強く風が吹いていた。冬の夜の墓場は人気もなく、酷くつめたい。遠くでは除夜の鐘が響いている。
ただ一人、瀬川は一つの墓の前に立っていた。ほかの墓となんら変わるところのない、規格化された灰色の直方体。唯一異なる点といえばそこに刻まれた名前だろう。闇の中でも、瀬川だけはその名前をみあやまることはなかった。
『田所 昌也』
生涯忘れることのないであろうその名前を見下ろして、瀬川は苦笑混じりにつぶやいた。
「お前のせいでさ、ハッピーニューイヤーなんて言葉、もう何年も言えてないんだよ」
* * *
「あっ、今年もヒーローになれなかった」
ちょうど五年前、2009年12月31日の瀬川の記憶は田所の言葉が録画ボタンを押したように、その瞬間から始まる。
普段はそこそこ賑わっているサイト-81██の談話室は、日にちと時間もあってか、瀬川と田所の貸切状態うとなっていた。年末番組もあらかた放映し終わったテレビの中では、アイドルたちが今か今かと年明けを待っている。瀬川が何の気なしにその画面を眺める向かいで田所は携帯ゲーム機に興じていた。二人の挟む机の上にはカップ蕎麦の空容器と幾本かの缶ビール。だいぶひどい大晦日だが、それでも寒いワンルームで一人きりなよりはいくらかは、ほんの少し、わずかにマシだった。
そんな停滞した空気の中、突如として田所がよくわからなことを呟いたものだから瀬川は怪訝な顔をして彼を見た。
「なに、お前、ヒーローになりたいの」
「おう」
皮肉半分に問いかけると、田所は自信満々に頷いた。その顔があまりにも真面目なものだから、瀬川は思わず「ふはっ」笑い声を漏らした。
「じゃあ俺とゴレンジャーでも組むか?」
「おい、笑い事じゃないって」
茶化せば、真剣な声が返ってきた。
「マジで?」
「マジだよ」
「ヒーローに?」
「今年こそなるつもりだったのに」
「今年こそって……お前そんな、小学生みたいな」
「だって、選ばれたと思ったんだ」
田所が囁いた。
ゲーム機を閉じ、机の上に突っ伏する。子供みたいに純粋な瞳が瀬川を見上げた。
「あの日、いつもみたいに俺はコンビニでレジ打ってて、そしたらよくわかんない化物がやってきて、ムカつく店長ぶっ殺して全部がぐちゃぐちゃになって……」
「はいはい、それで対処したエージェントに土下座して財団に入れてもらったんだろ?」
酔うと必ずこの話をするのは田所の悪い癖だった。瀬川はオチに至るまで一言一句正確に復唱できるまで、この話を聞かされていた。
瀬川は研究者時代の論文で財団に見初められたタイプの職員だったから、日常でSCPに遭遇するというイベントの重大性は想像するしかない。それは少なくとも、田所にとっては何百回話してもまだ足りないほど衝撃的であったのだろう。
「俺はその時確かにガッツポーズしたんだ。クソみたいな、なにひとつ楽しいこともない24年間はその瞬間にピリオドを打たれ、俺の本当の薔薇色の第二の人生が始まったと思ったんだ。それなのによう」
田所が缶ビールをあおる。
「なんにも始まらなかったんだ。その年はそんなもんかと思った、まだ俺は新米だからって、まだ導入部なんだって。でも次の年も、その次の年も、俺はヒーローになれなかった。そしてまた、今年もだ」
彼が彼自身の仕事に満足していないことを瀬川は知っていた。
ここ、研究サイト-81██を『財団で一番幸福に近い場所』と揶揄し始めたのは誰だったろう。かつての名残でサイトとして扱われているが、現在オブジェクトはひとつも収容されていなくて、かつての収容室は無駄に丈夫な物置と化していた。じきにサイトですらなくなるかもしれない。 そんな施設の中で行われていることといえば単なる研究だ。それも、なんの変わったところのない、ごく一般的な。別に怪しい化合物だとか、オーバーテクノロジー的な器具を扱いもしない。なんのためにこの研究が使われているのかさえ、瀬川達には知らされない。田所だって似たようなものだ。エージェントなんて名ばかりで、やってることはただの守衛に変わりない。
瀬川は別にそれでもよかった。他の企業に就職するよりはるかに給料はいいし、福利厚生もしっかりしている。だが田所はそうではなかった。顔を赤らめた田所が勢い良く立ち上がる。
「俺は今でも夢に見るんだ、大規模な収容違反が発生してみんなみんな逃げ惑う。そんな中俺は一人颯爽と立ち上がって命を賭して救うのさ」
「どうやって?」
「知るもんか。でもヒーローなら自然とできるはず。それかあるいはこんなでもいい、俺は一人の美女と出会うんだ。彼女はSCPの影響を受けていて、財団のエージェントが彼女を収容しようと追いかけてくる。俺はそれを蹴散らし、彼女と北へ北へと逃げるんだ。真っ白な雪原に足跡をつけて……」
「おい、ストップ。ストップだ。こんなの、上層部に聞かれでもしたら大目玉だぞ」
「わかってる、わかってるさ」
肩を揺らしながら熱く語っていた田所は、瀬川の言葉で急にクールダウンした。ため息をつき、座りなおす。
「全部、妄想だよ。小っ恥ずかしい類のな。でもさ、夢見たいんだよ、今の俺は、夢見たっていいだろ……」
「お前、今だって十分に働いてるよ。世界平和に貢献してるよ。俺だって研究、頑張ってんだからさ」
「瀬川チャンは、それでいいよお」
田所は笑った。
目尻を下げ、唇を歪めたその笑いはとても泣きそうに見えた。
「瀬川チャンはね、優秀だからさ、持ってる人間だからさ。きっとお前の研究で世界中ハッピーになれるよ。仮に財団やめたってヒーローになれるよ」
「そんなことは」
「でも俺はさぁ、なんもないから。一発逆転しなきゃダメだけど瀬川チャンなら絶対いつか、ヒーローになれるからさ。俺は命でもかけなきゃ」
「お前、酔いすぎ」
たしなめると、田所はなにか言いたげに口をもごもごさせながらも「ごめん」とだけ言って黙った。沈黙が流れる。
テレビではいつの間にかカウントダウンが始まっていた。2009年が終わるまであと30秒。29,28……。
「ほら、もうすぐ今年が終わる」
「……おう」
「今年も世界が平和であったことに感謝しようや」
「…………おう」
「少なくとも俺はさ、今の状況を幸せだと思うぜ」
「………………そっか」
