- スペースドリラー翔
- 学べよ学べ(投稿済)
- シャーロック (投稿済)
- 毛布
- あの夕焼けの世界でただ一人(投稿)
- 骨の女王(投稿)
- ハンガー(投稿)
- 医学の躍進(投稿済)
- 奇跡の血(投稿済み)
- 史上最大の戦い(投稿)
- 今も(投稿)
- 単眼女
- タイムマシンリボルバー(投稿)
- 王(投稿)
- 美しさは罪
- 引きこもり
- S████博士によるSCP-XXX-JPと時間連続体に関する提言
- 梁野博士の人事ファイル(投稿)
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JP所有者による制作物への改変業務にはエージェント・P-MOによる「原作者」の援助、また今後のSCP-XXX-JP改変の引き継ぎのための技術向上が含まれており、サイト-8111の職員は「原作者」に対してSCP-XXX-JP改変以外での最低限の協力を行ってください。現在、9名のエージェントがSCP-XXX-JP所有者の捜索担当に割り当てられており、対象発見時は特別機動部隊99-9(編集は力なり)へと要請してください。「原作者」およびエージェント・P-MOはサイト-8111の低脅威度収容室にて収容され、サイト-8111からの外出を除く最低限の生活が保証されています。収容室前は2名のセキュリティー担当者が割り当てられ、交代制で管理されます。
説明: 現在、SCP-XXX-JPの現所有者の概要は判明していません。ですが財団は「原作者」の保有により、SCP-XXX-JPの抑制に成功しています。これらの「原作者」となり得る人間の決定条件は現在調査中ですが、エージェント・P-MOの証言から、著作物の主人公の実体の視認が可能な人間のみがこれに該当すると思われます。(現在、財団はエージェント・P-MOを含めた二名の「原作者」を保有しています。)財団職員の中でこれに該当しているのはエージェント・P-MOのみで、現在までエージェント・P-MO以外での「原作者」になり得る人物を育成する試みは成功していません。また、「原作者」以外の人間が著作物に何かしらの改変を行おうとした場合、ペンが持てない、持てたとしても不可視な障壁の出現などにより執筆が阻害されるという事象が発生しました。
SCP-XXX-JPは異常性を有する著作物の制作に関わる権利です。SCP-XXX-JPの異常性はSCP-XXX-JPを行使した上で著作物を作成することで発生します。SCP-XXX-JPを行使して著作物の作成を行った場合、その著作物の主人公と同様の実体(以下、SCP-XXX-JP-A)を出現させ、使役することが可能になります。なお、SCP-XXX-JP-Aは常に不可視な状態であり、現在その姿を視認できるのはエージェント・P-MOと「原作者」のみです。
現在財団が把握している、SCP-XXX-JPによって著作物に関わることが出来る権限は主にストーリーの作成および考案、SCP-XXX-JP-Aの行使、直接的な原稿の作成だと推測されます。SCP-XXX-JP所有者が原稿を作成した場合、それと同じ内容の物が「原作者」の手によっても作成されます。これらの作成の権限はSCP-XXX-JPの方が上位であると思われ、「原作者」はSCP-XXX-JP現所有者に自身の体を操作されるような形で制作を行います。著作物の原稿は、「原作者」によって制作されているもの以外では発見されていません。これらの一連の制作が行われた後、「原作者」は制作された原稿に対して改稿が出来ます。しかし、大幅なストーリーの変更、ストーリーの辻褄が合わなくなるような改変および指針の変更、著作物を終わらせるといった改稿は出来ません。
現在、SCP-XXX-JPを行使し制作されている物は「スペースドリラー翔」という漫画本で、世界各国の不特定多数の書店にて一冊のみ発見されます。現在、25冊の「スペースドリラー翔」が保管されており、発行元の会社などを調査しましたが詳細は不明なままです。
「スペースドリラー翔」の主な内容は、主人公の「カケル」が宇宙を冒険し、行く惑星行く惑星の問題を解決していくというSF冒険活劇となっています。主人公「カケル」の容姿は、鏡面状の球状ヘルメットを着用し、右手は巨大なドリルに置き換えられています。
著作物はそれぞれの巻で多種多様なストーリーが展開されており、そのストーリーの内容によってSCP-XXX-JP-Aの行動を決定することが出来ます。著作物内では主に、主人公の「カケル」、SCP-XXX-JP所有者をモチーフとした「カケル」の相棒、敵の「帝国」という3要素で構成されており、「カケル」の相棒が「カケル」と行動を共にする事でSCP-XXX-JP-Aの使役が可能になっていると思われます。また、SCP-XXX-JP-Aに攻撃的な行動を取らせる場合は、「帝国」という敵対する存在を描写することで目標を攻撃できる事が判明しています。
現在、「原作者」とSCP-XXX-JP所有者は敵対関係にあると思われ、SCP-XXX-JPの有する異常性の抑制のため、エージェント・P-MOの申請により「原作者」への支援が決定しています。
補遺1:当初、財団はSCP-XXX-JPによる影響はエージェント・P-MOが発症した幻覚症状の一種であると認識しており、エージェント・P-MO自身の独自の調査によりこの実態が判明しました。当時、エージェント・P-MOは自宅近くの書店に立ち寄っており、丁度、店内に設置されていたアメリカンコミックのコーナーを物色中でした。その時、「スペースドリラー翔」の漫画本を発見。対象を購入し内容を見た後、以下の症状を発症しました。
・SCP-XXX-JP-Aの視認
・成人男性(推定50代)の声(エージェント・P-MOに対して何かを訴えかけるような内容)
・事件、事故等の予測(幻聴により発生する事案が発覚すると供述)
これにより、エージェント・P-MOは回収した漫画本を財団に提出。しかし、Dクラス職員を起用した実験を行った所、エージェント・P-MOの証言する様な異常性は確認されず、財団はエージェント・P-MOの精神異常が原因と判断。彼をサイト内の精神病棟に収監しました。しかし、その後、サイト内での収容違反が発生。その時の混乱に乗じ、エージェント・P-MOはサイトを脱走しました。
対象: エージェント・P-MO
インタビュアー: 院熾医師付記: 以下の記録はエージェント・P-MOがサイトを脱走する前日に行われたカウンセリングの音声記録です。
<録音開始, >
インタビュアー: どうも、エージェント・P-MO。気分はいかがですか?
エージェント・P-MO(以下A・P-MO): [無言]
インタビュアー: 話によると、最近眠れていないようですが。A・P-MO: [沈黙]ええ。
インタビュアー: やはり、例の幻覚によるものですか?
A・P-MO: [沈黙]そうなりますかね。
インタビュアー: [ファイルを開く音]では、今日もその幻覚について教えていただけますか?
A・P-MO: [無言]
インタビュアー: どうしました?
A・P-MO: あれはそんなものじゃ無い。どうして、分かってくれないんだ。
インタビュアー: エージェント・P-MO。それはあなたがそう思い込んでいるだけなんです。別に、私はあなたのそれを否定するつもりはありません。ですが、今は少しだけ心を落ち着かせる時間が必要なだけなんですよ。大丈夫、私は最後まであなたの味方です。さあ、私と一緒に、この問題の解決策を見つけていきましょう。[カルテをファイルから取り出す音]では、もう一度、あなたが見ている物の特徴を教えてもらえますか?
A・P-MO: [無言]
インタビュアー: エージェント・P-MO?
A・P-MO: もうこれで何度目だと思っているんですか。僕は、何度も、何度も訴えてきた。それなのに、あなたはそれを嘘だという。現に、僕が聞いた声の内容と一致する事件が、各地で発生している。それなのに、誰も信用してくれないなんて。
インタビュアー: 確かに、あなたが言った事件と似ている事は起きてはいます。しかし、それも正確ではない。100%当たっているのかと言われれば、そうは言い切れない程度のものです。正直言って、外れている方が遥かに多い。確率的な話になれば、世界各国で似たような事件は毎日のように起きている。その内の一つを当てているようなことを言ったからといって、それが予言になるわけではないんですよ。
A・P-MO: でも、現実に起きていることもあるじゃないですか!
インタビュアー: エージェント・P-MO。まずは落ち着いて。大丈夫、あなたの心配しているようなことは何一つとして起きてはいないんです。 さあ、深呼吸して。それから
A・P-MO: いつまでこんなお遊びを続けているつもりですか! [座っていた椅子を倒した音。その後、立ち上がったと思われる]
インタビュアー: え、エージェント・P-MO。
エージェント・P-MO: 僕には見えているんだ! これは幻覚でも幻聴でもない! 現実だ! 今だって、奴はそこのドアの前に立って、ずっと僕を見つめているんだ!
インタビュアー: お、落ち着きなさい。エージェント・P-MO。
A・P-MO: もう、うんざりだ! 僕は、僕はおかしくなんかなっていない! どうして分かってくれないだ!? このままじゃ、何かが手遅れになってしまう。僕はずっと、ずっとずっと訴え続けているのに! これは事実だ! 幻想なんかじゃない!! 現実なんだ!!
インタビュアー: エージェント・P-MO。
A・P-MO: どうして。どうして、僕なんだ。 何でずっと僕を見つめているんだ! 一体お前は何者なんだ? 一体、僕にどうしてほしんだ!? いつも僕を見つめているだけで。僕は。僕は、どうしたらいいんだ。[その場で崩れ落ちる]
[30秒程の沈黙]
インタビュアー: [エージェント・P-MOの側に駆け寄る足音]大丈夫ですか? エージェント・P-MO。立てますか?
