原題 |
翻訳 |
Murder Mystery |
マーダー・ミステリー |
「殺人ミステリー」辺りが正当派の訳かな。でも最近の洋画の邦題とか原題を適当にカタカナにしとけばいいやみたいなノリで付けるし。 |
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原文 |
翻訳 |
Revision 6 (by TroyL) |
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原文 |
翻訳 |
I've dealt with a few dozen murders since I started working for the Foundation, but this was the first time I’d ever had the pleasure of actually interviewing the person killed. |
財団で働き始めてから数十件の殺人を扱ってきたが、こんな光栄にあずかるのはこれが初めてだったよ。殺された本人からマジで聴取するなんてな。 |
この文のオチであるactually interviewing the person killedが最後に来るような語順に。 |
My name is Agent Darrow. |
オレの名はエージェント・ダロウ。 |
I got yanked out of the LAPD when my wife Maggie was found murdered in our bed. |
俺オレがロス市警から引き抜かれたのは、そう、妻のマギーがオレ達のベッドで殺されているのを発見されてからのことだ。 |
I was the likely suspect, and even though I’d never do it, I was tried, convicted, and sentenced with a handy bit of evidence. |
オレは容疑者として疑われ、妻を殺すなんて絶対有り得ねえってのに、裁判にかけられ、有罪になって、そんで少しばかりの扱いやすい証拠を添えられて判決を受けた。 |
handy bit ofの訳出に少々難があるか。 |
And then, a man came and talked to me. |
それから、ある男が来て話をした。 |
Called himself Dodridge. |
そいつは自分のことをドードリッジと呼んだ。 |
Offered me the chance to beat the rap and keep doing what I was doing. |
男はオレに、この罪から逃れ、オレがやってきたようなことをこれからも続ける、そんなチャンスを持ち掛けてきた。 |
It beat the chair, got a new face, got a new job. |
つまり電気イスから逃げ、新しい顔と、新しい仕事を手に入れることだ。 |
It was weird, though, watchin’ that guy with my old face fry. |
しかし嫌な気分になったのは、元の俺オレの顔をした奴が代わりに焦げるのを見たときだよ。 |
Course, he’d actually killed someone, so I didn’t mind so much. |
もちろん、奴は実際誰かを殺ったんだ、だからあまり気にはしなかった。 |
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The murder victim was one Jack Bright, well known Foundation scientist and all around fuckin’ asshole. |
殺しの犠牲者はジャック・ブライト1人、名の知れた男だ。財団の科学者、そんでどっからどう見てもクソッタレなクソ野郎。 |
all-aroundと受け取って「万能、多彩な、あらゆる点で」と解釈すればいいのだろうが、ストレートに訳すと肯定的なニュアンスが強くなったり野暮ったくなってしまう。オールラウンダー、万能=欠点がない=無欠と捉えることはできるが…また後で考えよう。こんな感じでどうだろう。 |
Within two minutes of meeting him, I could understand exactly why someone had killed him. |
奴と顔を合わせてから2分も経たない内に、犯人がどうして奴を殺したのかよーく分かった。 |
Guy was an expert at rubbing you the wrong way. |
コイツは人の神経を逆撫ですることの達人だぜ。 |
地の文で使用されるyouは基本的に総称人称とし、「人々」あるいは訳出しないで処理する。ただしクレフのオフィスの場面と終盤の一文の2箇所はこの限りではない。 |
I think he got off on it. |
そしてオレが思うに、奴はそれを楽しんでた。 |
"I was minding my own fucking business." He was yelling, and he had a little bit of spit at the corner of his mouth. |
「私は持ち分のクソみたいな仕事をしてたから、気が回らなかったんだよ。」奴は声を張り上げてたが、その口の端にはわずかばかり唾が付いてた。 |
mind one's own businessが見た目以上に多義的な言い回しのようだ。基本的には「自分のことをやって、周囲に気を配らない」。殺害状況への聴取ということを踏まえると、優先すべきニュアンスは「自分のこと(my own fucking businessに関して前後の文から読み取れる情報がほぼないので、おそらく仕事・業務と捉えて問題ない)をやっていた」と、「自分のことをやっていて、周囲に気を配らなかった(だから犯行時の様子は知らない)」。 |
He wiped it off, swearing. |
奴はそれを拭い取り、悪態をつき始めた。 |
"Fucking body. |
「フザけた体だ。 |
They gave me one that drools. |
あいつらは私にヨダレ垂らしを寄越した。 |
Dumbasses probably thought it was funny." |
あのマヌケ面共はどうせ、これが面白いとでも思ったんだろうな。」 |
Bright was one of those that I'd heard of through the grapevine. |
ブライトは、オレが噂として人伝てに聞いた話のひとつだ。 |
Effectively immortal. |
事実上の不死。 |
His soul stuck in a ruby amulet and transferred from person to person by touch. |
奴の魂は、とあるルビーの首飾りに押し込められていて、それに触った人間に次から次へと乗り移るんだとさ。 |
No one knew what happened to the soul that was already in the body when the amulet touched it. |
その首飾りが体に触れた時、そこに元々入ってた魂がどうなるのかは誰ひとり分からなかった。 |
Some questions are better off not answered though. |
ま、疑問ってのは答えを知らない方が良いものもあるがな。 |
There was a file on it laying on my desk. |
さて、オレのデスクの上にはファイルが置いてあった。 |
I’d leafed through it, but I preferred to get down to brass tacks normally. |
それには一応目を通してはいたが、オレはいつも本題から入るのが好みだった。 |
"Can you think of anyone who might want to kill you?" I asked. |
「誰でも構いません、あなたを殺しそうな人間に心当たりはありませんか?」オレは尋ねた。 |
"Clef," he said immediately, followed by a long moment of contemplation. "And a few guys that I've been messing around with. |
「クレフ、」すぐさま返答があり、それから奴が考えを巡らせる時間がしばらく続いた。「あと、私が弄んできた輩が数人だ。 |
Maybe my aide. |
私の助手かも。 |
Maybe someone higher up, though if a death gets ordered, they probably wouldn't assign your ass to it." |
まぁ上役の誰かかもしれないが、誰かを殺すよう命令するにしたって、あいつらは絶対お前みたいのに仕事を任せはしないだろうな。」 |
無生物を主語とするget 過去分詞の受動態だが、theyを主語として能動態に転換。a deathなのでこの事件とは無関係の話をしている、というニュアンスが伝わればいいのだが。 |
That wasn't correct. |
奴が言ったことは正しくなかった。 |
There were three or four times that I'd been assigned to someone whose death had been ordered. |
3回か4回、殺害命令が下った奴への任務を割り当てられたことがオレにはあった。 |
Usually, around the end of my investigation, a memo got passed down telling me what to put in my official report. |
いつも通りなら、オレの取り調べが終わる頃には、メモが公式報告に書くことをハッキリとオレに伝え終えていただろう。 |
Those were the easy ones. |
そういうのは簡単な事件だった。 |
thoseは前文のusuallyに掛かっていて、この事件はunusually(被害者生きてんのに簡単じゃねーな)という文脈…のはず。解決済み。問題なし。 |
Open and shut. |
単純明快で。 |
"Clef? |
「クレフ? |
You mean Alto Clef?" I asked. |
それはアルト・クレフのことかな?」そう尋ねた。 |
"What other fucking Clef is there?" he asked. |
「他にどんなバカげたクレフが居るというんだい?」奴は聞き返してきた。 |
He stopped for a second, gauging my face, then stopped himself from adding something. |
それから一瞬動きが固まり、オレの顔を見定め、そして何か言い足そうとして止めた。 |
Above my clearance probably. |
オレのクリアランスより上の話だったんだろうよ、どうせ。 |
"And why would Doctor Clef want to kill you?" I asked. |
「それで、何故クレフ博士はあなたを殺したがるんです?」オレは言った。 |
"He's had it out for me for years. |
「あいつはもう何年も私を嫌ってるよ。 |
Asshole doesn't like that I'm higher ranked. |
あのクソ野郎は私が上位の階級に居るのが面白くないんだ。 |
And he definitely doesn't like that I'm stuck in this fucking necklace. |
そして明らかに、私がこの忌々しいネックレスに押し込められているのが気に食わない。 |
Gives him the heebie-jeebies or some shit." |
これはあいつをビクビクとかイライラとか、そんな気にさせるんだよ。」 |
主語は恐らく直前のnecklace、全体としてはnecklaceの形容詞節のような文になっているはず。解決済み。問題なし。 |
I could relate with him at the moment. "So Clef is it?" |
とりあえず今のところ、オレはブライトと会話を成立させることができた。「じゃ、クレフなんですね?」 |
Bright leaned back, sucking in a line of spit that had drifted down his chin. "Maybe Kondraki," he added. |
ブライトは体を後ろに反らし、そのアゴの先の方まで垂れてったヨダレの筋を啜った。「コンドラキかも、」奴は付け加えた。 |
“Or Strelnikov.” |
「あるいは、ストレルニコフ。」 |
I added two more names to the list. "And why would they want to kill you?" |
オレは2人の名前をリストに書き足した。「じゃあ、その2人があなたを殺したいと思う動機はどういう?」 |
"Oh, just some shit I did. |
「あぁ、そいつらに色々くだらないことをやっただけさ。 |
Nothing I can tell you." |
君に話せることは何も無い。」 |
"You sure about that?" |
「確証はあるんですね?」 |
He nodded, and there was no smirk, so I took him at his word. |
奴は頷いた。そこに笑みはなく、だからオレは奴の言葉を信じた。 |
"Anything else you wanna add?" |
「他に、何か言っておきたいことは?」 |
"Fuck off. I'm busy." |
「失せろ。私は忙しいんだ。」 |
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ダロウの口調は、地の文を中心に非常に砕けているのが分かる。しかし文中でダロウは最低限の礼儀は弁えていると自負しているようで、実際会話文では多少粗野な表現もあるが、それなりに丁寧な言葉を使っているのも伺える。訳出では、完全に無礼とまでは行かないが、端々で不遜さ(といっても犯罪者を追い詰める警察官に必要な類のもの)を滲ませる感じの刑事になるよう意識してみた。 |
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I honestly had no interest in talking to Clef. |
正直言って興味はゼロだ、クレフとおしゃべりなんかしたくない。 |
Guy was as big an asshole as Bright and twice the attitude. |
あの男はブライトみたいな、大の付くクソ野郎で、態度のデカさもは倍増しだ。 |
twice the attitudeは「態度が2倍」で合ってるのだが、何に対して2倍なのか読み取れない…一般比かブライト比のどちらかで、直前がas Brightなのでブライト比のようにも思えるが、was as big an asshole as Brightでブライトと同等のクソ野郎なのだからブライトの2倍というのはおかしい気がする…解決済み。ブライト比で2倍か…相当態度デカいんだなクレフ。 |
I moved him down my list and headed to the cafeteria, deciding to get a bite to eat. |
オレは自分のリストから奴の優先順位を下げ、カフェテリアへと向かった。軽めのメシを食おう、 |
Thursdays were tuna casserole, presumably because they had a skip that churned out massive pails of tuna casserole. |
木曜のメニューはツナのキャセロールだ。何故かというと、それが入ったデカいペール缶を大量生産するスキップを連中が持ってるからだろう。 |
訳は(たぶん)合ってるがそんなことよりこのSCPが単体の記事として存在するのか、するならどれなのか知りたい。解決済み。このtaleのみの設定。 |
When I got there, I ducked the worst of the crowd and wormed my way toward the ‘empty side.’ |
目的地に着くと、オレは最悪な混雑を避けて、人混みを掻き分けるように“ガラ空きの側”へと進んでいった。 |
All the weirdos were over there, but I liked the weirdos, and most people thought I was a weirdo too. |
変人たちはみんなそっち側に居る、だがオレはそんな変人どもが好きだった。ほとんどの奴はオレも変人だというが。 |
There was the fat kids, the nerdy kids, and the spooky kids. |
そこに居るのは、デブのガキ共、オタクっぽいガキ共、そんで薄気味悪いガキ共。 |
High school all over again. |
高校時代の再来だな。 |
I picked a spooky kid and plopped down next to him. |
オレは薄気味悪いガキを1人選び出して、その隣に腰を下ろした。 |
Burns. |
彼はバーンズ。 |
Site 19 coroner. |
サイト-19の検視官だ。 |
Guy had a penchant for dead bodies, and I was pretty sure he found them more entertaining and interesting than living ones. |
この男は死体たちをこよなく愛していたし、ソイツらが生きた人間より笑えて面白いってことをバーンズが知ってるのは、オレもよく承知してた。 |
As far as coroners go, he was a legend in the Foundation. |
検視官としては、この男は財団の伝説だ。 |
Probably would have been an amazing forensic officer somewhere else in the world. |
間違いなく、すっげぇ科学捜査官になってただろうよ、この世界のどこか他のとこでならな。 |
Here? |
ここではどうかって? |
He hid in the morgue all day and never talked to people. |
死体安置所に一日中隠れて、まったく人とは話さないんだ。 |
I think it mighta been too hard on him, making friends with people who had an 80% mortality rate at their job. |
オレが思うに、彼には難しすぎたんだろうな、死亡率80%の職に就いた奴らとお友達になるのが。 |
Or maybe he was just an asshole. |
もしくは、ただのクソ野郎だったのかもしれない。 |
Fuck if I know. |
知ったこっちゃないが。 |
I knew he’d be the one they had on Bright’s case, and I decided to improve the tuna by talking about dead people. |
オレは、バーンズがブライトの事件を担当する1人になるだろうと想像がついたし、死人についての話でツナを食い出があるものにしようと決めていた。 |
improveは「良い物にする、質を向上する、改善する」。「(前置詞byの形容詞句などを副詞として)~で時間を活用する」の用法は廃れているとする辞書もあるようだが、元々は「時間を活用する=時間を有意義なものにする」という風に派生したのだろうし、訳出する上では頭の隅に入れといても良さそうだ。とりあえず、訳としてはこの辺りが落とし所かな。 |
“Burns.” |
「バーンズ。」 |
He gave a terse nod, then motioned to the seat across from him. |
それを聞いたバーンズは素っ気なく頷き、向かい側の席を指した。 |
Maybe it was coincidence that it was the one furthest from him as well. |
そこがバーンズから一番遠い席だったのも、たぶん偶然だろう。 |
as wellは前出のmaybe he was just an assholeを意識したと判断。要素として小さいのでこれ以上の追求は必要性が薄いと思う。解決済み。もっと普遍的な「~も」のニュアンスで、バーンズが日常的に変なことをやっているので「またか」という感情を表しているらしい。 |
“Whatcha want, Darrow? |
「なんか用か、ダロウ? |
They pass off the Bright case to you?” |
上はブライトの事件を君に回したのか?」 |
Business. |
本題からだ。 |
I liked that about Burns. |
オレはバーンズのこういうとこが好きだった。 |
“Yeah,” I said. |
「おうよ、」オレは続けた。 |
“He gave me a list of big names who thought he was a dick. |
「奴は大物をリストアップしてくれたぜ、どの名前も奴のことを最低の人間だと考えている連中だ。 |
There’s tons of small names out there to. |
まぁそこらに居る大量の小者もそう考えてるか。 |
out thereは「そこら辺、世界中」の意味のはず。toは…代不定詞なのかなこれ? |
You deal with the body?” |
アンタが遺体の担当なのか?」 |
“Yeah,” he said. |
「そうとも、」バーンズは答えた。 |
“Knew it was Bright before they told me.” |
「あれがブライトだと、連中から話を聞かずとも分かったよ。」 |
“Oh yeah?” I said. |
「へぇ、そうかよ?」オレは言った。 |
“How’s that?” |
「なんでだ?」 |
“Gut full of beefaroni and blueberry poptarts.” |
「腸がカンヅメの牛肉トマトソース・マカロニとブルーベリー・ポップタルトでいっぱいだった。」 |
原文では双方ともに商品名。訳注を付けずに済むよう、直訳だと字面だけでは意味が取れないbeefaroniの方だけ意訳。 |
He said it flat, and I wasn't sure if it was a joke for a second. |
バーンズは単調に言ってのけたので、オレは数秒の間、それがジョークかどうか分からなかった。 |
Even if it was, Burns wouldn't laugh at it. |
もしジョークだったとしても、バーンズは笑わなかっただろう。 |
…えっ、バーンズは真面目な話をしてたの…? |
He only laughed at the fucked up shit, like this one corpse that literally had its head up its ass. |
この男は、メチャクチャにヒドいものを前にしたときだけ笑った。例えばこの、字面まんまに頭をケツに突っ込んだ死体だ。 |
He carried the picture around in his wallet. |
バーンズはその写真を財布に入れて持ち歩いてた。 |
Asked people if they wanted to see his kid. |
で、私の子供の写真を見たくないかと、その辺の連中に尋ねた。 |
“You got the ceeohdee already?” I asked. |
「シー・オー・ディー(死因)はもう分かってんのかよ?」俺オレは聞いた。 |
cause of deathのアクロニム(頭字語)。本投稿では訳注を付ける予定。 |
“Bullet to the back of the head,” he said. |
「銃弾が後頭部に、」彼は続けた。 |
“Someone shot him.” He shrugged. |
「誰かが彼を撃ったんだな。」そう言って肩をすくめた。 |
He wasn't interested much in basic causes of death. |
バーンズは、普通の死に方にはそれほど興味が無かった。 |
When your job is figuring out what exactly killed someone in a place like the Foundation, you lose interest in the mundane things like gunshots and stabbings. |
何が原因で人が死んだのかを財団のような場所で解明するのが仕事だったら、つまんない銃撃や刃傷沙汰なんてもんには見向きもしなくなるんだ。 |
“Anything weird about it?” I asked. |
「何か変わったことは?」俺オレは尋ねた。 |
“Nope. |
「いいや。 |
Not a damn thing. |
なんにもありゃしない。 |
Could have let one of the new kids deal with it, if it wasn't for the fucker’s rank. |
遺体を新入りの内のひとりに任せることだってできたな、あのバカの地位さえ無ければだが。 |
Like I don’t have better shit to do.” |
ま、これ以上私にやっちまえることは無かろう。」 |
I took a bite of the tuna casserole. |
オレはツナ・キャセロールをひと口食べた。 |
It wasn't bad. |
うん、悪くないぜ。 |
The rest of the meal went by in silence. |
ランチタイムの残りは、静かに過ぎていった。 |
I knew there was a reason I liked Burns. |
オレがバーンズを気に入ってる理由は、そこにあった。オレがバーンズを気に入ってるのには、理由があるんだ。 |
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I finished lunch and took a step back out into the long, round hallway, heading down it toward the office ring. |
オレは昼メシを終えるとそこを出て、長い円形の通路に進み、オフィス・リングの方へと向かっていった。 |
I should note that it wasn't actually a ring. |
そこが実際にはリング状じゃないことが、どうしても気になった。 |
They called it a ring, but the bobs and weaves and twists it took—mostly out of spite, I felt—made it more like an office triskaidecagon. |
連中はリングと呼ぶが、そこで起きた騒動やゴタゴタの数々しっちゃかめっちゃかの類──ほとんどが腹いせや仕返しだ、オレが思うに──はその形を、あえて言うなら「オフィス・十三角形」に変えた。 |
名詞the bobs and weaves and twistsを関係代名詞省略の形容詞節it(the office ring) tookが修飾。the bobs and weaves and twistsの用例がかなり少なく判断に迷う。意味合いとしては「紆余曲折」で合っていると思うのだが…解決済み。解釈に問題はなかったが訳出を変更。原文が抽象的な名詞だったのでこれぐらいの表現の方が合っていると思う。 |
That felt better to say, anyhow. |
この呼び方はバッチシだと思うぜ、とにかく。 |
And it fit the assholes who claimed the whole damn thing. |
それに似合ってる、リングだなんてマジくだらないことを言い張ってるクソ野郎共にはな。マジでくだらないことを言い張ってるここのクソ野郎共にはな。 |
代名詞the assholesとthe whole damn thingの解釈は要検討。解決済み。the assholeは概ね合っていたが、the whole damn thingが想定より広い意味合いのようなので訳を調整。 |
I shouldn't dismiss all of them. |
いや、連中の全部を一緒くたにして片付けるべきではなかったな。 |
dismissの解釈も要検討。解決済み。問題なし。 |
Some of the doctors and researchers were alright. |
博士や研究員にもまともな奴はいた。 |
Glass was a ponce, but fun at parties. |
グラスはナヨナヨしてたが、パーティーの時には面白い奴だった。 |
Vang wasn't bad when he wasn't talking politics. |
ヴァンも悪くはなかった、政治の話をしなきゃな。 |
Hell, I’d actually liked Freddy Heiden. |
へっ、フレディ・ハイデンは本当に良い奴だったよ。 |
Before he blew his brains out. |
アイツが脳ミソを吹っ飛ばすまでのことだが。 |
And then there were assholes like Clef. |
それから、クソ野郎共、クレフの様な奴らもいる。 |
Try to image a giant asshole that went around shitting on everyone and everything in the room[[/span]]. |
想像してみろ。巨大なケツの穴、それが部屋の中のあらゆる人と物の上にクソを垂れて回ったら回るんだ。 |
wentで過去形になっているのは実際に過去だからなのか仮定法だからなのかどうか…いずれにせよ仮定の話なのだし、関係する後文it was like when Clef walked in and got started.も過去形(習慣ではあると思う)なので、過去形にしておくのが無難か。解決済み。仮定法過去なので特に時制を意識せず訳す。 |
Like, a literal, giant asshole, between two, giant asscheeks, spewing a river of shit. |
言ってみりゃ、字面そのままの、巨大なケツの穴で、2つの巨大なケツ肉の、その間に挟まれて、クソの川をひり出す。 |
That was what it was like when Clef walked in and got started. |
それは本当に、クレフがやって来て何かをおっ始めた時そのものだ。 |
That was what~の強調。訳出時の処理が少々強引か。 |
Sorry. |
すまん。 |
Got carried away. |
調子に乗ったな。 |
Suffice to say that I thought he was a dick. |
要するに、奴は最低の野郎に決まってるって言いたかったんだ。 |
I knocked on his door, and you could tell he wasn't the kind of person who was accustomed to having his door knocked on. |
オレは奴のドアをノックした。アンタらは誰かさんは、彼はドアをノックされることに慣れてるような人じゃないんだから、とか言えただろうな。 |
このパートのyouは総称人称とは少々毛色が違い、より読者(特にクレフを過剰に美化しているようなファン)に語りかけるようなニュアンスが感じられる。訳文もそのように処理しています。なんか日本の小説でもあるように(若干のニュアンスの違いはあるが)読者への語り掛けとして処理すればいいみたいだ… |
There was a little bit of swearing, some angry stomps, and then it opened up, stirring up a stink of old shoes and mint. |
少しばかりの罵倒と、荒れた足音が響き、そしてドアが開くと、履き古した靴とミントの悪臭が沸き立った。 |
The man standing there looked like someone had slapped Rip Torn in the face a few times with a tennis racket. |
そこに立っていた男は、俳優のリップ・トーンが顔を何回かテニスラケットでぶっ叩かれたみたいだった。 |
Rip Tornが固有名詞であることを訳文でも明確にするため「俳優の」を補う。それに伴い文構造を訳出時に変更。 |
Middle aged, graying everywhere, with bags under his eyes and a scruffy, two-week old beard. |
中年、あちこち白髪が混じり、目の下は弛んで、薄汚い2週間は伸びっぱなしの髭。 |
He was wearing a pair of old jeans, an ugly burgundy shirt, and a lab coat that had been washed a few too many times (with the burgundy shirt, it looked like). |
奴が着ていたのは古いジーンズ、趣味の悪いワイン色のシャツ、そしてちょっと着過ぎだろって具合に洗濯でヨレヨレになった白衣(ワイン色のシャツも、同じような感じだった)。 |
that had been washed a few too many timesの直訳は「ちょっと(この「ちょっと」は強調の意味に近い)多くの回数洗われた~」だが、このままだと伝わりにくいと判断し文を補った。だがもう少しスマートに訳せるかもしれない。 |
“Fuck are you?” he asked. |
「何だお前は?」奴は言った。 |
I introduced myself, flashed my badge, then stepped inside when he finally moved out of the way and let me. |
オレが自己紹介しながら、バッジを軽くチラつかせると、やっと奴はそこから退いてオレを入れる気になったので、中へと進んだ。 |
分詞構文ではないのが気になる。この解釈ではなく、直前のI introduced myself全体を先行詞とする関係代名詞whichの非制限用法でwhich is thatが省略されている(which was that I flashed my badgeで、「オレは自己紹介したが、それはバッジをチラつかせることだった」という文)可能性もあるだろうか?非制限用法の関係代名詞whichでもbe動詞だと省略されるパターンが考えられるようだが…流石に文法を逸脱し過ぎか。解決済み。単純に時系列順に並んだ文。 |
He hobbled around the desk and sat down, shoving sandwich wrappers and soda cans to the side just enough to make a bare spot, then put his feet up on it. |
奴はデスクの周りをよろめき歩いてイスに座り、デスク上のサンドウィッチの包み紙とソーダ缶の幾らかを、ちょっとしたスペースが空く程度に脇へ押しやり、両足をそこへ乗せた。 |
“I’m here to ask you about Jack Bright’s recent murder.” |
「こちらへ来たのは、先日のブライト殺しについて聞くためです。」 |
He laughed, hard and loud. |
奴は笑った、激しく高らかに。 |
Laughed until he wheezed. |
その笑いは奴の息が切れるまで続いた。 |
When he was done, he leaned back in his chair again and grinned with yellow teeth. |
そうすると、奴は再びイスにふんぞり返って、黄色い歯を見せて笑みを浮かべた。 |
“What’d he do this time? |
「今度は何をしたんだあいつは? |
Autoerotic asphyxiation?” |
窒息オナニーか?」 |
“Bullet,” I said. |
「銃弾です、」オレは言った。 |
“Shot in the back on the head in a locked room.” |
「後頭部を撃たれたんだ、密室でね。」 |
Clef smirked. |
クレフはニヤニヤ笑った。 |
“Locked room mysteries are boring,” he said. |
「密室殺人は退屈だ、」奴は喋り続けた。 |
“It’s always something retarded.” |
「あれはいつだってマヌケなものさ。」 |
“You have experience with killing someone in a locked room?” I asked. |
「密室で人を殺した経験があるのかい?」オレは尋ねた。 |
He started laughing again. |
すると奴はまた笑い始めた。 |
“Oh, yeah, but when I kill someone in a locked room, it’s normally via explosive decompression.” |
「あぁ、あるさ。でも私が密室で殺るときは、普通は爆発的減圧を使うんだ。」 |
おそらくSCP-531-D Dreamer (ドリーマー)の終了記録Termination Orderより。 |
I laughed, mostly to be polite and because it’s really sad when you've got that one poor fucker who’s laughing alone, then wrote ‘loon’ down on my notepad to make it look like I’d gotten something of use. |
オレは声を立てて笑った。ほとんどは社交辞令、あと、そこの小汚いグズがひとりで笑うとこをアンタらが見るのはマジで悲しいからな笑うのを誰かが見ちまったらマジで悲しいからな。そしてオレはメモ帳に、“バカ”(‘loon’)と書いて、有益な手掛かりを発見した様なフリをした。 |
若干悩んだが、未来完了形のwhenなのでbecause節が現在形になっている。「クレフが1人でバカみたいに笑ってんのお前らが見たら可哀想だからオレも一緒に笑ってやったよ。」という文。have gotを使っているのは、媒体が小説なので視覚的に見るのではなくあくまで「認識する」のだというニュアンスなのかもしれないが、適切な訳出がちょっと思い付かず。解釈が間違っていたわけではないが、youの訳出方針の変更に伴い少々修正。個人的な感覚だが、英語では、youが表す「二人称」「総称人称」「読者」の中に、このtaleがyouで表すもうひとつの意味が入ってきても違和感がないと思うが、日本語の「あなた」では「総称人称」を表すことができず、残った2つの間に「あなた」がもうひとつ入ってくると違和感と混乱を招く気がする。 |
If someone thinks you've managed an insight, they start watching themselves a little more closely. |
何かを見抜かれたと思った奴は、ちょっと用心深くなるんだ。 |
I looked back up at Clef to see if he was acting any different. |
後ろを振り返って、クレフが何か変わったことをしていないか確認してみた。 |
Instead, he’d started picking up soda cans and checking to see if one of them had anything left in the bottom. |
奴はそんな素振りをするどころか、ソーダ缶を手に取り始めていて、底に何か残っていないか缶のひとつをチェックしていた。 |
“You got any beef with Bright?” I asked. |
「ブライトに対して何かしら不満を持ってました?」オレは聞いた。 |
“He’s a dumb fuck,” Clef said. |
「あいつはどうしようもないバカだ、」クレフは言った。 |
“He’s a dumb fuck who doesn't get out nearly enough. |
「どうしようもないバカで、ほとんど碌に外に出ていない。 |
He’s been cooped up on site for so long that he’s lost his god damned perspective on the real world. |
サイトに幽閉されている期間が長いから、あいつは実社会に対する自分のクソッタレな距離感を失っているんだ。 |
Two thousand die? |
2,000人が死ぬ? |
Sure, so long as we keep an infestation of flying lava spores secret.” |
その通りだ、私たちが空飛ぶ溶岩胞子の襲来という機密を隠し通せばな。」 |
これも出展元があれば知っておきたい。(一応調べてみたが見当たらず)解決済み。このtaleのみの設定。 |
“That really happened?” I asked. |
「それは本当の話?」オレは聞いた。 |
Clef looked at his fingernails. |
クレフは自分の爪を見た。 |
“Nah. |
「いーや。 |
Hyperbole.” |
誇張表現ってヤツさ。」 |
I knew he was lying, but I also knew that it was above my paygrade. |
奴はウソを付いているのだと分かったが、それがオレの階級より上のことなのも分かった。 |
It might have been even more than two thousand people. |
2,000人よりもっと多いのかもしれない。 |
