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アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Neutralized

特別収容プロトコル: 現在 SCP-XXX-JP の保有者の存在は確認されていません。新たな保有者が発見された場合は、ただちに確保して下さい。

説明: 残されている記録が限られるため詳細は不明ですが、SCP-XXX-JP は、何らかの手段によって通常の3次元空間とは異なる” アッチ” と呼称される空間を認識し、自身や他者を自在に出入りさせる能力であったと推定されています。

SCP-XXX-JPを独力で獲得した唯一の例は、東京都新宿区の██駅周辺で路上生活をしていた、SCP-XXX-JP-1(男性・当時59歳)です。同区の██公園内において、「手品」と称してSCP-XXX-JPを用いた路上パフォーマンスを行っているところを、財団エージェントによって発見されました。その特異性から、通常の手段による収容は困難と考えられたため、交渉によって財団の管理下に入るよう促すという特例措置が取られ、住居、飲食物、およびアルコール類の提供を条件に、同意を得ることに成功しました。

なお、SCP-XXX-JP-1に対して行われた医学的検査の結果からは、その特異性と関連付けられる情報は、何ら得られませんでした。

インタビュー記録

対象: SCP-XXX-JP-1(以下、被験者)
インタビュアー: █博士

<録音開始>

被験者: いやぁ、ここの酒、すげぇ美味ェのな!もー最高! ネーちゃんもキレーだしよ。まぁ、ちと愛想が無いのがタマにキズだけどなッ! ブッハッハッハ!

█博士: あの、それでですね、あなたがその特異能力を得た時の状況についてなんですが…

被験者: ん? おぉ! すまねぇ、すまねぇ。えー、あれは確か先月のぉ、えー、いつだったかな? まぁとにかく、やったら暑い夜だった! さっさと酒飲んで寝ちまおうと思ったんだけどよぅ、あんま暑過ぎて、全然寝付けなかったんだなコレが。しっかしよう、最近の酒ってのは、やったら高ェんだよな、オレ政治なんてキョーミ無ェけど、酒だきゃー安くしといてくれと…

█博士: すみません、お話が本題からズレているようですが…

被験者: イヤそれでな、あんまり暑いんで、風通しのイイとこで涼もうと思って、通りまで出たところでよぅ、酔が回っちまって、フラ~と車道に出ちまったわけだ。そこで、どっかーんとヤラれちまったわけよ。

█博士: 車両にはねられたんですか?

被験者: そういうこった。まぁ、オレはこの通りの健康優良児だから、テェした怪我も無かったけどな! で、すぐにそのクルマから、真面目そうなにーちゃんが青い顔して降りて来たんだが、そのにーちゃん、オレの声は聞こえても、姿は見えねぇらしくてよう。そんでますます青い顔になっちまって、凄ぇスピードでクルマ飛ばしてっちまったよ。いんやぁ、あのにーちゃんにゃ、悪いことしちまったなぁ。ブッハッハッハ! んで、そん時に気がついたわけよ。オレが” アッチ” に入っちまってたから、それで見えなかったんだってことにな。

█博士: 完全に偶発的な現象なのか…? えー、それで具体的には、あなたはどのようにして、その” アッチ” に出入りしているのですか?

被験者: ”どのように”っていうかなぁ、簡単なことなんだけどよぅ。ん~、例えばだなぁ。ホレ、ここに酒瓶が有るだろ?

█博士: は、はい。

被験者: これを右や左に動かす。コレは誰でも出来るわなぁ。それから、上とか下に動かす。前とか後に動かす。ここまではいいだろ?

<被験者は、手に持った瓶を上下左右に動かすという、何ら特異性の見られない動作を行った>

被験者: ここまで出来たら後は簡単さぁ。今のと同じように、” アッチ” とか” コッチ” に動かせばいいんだ。

<被験者の右腕、肘関節から先が、およそ0.5秒間隔で、連続的に消失と再出現を繰り返した>

被験者: なぁ? 簡単だろう?

█博士: … 。 あの、出来ればもう少し具体的なご説明をいただけませんか?

被験者: アレ? 難しかった? あんた「ハカセ」なんて呼ばれてるクセに、案外ダラシねぇんだなぁ。

█博士: …… 。

被験者: う~ん、口で説明するより、実際やってみた方が早いんじゃねぇか? ホレ、ちょっと手ぇかしてみな?

<被験者は、左手で█博士の右腕を握った。直後、両者の腕が同時に肩まで消失した>

█博士: うわッ!? えッ!? な、なッ……!?!? 

被験者: ホレ、これでもう解かったろ?

█博士: …… 、 あッ! ああ! なるほどっ! ただ” アッチ” に向かって動かせばいいだけ! そういうことか!

<█博士の両腕が連続的に消失と再出現を繰り返し、次に全身が消失、約3秒後に再出現した>

█博士: あははっ! 確かに簡単だ! 何で今まで、誰も気が付かなかったんだ!? こんな簡単なことなのに! まぁ確かに、この感覚を言葉で説明するのは無理だろうが… 、

被験者: へへ、やっぱりハカセの旦那もよぅ、頭ばっかじゃなく、体も使わなきゃダメってことだよな! ブッハッハッハ!

<録音終了>

補遺: 後に行われた大規模、かつ綿密な調査にもかかわらず、SCP-XXX-JP-1、および二次的に保有者となった█博士(SCP-XXX-JP-2)の2例を除き、当該能力の保有者は報告されていません。このとから、SCP-XXX-JP-1の能力獲得は、極めて稀な例外的事例であったのではないかと推測されています。

参考資料: