わなざわさんどぼっくす

転入生(korobi-hairi-ikiru)

石畳の敷かれた校門前広場を柵沿いに抜ける、ブレザー服の青年。年の頃は20半ば、かなりの痩せ型で、黒い髪を短く切っており、ハンサムではないものの何処か愛嬌の感じられる顔立ちである……しかしその顔は今は、緊張からがちがちに強ばっていた。厚めの眼鏡を忙しなく中指で押し上げ、プレーリードッグじみて周囲を油断なく警戒しながら、彼はこの学内の正門に、遂に辿り着こうとしていた。
彼はこの学校の生徒ではなく、彼の職業は当然ながら学生ではない。彼は対オカルト秘密組織『財団』のエージェントであり、名を育良啓一郎という。任務中にこの学内の異常人型オブジェクト――そう、この"学校"は異常だ。育良の所属する財団はこの施設を、世界保護の観点から人界から隔離している――と接触し、以降この学校の転入生としての偽記憶を植え付けられ、数週の間偽りの学生生活を送っていた。
何不自由ない生活だった……育良は回想する……彼はいささか珍しい女生徒ばかりのサバイバルゲーム部に、ただ一人の男子生徒の新入部員として所属していた(恐らく、彼自身がもともとサバイバルゲーム愛好者であったことと、このような"設定"がこのオブジェクトにより展開されたこととは無関係ではない)。


ソシオパスの見た夢

 真に欲深な者の、なんと欲深なものか。万人にとって如何にも総てを得ているように視えても、当人にとっては全く得足りえていないということがある。そのようなお話。


 那澤至という男がいる。
 彼の所属するのは、総ての超常を確かめSecureんと、総ての奇怪を収めContainんと、総ての人類を保たんProtectとする対オカルト的超科学組織。その名は『財団』とのみ知られており、その全容は当の組織に属する何者にさえも判ぜねど、出鱈目なまでの勢力と、絶対的なまでの智力とを兼ね備え、地球全土、はたまた時には大気圏外、果ては幾数の平行宇宙においてすら両力の在らん限りを振るい、確、収、保SCPの三原則を両力の届く限りに行き届かせていることは、その支配下にある知性持つ者総て――即ち、まず地球人類ならば皆――が知るところであった。
 『財団』は嘗ては、その活動の総てを秘密裏に行っていた。それがいつからか……いつからかがわからないのはいつからか
 さて、那澤至のそこでの仕事は、



ピンクフラミンゴ・パンク・ワールド

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アイテム番号: SCP-xxx-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-xxx-JP

説明: SCP-xxx-JP被影響者と見られる人物は財団フロント企業
SCP-xxx-JPは発見され次第回収され、異常性の見られないものはサイト-81██の専用ロッカーに保管されます。


いいんじゃないかなぁと思うけど生かし方がわからないアイデアなど

持ってったら教えてね: WanazawawwwWanazawawww


「SCP財団日本支部へようこそ!」診断結果一覧

診断: http://shindanmaker.com/471129


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(……あれ、)
 某日12:45。コード・那澤なごむは8181-2I講義室の戸を開け中を見渡し、広い室内にまだ誰もいないことを見て取った。一昨晩携帯端末に送られて来た要請メッセージによると、集合時間は13:00。15分前着で早すぎるということも無いだろう。近々行われる任務の前説明とのことだが、本来ベテランの監督者無しの任務参加が認められていないなごむとしては同伴者無しの任務はほぼあり得ないため、最初から自分一人で説明を受けるということはこれまでなかった。
 ……と、なると? すぐに浮かぶ可能性は、自分一人にしか伝えられない事項がある何らかのイレギュラーな任務であるか、或いは単に都合が付くのが自分だけだったか、といったところか。説明を聞くまではその判別は付かないが、前者であればそれは即ち今回の任務におけるかなりの重責を意味する……。
 なごむはそこまで考えて、手汗をタイトジーンズに擦り付け、自問自答した。うーん、しかし入ってから7ヶ月に満たない新人ペーペーに、財団がそんな役割を与えるものだろうか。俺にしか出来ない仕事なんてのはそんなに多くないわけだし。ということは、何か同伴者と説明者両方の都合によって俺は一人で説明を受けることになり、一人で集合場所に着いてしまっただけだと思う方が自然だろう――そして、少なくとも説明を受けるまでは、それについて考えるのは要らん心配というものだろう。15分くらい身体の力を抜いておこう……そのように結論付け、キャスケットを脱いでショルダーバッグに仕舞い、椅子に腰かけた。

 そこにもう一人の人物が入ってきたのは、凡そ17分後……13:00を少し回った頃であった。
「やぁ、君が那澤なごむ君だね? 至君の弟さんの……遅れてすまないね。研究が少し長引いてしまった」
 なごむは椅子をすっと立ち、嫌味の無いように微笑んで会釈した。――白髪交じりの、人のいい風の、70前の老男性。身長は恐らく165cmで中肉。両手に厚手の手袋。脳裏で財団職員のプロフィールを洗い、以上の条件に合う人物を一人に絞り込んだ上で、


自己収容の豹

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アイテム番号: SCP-xxx-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 十分訓練されていて精神強度が高くて自分の観察眼に自信が有ると判断されたエージェントと収容スペシャリストが、毎日16個の障壁から為る収容施設を確認する。餌も確認する。修理は不可能。SCP-xxx-JPはしばしば自身でこの障壁を全て見て回るので本当に見て回っているかどうかカメラで確認する。

現在の機密に関係しないような範囲で、仮想の異常性を持ったオブジェクトの収容手段に関する問題を作業課題として与え、解かせ、その評価を与える必要がある。実在のオブジェクトの収容の特別顧問としていいかどうかは検討中である。

説明: 本体→黒豹。喋る。あと念力を使える。あと身体に悪い影響を与える薬の効果がない。あと一日合計3時間のフラッシュ睡眠以外に睡眠を必要としない。黒谷(くろや)なんとか言う名前の収容スペシャリストが何ヶ月か行方不明になったと思ったら黒豹になって帰ってきた。まぁ実際本人かどうかはわかんないけど心理検査的には少なくともその意識は当人であると評価できそうだ。すげえ優秀な収容スペシャリストだった。


忍伝社のオリエンテーション

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忍者! それが江戸時代、戦国時代、平安時代の日本のスーパーマンを意味しないことを、日本史に僅かでも詳しいものならば知っている。しかし人類は皆、日本人でさえも、忍者については長く歪んだ認識ミーム続け伝えてきた。


沖修二。彼は"芸術"や"美感"について心理学的・哲学的見地から研究する学徒であり、ある大学に在籍し教鞭を取る教授であり、そして巨大秘密組織「財団」に所属する、超常オブジェクトの研究者である。彼は表向き著名な研究者であると同時に、「財団」においても複数の功績を持ち、いくつかのオブジェクトの研究プロジェクトの主任の地位にある。
なお、その年齢は56、頭髪は薄く、顔だち・体型はトド、カバ、セイウチ、まぁあんまりなのでと可愛らしいものを選んでやったとしてマナティ、などによく似ている。温厚で誠実な人柄も十分な知性も功を奏さず沖に現在まで家庭はなく、自他ともに恐らく終生伴侶は持たないものと思っている。

さて、沖はある時、自身が研究主任を務めるSCP-720-JPの監視施設、サイト-8127にて横になっていた自己を見出した。デジタル時計を見ると日時は"2015/01/01 07:29"と表示されている。


WanazawawwwWanazawawww にくのわるつ(仮) SCP-610をイメージした地獄的アンビエント。(にくにくしいおと: 音々亭http://soundarbour.sakura.ne.jp/)(うめき声: びたちー素材館、要クレジット記載 http://www.vita-chi.net/sozai1.htm)(ベース音: ああ゜氏「AAmaru Tone Library」より)

健全なおつきあい

彼の23歳という年齢にはややそぐわない女性的な幼な顔は、ラブホテルの豆球のオレンジの下で携帯端末に照らされ、白っぽく光りながら、人知れずそっと綻んだ。シャワールームから聞こえてくるしゃあしゃあと断続的に雨音に程近い音が、彼の喜びをより一層深いものにしていた。
 笑みは、目当ての男――それも少なくとも1、2ヶ月前までは全くのへテロセクシュアルだった筈の――と想定以上のスピードでここまで漕ぎ着けたことから来るものだった。まずSNSで二人は知り合い、音楽やマンガの趣味の合致から意気投合、そしてその関係は実際目まぐるしいまでの早さで深まり、幾度かの対面(セックスを伴わないものだったが、それが実質的に交際を前提としたデートであることを二人とも理解していた)の後に、今晩は訪れた。それは全ては計画通りの、彼の人並み外れた手腕によって訪れるべくして訪れたものでもあった。
 しかし……確かに喜びを感じながらも、無論これで全ての成功が確約されたわけでないことも、彼は理解していた。端末を枕元の台の上に伏せて置き、ベッドの上、肩から被ったシーツの前を両手で何と無しに固く閉じながら、切れ長で睫毛の長い眼を瞑って脳内のタスクメモを再度確認する。これからもやるべきことが幾つかある。そしてたった一つのミスが命取りだ。とはいえ、手筈は今のところ全て順調に整っており、それなりの手練れである彼にとってはここからしくじる理由も特に無かった。

 ガチャリと音がして、ユニットバスのドアが開く。目を開くと、出てきたのは程よく筋肉のついた青年である。年の頃は27歳、身長は183cm、垂れ目な顔立ちはハンサムというよりはチャーミングという方が似合う。髪の短い頭をがしがしとタオルで拭きつつパシパシと音立ててフローリング床を踏みつつ、青年は言った。
「待った?」
「ふふん、待ちくたびれまし……わぁお」
 答えようとした彼は真っ裸の青年の全身を見て、くるまったシーツの中で思わず少し背筋を伸ばした。そして苦笑げに口元を歪める。
「……凄いことになってますね、それ」
「そう……だね」青年は下を向いて少し笑い、
「でも、仕方ないじゃない……シャワー浴びながらすげえ期待しちゃうでしょ」
「それは、まぁ、嬉しいんですけど……でもこう、なんだろうなー……少し引くよなー……」
「マジで?」
「マジでマジで」
「冷めちゃう?」
「ぜぇんぜん」
「よかったぁ」
 そう言って、青年は顔をくしゃくしゃにして可愛らしく微笑んだ。そしてその表情を緩やかに含みのあるゆるい笑みに変え、ベッドの上に片膝を立てて彼に顔を近付ける。
「――ねぇ」
「ん? なんです?」
「白々しいこと言うなぁ」
 青年はそっと年下の友人の両手をシーツ越しに掴み、あ、と声を漏らす彼に構わずベールをこじ開けた。
 彼は隠していた白く柔らかげな裸身を晒され、大きな目をやや伏せて小さく身悶えた。オレンジの光はその様を余りにも魅力的に、余りにも淫靡に見せている。青年は唇を濡らし、辛抱堪らないような声を、絞る。
「おれ……もう、限界なんだけど……。見たらもう君も準備出来てるみたいじゃない? もういいよね?」

 お……っと、少し困ったことになったぞ。
 加速する脳細胞の中で彼はそう一人ごちた。彼の心積もりでは、こうなる前に談笑のタイミングを設ける余裕を見ていたのだ。
 計算をまずったなぁ。夕方の間にムードを高めすぎちゃったかな? このまま行為に持ち込むのはなるだけ避けたかったんだけど。でもこのまま拒否するのは良い手じゃない、か。仕方ない仕方ない。時間はまだある。リスクは最低限に下げつつ、機会は後で設けよう。
 その様に彼は計画を立て直した。

「えー?」
 計画を立て直し、彼は拗ねるように言った。悪戯に微笑み、掬い上げるように青年を見上げる。
「……えーじゃないよ、夏彦」
「お、……ん」
 青年は彼が夕方に告げた名前で彼を呼び、強引に唇を重ね、押し倒した。たっぷりとねぶられながら、"夏彦"はクスクス笑う。
「仕方ないなぁ」
 仕方ない仕方ない。彼はまた一人ごちながら、バッグに手を伸ばし、中をまさぐり、自分の買ったサガミのコンドームを取り出した。

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 布団の中、疲労に裸の全身を包まれながら彼は、隣で向かい合わせた青年に18回目のキスをした。これは軽く触れるようなものだった。青年は吐息を漏らすように笑い、19回目を自分からした。
 続けざまに3度したのは彼にとっても久し振りだった。今の職についてからは無かったように思う。流石に身体に力を入れるのが辛い。それでも眠気が来ていないのは、ムードのためか、それとも先にシャワーを浴びたときにこっそり飲んだ薬の効果だろうか。
 青年は棚の上に手を伸ばして、煙草の箱から片手で一本と、橙色に光るライターを取った。身体をえっちらおっちら起こし、先端に火を付けようとする。その間に、彼は携帯端末のロックを解除し、画面を気だるく何度かスナップしたあと、けたけたと笑いだした。青年はライターを擦る手を止め、目を左傍らの美しい少年に向ける。
「どうしたの」
「あはは……や、だぁってほら、見てくださいよぉ」
 そう言って彼は、スマートホン相手に向けてネットで見つけたジョークを見せ、

 

 る時と全く同じ仕草で、財団支給汎用携帯端末の画面に映るB種精神硬直用トラップ映像を青年に見せることに成功した。
 指定要注意団体構成員生け捕り一丁あがり。最先端の類感系奇跡論的技術を秘密裏に操る企業とても、社員一人を吊るして見ればまぁこんな意識でやっていることもある。この企業がGOCもまだ目をつけていない新興の企業であることも、社員らに警戒意識が作られなかった理由かもしれない。
「――こんなこと、俺があんたが嫌いだからやるわけじゃないんだよ。あんたとは本当に趣味が合ってたんだ」
 うっそりとした彼の言葉は、青年に届かなかっただろう。青と黄と紫からなるチカチカに視線を釘付けにされた青年は、え、とも、は、とも言わず、ただ煙草を口からぽろりとこぼし、動きを完全に停止させ、何秒かそのままの姿勢でいたが、やがて、背が壁を伝うようにずるずると右に、つまり彼と反対側に倒れた。あとは、回収チームがこいつと自分自身を回収しに来るまで見張っていればミッションコンプリートだ。

「……ま、記憶が消えるなら、新しい友との永遠のさよならも、そう辛かないのが救いだよな」
 後ろの壁にゴツン、と後頭部を当て、裸のエージェントは秀麗な眼を少しの間瞑った。今の言葉が本心ななのか、それとも単なる嘯きの類なのか、自分でもあまりその辺りに区別をつけるつもりはなかった。

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「――君は案外、危なっかしい仕事の遣り方を選んでるんですねぇ」
 那澤和なざわ なごむは諸知博士の背中を見た。ティーサーバーに湯を注ぎながら、唄うように発せられたその発言の真意は、博士の痩せた背中からはわからない。
「そう……ですかね」
「そおですよぉ。初めて会った時はもっと、何かこう、スマートな仕事をするエージェントなのかと思ってました……3分くらい待ってくださいね」
 湯を注ぎ終えた諸知はテーブルの向かい側の椅子に座る。柔らかに微笑んだ瞳を真っ直ぐ見ても、矢張り真意はいまいち掴めない。「人物に関することを強く記憶する」というその特異な記憶構造ゆえ、和は任務内容によっては特別な記憶処理手順を踏む必要があることがある――そのため、過去にも潜入任務の後には複数回この諸知の研究室を訪れているのだが、与えられている高レベルセキュリティクリアランスから受ける印象に反してまるで親しい知人の如く接してくるように見える、そのようにしか見えないこの人物のことを、彼は未だに少し図りかねている。
「」