It might have been more than lava spores, whatever those were. |
溶岩の胞子以上のものかもしれない、何なのかはともかく。 |
Didn't matter. |
まぁ、どうでも良かったがな。 |
First rule of working with these people: there are some things you don’t want to know, and you’re better off never asking for stories, clarification, or explanations. |
連中と仕事するときの第一原則: あなたが知ろうとしてはならない事もある。話や説明、解説を一度も求めなければ、更に良い。 |
Because you might get them. |
なぜなら、あなたがそれを得る恐れがある知ってしまうかもしれないからだ。 |
getの意味が絞り込めない。一見すると「知る」と訳すのが自然に見えるが、それでは文が被る。解決済み。概ね「知る」でOK。 |
I nodded and scribbled down more on my pad. |
オレは頷いて、メモに走り書きを加えた。 |
‘Dislike.’ ‘Angry of specific event -> event unknown.’ |
“嫌っている” “某事件ある出来事での怒り -> 不明な事件不明な出来事” 。 |
The usual stuff. |
いつものことだ。 |
“You ever wanna kill him?” |
「これまでに彼を殺したいと思ったことが?」 |
Clef smirked. |
クレフはわざとらしい笑顔を作った。 |
“What would it matter if I did? |
「もしそう思った殺したとして、何か問題があるのか? |
didが「思う」ではなく「殺す」。 |
It’s not like it really takes.” |
それだけで実際に殺せる訳でもないだろう。それで本当に死ぬって訳でもないだろう。」 |
自動詞takeで「効果を発揮する」か、他動詞の目的語省略「殺す」と捉えれば良いはず。この辺りは文が混み入って来るので、どこかが柱になるように意味をハッキリさせておきたい。解決済み。前文を鑑みて「ブライトは実際には殺せない(殺したって死なない)という会話。 |
I nodded. |
オレは頷いてみせた。 |
“That’s what makes this such a damn weird mystery,” I said. |
「だからこの事件が、こんな得体の知れないミステリーじみたものになってるんでしょう。」そう言った。 |
なんだかぼんやりとした訳になっている…文全体に手応えがないので対応にも困る。どうも文脈が上手く飲めない。解決済み。死なないのに殺す必要ないよねー。 |
Clef nodded. |
クレフは頷き返した。 |
“Almost like they’re just keeping you busy, huh?” he said. |
「まるで、連中はお前をただ徒に忙しくさせておいているだけのようだな、えぇ?」奴は言った。 |
I cursed internally, but I kept my face neutral. |
この野郎め。心の中じゃそう思ったが、顔には出さなかった。 |
He’d gotten into my head, and I didn't like that. |
奴はオレの考えを読みやがったし、それが気に入らなかった。 |
In a place like this, the last thing you need is a fucker like Clef in your head. |
こんな場合にアンタらが一番嫌がるのは、その頭が想像するクレフみたいな輩だな。クレフのことをよく思い出してみろよ。こんな場合に一番嫌なのは、そういうゲスな輩だろ。 |
前述したようにyouをクレフのファンと捉えれば、Clef in your headも美中年クレフになるのだがそれで良いのだろうか。ここを明確にしても訳に影響は殆ど与えないが気になる。解決済み。「総称人称」と「読者」の中間ぐらいのyou。やはり「あなた」を使いたくないのでin your headを意訳し、間接的に読者の頭の中にクレフを想像させてみる。 |
“Nah,” I said. |
「いやいや、」オレは言った。 |
“Just means the importance is above my pay grade.” |
「ただ、事件の重要さがオレの階級じゃ分からない所にあるってだけですよ。」 |
この文は“Almost like they’re just keeping you busy, huh?”に対する返答で、否定から始まるがニュアンスの訂正が主で「上がオレを無駄に忙しくさせてるというより、情報が無いから無駄に忙しくなってる」ということを言ってる文…やっぱり筋の通り方が悪いな。 |
I stood up, and Clef stayed sitting, so I didn't bother with a handshake. |
オレは立ち上がったが、クレフは座ったままだった。だから、握手するかどうかを悩む必要はなかった。 |
“Thanks for your time,” I said. |
「お時間をいただきまして。」そう告げた。 |
“Sure,” said Clef. |
「どうも。」クレフが返した。 |
“Not like I was getting work done anyway. |
「私も、とりあえず仕事が片付きそうって訳ではないんだ。 |
I've got the fucking Class-D duty this month. |
今月分のくだらないクラス-Dの当番があってね。 |
Got to figure out who gets how many and for what. |
誰が何人、何のために持っていくのかを管理しなければならない。 |
And lucky me, Jackie boy got himself shot in the head and fucked it all up. |
そして運の良いことに、ジャッキー坊やが自分で自分の頭を撃ったから、何もかも全部メチャクチャという訳だ。 |
Of course, he was in charge of it last month, so it’s already fucked up.” |
いや待てよ、あいつはこの業務の先月の担当だったか、じゃあとっくにメチャクチャだな。」 |
I nodded. “Death ain't really a convenience too often,” I observed. |
オレは頷きながら、「人が死んで都合が良くなることなんて、そう何度もある訳じゃないぜ。」と言ってやった。 |
reallyの部分否定…にtoo oftenが付いたのは初めて見る。一応類例はリサーチかけたしこれで合ってると思うが…細かいところのニュアンスなので現状では解決が望めない。恐らく大丈夫だし、もし間違っていても影響は少ないだろう。心残りではあるが。 |
Clef laughed. |
クレフは声を出して笑った。 |
“You really are green, aren't you?” |
「お前は本当に青臭い奴だな、そう思わないか?」 |
|
If Clef was a giant asshole, Kondraki was a giant turd. |
クレフが巨大なケツの穴だとしたら、コンドラキは巨大なクソそのものだ。 |
It’s not that Clef shit out Kondraki, but rather, they left the same kinds of stains. |
クレフがコンドラキをひり出す訳じゃなく、まぁ言うなら、奴らは同じような悪行を撒き散らしていくんだ。 |
stainが…leave a stainでまんま日本語の「汚名、汚点(もしくはそれに繋がるような行為)を残す」に対応する用法なのでそれがまず候補となるが、クレフもコンドラキもそれらを「汚名」と認識していないだろうことが少々気になる。英語のstainの範囲がどこまでなのやら。解決済み。問題なし。 |
I didn't wanna talk to him next, but Strelnikov wasn't taking my calls, and he was a real nutcracker if you wanted into his office uninvited. |
クレフから続いてコンドラキと話すのはゴメンだったが、ストレルニコフは連絡しても応えなかったし、おまけに奴は、オフィスに押し掛けようもんなら、まさに肝を潰すようなマジモンのくるみ割り人形だった。 |
この場面に当てはまるnutcrackerのスラング用法は見当たらず。(男性の睾丸に関連したものは幾らかあったが、無関係だろう。)大柄なロシア人男性に対するこの表現はバレエのくるみ割り人形を連想させるが、ダロウがそういう文化に接したタイプとはちょっと思えない。ball-breakerか。睾丸に関連するけど露骨すぎるとさり気なさを損なうので、意味をしっかりとったこの程度の訳で良いのではないか。 |
I finally caught up with Kondraki—after checking both labs he’s assigned to, his office, three meeting halls, and the lunchroom—on the damn squash court. |
ようやく、オレはコンドラキを捕まえた──奴が割り当てられたラボ両方と、奴のオフィス、会議室3つ、そして食堂をチェックしたあとに──なんでスカッシュ・コートに居るんだ。 |
Number One: didn’t know the Foundation had a damn squash court. |
その1: 財団はスカッシュ・コートなんか持ってたのかよ。 |
Number Two: what the fuck is squash? |
その2: 大体スカッシュとかいうのは何だ? |
Number Three: what self respecting man would wear clothes like that? |
その3: あんな格好するような、いいオトナが居るか? |
self respectingの直訳は「自尊」とされるようだが、この場面にはそぐわない。「自重」(「抑制」というより「自己を重んじる」の意で)や「分別を持つ」と捉えた方が適切で、更に文のトーンが砕けているのでこの様な意訳にしてみました。 |
Hell, I dunno. |
くそっ、知ったことか。 |
At first, I thought he might not have self respect, you know? |
ともかく最初に、奴はいいオトナじゃないだろうかもしれないと思った、分かるだろ? |
One of those sheepish little guys that spend all day calculating the ratio of elephant piss in the sub-Saharan. |
サハラ砂漠より南っ側で、象の小便の割合を一日中計ってるちっさい男だよ。 |
That impression lasted about five seconds after contact with him. |
そんな印象は、奴と会ってから5秒ぐらいは続いた。 |
“So you’re the guy looking for who killed Bright?” he asked. |
「じゃ、お前がブライトを殺した奴を捜してるって男か?」奴は続けた。 |
“What are you gonna do? |
「捜してどうするつもりだよ? |
Pin a medal on him?” |
犯人のその男に勲章でも下げてやるのか?」 |
whoをhimで受ける辺りが色々な意味でコンドラキらしい。また、推理小説の要素としてアクセントになっている。 |
I shook my head, pulling out my notepad, then started writing. |
オレは首を横に振って、メモ帳を引っ張りだし、それから書き始めた。 |
‘Loon.’ |
“バカ。” |
“I’m just checking out all leads. |
「ただ単に、あらゆる手がかりを確認してるだけです。 |
You know anyone who might have a reason to kill Bright?” I asked. |
ブライトを殺す動機がありそうな人間に心当たりは?」オレは尋ねた。 |
“No one other than everyone,” |
「みんな以外の誰でもないだろ。」 |
he said, his lips twisting into an obnoxious little ‘I need the shit kicked out of me’ smile. |
奴が言うと、その口元は形を変え、“私をボコボコにして欲しいです”とでも言ってるような小さくてムカつく微笑みになった。 |
“That’s a long list of people. |
「それじゃ長いリストになる。 |
Maybe you can narrow it down.” |
あなたはたぶん範囲を絞れるんでしょう。」 |
He ran his tongue along the front of his teeth, then looked around a little bit. |
奴は前歯の表側を舌でなぞり、それから辺りをほんの少し見回した。 |
“Clef, probably,” he said. |
「クレフ、まぁ当然だな、」ヤツは続けた。 |
“They don’t care for each other.” |
「あいつらはお互いを嫌ってた。」 |
“I’ve already spoken with Dr. Clef,” I said. |
「もうクレフ博士とは話しました。」オレは言った。 |
“Anyone else?” |
「他には誰が?」 |
He shrugged slightly. |
奴は少し肩を落とした。 |
“It depends entirely on the bowl of cheerios he decided to piss in this month,” Kondraki said. |