A・P-MO: [無言]
インタビュアー: 辛い気持ちはよく分かります。だけど、そんな時こそ、自分を見失っちゃいけない。今日はここまでにしましょう。部屋でゆっくり休んでください。
A・P-MO: これは、僕の妄想なんかじゃない。
インタビュアー: ええ。分かってます。分かってますよ。
A・P-MO: いつも、聞こえるんだ。
インタビュアー: 聞こえる?一体、何が聞こえるのですか?
A・P-MO: [無言]もういいですよ。どうせ、信じてもらえない。
インタビュアー: いいえ。そんなことはない。教えて下さい、エージェント・P-MO。
A・P-MO: [無言]
インタビュアー: エージェント・P-MO。
A・P-MO: 男の人が、頭の中で語りかけるんだ。「書け」って。
インタビュアー: [沈黙]「書け」、ですか。それは、何か脅迫めいたものですか?
A・P-MO: 分からない。でも、厳しい言い方だけど、どこか優しい気がする。
インタビュアー: なるほど。では、一体、何を書くんですか?それは絵ですか? それとも、何かの読み物ですか?
A・P-MO: [沈黙]分からない。もう、何もわからない。
<録音終了, >
終了報告書: この後、エージェント・P-MOは収監中の自室にて、「スペースドリラー翔」の登場人物を利用した、独自のストーリーを展開させた漫画を執筆しました。エージェント・P-MO自身は「自分の境遇に当てはめて描いた」と証言しており、その内容は、「帝国」の根城に閉じ込められた「カケル」の親友「ピモ」を救い出すため、「カケル」がその要塞に果敢に挑んでいくというものでした。その後、サイト内でSCP-███-JPの収容室が破損するという収容違反が発生。エージェント・P-MOは脱走しました。
補遺2: エージェント・P-MOが脱走した3年後、財団は彼をロシア中東の██████で発見しました。その時エージェント・P-MOに同伴していたのが柳沼 ███氏で、彼はエージェント・P-MOの数々の証言の裏付けや現象の再現などを実行し、SCP-XXX-JPの存在を証明しました。なお、エージェント・P-MOの捜索中、彼に取り付けていた発信機を頼りに機動部隊が捜索していたにも関わらず発見が遅れました。原因はエージェント・P-MOの「スペースドリラー翔」執筆によるSCP-XXX-JP-Aを利用した捜索の妨害によるものだと判明しています。現在、エージェント・P-MO以外で唯一著作物の改変を行える柳沼氏を財団は「原作者」と呼称し、サイト-8111にてエージェント・P-MOと共に保護しています。
対象: 「原作者」 柳沼 ███氏
インタビュアー: エージェント・マロン
<録音開始,>
インタビュアー: どうも、柳沼さん。
「原作者」: ええ、どうも。
インタビュアー: では、早速幾つか質問させていただきますね。大丈夫ですか?「原作者」: ええ。大丈夫です。
インタビュアー: わかりました。[ファイルを捲る音]では、まず初めにあなたの能力について教えていただけますか?
<録音終了, [必要に応じてここに日時(YYYY/MM/DD)を表記]>
終了報告書: [インタビュー後、特に記述しておくことがあれば]
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-8006内に設置されている専用ロッカーにて保管されます。現在SCP-XXX-JP-1,2の保管は、事案XXX-JP-001の発生により、それぞれに専用のロッカーにて行われています。ロッカーは常に施錠され、今後のSCP-XXX-JPとの接触および実験は禁止されます。現在、SCP-XXX-JP-1,2同士での接触は禁止されています。
説明: SCP-XXX-JPは身長20cmのぬいぐるみです。対象はビーズクッションなどに用いられるものと同様の素材で構成されており、それ自体には何ら異常性はありません。SCP-XXX-JPの形状は人間を模したものと思われ、手足、頭部が存在しています。頭部は楕円球状で「目」を表現していると思われる黒色の丸が印刷されています。胴体部分および手足はそれぞれ円錐台で構成されています。頭部の直径は10cm、高さは4cm。胴体は、底辺の直径7cm、上辺4cm、高さは6cm。腕、長さ10cm。足、高さ4cmです。
現在、SCP-XXX-JPの活動に用いられているエネルギー、可動機構などは判明していません。また、それらしきシステムも存在していないように思われます。SCP-XXX-JPは時折発声し、その声は10代の女性の物と推測されます。
