法を使い、ゲーム機自体に電力を供給している』と言うようなものだからな。だが、私が自然言語で表現できる限り、これが最も平易で、しかも実態に近い説明なのだ」(上級研究員███████博士)

上記システム維持のための機能的プログラムと思われる部分をSCP-xxx-JPから除くと、大部分が学術論文およびその参考資料と思われる膨大な量のデータで構成されています。解読は困難を極めましたが、SCP-████、SCP-████およびSCP-███-JPの言語に僅かながら似ている部分があり、現在部分的な解読が進行しています。おおよその性質が判明していますSCP-xxx-JPはオブジェクトを執筆した存在によって「タイヤン星系惑星ティーチュー」と呼称される惑星に棲息する、レンレイなる生命体についての観察記録であるらしいことが分かっています。
しかし執筆主体については、解読完了部分にはほとんど記述がないため不明です。ただし後述の地球愛星者同盟からの通信文、および断片的に解読された内容から、また異なる惑星の知的生命体であると考えられています。

追加記録xxx-20██/█/█
SCP-████関連電波受信記録との比較によって、データを音声化した際の周波数のおおよそが推定されました。これにより以下3種類の単語が、特定の周波数(20~4,000Hz)の範囲内に収まっていることが判明しました。
・固有名詞(タイヤン、ティーチューを含む)
・惑星ティーチューに原生する生物の種名
・レンレイの文化的概念を現すと思われる単語の一部
これらは単語の性質から考えて、観察対象であるレンレイ語を流用した結果と考えられてます。したがってレンレイ種族はこれらの周波数の範囲内で言語伝達を行なうものと推定されました。

以下はSCP-xxx-JPの解読完了部分の一部抜粋です。

追加記録xxx-20██/█/██
新規に解読された文書の一部抜粋です。

追加記録xxx-20██/██/██
新規に解読された文書の一部抜粋です。

追加記録xxx-20██/██/█
新規に解読された文書の一部抜粋です。

追加記録xxx-20██/██/██
新規に解読された文書の一部抜粋です。

追加記録xxx-20██/██/██
新規に解読された文書の一部抜粋です。

地球愛星者同盟による通信文
貴財団が先日の我々との交戦の結果奪取した地上衛星のひとつから、貴財団が取得したであろうデータについて勧告がある。即刻、その破棄を勧告する。あのデータは、人類自身を人間不信にさせるための異星人によるデマゴーグだ。我ら地球愛星者同盟は、地球奪取の目的を持ってスパイ活動をしていた異星人を撃滅した際、あのデータを回収した。だが、それは囮に過ぎなかった。我々にあの汚らわしいデータを拾わせ、地球社会に撒き散らさせるためのエサだったのだ。
我々と貴財団は常に友好関係にあるわけではない。異なる道を歩み、時には刃と銃を向け合うことがある。だが異星人のこのような悪質な偽情報に誑かされ、それを事実であるかのように触れ回るほど、貴財団は愚かではないと信ずる」

█> 補遺

地球愛星者同盟の勧告が正しい可能性は捨てきれない。むしろそうであれば良いと私も思う。だが少なくとも我々の現在の心理学や関係諸科学では、SCP-xxx-JPに誤りや矛盾を見つけられないのも事実だ。SCP-xxx-JPは外宇宙の生物学者が、我々を真剣に観察研究していった結果であると、素直に受け取る覚悟をすべきだろう。数百年か、もしかするとより短い期間のうちに、我々の社会科学もまた同じ結論に達してしまうかもしれない。
我々はいつかは受け容れるのだろう。倫理や道徳、信仰、そして愛さえも――人類が持っていると信じてきた、あらゆる崇高な感情全てが、ただの欲望とその正当化の組み合わせにしか過ぎなかったという真実を。だが、その真実は今の社会にいきなりぶつけるべきではない。人類自身を人間不信に陥らせるべきではない。それは『赤ん坊はコウノトリが運んでくる』と信じている3歳の幼女の目の前で、性交渉を実演してみせるほどに不適切だ。真実は“軟着陸”されるべきだ。真実ができる限り少ない不幸しか伴わないように、やがて来る解明に備え、社会制度をそれに耐えられるよう微修正しながら、人類はゆっくりと知っていくべきだ。それには、まだ時間が必要なのだ。(O5-1)