「そりゃ完全にシリアルの皿次第って話だな。今月あいつが小便入れようって決めた奴がどれなのか、だ。そりゃなんというか、今月あいつが小便入れようって決めたシリアルの皿がどれかによる、みたいな感じだな。完全に。」コンドラキはそう話した。 |
cheeriosはいわゆるコーンフレークっぽいアレの一種、分かりにくい商品名と判断して一般名詞に。piss in the bowl of cheeriosはかなりバリエーションがあるようなのですが、(明らかに不機嫌な誰かに対して)Who pissed into your cheerios?で「やぁボブ、誰が君のチェリオスに小便入れたんだい?」とか(何か嫌なことをされた時に)Don't pee in my cornflakes!で「おいボブ!俺のコーンフレークに小便入れるなよ!」のように使われ、意味としては「イライラさせるorさせられる、嫌がらせ」等を表現するアメリカンな言い回しのようです。文面や前後の文章から直訳気味でも比喩表現として成立すると判断し、このような訳になっています。喩え話であることをもう少し強調。 |
“Oh? He piss off a lot of people?” I asked. |
「ほう? つまり彼はかなりの人数をウンザリさせてるって意味かい?」オレは尋ねた。 |
前文に対応し、コンドラキが比喩表現を使ったことを強調させています。 |
“Bright’s been around for right at a hundred years now, doing the same damn job every day. |
「ブライトは100年ぐらい前から居て、毎日毎日変わり映えのないクソみたいな仕事をしてる。 |
なんか長生きだが、確かDrBright氏(どうでもいいけどDrBright氏の今のアカウントTheDuckmanになってない?)が裏設定でそれぐらい生きてるみたいなこと言ってたらしいので多分それ。 |
No breaks. No vacation.” |
休みなし。休暇なしで。」 |
Kondraki looked like he was going to spit, but thought better of it. |
コンドラキは唾を吐き捨てそうに見えたが、思い直したらしい。 |
“He gets—“ He raised his fingers into the air to make little quotation motions. |
「あいつは──」奴は指を2本ずつ立てて見せ、それを曲げて小さくクォーテーション・マークを作った。 |
クォーテーション・ジェスチャーは日本人にあまり馴染みがないと思うので、to make little quotation motionsの訳を厚くしておく。もしかしたらシングル・クォーテーションを作ってたのかもしれないが、その場合は土下座すれば済む。 |
“—‘bored.’” |
「──“退屈”してる。」 |
“Prankster?” |
「いたずらモノなのか?」 |
Kondraki nodded a little. |
コンドラキは軽く頷いた。 |
“Yeah. |
「そうだ。 |
He once filled my office with little paper bags. |
あいつは一度、俺のオフィスをちっちゃい紙袋で埋め尽くしたことがある。 |
Most of them had sand. |
ほとんどには砂が入ってた。 |
Some of them had dog shit.” |
犬のクソ入りのもあったぜ。」 |
“Where’d he find the dog?” I asked. |
「ブライトはどこで犬なんか見つけた見つけられたんだろうね?」そう聞いてみた。 |
Always good to keep them off balance. |
いつだって気分の良いもんだな、連中を落ち着かせないままにするのは。 |
Kondraki, to his credit, never missed a beat. |
コンドラキは、大したもんだが、まったく動揺を見せなかった。 |
“We have a few SCPs that are canines. |
「俺たちはイヌのSCPを数頭持ってる。 |
And I imagine he could requisition one.” |
で、これは俺の想像だが、あいつはその内の1頭を権限で利用できたんだろう。」 |
I scribbled on my notepad again, just to see if it would piss him off. |
オレは再びメモ帳に走り書いた。ただ単純に、それで奴が困るかを見るのが目的だった。 |
When I looked back up, he looked annoyed, so I counted it a win. |
顔を上げると、コンドラキはイライラしてるように見えた。ま、これはオレの勝ちに入れられるな。 |
“So, he do anything to tick you off other than filling your office with doggie bags?” |
「じゃあ、オフィスを犬用の袋でいっぱいにしたことの他に、彼はあなたを怒らせるようなことをしました?」 |
doggie bagは英語では通常「食べ残しを持ち帰る袋」を意味するらしいが、犬のフンを片付ける袋として使われる例もある。 |
Kondraki sighed, which I thought was a bit over dramatic, and rolled his eyes. |
コンドラキは溜め息を付いたが、その振る舞いはオレが見たところでは少し芝居掛かり過ぎていて、それから奴は両眼でじろりと睨んできた。 |
“I didn’t kill him, if that’s what you’re trying to find out.” |
「俺はあいつを殺しちゃいないぜ、あんたはそれを嗅ぎ回ってるんだろうけどよ。」 |
“And you can prove that?” |
「なら、それを証明できます?」 |
“I can prove that I wasn’t in the room with him and that I wasn’t in that wing. |
「俺が証明できるのは、あいつの居た部屋には居なかったことと、あの棟にも居なかったことだ。 |
That said, I could kill someone in a locked room from across the base without too many problems, too.” |
とは言っても、俺は密室に居る誰かさんを、基地の反対側から何の問題も無く殺すこともできたるよ。」 |
“Funny. |
「面白いね。 |
You’re the second person to brag about that today.” |
あなたが2人目だ、今日そういう自慢をする人は。」 |
“If you’re good at something, you want people to know,” he said, looking at his watch. |
「お前も何か得意なことがあったら、みんなに知って貰えよ。」奴は言い、腕時計を見た。 |
“If you don’t mind, I’ve got a game to finish. |
「そっちさえ良ければ、最後のゲームを取らせて貰うぜ。 |
文脈とフィーリングで「終わらせる」ことは分かるが、文を正確に把握できていない。スカッシュが通常3ゲーム先取制なのでそれに掛けてるのだろうか。 |
Anything else?” |
他に何かあるか?」 |
I shrugged. “If there is, I’ll get in touch,” I said. |
オレは肩を落とし、「何かあったら、また連絡しますよ。」と言った。 |
“Thanks for ya time.” |
「お時間どうも。」 |
Kondraki nodded, but I sure as hell didn’t get a ‘you’re welcome.’ |
コンドラキは頷きはしたが、オレに対して“とんでもない”なんて挨拶は全く無かった。 |
Some people just don’t know how to be polite. |
ホントに礼儀を知らない奴らも居るもんだな。 |
|
I was heading back toward the center of the site proper when I got that tingle I always get when someone is following me. |
サイト本体の中央部に戻る途中で、ひりつくようなあの感覚を憶えた。誰かがオレの跡を付けてる時に、いつも感じるアレだ。 |
I've never tried to explain it—and after working with these psychos, I decided I was better off not really knowing—but I had come to trust that little instinct. |
それが何かハッキリさせようとしたことは今まで無かったが──それに、あんな気狂い共に付き合って仕事した後でをして、あまり知らない方が良いのだと思った──しかし、オレはそんなちっぽけな直感を信頼するようになっていた。 |
無冠のlittleが出ると悩む。間違えると文の意味が完全にひっくり返ってしまうので。解決済み。問題なし。 |
I started walking through the quieter parts of the site. |
オレはサイトの中の、ひっそりとした区域を通り始めた。 |
Safe-Class containment lockers, sealed cells. |
Safeクラス収容ロッカーや、密封セル。 |
Places that weren't highly trafficked. |
あまり人が出入りしない場所だ。 |
I got a good glance over my shoulder as I passed a corner, sneaking a glance through the crack between a wall and an old vending machine full of stale pound cakes and zebra cookies. |
曲がり角のひとつで、上手く肩越しに様子を覗うことができた。壁と、シケたパウンドケーキや縞模様のクッキーが詰まった古い自販機の間から、こっそりと見る。 |
a wall and an old vending machine full of stale pound cakes and zebra cookiesは修飾が重い自販機を前にした方が文がすんなり読めるかもと思ったが、後文のit hit the wall, machine, or meがこの文を意識しつつ、体積が小さくて被弾しにくいものから順に上げているので原文のままで。少々読みづらいかもしれないが誤読を招くほどではないはず。 |
The guy was wearing a grey uniform. |
その男はグレーの制服を着ていた。 |
Site janitor. |
サイトの清掃員だ。 |
It threw me for a second, since I was expecting someone in security. |
一瞬、オレは動揺した。付けてるのはセキュリティの誰かだと思っていたんだ。 |
Then it threw me for another second, because he took out a gun and started shooting at me. |
そしてまた一瞬、オレは動揺した。ソイツが銃を取り出してオレに向かって撃ってきたからだ。 |
The vending machine slowed the bullets down about as much as you'd expect it to, and I managed to hurl myself around the corner and against the wall. |
あの自販機は銃弾の勢いを弱めた、こういう状況の人間が期待する程度にはな。そしてオレは、曲がり角の向こうへと上手く体を投げ出し、壁へと身を寄せた。 |
日本人はアメリカ人と違って、自販機が銃で撃たれたときの防御期待値とか考えたりしないので総称人称youをより詳細にしておく。 |
Hell, Maggie, maybe we'll get to see each other again faster than I expected. |
ちくしょう。マギー、また会えるかもしれないぜ、オレが思ってたよりも早く。 |
I pulled out my own piece, firing over my shoulder twice as I made it down the hall, twisting around a corner and glancing over my shoulder. |
オレは自分の銃を抜き、肩越しに2回撃ちつつ通路を駆け抜け、角に回り込みながら背後を振り向き見た。 |
I didn't see the guy, which bothered me, since I expect people who are trying to kill me to be more serious about it. |
男は見当たらず、オレを混乱させた。もっと本気で殺しに来る来てると思ったんだが。 |
A quick glance up told me why. |
素早く視線を上げると、その理由が分かった。 |
Security camera. |
監視カメラだ。 |
Whoever it was had a little bit of sense it looked like. |
どんな奴なのかはともかく、自分が何をしてるか他人の目にどう映るのか少しは弁えてるらしかった。 |
区切り方は、主節Whoever it was/had a little bit of sense/senseの形容詞節it looked like.のはず。looked likeが監視カメラを意識していると推測できるため、訳出にももっと視覚的な語を選出したほうが良いか。解決済み。視覚的なニュアンスのある訳出に変更。 |
Maybe not enough for their own good, though. |