田所はこくりと頷いたが、その表情はあまり納得しているようではなかった。
やや気まずい雰囲気の中、テレビの中のカウントダウンは0を迎えた。
「ほら、ハッピーニューイヤー」
「……ハッピーニューイヤー」
そういう田所は、そして瀬川も、全然ハッピーじゃなかった。瀬川は諦めたようにため息をつく。
「ほらほら、もう片付けようぜ。お前はどうする?仮眠室に泊まってく?」
「瀬川チャン!」
空き缶を集め始めた瀬川に、意を決したように田所は声をかけた。振り向き、瀬川はドキリとした。
あまりにも真っ直ぐすぎた。
強い意志を感じた。それだけじゃない、狂気と言ってもいい。視線に刺し殺されることがあるなら、きっとこんな場合だろう。
「それでもやっぱり、俺は、今年こそヒーローになるよ」
瀬川はその雰囲気に気圧されて、ただ一言「バカ」と言うことしかできなかった。
* * *
2010年12月31日、エージェント田所は死んだ。
偶然訪れていたサイト-8181で収容違反に巻き込まれたとのことだった。
瀬川にはついぞ詳しい状況が伝えられることはなかったが、まるでヒーローのごとき死に様だったと風の噂で聞いた。
* * *
「あのとき、俺が強く言い含めてたらお前は死なずに済んだのかもな」
墓を見下ろして瀬川は呟いた。風はより一層強くなり、木々をざあざあと揺らしている。何百回目かの自問自答の答えは、もうずっと前から出ていた。なぜなら、
「言えるわけがなかったんだ。だって俺も、ヒーローになりたかったから……でも、俺は臆病でそのことを口にすら出せなかった。だからお前が羨ましかった!夢を語れるお前に憧れてたし、お前が死んだと聞いた時、もう、一生追いつけないんだって、思った」
墓石はなにも答えない。
瀬川は懐から一枚の手紙を取り出した。
「俺さ、サイト-8181の研究室からスカウトされたんだ、引き抜きってやつだよ。俺の研究を見た博士が声かけてくれて……すごいだろ?すごいだろ!でも俺、悩んでるんだ」
瀬川は視線をおとした。誰かに恥じているような、そんな気持ちであった。
「だって多分今よりもずっと危険な目にあうことが多くなる。斎藤主任は別に断ってもいいって、これからの出世に響きはしないからって。俺は今のままでもいいんじゃないかって、思ってしまうんだ。情けないよなあ、臆病でさ……だからさ、お前に、ヒーロになったお前に背中を押してもらいたいんだ」
もしも田所が生きていればきっとこういったはずだ。
『すごいよ瀬川チャン、さすがだね、ヒーローになっておいでよ』
いや、それは全部都合のいい想像だ。結局のところ墓石はなにも答えない。
その代わりに、瀬川はポケットから10円硬貨を取り出した。手の内で何度か感触を確かめるように握り締める。
「表が出たら俺は1マス進む。いつ死ぬかわからない人生を歩んでいく。裏が出たら一生の『とまれ』だ。いいな?」
これが単なる五分五分の運任せであることを、瀬川は百も承知していた。それに、死んだ友人を理由として付け加えていることも。だがそうでもしないとどんな選択を取ったところで心の靄は晴れないままだろうというのも、事実だった。
右手の親指に硬貨をのせる。そのついでにチラと時計を見れば、あと30秒で年が明けるところだった。29,28……。大みそかはいつだってこんなことばっかりだ。
ピン、と硬貨が弾かれ宙を舞った。左手の甲で受け止めるつもりが目測を誤り草むらの上に落ちた。慌ててかがみ込む。
その瞬間、鳴り響いていた除夜の鐘さえ止まり、世界中すべてが静止したような感覚を瀬川は得た。
「おい、おいおいおい、嘘だろ?」
硬貨が地面にまっすぐと立っていた。
信じられない、といった顔で瀬川は効果を拾い上げる。まじまじと見つめるそのかおは、わなわなと震えていた。
「やっぱりお前、すごい、ヒーローだよ、だって、こんな、すごい……すごいよ!」
何万分の一の確率だろう。投げたコインが地面に立つなんて、有り得るか、普通。瀬川は笑い声をあげた。遠く響くように、大きく、形振り構わず笑い、博士からの手紙を破り捨てた。
「お前は本当に先を行くんだ!ああ、クソ、追いついてやる、いや、追い越してやるよ!俺は優秀だ!ヒーローになんか、かんったんになれるんだ、今に見てろ!」
大きく腕を広げた瀬川の背後、花火が上がった。年が明けたのだ。
まるで、瀬川の新たな一歩を祝福しているかのようだった。
「ハッピーニューイヤー!」
瀬川はまことハッピーで、幸せで、楽しそうに叫んだ。
「それじゃあ俺の第二の人生……楽しもうか!」
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe/Euclid/Keter (適切なクラスを選んでください)
特別収容プロトコル: [SCPオブジェクトの管理方法に関する記述]
説明: [SCPオブジェクトの性質に関する記述]
補遺: [SCPオブジェクトに関する補足情報]
対象: [人間、団体、SCPオブジェクトなど]
インタビュアー: [インタビュアーの名前。必要に応じて█で隠しても良い]
付記: [インタビューに関して注意しておく点があれば]
<録音開始, [必要に応じてここに日時(YYYY/MM/DD)を表記]>
インタビュアー: [会話]
誰かさん: [会話]
[以下、インタビュー終了まで会話を記録する]
<録音終了, [必要に応じてここに日時(YYYY/MM/DD)を表記]>
終了報告書: [インタビュー後、特に記述しておくことがあれば]
早すぎた復活
収穫されたSCP-XXX-JP。中の溶液は実験のため外部に移してある
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-8181のロッカーに現在89個収容されています。SCP-XXX-JP-1の栽培を含めた実験を行いたい際は担当者まで申し出てください。
SCP-XXX-JP-2はサイト-8181の小動物収容ケージに収容されています。一日に一度ミキサーにかけた牛肉を20g程度与えてください。許可をとればSCP-XXX-JP-2と対話を試みるることができます。対話を行った際はその内容をすべて担当者に報告することが義務付けられています。SCP-XXX-JP-2を新たに復元させたい場合は担当者から実験マニュアルを受け取り、手順にミスがないように二人以上の研究員で行ってください。
説明: SCP-XXX-JPは50ml遠沈管とその中に入っているおよそ20ml溶液からなります。溶液の大部分はエタノールからなりますが、その中に28対の染色体をはじめとした化合物134種類を含んでいます。この化合物の多くは未知の元素を含んでいます。含まれる染色体は現在判明しているいかなる生物のものとも異なっており、未知の生物のもである可能性が挙げられています。実験の結果、後述するSCP-XXX-JP-2のものであることが判明しました。遠沈管ごとに一部塩基配列などが異なっている場合があり、別の個体のものとなっています。また遠沈管は人工物のように見えますが、植物性です。
SCP-XXX-JP内部の溶液を土の上に撒いた場合、およそ24時間ほどで芽が生えてきます。その後およそ二週間で成木へと成長します。この植物をSCP-XXX-JP-1に指定します。SCP-XXX-JP-1はリンゴ(Malus domestica)によく似た外見を持ちますが、調査の結果遺伝子配列などは大きく異なっています。SCP-XXX-JP-1は成長に水や日光、酸素などは一切必要としません。SCP-XXX-JP-1が十分に成長しきると果実のようにSCP-XXX-JPがSCP-XXX-JP-1の枝上に生成されます。この際、SCP-XXX-JPは簡単に人の手で採集することができますが、自然に落下することはありません。一本のSCP-XXX-JP-1からおよそ100本のSCP-XXX-JPを採集することができます。一種類の溶液をまいた場合は撒いた液に含まれるものと全く同じ染色体を持つSCP-XXX-JPが生成されます。二種類以上の溶液を混合して混ぜた場合、染色体の塩基配列に組み換えが起こったものが生成されます。SCP-XXX-JP-1の成長する仕組みに関しては未だ判明していません。
SCP-XXX-JP中の溶液を特定の手順で処理すると染色体が分裂を始め、およそ24時間ほどで未知の反応によってSCP-XXX-JP-2が復元されます。SCP-XXX-JP-2はおよそ5cmほどの円筒形の胴体と長さ数mmの大量の足を持ち、その形態はしばしば「芋虫のよう」と称される生き物です。頭部にあたる部分には巨大な眼球が四つ存在しており、長い触覚が二本はえています。背部からは楕円形の薄い翼が四枚生えています。SCP-XXX-JP-2を解剖した結果、体内の多くを脳と思われる組織が占めていることが判明しましたが、ほとんどは壊死しています。この壊死がSCP-XXX-JP-2元来の特徴なのか、財団の考案した復元手順の不備によるものかは不明です。脳が肥大化した影響からか、消化器官や生殖器官は簡略化されています。
SCP-XXX-JP-2は発声器官をもちませんが、脳内に直接思念を送り込むことで対象の使用言語や知能レベルにかかわらず会話が可能です。それぞれの個体で性格や口調は異なりますが一概に人間に対して強い敵対心を抱き、尊大な態度をとります。また未知の科学技術に関する知識を多く有しているようです。その他の異常特性や戦闘能力は有していませんが、SCP-XXX-JP-2と対面する際は十分に注意しててください。現在一匹のSCP-XXX-JP-2が財団に収容されています。
██県にて一般企業の行った地質調査の際に、地下およそ███mの地点に建造物が存在していることが判明しました。建造物内にはSCP-XXX-JP-1が存在しており、その異常性が財団に報告された結果収容の運びとなりました。財団が調査したところ、この建造物にも未知の物質がつかわれており、およそ█████年ほど前に立てられたと推測されています。現在SCP-XXX-JP-1が発見された地点の周囲100メートル四方は財団のフロント企業が所有し、民間人から封鎖されています。
以下はSCP-XXX-JP-2が初めて誕生した際の██研究員との会話記録です。SCP-XXX-JP-2の発言は観測されないため██研究員が記憶に基づいて書き起こしたものになります。
SCP-XXX-JP-2: おい、貴様。
██研究員: うわっ[SCP-XXX-JP-2を見て12秒沈黙] あなたは人間と会話できるのですか?
SCP-XXX-JP-2: ふむ、貴様は人間というのか。[思案するような間]貴様がこの私を蘇らせたのだな?
██研究員 まあ、そういうことになりますかね。
SCP-XXX-JP-2 なるほど、私たちは賭けに勝ったというわけだ[SCP-XXX-JP-2は笑い声をあげる]なにも知らずに私を復活させたのが運のつきだったな!
██研究員: 貴方はなぜあのような形で遺伝子を保存していたのですか?それとも誰かがやったことですか?
SCP-XXX-JP-2: ふん、我々の功績に決まっているだろう。まあ貴様らのような無能には想像もつかぬことかもしれぬがな。なに気に病むことはない、どうせすぐに我々によって支配されるのだ。さて人間よ、光栄に思うがいい。貴様を私の第一の傀儡としてやろう。[SCP-XXX-JP-2は触覚を揺らす]
██研究員: あなたは優れた科学技術を持ってるんですね。よければ詳しく教えていただきたいのですが。
SCP-XXX-JP-2: [少し沈黙]なぜだ?何故支配できない!?さてはなにか細工をしたな!?この私に恐れをなしたか!
██研究員: 細工?何の話でしょう?そういえば先程から声を介さずに私と会話しているようですが、どのような方法をとっているのですか?
SCP-XXX-JP-2: とぼけるんじゃない!低俗種のくせに生意気な、我々に逆らったらどうなるか思い知らせてやる![SCP-XXX-JP-2は突如実験用ビーカーから飛び上がり██研究員の胸元に突撃し、跳ね返される]
██研究員: あいたっ [SCP-XXX-JP-2を手掴みで捕まえる]とりあえず後日詳しい話を聞かせていただきます。
SCP-XXX-JP-2 こら、乱暴に掴むな!どうやって私を無力化したというんだ!私は認めんぞ!