SCP-XXX-JPの異常性は、人間がSCP-XXX-JPの視認可能範囲内1に侵入する、または範囲内で何かしらの動作をした際に発現します。人間がSCP-XXX-JPの視認可能範囲内に侵入した場合、SCP-XXX-JPは活性化状態へと移行し活動を開始します。そして、SCP-XXX-JPの視認可能範囲内で何かしらの動作を行った場合、SCP-XXX-JPはそれを完全に模倣し、その後、模倣した行為を向上、発展させます。その際、SCP-XXX-JPは模倣した人間と同様の筋肉量に相当する力を発揮します。現在、SCP-XXX-JPは歩行などと言った基本的な動作には反応しないと推測されていますが、SCP-XXX-JPの行っている歩行や手を使った動作などが収容以前に模倣したもので、かつ向上させた動作である可能性も存在するため詳細は判明していません。また、SCP-XXX-JPが何かしらの道具を使った行為の模倣をした場合、対象の手と思われる部分から模倣対象が使用した道具のミニチュアサイズの実体が発生します。これらの発生物の性能は模倣対象の使用物と大差は無く、発生物の性能向上は現在まで確認されていません。
SCP-XXX-JPは行為そのものの精度や応用的な活動への向上は可能ですが、その場の状況などによってそれらの行動を決定しているというパターンでのみ活動していると思われます。また、SCP-XXX-JPが行為の模倣を行うプロセスの優先順位は、以前に模倣した行為の実行が最優先とされ、行為の模倣自体はその実行後に行われます。しかし、SCP-XXX-JPにとって初見であると思われる動作は率先して模倣されます。
現在、財団は2体のSCP-XXX-JPを保管しており(以下、それぞれをSCP-XXX-JP-1、SCP-XXX-JP-2と呼称)、実験の結果、SCP-XXX-JP-1とSCP-XXX-JP-2の間では過去に模倣したであろう行為に大きな差があることが判明しています。双方の損傷の具合もSCP-XXX-JP-2に比べSCP-XXX-JP-1の方が劣悪な状態であることが確認されており、特にSCP-XXX-JP-1の攻撃的な行為の行使が顕著に見られます。
現在、今後のSCP-XXX-JPの行為の模倣を最小限に抑えるため、対象の接触および実験は禁止されています。
SCP-XXX-JPの現在確認されている動作の特徴
SCP-XXX-JP-1
暴力的、反社会的動作が顕著に見られる。武器の使用や技術なども豊富で、警察官・兵士など、銃器の使用に長けている人物の行為も模倣していると思われる。また、Dクラス職員が金銭を見せるという状況をつくりだした際に、その金銭を略奪しようする行為も観察された。女性が接触した場合は、殴るなどの暴行の後、[削除済]。対象自体の損傷も激しく、実験で見られた模倣行為の内容から、SCP-XXX-JP-1は長期間、何者かに、もしくは複数の人間から暴力的に使用されていたと思われる。
SCP-XXX-JP-2
一般的に「子供らしい」と称される行動が目立つ。これらの主な原因はSCP-XXX-JP-2が長期間、宅間一家によってのみ所有されていたためと思われる。キッチンなど台所用品が置かれた状況に遭遇した場合は、料理に使用する道具設備などを出現させミニチュアサイズの料理を作った。主に「遊び」に関する動作が多い。状態も多少の汚れは目立つものの、完全な状態である。
実験記録001 - 日付19██/██/██
対象: SCP-XXX-JP-1,2
実施方法: Dクラス職員と接触させる。
結果: SCP-XXX-JPは活性化した。その後、SCP-XXX-JPは収容室内を歩行した。
分析: 人間がSCP-XXX-JPとの接触のみを行った場合、SCP-XXX-JPは基本的な動作の行使にのみ終始することが判明した。これらが以前SCP-XXX-JPが模倣した動作の実行によるものである可能性もあるため、SCP-XXX-JPが模倣しうる最小限の行為の判別は今のところ分かっていない。また、対峙する以外で、手を挙げる、ジャンプするなどの行動をDクラス職員に命令したが、SCP-XXX-JPが取った行動はそれらの行為に何かしら付け加えられたものだった。このことから、SCP-XXX-JPは過去の時点でこれらの行動を模倣していることが判明した。
実験記録002 - 日付19██/██/██
対象: SCP-XXX-JP-1,2
実施方法: 複数人のDクラス職員と接触させる。また、Dクラス職員職員には、一回目には全員が同じ動作をし、二回目にはそれぞれ異なった動作をするよう命令した。
結果: SCP-XXX-JPは活性化したものの、Dクラス職員を見続けているだけだった。
分析: この実験の後、SCP-XXX-JPに対して模倣行為の実行を促す実験を行った際、一回目の動作、二回目の動作、それぞれのDクラス職員の動作を模倣し向上させていた。このことから、SCP-XXX-JPの視認範囲内に複数人の人間が存在した場合、その範囲内にいる人間全ての動作を学習することに集中することが判明した。
実験記録003 - 日付19██/█/██
対象: SCP-XXX-JP-1
実施方法: 武装したDクラス職員と接触させる。(Dクラス職員には爆殺用のチョーカーを装着させています。装備はM3913)
結果: Dクラス職員はSCP-XXX-JPによって腹部と胸部に一発づつ発砲される。その後、SCP-XXX-JPは倒れたDクラス職員の右頬と左眼球部分に発砲した。その際、SCP-XXX-JPの手元に発生したのは38口径だった。
分析: SCP-XXX-JPの射撃の挙動から警察官の動きであると判明。状況パターンによるSCP-XXX-JPの行動選択の範囲が、過去に視認した状況と照らしあわせた際の類似点の数によって選択されていると分析。その後SCP-XXX-JPは3分程徘徊し、静止した(死傷している対象には反応しないことが判明した。模倣対象が消失した際は3分間徘徊することで新たな対象を捜索することも判明)。この実験の後、異なる武器を用いてDクラス職員を接触させた際は、38口径以外の武器を出現させた。相手の所持している武装などから、模倣した時の状況と照らしあわせて使用する武器と動作を選択していると思われる。
実験記録004 - 日付19██/█/█
対象: SCP-XXX-JP-2
実施方法: Dクラス職員におままごとのセットを所持させ対象と接触させる。
結果: SCP-XXX-JPは母親役に徹し、Dクラス職員を父親役にしておままごとを始めた。それから、SCP-XXX-JPは発声し、その後も役柄を変えておままごとを続行させた。
分析: この実験で初めてSCP-XXX-JPが発声をする事が判明した。これらの「声」は模倣されたものなのか、今後調査が必要と思われる。
実験記録005 - 日付19██/█/██
対象: SCP-XXX-JP-1,2
実施方法: Dクラス職員にサッカーボールを持たせ接触させる。その後、サッカーボールを用いた行動をさせる。
結果: SCP-XXX-JPはミニチュアサイズのサッカーボールを出現させた。その後、Dクラス職員の行動を模倣した。
分析: 以前、模倣したことのない行為は優先的に模倣する事が判明。また、完全に初見な行動と状況パターンではそれを模倣するのみで活動が停止することが判明。
実験記録006 - 日付19██/██/█
対象: SCP-XXX-JP-1
実施方法: SCP-XXX-JPを「メリッサ・████」と呼称するようDクラス職員に指示し接触させる。
結果: 実験開始から約3年間、SCP-XXX-JPは自身を「メリッサ・████」と自称し、Dクラス職員と行動を共にした。その後、SCP-XXX-JPは約6ヶ月の間、急遽「怯える」「泣き叫ぶ」「懇願する」と思われる行為を繰り返した後に絶命するような動作をした。
分析: SCP-XXX-JPに対して特定の人物の名前を呼称した場合、SCP-XXX-JPはその模倣対象になりきることが判明。しかし、SCP-XXX-JPの手元にSCP-XXX-JPのミニチュアが発生することはなかった。これらの行為が実行されたプロセスとして、呼称された名称が呼ばれていた状況がパターン化され、特定の人物の模倣へと繋がったと予想される。また、過去にSCP-XXX-JPが視認していた「メリッサ・████」の行動や癖などをSCP-XXX-JPが向上させたため、自然な振る舞いに見える行為が可能であったと思われる。しかし、これらのなりきりは過去に起こった事象に依存していると思われ、「メリッサ・████」とSCP-XXX-JPが接触してから対象の人間が絶命するに至るまでの期間と経緯に随所したと思われる。
実験記録007 - 日付19██/██/█
対象: SCP-XXX-JP-1
実施方法: SCP-XXX-JP発見場所の状況を再現して、数名のDクラス職員と接触させる。
結果: SCP-XXX-JPはDクラス職員をそれぞれ[編集済]。
分析: 周囲の環境を整えた上で人間と接触させた場合、SCP-XXX-JPはその当時の状況を再現することが判明。また、これらの過去の再現を行う場合は、不足している人物を選択しそれになりきることも判明した。このことから、SCP-XXX-JPの模倣行為の実行がどのような時に、どのような形で発生するかという問題が浮上した。
補遺1: SCP-XXX-JP-1は北海道 ███市 ██町の女児監禁事件をきっかけに発見されました。当時、事件は同町の孤児院、「██████の里」の地下室で行われており、SCP-XXX-JP-1は孤児院の児童、橘 ███氏(当時8歳)が所有していました。実験の結果から、その当時からSCP-XXX-JP-2の異常性が発現していたと思われています。
回収現場では当初、孤児院を経営していた柳場 ██氏による児童への虐待や██と言った行為がされており、虚偽の里親申請書を提出して犯行に及んでいました。現地の調査員の調べでは、被害者の数はおよそ██人であると予想されています。19██年、11月9日に家宅捜査が現地警察によって行われ、SCP-XXX-JP-1が発見されました。その時に異常性が発覚、警察署内に潜入していた財団エージェントによって回収されました。
その9日後、神奈川県 ███市にてSCP-XXX-JP-2を発見。対象は同市 ██町 2-██-██に在住の宅原氏の自宅で保管され、宅原氏一家はSCP-XXX-JP-2の異常性を理解した上で対象を所持していました。現地に赴いたエージェントのインタビューに対し、宅原 ██氏は「ニューヨークへ家族と旅行に行った際に、駅でお土産屋をやっている屋台を発見した。その時、この人形ともう一体同じ人形が売られていて、その内の一体を娘のために買ってやった。」と供述しました。現在、SCP-XXX-JPを販売していたお土産屋を捜索していますが、発見には至っていません。宅間一家にはBクラスの記憶処理を施しうえで、カバーストーリー「何もなかった日々」を適用しました。