といっても、ソイツの身のためになる程じゃないかもしれないが。 |
I know for sure I didn't, since I was already working back down the hall, trying to keep quiet. |
オレが全く解ってなかったと解るのは、気配を殺しながら、ゆっくりと通路を戻り始めてからだった。 |
I heard one more shot, but I didn't hear it hit the wall, machine, or me. |
もう1発銃声が響いた。その聞こえ方からすると、弾が当たったのは壁でも自販機でも、オレでもなかった。 |
Particular thankful for that last one. |
特にありがたかったのは、今挙げた内の最後のに命中しなかったことだ。 |
I stepped out from cover quietly, gun raised, and looked around. |
オレは音を立てずに飛び出し、銃を構え、辺りを見渡した。 |
Only thing there was an empty hallway and a nice, dead body. |
そこに存在したのは誰も居ない通路、それと見事な死体だけだった。 |
Grey jumpsuit. |
グレーの制服。 |
Site janitor. |
サイトの清掃員だ。 |
I went ahead slow, taking my time and checking places I could take a bullet from, until I got a little closer. |
オレはゆっくりと前方へ、時間を掛けながら銃弾を取り出せそうな場所を確認しつつ進んだ。その内に少しは死体へ近付き、そこで動くのを止めた足を止めた。 |
places I could take a bullet fromは時制の一致でcan、「可能性がある」の意味で取れば問題ない…はず。。until I got~は補語が省略されているので何に近づいたか分かりにくいが、おそらくこの解釈で合っている…と思う。訳はこなれていないので検討の余地がある。解決済み。訳も変更。 |
I grabbed my radio and called it into site security—attempted murder, janitorial staff, corridor, and my serial number. |
無線機を掴み、サイト・セキュリティを呼び出して──伝えたのは、殺人未遂、清掃スタッフ、通路、それにオレのシリアル番号。 |
And I made a special request, while I was at it. |
そして特別要請も、ついでに出しておいた。 |
|
I was holding my notepad, sketching the scene out with stickmen for my memory, when he started yelling at me. |
オレがメモ帳を握って、現場の状況を憶えておくために棒人間で見取り図を描いていると、奴がこっちに向かって叫び始めるのが聞こえた。 |
"Why for the hell you drag me out HERE?" |
「なんでお前は用もなく一体なんでためにお前は俺を引っ張りだした、こんなとこに?」 |
for the hell of itと同義で良いのかな。多分あってる。why the hellか…おのれロシアン・イングリッシュ。 |
The big Russian was an angry guy. Damn angry. |
そのデカいロシア人は怒っていた。すっげぇ怒ってた。 |
I was fairly convinced that I was only allowed to interview angry people today, and this guy was no exception. |
今日のオレが聴取を許されるのは怒ってる輩だけなのだとなんとなく分かっていたし、この男だってその例外じゃなかった。 |
Dmitri Arkadeyevich Strelnikov. |
ドミトリー・アルカディエヴィッチ・ストレルニコフ。 |
The Strelnikov. I made it a point to smile. He made it a point to curse loudly. |
オレは必ず、笑顔を浮かべるようにしてた。奴は必ず、罵倒してきた。あのストレルニコフだ。 |
I made it a point to smile. He made it a point to curse loudly.がThe Strelnikovの形容詞節に近い文だと感じたので語順を変更。 |
"The fuck is Head of Department doing here with failed murder?! |
「部局長のお前が殺人未遂されてここで何してやがる?!部長がこんなとこで何するってんだ、殺人未遂だろ?! |
固有名詞なのでストレルニコフは明確な役職を言っている、がダロウは具体的にどういう役職だと受け取れば良いのか。全体から考察すると、・財団内における警察の役割、今回は殺人事件の捜査をしている。・ストレルニコフ(セキュリティ)とは別部署、おそらく事件を投げられた側の内部監査(internal affairs)?・別部署の割にはストレルニコフと一定以上の面識がある。ストレルニコフを恐れているような表現もあるが完全にへりくだっている訳ではなく、多少乱暴な発言や冗談を交える事ができる程度の地位にあることが読み取れる。…以上から、サイトひとつを管轄する警察or監察部長ってところだろうか。下っ端ではないが上位の機密情報に気軽にアクセスできるわけでもない、財団全体で考えれば中ぐらいの役職…かな。流石に省庁のDepartmentではないだろう。Head of Departmentってストレルニコフのこと言ってるのか…。進行形で忠実に訳出すると「部長」が誰を指すのか分かりにくくなるかな。 |
You are detective! |
お前刑事だろお前が刑事だ! |
You solve own failed murder!" |
お前のお前が自分の殺人未遂追えよ!」 |
I nodded. "I intend to, as soon as I clear up a few things." |
オレは頷いた。「そのつもりだ、もう少し整理したらすぐに。」 |
"Clear up you head!" |
「お前が頭整理しろ!」 |
I nodded again, getting lost in that accent. |
オレは再び頷きつつ、その訛りの中に迷い込んでいた。 |
It was like walking through a foggy swamp chasing a light in the distance. |
まるで霧が立ち込める沼を渡り、遥かに向こうの灯りを追いかけるように。 |
Probably kill me if I took to long. |
もし長いこと浸っていたら、これはオレを殺してただろう。 |
"I just need to know what your thoughts on Jack Bright are," I said. |
「アンタがジャック・ブライトについてどう思ってるかだけ、聞かせてくれればいいんだ。」オレはそう言った。 |
"Jack Bright needs to learn how to keep his business to his nose," Strelnikov spat. |
「ジャック・ブライトは自分の仕事を自分の鼻先に吊るす方法を覚えなきゃな。」ストレルニコフは唾を飛ばして喋った。 |
"What are you? Lackey for Jack? |
「お前は何だ?ジャックの子分か? |
You needs better employment!" |
お前はもっと良い働き口が要るな!」 |
"I ain't no lackey," I said. "I'm just looking into who killed him." |
「オレが子分な訳ないだろう。」オレは言った。「奴を殺したのが誰か調べてるだけだ。」 |
ain't noが使用されていること、そして文脈から判断しても、これは二重否定ではなく強否定。 |
"Hell if I cares who kills him. |
「あいつを殺した奴なんかどうでもいい。 |
Why you think you got job looking into it instead of us? |
なんでそれを調べる仕事が、俺たちの代わりにお前に行ったと思ってる? |
You think security has damns to give about who kills man who doesn't die? HAH!" |
セキュリティが、死なない男を誰が殺したかって気にするとでも思うのか? ハッ!」 |
It was the first time I'd ever actually heard someone say 'Hah' instead of laughing. |
実際に見るのは初めてだ、笑う代わりに“ハッ”なんて言う奴は。 |
It was both unsettling and—I blame the accent—amazing to hear. |
その響きは不安を誘うようにも、──あの忌々しく思えた訛りが──凄味を感じさせるようにも聞こえた。 |
"You mean you passed on the case? |
「つまりアンタは、この事件を投げたってことなのか? |
Tossed it to internal affairs?" |
内部監査に丸投げした訳か?」 |
"Why should I care who kill him!?" he yelled. |
「俺がブライト殺した犯人を気にする理由あるのか!?」奴は怒鳴った。 |
By this time, two of his men were carrying the corpse away on a stretcher. |
この時にはもう、奴の部下2人がストレッチャーで遺体を運び去ろうとしていた。 |
"You mind sending me a cee-oh-dee when you get it?" I asked. |
「シーオーディーが分かったら、オレに知らせてくれるだろうな?」ストレルニコフに尋ねた。 |
"Be fucking yourself." |
「口閉じて引っ込んでろ。」 |
As he walked off, I couldn't help but admire a man who gave so little shit. |
奴が去っていくのを見て、こっちの事情なんかほとんどお構いなしだったその男に、オレは呆れる他なかった。 |
I didn't really need a cause of death anyhow. |
別にどうしても死因が必要って訳でもなかった。 |
It was obvious from the spatter on the wall. |
壁の飛沫を見たらすぐに分かった。 |
He'd shot himself in the head. |
あの男は自分で頭を撃ったんだ。 |
|
By the time I got back to my office, I was both tired and annoyed. |
自分のオフィスに戻った頃には、オレは疲れてイライラしていた。 |
I’d wanted to get a drink, and I hadn’t had the time, and now, it’d be impossible to get into the on site bar without fighting a crowd. |
酒を煽りたい気分だったのに、そんな時間は取れず、そして今じゃ、人混みと格闘せずにサイト内のバーへ乗り込むのは無理だろう。 |
I’d wanted~が大過去。少ない語でニュアンスをより強調できるかあとでもう一度考えてみよう。まあ大丈夫だろう… |
I leaned forward and picked up the stack of site security memos from my inbox, flicking through them and looking over them all. |
オレは身体を前に伸ばし、サイトの保安に関する文書の束を書類入れの中から引っ掴んで、それを捲りつ一通り流し見た。 |
Two SCP breaches—business as usual. |
SCPが2つ収容違反──通常営業だな。 |
Security officer AWOL—probably shit himself and ran. |
警備員の無断外出──どうせ漏らして逃げちまったんだろう。 |
Meeting of all site heads—not my problem, thankfully. |
全サイトの責任者で会議──オレには関係ない話だ、おかげさまで。 |
Nothing of real interest. |
ま、特に興味をそそるものは無かった。 |
I tossed it all back down and thought about my suspects, instantly reaching the conclusion that they were shit leads. |
今回のことを何もかも元の位置に放り込んで、書類全部を元の場所に放り投げて、オレが目星を付けた容疑者について考えてみたが、すぐに結論が出た。連中は解決の糸口として使えやしない。 |
I tossed it all back downはどう見たって「site security memosを元の場所に放り投げた」としか読めないのだが、後文でthe memosを手に持ってる…ので別のアプローチで訳してみたがどうも納得がいかない。解決した訳ではないが、結論を言えば他との整合性を考えずこの文章だけ見ればこの訳で正解。 |
Too much annoyance and not enough anger. |
奴らはイラついてるという範囲は超えてたが、怒りという程ではなかった。 |
You didn’t put a bullet in someone you were annoyed with, even if they did come back to life. |