██研究員 そう言われても……どうしてあなたを蘇らせれたのかもよくわかってないのに……。
SCP-XXX-JP-2: 本当に、なにも知らずに、偶然 ?[ぶつぶつと数言呟いたのち少し長い沈黙]貴様らの無能さを呪ってやる
この対話の後SCP-XXX-JP-2は抵抗することなく収容されました。これ以降食事に対する要求を述べた以外にSCP-XXX-JP-2は一度も対話に応じていません。他のSCP-XXX-JP-2個体も同じような反応を示し、未だにSCP-XXX-JPに関連する詳しい情報は得られていません。脳の壊死がSCP-XXX-JP-2のいう無力化に関連している可能性が高く、詳細が解明されるまで現在の復元手順を用いることが提案、採択されました。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Anomalous Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-8181の低危険度ロッカーにしまわれます。現在、SCP-XXX-JPを用いた実験は禁止されています。
説明: SCP-XXX-JPは幅14cmでレンズの厚さがおよそ3mmの、茶色いフレームを持つ近視用眼鏡です。フレームやレンズの組成は通常のものと同じにかかわらず、なぜSCP-XXX-JPが異常性を持っているのかは未だに判明していません。SCP-XXX-JPは当初はAnomalousアイテムとして保管されていました。SCP-XXX-JPとして指定された経緯は補遺を参照してください。以下はその当時の記述であり、現在は適応されません。
説明:かけるとやらなければいけない課題以外がぼやけて見えるメガネ。
回収日:20██/██/██
回収場所:██県██市にあるメガネ屋。店主は入荷した記憶がないと証言している。
現状:サイト-8190で保管。希望者には貸出可能。
部屋でかけたら大量の書類の山がくっきり見えてさ……現実を見せられたってとこだよ -██博士
SCP-XXX-JPは人間が装着した時にその異常性を発揮します。SCP-XXX-JPをかけた人間(以下被験者とする)は、視力にかかわらず視界が非常にぼやけていると報告します。SCP-XXX-JPを耳にかけずにレンズ越しに向こうを見た場合やレンズ越しの風景を撮影した場合はレンズの形状から推定されるとおりの補正を示します。この症状はSCP-XXX-JPを外せばなくなります。この時、被験者がやらなければならない課題に関してのみ鮮明に認識することができます。この課題の定義は広く、例えばやらなければならない書類であったり、何か隠し事をしている場合はそれを言うべき対象が鮮明に見えます。この特性は被験者の認識に依存せず、被験者が失念している課題に関しても適応されますが、その課題をやらせる強制力はありません。
補遺: 20██/██/██ 該当アイテムを装着したエージェント.██が突如発狂し心神喪失状態に陥ったことを受けて、SCP-XXX-JPとしてSafeクラスに再分類され、現在の収容プロトコルが設定されました。エージェント██が発狂した理由は、当人がインタビューに応じられないため未だ判明していません。判明した時点で再度分類が変化する可能性があることに留意してください。
以下はエージェント██がSCP-XXX-JPをかけた際の監視カメラの記録です。
エージェント██: うわああ![28秒にわたり断続的に悲鳴を上げる]なんで、こんな[痙攣しはじめる]
██研究員: エージェント██?なにかあったんですか?どうしたんです!?
エージェント██: やめてくれ、見たくない。見たくない。思い出させるな!
██研究員: 落ち着いてください。[エージェント██からSCP-XXX-JPを回収する]何が見えたんですか?
エージェント██: 帰りたくない。帰りたく[数秒の沈黙]ごめんなさい。逃げ出してごめんなさい。でも俺にはそうすることしかできなかったんだ。ごめんなさい。頑張ったんだ。ごめんなさい。
██研究員: なにか重要な課題が見えたんですか?
エージェント██: 違う、違うんだ、だって俺はここにいる。いいじゃないか……幻想くらい見させろよ!俺の名前は██だ、SCP-███-JPは収容されてる、みんな生きてる、世界は存在する。それでいいじゃないか、なあ、俺をそっとしといてくれよ。責めるな!こんな風なやり方で……███博士の仕業か?そうなんだろうあのクソ野郎!
██研究員: ███博士?誰のことです?とにかく落ち着いて、医務室へ向かいましょう。
エージェント██: なあ、お前はここにいるんだよな?[██研究員の腕をつかむ]ダメだ、クソッ……ああ、もっともっともっと深くだ!このままじゃあ、覚めちまう。もっと深く夢を見ないと。
██研究員: 私はここにいますよ?幻覚でも見てるんですか?
エージェント██: [遮って]俺はもう現実なんて見たくないんだ。
この記録以降、エージェント██との会話には成功していません。また記録中でエージェント██の口にした███博士が財団に在籍していたという記録は残っていません。現在エージェント██が何を目視したのかに関しての調査が進められています。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-8181の低危険物質ロッカーにしまわれています実験を行いたい際は担当博士に実験計画書を提出し、受理された場合においてのみ可能です。
説明: SCP-XXX-JPは██社が発売している200μl~1000μlの機械式ピペットに酷似した器具です。内部の機構や部品に関してもほとんど██社から発売されているものと差異はありませんが、フィルターに未知の物質が使われていることが判明しています。また、本来であれば社印が刻印されているところは無地である点から、ほかのものと見比べることが可能です。
SCP-XXX-JPは機構上問題ないにも関わらず、液体を吸い上げることはできません。SCP-XXX-JPを物体に押し当てた状態で吸い上げる操作をすると、その物体の持つ概念を一つ吸い上げることができます。ついている目盛を操作することで吸い上げる程度に関して操作することができます。概念を吸い上げた状態でSCP-XXX-JPを違う物質に押し当てて排出する操作をすると、その概念を注入することができます。一度概念を吸い上げると、排出するまで再度吸い上げることはできません。また、一度吸い上げた概念を元の物質に戻すこともできません。どの概念が吸い上げられるかは使用者の物質に対するイメージに依存します。
以下はSCP-XXX-JPを用いて行った実験の記録です。
実験記録001
吸い上げる対象: 90℃の水1l
排出する対象: 半径10cmの鉄球
目盛: 200μl
実施者: ██博士
結果: 水の温度は25℃まで下がった。鉄球の温度が130℃まで上がった。
分析: 「熱い」という概念が移動したのだろう。移動自体異常だが、熱量保存則も無視するとは……。
実験記録002
吸い上げる対象: 90℃の水1l
排出する対象: 半径10cmの鉄球
目盛: 600μl
実施者: ██研究員
結果: 水は90℃のまま固体になった。鉄球は室温のまま液状になった。
分析: 前回とは異なる結果となった。「液体である」という概念が移動したと思われる。熱い氷とは……分子の運動はどうなってるんだ?
実験記録005
吸い上げる対象: 90℃の水1l(A)
排出する対象: 90℃の水1l(B)
目盛: 200μl
実施者: ██博士
結果: 吸い上げると、Aの水が少し減った。排出するとBの水の量が減り、Aの水の量が元に戻った。
分析: これは……「Aの水槽に存在している」という概念が移動したのか?だとしたらAの水はどこに行ったんだ?