補遺2: 現在、事案XXX-JP-001の発生により、SCP-XXX-JP-1とSCP-XXX-JP-2は別個に収容されることが決定しています。事案XXX-JP-001の詳細は以下のリンクより参照してください。
事案XXX-JP-001
事案XXX-JP-001は200█年 11月30日に発生しました。この事案は、以前よりSCP-XXX-JP専用収容ロッカー内から聞こえていた「罵倒」の様な「声」が問題となっていた時期に発生しました。
詳細: 事案XXX-JP-001はSCP-XXX-JP-1のSCP-XXX-JP-2に対する破壊行為です。当時、SCP-XXX-JP専用ロッカー内から聞こえる「声」が問題視されており、担当研究班によって調査が行われていました。その後、上記の日付の午後7時38分、ロッカー内から「罵声」と思われる「声」と悲鳴と思われる「声」がセキュリティー担当者によって報告され状況が発覚。セキュリティー担当者と研究班はすぐさまロッカー内を調査し、その結果、SCP-XXX-JP-1によって破壊されかけているSCP-XXX-JP-2が発見されました。その際、SCP-XXX-JP-1,2はすぐさま、人間に視認された際の通常の異常性を発現し、SCP-XXX-JP-1は破壊行為を停止しました。
考察: 現在、これらの事案が発生した理由として、当初はSCP-XXX-JPの新たな特異性の発現ではないかと予想されましたが、詳細は判明していません。現在、SCP-XXX-JP-1,2を別個に保管することによってこれらの現象は防げられてはいますが、今後の研究で今回の事案発生の原因を究明することが最優先であると思われます。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはフロリダ州の████に位置するサイト-111の収容ロッカー内に保管されます。ロッカーは常に施錠され、SCP-XXX-JP-AによるSCP-XXX-JPの漏洩物の摂取が行われる時のみ開放されます。なおロッカーの解放は影響拡大防止の為、二名のセキュリティー担当者の監視のもと、SCP-XXX-JP-Aによって行われます。セキュリティー担当者はSCP-XXX-JPを視認しないよう保管用ロッカーの左右へと移動し監視を行ってください。現在、SCP-XXX-JPの更なる実験はSCP-XXX-JP-Aの管理の問題から許可されません。現在、2名のSCP-XXX-JP-Aが収容されていますが、対象らの調査活動の制御は困難であるため、2名のエージェントがそれぞれの活動に同伴してください。SCP-XXX-JP-Aによって解決した事案は現地自治体、警察等と協力した上で適当なカバーストーリーを適応し、通常の捜査が行われた事案解決であるよう偽装してください。
説明: SCP-XXX-JPは1リットルサイズのポンプ式シャンプー容器です。本体には英筆記体で「Sherlock」と記入されたシールが貼られています。現在、SCP-XXX-JPに損傷を与える、キャップ部分を開ける、異常性の二段回目以外で内容物を手動で汲み出すと言った試みは全て失敗しており、X線などを使った内部の調査も行いましたが、機器のモニターに対象が映らないという事案が発生したため詳細は分かっていません。
SCP-XXX-JPの有する異常性は二段回目まで存在し、一段回目は人間がSCP-XXX-JPを視認した瞬間(以下、視認者をSCP-XXX-JP-Aとする)、二段回目は一定周期でSCP-XXX-JPの内容物が漏洩する際に発現します。なお、一段回目の異常性は暴露したエージェント・Pの証言とD-777321を利用した実験によって明らかとなりました。
一段階目の異常性として、SCP-XXX-JP-Aには以下のような変化が確認されます。
- 明らかな観察能力の向上。
- 不眠症や不安神経症に相当する症状の発生。
- 未解決事案の解決に関する強迫観念。
- 脳の容積の減少。(年間に0.00037グラムの減少が確認されています。)
SCP-XXX-JP-Aは観察能力の向上に伴い、まず初めにSCP-XXX-JPに関連する事案の調査活動を開始します。その後、SCP-XXX-JP-Aは解決した事案からまた新たな事案を発見し、それ以降も調査活動を継続します。これらの活動は、SCP-XXX-JP-Aが調査活動を拒否した場合も、様々な外的要因、SCP-XXX-JP-A自身の行動による偶発的とも見られる現象によって調査活動へと発展します。このことに関して、この現象はSCP-XXX-JP-Aの抱いている未解決事案の解決は自身と「シャーロック」という人物の義務であるという強迫観念によって引き起こされている、それによって対象は無意識の内に未解決事案を探しているのではないかという見解も存在しましたが、それらの症状を緩和させた状態でも活動は継続されているため、活動開始への直接的な原因は判明していません。調査期間、調査結果などはそれぞれの事案によって変化し、現在8███件の未解決案件が解決しています。
二段回目の異常性はSCP-XXX-JPのポンプ先端から人間の脳組織の一部と思われる物体の漏洩によって引き起こされます。この現象はSCP-XXX-JP-Aの解決した事案の件数が約236件に達した時期に発生することが判明しており、現在、漏洩した脳組織を解析していますが、該当する人物などの発見には至っていません。また、漏洩物に対して、焼却、化学的処分などを行いましたが、損害を与えることは出来ませんでした。
この漏洩物は常にSCP-XXX-JP-Aによって摂取され、その後SCP-XXX-JP-Aは自身の事を「シャーロック」と名乗り、その人物になりきって会話を始めます。これらの摂取はSCP-XXX-JP-AとSCP-XXX-JPの距離が離れていた状態でも、漏洩が発生したと同時にSCP-XXX-JP-Aがそれを何らかの方法で察知し、SCP-XXX-JPの置かれている地点へと自力で移動することで行われます。また、漏洩物の摂取が行われることでSCP-XXX-JP-Aの精神が安定するという現象も確認されています。
対象: SCP-XXX-JP-A-1(エージェント・P。以下、A-1と表記)
インタビュアー: マントル博士(インタビュアーと表記)
付記: インタビューはサイト-111の尋問室で行われました。なお、SCP-XXX-JP-A-1はSCP-XXX-JPの漏洩物を摂取しています。
<録音開始, >
インタビュアー: では、インタビューを始めます。まず、あなたの名前を教えてください。
A-1: 私の名はシャーロック。あの有名な探偵とは違う。別に意識したわけでもないし、彼のことを否定するわけでもないが、ただ、彼と私の名が同じで、彼と私の生業としている活動が偶然にも、はたまた必然かもしれないが、単に一致していたに過ぎず、性別も同じだったとだけ言っておく。改めて、ごきげんよう。私の名はシャーロックだ。別にフリート街に住んでいるわけじゃあない。インタビュアー: では、あなたの出生について教えて下さい。
A-1: 何者と言われても、私はただの私であって、それ以外の存在足りえることはなく、君でもなければそこにいる機関銃を持った彼でもない、それは確かだ。私はシャーロック。何度も言わせないでくれ。それ以下でもそれ以上でもない。そんなこと言い出した君に言うのは酷かもしれないが、逆に教えて欲しいぐらいだよ。私という人間が一体何ものなのか、何故生まれどこに行くのか。これはある意味人生という名の迷路に置かれた課題だ。皆が追い求めている、しかし決して生きている間にたどり着くことは出来ない物だ。文句を言うようで悪いが、君は私にそういった漠然とした質問を投げかけたのだよ? 少し、失礼極まりないのではないかね? 人の生まれたことについてなど誰にも分かるはずがないのだ。それは謎だ。謎であるがゆえの謎だ。勿論、私の姿は今も暗いロッカーの中に閉じ込められている方だよ。まあ、私の助手の手助けの元、君らと会話をすることはできているがね。君らは私がどうしてこのような姿になっているのかを究明したいのだろう? ならば最初からそう訊けばいい。
インタビュアー: [無言]なるほど。では、どうして今、そのような姿に
A-1: 確かに訊けとは言ったがそれを応える義務は私にはないのでね。
インタビュアー: [沈黙]
A-1: 私が私だったから、私は今の姿で生きているんだよ。それ以上でも以下でもない。それが全てだ。私であるということが答えであって、私足り得るのだよ。私が私であるからこそ、私は謎を求めているのさ。だからこそ、謎を追求しているのさ。君にはわからない。謎の本来の姿のことはね、ドクターマントル。
インタビュアー: 分かりました。では、質問を変えます。あなたは、何故そこまで「謎」を求めているのですか?
A-1: 何故、謎を求めるのか? その理由はひとつだ。私に解けない謎が無いからだよ。私はなんだって知ってるんだ。私に分からないことなど無い。ドクターマントル。それを追い求めるのが人間なのだよ。そして私もその人間だ。謎であるがゆえの人間だ。私の脳は未だに肥大化し続けている。それは一体何故だと思う? 謎だからだ。全てが謎だからだ。謎を追い求めるがために、私は謎になったのだ。そうだ。それでいいんだ。それが答えであり、偽りであり、真実であり、虚偽なのだ。分かるかね? ドクター。
インタビュアー: ですが[無言]私、あなたに名前教えましたっけ?
A-1: 言ったろう。私はなんだって知っている。私が今、助手と呼んでいるものも私の好奇心に当てられたのさ。だから、私の脳を食らう。自らそれを取り込んで、その真相を追い求めんとするからさ。そして、その時だけ、私は元の姿に近づける。全ては謎だ。謎々なぞ。謎が全てだ。私自身が謎だからこそ、皆私の何かを探し求める。ああやって謎を追い求め続けているのは、その中に私を探しだそうとやっ気になっているからだ。そして、私はそれらの謎を食う。そして、また私はでかくなる。それの繰り返しさ。どうだいドクター? 謎とは、とても、とても素晴らしいものだろう?