ソイツにムカついてるというだけじゃ、撃ったりしないだろう、その人間がこの世に戻ってくるとしてもだ。 |
You put a bullet in someone you hated. |
憎んでいる人間を撃つのなら。 |
Because you were angry. |
理由は怒りだ。 |
Mad. |
荒れ狂うような。 |
I was looking down at the memos in my hand, flicking through them again, when it hit me. |
手に持ったままだった文書に目を落とし、もう一度流し読んだ時、オレの頭に答えが浮かんだ。 |
この場面の最後の最後でanswerの単語が出てくるので、it hit meに「答え」という訳を持ってくるのはあまり望ましくないのだが、直後のit hit me hardと掛ける他の訳が思いつかず。 |
And it hit me hard. |
そしてそれは、オレの骨身に応えた。 |
You killed because you were mad. |
アンタが殺したのか、その狂ったような怒りで。 |
クレフパート以外の、総称人称ではないように見えるyou。犯人への呼びかけになっているはずだが、物語的に外せないのでもう少し検討したい。解決済み。問題なし。 |
I flicked back to my case file, pulling out the declassified documents that I’d been given for the case and pouring over them. |
オレは自分の事件ファイルを遡って、この事件のために許可が下りていた機密解除資料を引っ張りだし、書かれた文章に視線を注いだ。 |
By the time I was done, I was sure I had my answer. |
それを終える頃には、オレは自分が出した答えに確かな自信を持っていた。 |
|
I walked into the lab, humming to myself a little, and looked over at the man hunched over his table. |
オレは鼻歌を少し交えながら目当てのラボに入り、机を抱え込んだその男に目をやった。 |
I raised hand and pointed at the back of his head with my finger. |
そして片手を持ち上げ、ソイツの後頭部を指差し、狙いを定めた。 |
“Bang.” |
「バァンッ。」 |
Bright jumped and turned around, glaring at me for a moment, then straightening out his clothes. |
ブライトは跳び上がってこちらを向き、一瞬オレを睨み付け、それから乱れた服を手で直した。 |
“Fuck do you want, Darrow?” he asked. |
「おい、一体何のつもりだよ、ダロウ?」奴はそう聞いてきた。 |
I grinned a little. |
オレは少しばかりニヤついてやった。 |
“Just checking to see how easy it is to sneak up on you,” I said. |
「いや、ちょっと確かめてみたかったんだよ、アンタにこっそり近付くのがどれぐらい楽勝なのかさ。」と言った。 |
Bright got good and pissed looking, which is how I wanted him, and started yelling. |
ブライトは、猛烈に腹を立ててるって顔をオレが望んでいた通りに見せ、そして怒鳴り始めた。 |
I didn't pay too much attention to what he was saying. |
奴が何を言っていたかには、それほど注意を払わなかった。 |
Just watched him for a while, spittle flying from his lips, amulet bouncing around on his chest. |
ただじっと、奴をしばらく観察した。喚き散らす唇からは唾が飛び、その胸元で首飾りが跳ね回った。 |
amuletが単数形にも関わらず無冠なのが興味深い。「あの」首飾りなのか「一般的な」首飾りなのか曖昧になっている。文法的には「砕けた文の文頭(分詞構文だが)の冠詞は省略可能」…なのだろうか? |
It took me about five minutes to make sure, but by the time I left, I had it. |
確信が得られるまで5分ぐらい掛かったが、その場を去る頃には、オレは糸口を掴んでいた。 |
I thanked him, watched him sputter for a minute, and headed over to security to get a pass. |
ブライトに感謝し、奴が興奮して騒ぎ立てるのを少しだけ眺め、そしてオレは、セキュリティに許可証を受け取りに向かった。奴が興奮して騒ぎ立てるのを少しだけ眺めていた。それからオレはラボを離れた、セキュリティで許可証を受け取るために。 |
ここも分詞構文ではない。やはり非制限用法の関係代名詞whichの省略がチラつくが、こちらは文法に加えて文脈的にも考えにくいように見える…解決済み。やはり単純な時系列順の文。後文の訳出のために若干変更。文を切るならここだろう。 |
One last angry person to talk to. |
最後に残った、怒れる奴と話をするために。そして、最後に残った怒れる奴のもとで話をするために。 |
別文になっているが、前文のsecurity to get a passと並列の名詞に見える。そのことと、One last angry personが主体になることを踏まえて訳をもう一度検討する必要がある。こんなもんだろうか… |
|
The rain was pouring down when I walked into the graveyard. |
雨が激しく降りしきる中、歩みを進め、墓地へと入っていった。 |
このパラグラフで主語Iが出るのはこの文のみで、残りの文は一人称というより俯瞰視点で書かれているように見える。著者の実際の思惑は図りかねるが、訳文ではIを訳出しない方が全体に纏まりが出ると判断した。 |
It was the kind of graveyard that no one ever visits because they don’t know anyone who’s buried there. |
そこは誰も墓参りに来やしない、そんな墓地のひとつだった。なぜなら、皆ここに眠っている人間をひとりも知らないからだ。 |
You've never think anything of it, because it was nicely maintained and mowed and kept. |
そして少しも、そういう風に考えたりしなかった。なぜなら、ここは管理が行き届き、雑草は丁寧に刈られ、手入れされたその姿を変えなかった保っていた。 |
maintainとkeepでかなり似た意味の単語になりますが、maintainが労力を注いで維持するのに対し、keepにはそのニュアンスが含まれないのでこのような訳にしました。ちょっと修正。 |
Foundation graveyard. |
財団の墓場。 |
Inconspicuous, even in death. |
気に留められない存在だった、死の中にあっても。 |
You’d never notice how few people actually went there or how high the fence was or how none of the graves ever got flowers. |
皆、全く気が付かない、実際にここへ足を運ぶ人間がどれほど少ないか、ここのフェンスがどれほど高いか、そして、どの墓も決して花を供えられないことも。 |
Only now, there was one grave that did. |
だが今は、ひとつの墓に花が手向けられていた。 |
And there was another visitor besides me. |
そして、オレの他にもうひとり来客が居た。 |
I walked up to the tombstone and nodded my respects before coughing once. |
オレはその墓石まで近付き、少し俯いて祈りを捧げ黙礼して、一度咳払いした。 |
nodded my respectsはpay one's respectsと同義と捉えていいのかな。解決済み。訳を修正。 |
“Hey, Bright.” |
「よぉ、ブライト。」 |
I didn’t recognize the man that turned and looked at me, but I did recognize his uniform. |
振り返ってこちらを見たその男に見覚えはなかったが、その制服には見覚えがあった。 |
Foundation security. |
財団のセキュリティ。 |
The kid that went AWOL. |
無断外出してた例の坊主だ。 |
Bright nodded to me. “Hey, Darrow,” he said. |
ブライトはオレに頷いて、「やぁ、ダロウ。」と言った。 |
It was weird to talk to him when he wasn’t yelling at me. |
奴と話すのは妙な感覚だった、オレに向かって怒鳴ってこなかったからだ。 |
“Nice work. |
「見事だよ。 |
You’re here a lot earlier than I expected.” |
君がここへ来るのは、私の予想より随分早かった。」 |
“Thanks,” I said. |
「そりゃどうも。」オレは言った。 |
“It wasn’t easy to figure out. |
「簡単じゃなかったぜ、この答えに辿り着くのは。 |
Not until I went and talked to that other you in the lab.” |
ラボに居た別のアンタんとこに行って話すまではな。」 |
Bright nodded, then turned back to the grave. |
ブライトは頭を小さく動かして相槌を打ち、それからあの墓の方に向き直った。 |
“What gave it away?” he asked. |
「どこでバレたかな?」奴は尋ねた。 |
“It was a lotta shit,” I said. |
「沢山のくだらないことさ。」オレは答えた。 |
“Didn’t dawn on my until I saw him screaming and yelling and flailing his arms everywhere. |
「最初はさっぱりだったが、あのアンタが叫んだり、怒鳴ったり、あちこちで腕を振り回すのを見てピンと来たんだ。 |
なんか意訳が強いけどなんでだったかな。原文に忠実になるようにしつつ頭から訳すと、倒置法になる上に後文と繋がらなくなるのかな。まぁこのままにしておこう。dawn on~はトーンさえ合えば字面の通り「徐々に明らかになる」とか「光明が見え始める」とか「光が差し込んできた」とかすれば良さそう。しかしなぜmeじゃなくてmyなのだろう。訳したら別に変わらないけど… |
The amulet wasn’t staying in contact with him. |
あの首飾りが、体に触れていない時があった。 |
直訳すると「アミュレットは彼との接触を保ち続けていなかった。」だが、なんかまどろっこしくなったので後文と合わせて意訳。 |
If it doesn’t, he’d be having little blackouts.” |
そうなった場合、ごくわずかな間意識が飛ぶはずだろう。」 |
Bright nodded. |
ブライトは首を縦に振った。 |
“Yeah,” he said. |
「うんそうだ、」そして続けた。 |
“It’s one of the hazards of being attached to it. |
「それは危険性のひとつだ、あれを着けているときの。 |
They used to glue it to my head, you know.” |
上の連中が接着剤で私の頭にくっ付けてたこともあったよ、知ってるだろう。」 |
SCP-963より。 |
“Yeah,” I said. |
「ああ。」そう返した。 |
It had been in the file. |
その事は、あのファイルに書かれていた。 |
“Your other self sent me to the two people who would be the biggest pains in the ass to find and talk to,” I said. |
「アンタの分身はオレを、2人のケツのデキものみたいに面倒な奴らに誘導したな、ソイツらを捜させてお喋りさせるように。」オレは続けた。 |
“Basically, two big distractions.” |
「つまり、2つの大きな目眩ましだ。」 |
“You didn’t get to Strelnikov?” he asked. |
「君はストレルニコフのところには行かなかったのか?」奴は聞いてきた。 |
“Nah,” I said. |
「あー、そうだな、」オレは言った。 |
“I saw him. |
「会いはしたぜ。 |
他に考えようがないよなぁ…解決済み。問題なし。 |
But that was fun. |
でもまぁ、おしゃべりは面白かったよ。 |
And Clef helped me out, too. |
それに、クレフはオレを助けもした。 |
Said that you’d had the D-Class rotation duty before he did.” |
奴は言ってたんだ、アンタがD-クラス異動の当番を自分の前にやってたってな。」 |
Bright nodded. |
ブライトは頷いた。 |
“It wasn’t hard to make a simple replica of the amulet. |
「難しくはなかった、例の首飾りをただ複製するのはね。 |