実験記録011
吸い上げる対象: 刃渡り20cmの包丁
排出する対象: 軟式野球ボール
目盛: 1000μl
実施者: ██研究員
結果: 包丁から一切の切れ味が失われた。軟式野球ボールは突如爆発し██研究員は全治1ヶ月の重傷を負った。
分析: 包丁の「危険性」が移動したのだろう。この程度で済んでよかったと考えるべきだろうな。もっと危険な武器などで試していたら……想像するに恐ろしい。
実験記録015
吸い上げる対象: D-05439
排出する対象: 実験用マウス
目盛: 200μg
実施者: ██博士
結果: D-05439の身体の表面が鱗で覆われる。検査の結果D-05439の染色体が人間と比較してわずかに変性していることが判明した。マウスは二足歩行を行うようになった。マウスの染色体も実験前と変性していた。
分析: 「人間である」ということが移動したのだろう……多分。「人間である」という概念の定義がもはや私にはよくわからないのだが……。
実験記録017
吸い上げる対象: D-05445(身長178cm、黒髪、37歳、男性)
排出する対象: D-05446(身長165㎝、黒髪、21歳、男性)
目盛: 1000μg
実施者: ██博士
結果: 吸い上げた瞬間にD-05445が、身長153㎝、金髪の20歳前後の女性に変化した。インタビューを行ったところこの女性は████と名乗り、記憶も持っていることが判明した。調査の結果この女性が存在したという存在していない。D-05546に排出すると、D-05545に遺伝子などを含めまったく同じに変化した。記憶や知識に関してもD-05445のものを引き継いでいる。
分析: 「D-05445」という概念が移動したのはわかる。ならこの女性は何者なんだ?D-05445からD-05445という概念を奪った後になぜこのようなものが残るんだ?D-05446はどこへ行ったのだ?人を人たらしめるものとは?もはや私の理解の及ぶところではないのかもしれない。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-8181の低危険度ロッカーに収容されます。現在SCP-XXX-JPを用いた実験は禁止されています。SCP-XXX-JP-1が発見された場合は発生経路を調査した上で終了されます。
説明: SCP-XXX-JPは白色無地の直径27cmの皿です。その組成は未知の金属から成り立っており、非常に高い耐衝撃性と耐熱性を持ちます。SCP-XXX-JPはある特定の人物が視認したとき異常性を発露します。この人物に法則性はありませんが、多くが精神病を患っているという共通点を持ちます。
特定の人物がはSCP-XXX-JPを視認すると、その上になにかしらの食物が乗っているのを発見し、それを食そうと試みます。それ以外の人間からは何も観測することができません。食そうとする試みを物理的に制止することは可能ですが強く抵抗することに気をつけてください。SCP-XXX-JP上の食物を摂取した人間をSCP-XXX-JP-1とします。SCP-XXX-JP上の食物に関してSCP-XXX-JP-1に説明させたところ、現在地球上に存在しない食材が使われていることが判明しました。SCP-XXX-JP-1は必ずこの料理を肯定的に評します。SCP-XXX-JP-1は、通常の食物を摂取することを拒むようになり、中空から食物をもぎ取り食すようになります。この食物もSCP-XXX-JP-1以外からは認識することができず、いかなる方法によっても観測できないため傍からはSCP-XXX-JP-1が何かを食べるマイムを行っているようにしか見えません。胃の中にも何も存在していないように観測されますが、SCP-XXX-JP-1が餓死することはなく、むしろ以前よりも良い健康状態を維持する傾向にあります。このように、SCP-XXX-JP-1以外からは認識できない物質のことを以下"空白"とします。
"空白"を食し始めてから数日たったSCP-XXX-JP-1は、食物以外の種類の"空白"を認識しはじめ、利用するようになります。例を挙げると、"空白"の衣服を着たり(SCP-XXX-JP-1以外からは何も身につけていないように見えます)"空白"の通信機器で通話したり(SCP-XXX-JP-1以外からは独り言のように見えますが、通話はできています)などです。また"空白"を利用する頻度が上がるにつれて、逆に通常の物質を認識出来なくなっていきます。SCP-XXX-JP-1の認識出来なくなったものは、SCP-XXX-JP-1をすり抜けます。
"空白"を摂取し続けるうちにSCP-XXX-JP-1の身体は消失していきます。この消失は全体的に連続して進行するものではなく、細胞単位で順次発生します。そのため消失の途中にあるSCP-XXX-JP-1は身体の一部が抜け落ちているような状態として観測されます。およそ一ヶ月かけてSCP-XXX-JP-1は完全に消失します。
199█/██/██ ██県にある民家から、当時██歳であった作家が失踪しました。当初は通常の失踪事件であるとして財団は注目しませんでしたが、家宅捜索を行った警官のうち数名が奇行を起こすようになったとの報告からSCP-XXX-JPが発見されました。この作家も長期間にわたり鬱病と軽度の統合失調症を患っていました。以下はSCP-XXX-JPの隣にあった失踪した作家が残したと思われる日記の抜粋です。
これはもうずっとのことなのだが、最近特に何をしても幸せというものを感じない。とりわけ不幸というわけではないのだが、何をしても心に届きはしないというか、世界中のすべてがぼやけて色あせて見えるようなのだ。おそらく不治の病なのだろう。医者にかよったこともあったが一向に納得のいく診断をされたこともない。他の人間はこんな世界でなぜ笑っていられるのだろうか。そんなことを考えていると、また今日も一日が終わるのである。
備考:この日記はSCP-XXX-JP-1に暴露する以前に書かれたものと思われます。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe/Euclid/Keter (適切なクラスを選んでください)
特別収容プロトコル: [SCPオブジェクトの管理方法に関する記述]
説明: 涙と同じ組成+謎の遺伝子
混ざりあった涙に遺伝子を溶かし込んで増える。
補遺: [SCPオブジェクトに関する補足情報]
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid Neutralized
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JP-1は2000/04/██に姿を消して以来、一度も姿を現していません。それに伴いSCP-XXX-JPから特異性が消失したと認められています。かつての収容プロトコルは下記を参照してください。
SCP-XXX-JPの周囲は高さ2mの柵で囲まれ関係者以外の立ち入りは禁止されています。SCP-XXX-JPの周囲には最低二人の警備員を配置し、何者かが侵入しようとした場合には即座に確保し、記憶処理を施してください。SCP-XXX-JP内に誰も立ち入ってないにかかわらずSCP-XXX-JP-1が出現しているのが確認された場合、即座に担当者へ通報してください。財団への忠誠テストをクリアした担当者が週に一度SCP-XXX-JP内に侵入し、SCP-XXX-JP-1と対話を行ってください。