Hell, it looks like costume jewelry as it is. |
フン、あの私が着けていたのは玩具のアクセサリーみたいなものだ、見た目通り。 |
I just got a D-Class alone, put on the fake one, and put the real one on him. |
私はD-クラスを1人ちょっと失敬して、偽物を身に着け、本物の方をソイツに着けさせた。 |
Kept assigning that D-Class to myself so no one would notice.” |
そのD-クラスは私に割り当てたままにして、誰にも悟られないようにしたのさ。」 |
I nodded. “And then put him at the top of the list for the ‘new’ Bright once the thirty day acclimation period ended,” I added. |
オレは納得して頭を振り、「それから、そのD-クラスを“新しい”ブライト用の人員リストの一番上に押し込んだ訳だ、人格が定着するのに必要な30日が過ぎてから。」と付け加えた。 |
He smiled. |
奴は顔に笑みを浮かべた。 |
“After that, it was just a matter of time. |
「あとは、ただ時間の問題だった。 |
Called Officer…” He looked down at the front of his fatigues and read the name “…Carlson. |
私は呼び寄せ出したんだ、警備員の…」着ている作業服の胸に目を落とすと、書かれた名前を読み上げた。「…カールソン。 |
calledはcall himself~の意では無いと思うが…解決済み。若干修正。 |
He stopped by my office to take my Class-D back, and we slipped the amulet on him. |
こいつが私のクラス-Dを連れ戻しにオフィスに来た時に、私たちはあの首飾りを彼にそっと掛けた。 |
Had another face stop by and put the bullet in the back of my head. |
そして他の私を1人そこへ呼んで、あとは御存知の通り、私の頭の後ろに一発撃って貰った。 |
That’s my preferred method of death these days, at least.” |
それが、差し当たり私にとって望ましい死に方だったんだ、ともかく。」 |
“Another face?” I said. |
「他の私を1人?」オレは言った。 |
“How many of you are there?” |
「おい、一体アンタはどれぐらい居るんだ?」 |
“Plenty,” he said. |
「たくさん。」話は続いた。 |
“You read the file. |
「君はあのファイルを読んだな。 |
‘Thoroughly dedicated.’ |
“この現象を解き明かすこと以外には興味を示さない。” |
SCP-936の記事からの引用。訳文も該当箇所を日本語訳から引用してきましたが、自然な文になるように抜粋したので原文とは範囲が少々異なります。 |
They think I’m just absorbed in my work.” He nodded slightly. |
あいつらは、私がただ自分の研究に没頭している、と考えているんだ。」奴はわずかに頷いた。 |
"Just so you know, you'll never catch that one. |
「一応言っておくが、もう私を殺した私を捕まえることは出来ない。 |
that oneはほぼ間違いなく直接の犯人であるブライトを指していると思われるが、進行上間違えられない箇所なので慎重に行きたい。解決済み。問題なし。 |
He put a bullet in his head, after all. After keeping you occupied for a little longer." |
あれは結局、自分で自分の頭を撃ってしまったからね。君をしばらく忙しくさせた後で。」 |
I nodded. |
その話に首を振って頷いた。 |
The janitor. |
あの清掃員だな。 |
Made sense. |
納得がいく。 |
“And now, you’re planning on leaving the Foundation,” I said. |
「そして今、アンタは財団から出て行こうとしてる。」オレは続けた。 |
“After all… it’s the anniversary of your death,” I said, gesturing to the headstone. |
「そう…アンタの命日だもんな。」そう言って、その墓石を指した。 |
“You must be pretty dissatisfied with the progress on getting you unstuck.” |
「大方、かなり不満だったってのが理由だろう。アンタを首飾りから引き剥がす研究の進み具合にが。」 |
研究の進捗が進みすぎてるのか全く進んでないのか…おそらく後者だろうか。原文の時点でどっちとも取れる気がするが。どうも進んでいないらしい。ちょっと修正。 |
Bright looked down at it again, narrowing his eyes into little slits. |
ブライトはもう一度墓へと視線を落とし、その両目をほとんど線のように細めた。 |
“I’m not leaving,” he said. |
「私はどこへも行かないよ。」奴は口を開いた。 |
“I just wanted to stop by for my anniversary. |
「ただ、私の記念の日のために、ここへ来たかっただけさ。 |
O5’s told me I couldn’t. |
O5どもは認められないと言ったが。 |
I decided I was going to. |
実行することにしたんだ。 |
Not like it took that much work. |
そこまで手間が掛かるって程でもなかったよ。 |
And I was bored.” |
それに、私は退屈してたんだ。」 |
I remembered what Kondraki said. |
コンドラキが言ったことを、ふと思い出した。 |
“Yeah, but there’s no way you’ll be able to get back on base. |
「そうか、だがアンタが基地に戻れるような方法は無いだろうな。 |
You’re in a security guard that they’re looking for. |
アンタが入ってる警備員は、皆が捜し回ってる。 |
Shoot on sight. |
見つかりゃズドンだ。 |
They find the amulet on you and the entire thing gets blown.” |
アンタが付けてるあの首飾りも見つけられて、何もかもがパー、おしまいさ。」 |
Bright nodded, turning to look at me and pulling a syringe out of his pocket. |
ブライトは頷きながらオレの方を向いて、1本の注射器をポケットから取り出した。 |
I reached for my gun, but his body was in good shape, all things considered. |
オレは自分の銃に手を伸ばしたが、ヤツの身体は良く鍛えられ、全てが計算し尽くされていた。 |
The needle stuck me, and I felt a deep burning as whatever was in there started to pour into my veins. |
注射器の針がオレに突き刺さり、得体の知れないその中身が静脈に入り始めると、燃えるような感覚が体の奥底から沸き上がってきた。 |
複合関係代名詞whateverは通常「何でも、どんなものでも」と訳されるが、この場合or whateverや会話文でのwhatever「なんでもいいけど」の用法、もしくはwhatの強意語(whatが「~なもの、~なこと」と訳されることが多いのに対し、より「何か」であることを強調)を意識し、「何だか分からないが~なもの」と訳すのが適当。これは他の複合関係代名詞、関係副詞にも当てはまる。 |
I staggered backward, head already swimming as my vision began to go narrow. |
オレは後ろへよろめき、頭は既に目眩の中に陥って、視野も狭まっていった。 |
I saw Bright reaching into his shirt and pulling out that little amulet, walking toward me. |
ブライトがシャツの中に手を入れ、あの小さな首飾りを引っ張り出し、オレの方に歩いてくるのを見た。 |
“You figured out everything Darrow. |
「君は全てを解き明かしたよ、ダロウ。 |
Almost everything,” he said, kneeling next to me as I fell. |
ほとんど全てだ。」奴がそう言って、すぐ側に膝をついてしゃがむのと同時に、オレは崩れ落ちた。 |
“I knew you’d figure it out. |
「確信があったよ、君がこれを解明するだろうってことは。 |
Come to confront me. |
そして私の前に立ち塞がるだろうってことも。 |
100歩譲って、命令形Confront meならまだ分からないでもないが、命令形Come to~の解釈は不自然すぎる。この時既にブライトは明確な殺意を示しており、「私と敵対するようになれ」はおかしい。だからこれは全文のfigure it outと並列の名詞句…でも100%そうだとは言い切れない。解決済み。命令文ではなく前文I knew you’d~から続いている。 |
Be discrete, like you were doing me a favor.” |
思慮深い奴だってこともね、まるで私に良くしてくれているみたいに。」 |
基本的には上文と同じく、I knew you’d~のあとに続く名詞句のようなものだと考えたい。しかし、今回は文脈的に命令文のパターンも可能性がありそうだ。というか discrete(形容詞:離散した)が同音異義語discreet(形容詞:分別がある、押し付けがましくない、思慮深い)の綴り間違いな気がする。語源が同じでネイティブでもしょっちゅう間違えるらしい。「tがeを分離させてるほうがdiscrete!」とか覚えるらしい。だってdiscreetじゃないと意味通らないじゃん。like you were doing me a favorも、likeは非標準用法でas ifと同義の接続詞的用法なのだが、素直に仮定法過去と受け取っていいのか。a favorは「親切」だろうけど具体的にどう取っていいのか。全体的に全然分からない。 |
My stomach heaved for a moment. |
オレの胃が一瞬、吐き気に襲われた。 |
I thought about Maggie for a second. |
そして一瞬、マギーのことが浮かぶ。 |
原文がfor a momentとfor a secondでほぼ同義の語を使い分けているのを訳出でも表現したいが、私の語彙力が不足しているうえ物語が一人称で進むため使用できる単語が制限されるので「一瞬」以外の語が思い浮かばない。 |
Laying in the bed. |
ベッドの上に横たわった姿。 |
Bloody. |
血塗れの身体。 |
The judge in the trial. |
裁判の判決。 |
The man with my old face burning in the chair, cooking alive. |
オレの元の顔をした男が、電気椅子の中で燃え上がり、生きたまま丸焼きになる。 |
“I didn't kill her,” I said. |
「オレは妻を殺してなんかない、」そう言った。言葉が漏れる。 |
「彼女」以外でherを訳出しようと思うと、これかな。朦朧としながらも、この言葉を聞く者が居ることをしっかりと意識して主張している文だ。もしかすると、裁判中にこれと同じセリフを何度も繰り返したのかもしれない…あくまで想像だけど。当たらずとも遠からずだったらしい。後文に合わせ訳を変更。 |
The words slurred together in my mouth, and then in my head as I tried to reach my hands up to push him away. |
その言葉はそれはもつれ、ひと纏まりになって口の中に表れて、それから頭の中に姿を見せた。オレが両腕を上へと伸ばし、ヤツを押しやろうとしていた時だった。 |
slurは通常他動詞だが、主語がwordsやspeechなどの場合に限り、be slurredの意味で自動詞として使用できる。The wordsを前のセンテンスに先行させる。 |
Bright nodded at me. |
ブライトはオレに同意するように、首を動かした。 |
“We never thought you did. |
「君がやったと、我々が思ったことなんかないさ。 |
If you had, you’d have been a Class-D instead of a well placed officer, poised for promotion.” |
もしそうだったら、君はD-クラスだったろう。階級も高く、出世が望めるような警察官幹部職じゃなくて。」 |
officerが「警察官」か「幹部」の2択になる。解決済み。こっち。 |
The last thing I thought was—‘Well, now I get to see what happens to people’s heads when they stick the amulet on them, right?’ |
最後に、オレはこう考えた──“あぁ、これから分かるんだな。この首飾りを身体に着けた時、頭の中で何が起きるのか。そうだろ?” |
And then I found out. |
そして、答えを見つけた。 |