SCP-XXX-JP-2の信者が発見された場合は即座に確保します。自害を防ぐために指定の拘束具を着用させた状態でサイト-8141に収容し、必要に応じて鎮静剤の投与を行ってください。栄養の摂取は点滴を用いて行ってください。SCP-XXX-JP-1との対話を行うようになった現在、SCP-XXX-JP-2信者に対する尋問は原則として許可されていません。
説明: SCP-XXX-JPは██県██市に存在する███寺と呼ばれる寺院です。196█に廃寺となって以来、近隣住人持ち回りで管理され親しまれてきました。SCP-XXX-JPの本堂に人間が立ち入るとSCP-XXX-JP-1が現れる場合があります。SCP-XXX-JP-1はヒト型の実体です。体型や顔立ちなどの容姿は現れるたびに変化しますが、どの場合でも赤いスーツを着用しています。検査の結果肉体は未知の物質で構成されており、生物的な活動を行っていないことが判明しています。SCP-XXX-JPは流暢に日本語をはじめとした様々な言語を操り人間と積極的に対話を行います。
SCP-XXX-JP-1は対話相手を執拗に宗教に勧誘します。この宗教をSCP-XXX-JP-2と指定します。SCP-XXX-JP-2の教理はSCP-XXX-JP-1が任意に変更することができるため一定しません。その一部を以下に示します。
- 毎朝8時に北の方角へ祈りを唱えること。
- 毎週金曜日の夜には[データ削除済]の煮物を食すこと。
- 赤い看板の個人商店を見かけたら万引きを行うこと。
- 向日葵の花を見たら茎に赤いリボンを結ぶこと。
- 月に一度16歳未満の子供を[データ削除済]すること。
- [データ削除済]の絵を部屋に飾ること。
- 青いチェックのシャツを着ている男には[データ削除済]すること。
その他、様々な犯罪を教唆する内容が含まれます。
勧誘された人間は、その意味不明かつ反社会的な内容に関わらずSCP-XXX-JP-2を非常に合理的で魅力的な宗教だと感じるようになります。この傾向はなにか不安を抱えている場合に強く見られます。そして多くの場合SCP-XXX-JP-2の信者(以下"信者"と表記)となります。しかしこの勧誘には強制力はないためほかの宗教を信仰していたり、事前にSCP-XXX-JP-1の特異性を知っているような場合には断ることも可能です。"信者"はSCP-XXX-JP-1を崇めるようになり、教理を熱心に守ります。SCP-XXX-JP-1が教理を変更した場合は未知の手段によりそれを知ることができます。教理を守ることができないような状況におかれた場合"信者"は精神的に憔悴したり、極端に集中力を欠くなどの禁断症状を示します。"信者"に記憶処理を施したところ[データ削除済]3時間後に死亡しました。
"信者"達はその思考や知識、記憶を任意に共有することができます。また、互いの容姿を交換することが可能です。交換は離れた相手とも行うことができ、1分ほどで変身は完了します。衣服などはそのままなので体格のかけ離れた"信者"間で容姿を交換した場合衣服が破損する場合もあります。"信者"の特徴として、自分が"信者"であることを秘匿するということが挙げられます。その理由は自分達の行動が法に触れ迫害されるから、という理性的なものです。秘匿のため"信者"達は共同体を作り、口裏を合わせたり証拠を隠滅することがあります。また、前述の返信能力をアリバイ工作のために用います。"信者"をとらえた場合でも情報の漏洩を防ぐためにほとんどの場合その場で舌を噛み切るなどの行動をもって自害します。自害した"信者"の肉体は霧状に変化し消失します。そのため"信者"の発見は困難であることに注意してください。
██市に修学旅行で訪れた学生が行方不明になったり死体で発見される事案が多数起こったことから、SCP-XXX-JPを含む██市は財団の目にとまりました。当初はすべての事件においてそれぞれ無関係な犯人が逮捕されたことから異常性が確認されませんでしたが、のちに住民ら6人が口裏を合わせている場面が発見されました。その後SCP-XXX-JP-1の存在や近隣住民の何人かが"信者"であることが判明しました。20██/██/██現在██名の"信者"が収容されていますが、ほかにも不特定多数の"信者"が潜伏していると考えられています。SCP-XXX-JP-1の消失に伴い"信者"は全員開放され、その性質も消滅しました。
補遺1: 収容開始からおよそ一年後、SCP-XXX-JP-1が本堂の外を出歩いているのが初めて発見されました。警備員の通報により担当者が出向いたところ、SCP-XXX-JP-1は週に一度財団職員と対話することを希望しました。要望は却下されましたが、SCP-XXX-JP-1がSCP-███の収容違反を促す内容を教理に盛り込むことを示唆したため、最終的に許可されました。対話を担当する██博士は財団への忠誠テストに高いスコアで合格しており、財団に対して強い忠誠心を持っていると判定されています。SCP-XXX-JP-1と██博士の対話のうち、特に重要であると判断された部分のログを以下に記載します。これ以外のログが必要な場合担当主任に申し入れれば、閲覧することができます。
SCP-XXX-JP-1: やあ、はじめまして、博士さん。
██博士: はじめまして、SCP-XXX-JP-1。
SCP-XXX-JP-1: いやいやいや、人と話すのは久しぶりで心が舞い上がってしまいそうだよ。なあ、早速だが貴方はなにか宗教を信じていますか?
██博士: 特になにも。
SCP-XXX-JP-1 それはよくないな! 私は宣教師をしておりましてな、貴方にいい宗教を紹介させていただきますよ。[以下25分に渡りSCP-XXX-JP-2について説明]さあどうです? 入信しませんか?
██博士: 入信するつもりはありません。
SCP-XXX-JP-1:つれないな。良かれと思って言ってるのに。
██博士:SCP-XXX-JP-1、なぜ貴方は人々にSCP-XXX-JP-2を広めているのですか?
SCP-XXX-JP-1:それはもちろん人間のことを慈しんでいるからに決まってるじゃないか。
██博士:慈しんでいるとはどういうことでしょうか。
SCP-XXX-JP-1:本当さ。今の御時世人々は、特にこの国の人々は神様を信仰しなくなってきた。
██博士:確かに、そうかもしれませんね。
SCP-XXX-JP-1:それはつまり拠り所がないってことだ。なにか危機に陥ったとき自分にはこれがあるから大丈夫って、そう思える物がない。それはあんまりにかわいそうだから俺がそれを与えているのさ。
██博士:あなたの行動理由についてはわかりました。SCP-XXX-JP-2の教理はどうしてあのようにしたのですか?
SCP-XXX-JP-1: 平和な宗教なんて、よっかかったら倒れちまうだろ。それにみんなで頑張るって、素敵じゃないか。
SCP-XXX-JP-1:なあ、前から思ってたんだがあんたは宗教にハマってないんだよな?
██博士:そうですね。宗教には入信していません。
SCP-XXX-JP-1:だったらどうして転ばない?あんたにはなにも信じるものがないっていうのに。
██博士:信じるものがないというわけではありません。例えば私は、財団や友人、仲間を信じています。
SCP-XXX-JP-1:不安になることはないのか?
██博士:[5秒間沈黙]不安を感じることはあります。けれど、だからといって自分を可哀想とは思いませんし、不安を抱いているからこそわかることもあります。
SCP-XXX-JP-1:[8秒間沈黙]わからない。今日のところは帰るよ。
SCP-XXX-JP-1:俺はずっと、人間のことを弱くてかわいそうだと思っていた。でもあんたは違う、とても強い。
██博士:別に、私が特に他の人間と比べて強いというわけではありません。特異性について理解していたから影響を受けなかっただけです。
SCP-XXX-JP-1:[15秒間沈黙]俺は間違っていたのか?
██博士:それは私の判断するところではありません。財団の職務としてあなたを収容する必要があるだけです。
SCP-XXX-JP-1:[7秒間沈黙]そうか。あんたはやっぱり強いよ。
補遺2:2000/04/██の対話の翌週、SCP-XXX-JPの本堂内に一枚のメモが落ちているのが確認されました。メモの内容は以下の通りです。
俺はもはやここにはいらない。彼らは元に戻します。
それ以来、SCP-XXX-JP-1は姿を現していません。それに伴い収容中の"信者"たちの記憶から、SCP-XXX-JP-1およびSCP-XXX-JP-2に関するものが欠落しており、共有能力も失われていることが確認されました。また、全国で部分的な記憶喪失患者が多数報告されました。患者達はSCP-XXX-JPの関係を調査したうえで、財団所属カウンセラーによりカウンセリングが施されます。
補遺3:調査終了に伴い、SCP-XXX-JPはNeutralizedに分類されました。
追記1: 2012/██/██に男性6人が児童に対する集団暴行事件を起こし、逮捕されました。その時に彼らの唱えていた祈りはSCP-XXX-JP-2で用いられているものと同じでした。調査したところ、リーダー格の男の父親は██市の出身であることが判明しました。このことから、"信者"はその特性を失いましたが、間接的にその教理を教わった人間が存在していることが判明しました。
追記2: 2013/██/██ 全国で発生した一連の強盗殺人事件を主導したとして、あるカルト教団が検挙されました。この教団の教理はSCP-XXX-JP-2と多くの部分で似通っています。調査の結果、教祖の友人が"信者"であったことが判明しています。
追記3: 2013/██/██ SCP-XXX-JP-1の格好を模し、SCP-XXX-JP-1の遣いを名乗る若者が全国各地でカルト教団の布教活動を行っているのが確認されました。SCP-XXX-JP-1を元にしたと思われる存在は、このカルト教団において神格化されています。上記の事件により代表者の多くは逮捕されましたが、いまだに信者は多く潜伏しているものと思われます。
SCP-XXX-JPはNeutralizedに指定された。SCP-XXX-JP-1はもはや現れない。SCP-XXX-JP-2も、もはや存在しない。誰も異常を示さない。どんなカルト宗教が広まったところで、過激でおかしな"ただの"宗教でしかなく、我々の出る幕はない。私は今でも思うことがある。SCP-XXX-JP-1はこれを全て予見して去っていったのではないかと。どこか遠くで笑うSCP-XXX-JP-1の声が聞こえる気がするのだ。-██博士
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPならびにSCP-XXX-JP-2はサイト8141に個別に収容されます。職員が収容室に入ることは禁止されています。インタビューを行う際はビデオ通話を利用してください。SCP-XXX-JPと直接対話する必要がある場合は、財団職員の関係者から選ばれた16歳未満の臨時職員に行わせてください。16歳以上の人間が収容室に侵入した場合は即座に収容室に催眠ガスを充満させてください。
16歳未満の児童に対する虐待、暴行事件が発生した場合、SCP-XXX-JP-1が関与していないか調査してください。調査の結果SCP-XXX-JP-1が発見された場合は即座に確保し、記憶処理を行ってください。その後最低でも一か月間担当者によるカウンセリングを行ってください。
SCP-XXX-JP-2が発見された場合は、事前のテストにより何らかの宗教の敬虔な信者であると判定されたエージェントが収容に向かってください。サイト8141への輸送には警護車を用い、人の目に触れることがないように細心の注意を払ってください。
説明: SCP-XXX-JPは現在およそ█歳の日本人の男児のように見える生物です。肉体的、知能的には同年代の日本人男児の平均と比べてほとんど違いはありません。DNA配列もほとんど人間のものと同じですが、およそ1%程変異が見られます。SCP-XXX-JPが収容されてから██年賀経過していますが、肉体的に成長する傾向は見られていません。SCP-XXX-JPは食事や睡眠、排泄を必要としません。
SCP-XXX-JPの特異性は特定の宗教に傾倒していない16歳以上の人間がSCP-XXX-JPを直接視認した時に現れます。SCP-XXX-JPを視認した人間(以下SCP-XXX-JP-1)は、SCP-XXX-JPを傷つけたいという強い欲求を抱きます。この欲求は非常に強く、説得などは通用せず物理的に妨害されない限りはその欲求を行動へと移します。また、妨害された場合でも全力で抵抗します。傷つける方法は主に殴る、蹴るなどの素手によるものが多いですが、近くに武器がある場合にはそれを用いることもあります。SCP-XXX-JP-1がその場に複数存在する場合にはその全員で暴力をふるいます。SCP-XXX-JPに暴力を振るっている間、SCP-XXX-JP-1は強い幸福感を抱きます。SCP-XXX-JPがこの暴力に対して抵抗することはありません。
SCP-XXX-JPが死亡すると暴力は終了します。死亡したSCP-XXX-JPは死後24時間をかけて生き返ります。暴力によって受けた傷はふさがり、骨折などの損傷も元通りになります。体の一部が欠損している場合には異常な速度で細胞分裂が起こり、その部分が補われます。生き返ったSCP-XXX-JPは死ぬ前の記憶もそのまま保持しています。そのため、SCP-XXX-JPは他人に対して強い恐怖感を抱いているようです。
SCP-XXX-JPの死後、SCP-XXX-JP-1は異常な性質を示すようになります。まず、16歳未満の子供に対して暴力的になります。この暴力性は理性や倫理感によって抑えることができ、しばしば巧妙な誘拐事件などを引き起こします。他人にその行動を咎められても罪悪感は抱きませんが、自分の行動が犯罪であるという自覚はあります。長期間16歳未満の子供と接することのできないSCP-XXX-JP-1は精神的に憔悴したり、極端に集中力を欠くなどの禁断症状を示します。SCP-XXX-JP-1は自身の特異性を秘匿する傾向にありますが、親しい人物に対しては打ち明けることもあります。打ち明けられた人物はSCP-XXX-JP-1に対して同情を抱きます。
SCP-XXX-JP-1となってから長期間たつと、SCP-XXX-JP-1は恋人や配偶者との間に子供をもうけようとします。この子供(以下SCP-XXX-JP-2と指定)も異常性を発露します。SCP-XXX-JP-2は母親の胎内で通常の胎児のおよそ10倍以上の速度で成長し、受精からおよそ1ヶ月ほどで母親の肉体を食い破って誕生します。このため、SCP-XXX-JP-2の母体は高確率で死亡します。その後の24時間でSCP-XXX-JP-1はおよそ█歳まで成長します。成長に必要なエネルギーや質量をどこから得ているのかは不明です。成長後、SCP-XXX-JP-2はSCP-XXX-JPと全く同じ性質を示すようになります。
SCP-XXX-JP-2の親となったSCP-XXX-JP-1は、SCP-XXX-JP-2以外の16歳未満の児童に対する暴力性を失います。SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JP-2を自宅に閉じ込め、暴力をふるうという点以外においてはSCP-XXX-JP-2を丁重に扱います。SCP-XXX-JP-1の典型的な行動としては、SCP-XXX-JP-2の寝床を豪奢に飾り付ける、SCP-XXX-JP-2の素晴らしさを讃えた文書を作成するなどがあげられます。自らの知人にSCP-XXX-JP-2を引き合わせようとする傾向があります。それによってSCP-XXX-JP-1は勢力を広げているようです。
補遺1: 以下は中山博士があるSCP-XXX-JP-1(SCP-XXX-JP-1-aとします)の知人男性である██氏に行ったインタビューのログです。
対象: ██氏
インタビュアー: 中山博士
付記: ██氏にはSCP-XXX-JP-1-aは精神病を発症したと説明してあります。また、██氏は敬虔なクリスチャンです。
<録音開始>
中山博士: 本日はご協力いただきましてありがとうございます。
██氏: いえ……これで█君(SCP-XXX-JP-1-aの名前)の病気の治療の助けとなるのであればいくらでも。
中山博士: それではまずはじめに、家に招かれた時のことに関してお聞かせ願えますか?
██氏: はい。█君が、見せたいものがあるって言って、僕と他に何人かの友人を呼んでくれたんです。█君が結婚してからはお互いの家を行き来することもほとんどなくなっていたので、懐かしくて、うれしかったのを覚えています。
中山博士: それで、彼の家に行くと子供がいた。
██氏: そうです。小学生くらいの華奢な子で、おかしいなって思ったんです。彼に子供がいるなんて知らなかったし、そもそも年齢があわない。親戚の子かな、と思ってたら、█君が、急に、その[8秒沈黙]すいません。
中山博士: ゆっくりで大丈夫ですよ。落ち着いて。
██氏: █君が[6秒沈黙]その、その子を殴ったんです。僕はびっくりして止めたんですけど、█君はなにが悪いのかわかってないみたいで僕に言ったんです。「素敵なことだろ」って……そしたら僕以外のみんなも次々とその子を殴って。僕、怖くって動けなくって、そのうちに、ああ、すいません[6秒沈黙]その子が、動かなくなって。それで、それで。
中山博士: それで?
██氏: [12秒沈黙]ごめんなさい、嘘をつきました。怖くなんてなかったんです、ちっとも。みんな、笑ってて、でも穏やかな笑みだったんです。なんでだろう、わかんないけれど。そうだ、僕、こう思ったんです。
中山博士: はい。
██氏: [8秒沈黙]幸せそうだなって。
中山博士: ……ありがとうございます。インタビューを終了します。
<録音終了>
終了報告書: この後██氏には記憶処理が施されました。
補遺2: 以下は中山博士がSCP-XXX-JPに行ったインタビューのログです。
対象: SCP-XXX-JP
インタビュアー: 中山博士
付記: 通話にはビデオ通話が用いられています
<録音開始>
中山博士: こんにちは、SCP-XXX-JP
SCP-XXX-JP: あ……こんにちは、センセ
中山博士: いくつか質問してもいいかな。
SCP-XXX-JP: はい……はい、大丈夫です。
中山博士: まず、君の特異性はいつ頃から現れたんだい?
SCP-XXX-JP: 特異性?
中山博士: その、つまり……いつから君は大人の人に殴られるようになったのかということだ。
SCP-XXX-JP: それは[4秒沈黙]ずっと、だ。僕が僕としてあったそのときからずっと……それが、僕だから。みんなが幸せだったら、僕は何をされたって耐えられるんだ。
中山博士: ……君は、痛みを感じないのか?
SCP-XXX-JP: 痛いに決まってる! ……痛いし怖い。でも、それでも、みんな笑うから、じゃあ仕方がないじゃないか。僕はそういうふうに作られたから。
中山博士: 作られた?誰にだい?
SCP-XXX-JP: [32秒間の沈黙]
中山博士: SCP-XXX-JP?どうしたんだ?
SCP-XXX-JP: 我等幸福に遣わされた物なり。幸福が我等を人の子に落とせり。魔を裂きて業を背負いし子等をくびり殺せ。幸福の名のもとに滅べ。幸福の名のもとに滅べ。我等幸福に遣わされた物なり。(以下繰り返し)
中山博士: おい、SCP-XXX-JP!何を言ってるんだ?おい! ……クソ、インタビューを中止する!催眠ガスを!
SCP-XXX-JP: なあ、笑ってよ。
<録音終了>
終了報告書: SCP-XXX-JPの言葉の詳細に関してはまだ判明していません。「幸福」がある特定の個人、あるいは団体を指す可能性もあるとして調査を急いでいます。
宗教……神を傷つけて幸せになろう!!
宗教イベント的なのが何人か集まると起きる。そのイベント中は、一人の子供(神)を殴る蹴るなどして殺す。
死ぬと、【教祖】として指定された人が孕む。男だろうと女だろうと。
その赤子が次の神。親の腹を食いちぎって出てくる。
今は一人の研究員が孕んでるとか?もっと邪悪にしたい。後味悪く。
バーコード虫
生きてるホッチキス?植物?
暗闇で遊ぶもの
天使教育プログラム/天使なんかじゃない
コードの森・ゼラとか、照明関係のSCP作ってみたいな。
写真とって。
→明かり作りの間にだけ現れる存在?どんなのが嫌かなあ。
場当たりの間に危険なことばっかさせる、そんでそれをみんな以上に思わないとか?
場当たりの間だけ演出のふりをする。
幕裏は怖い。これをなんとか生かしたい。