インタビュアー: [無言]私には、それの素晴らしさはわかりかねます。
A-1: まあ、良いさ。君に分かってもらおうなどとは、はなから考えていない。到底理解出来ないことも私には百も承知だ。つまり、私はそれを発見したのだ。私は、こうやって今の生き方を見つけ出した。全てはこの時のためだった。知的好奇心が私を生かし、それが君たちを魅了させ続ける。全ては謎だ。謎こそが答えだ
インタビュアー: [無言]分かりました。では、今日のインタビューはこの辺りで。
A-1: おいおい、待ち給えよ。もっとお互いに謎を深め合おうではないか。君の奥さんのことを教えてあげてもいいんだぞ? 恐らく、君の生涯のパートナーは先程君と仕事の話をしていた女性だろう。君がつけている指輪と彼女がつけている指輪がどちらも同じデザインだった。つまりお揃いの夫婦の為の指輪だ。そして、君は紅茶が好きだ。銘柄は████████・███、その独特の香りですぐに分かる。白衣にその香りが染み付いているということは、君は仕事中にそれを飲むことが多いのだろう。そして、君のズボンの裾に少し汚れた箇所がある。確か、君のオフィス近くでトイレ掃除があったはずだから、バケツの水でも引っ掛けられたのだろう。匂いの強さ、その口からそれが漂っていることからも、君は紅茶を啜ってきたばかりであり、君はオフィスの近くで紅茶を飲むことの出来る場所にいたということだ。つまり、君はオフィスで紅茶を飲む習慣がある。そして、君のオフィスには君以外の人間でも限られた者しか入れないはずだ。君のそのバッチを見るに、君は大分偉い研究員らしいからね。そして、そういった研究員には大体助手が、つまり部下がいる。君のその目の下のクマから見るに、相当な仕事量だ。それを手伝う人間がいてもおかしくない。さて、話を戻すと、彼女の白衣からも同じ香りがしたのだよ。君は真面目な人間だ。私のこの訳の分からない物の言い方にも顔色一つ変えずに受け答え、職務を全うしている。机においた書類も綺麗なままだ。そんな真面目な人間が自分のオフィスに妻を連れ込むなんて事、そうそうあるものじゃない。さっきの彼女との会話を聞くに、君らは職場ではあくまで同僚として接するようにしているのだろう? なのに彼女から強い紅茶の香りがしたのは何故だ。それは長時間部屋にいた証拠だ。一体、何のために? そして、限られたものしか入れないはずのオフィスにどうやって? 答えは一つ。君の助手が入れたんだ。どうして入れた? 彼女と何をするために? 今、彼女は一体何処にいるんだろうねえ。思い当たるフシはないのかね? ドクターマントル。
[マントル博士が慌てて退出する音がする]
A-1: 謎は素晴らしい。それを解き明かす瞬間が、私にはとてつもないリビドーなのだ。まだだ。まだ、私には足りない。
<録音終了, >
終了報告書: この後、マントル博士は自身のオフィスにいた博士の妻と助手を発見し、助手に暴行を加えました。その為、博士には2ヶ月間の謹慎が言い渡されました。
確認されている解決事案の抜粋
起因 エージェント・P(以下SCP-XXX-JP-A-1)がSCP-XXX-JPを発見。その際、エージェント・PはSCP-XXX-JPのメーカーが気になり、調査を開始する。
結果 該当するメーカーを発見するが倒産していることが判明。
起因 SCP-XXX-JP-A-1によって発見されたSCP-XXX-JPと同型のシャンプー(本体の形状のみでラベルは異なっている)を製造していたメーカーの帳簿に不審な入札記録を発見しそれについての調査を開始する。
結果 █████・███████上院議員の賄賂が発覚。
起因 █████・███████上院議員の夫人の左薬指の傷が気になり調査を開始する。
結果 夫人は幼少期父親から性的虐待を受けていたことが発覚。また、奥方の父親=ロバート・████氏が1987年の自営電器店の強盗事件に関わっていることが判明。
起因 1987年に発生した電器店強盗事件の調査を開始。
結果 首謀者の男=ジェイムズ・███・████████がカルト教団「K███O█████」の信者であったことが判明。当時行った犯行も教団からの指示だったもよう。また、教団の行っていた儀式に複数人の児童が用いられていたことが発覚。
起因 カルト教団「K███O█████」の行っていた儀式についての調査を開始。また、教団の団員メンバーの資料も入手。それについての調査も平行して開始。
結果 教団員の中から1994年のミシガン州の█████通り連続少女██事件と関連のある男= ████・A・██████氏を特定。儀式の為に少女らを殺害していたもよう。結果、件の男性の自宅を尋ねたSCP-XXX-JP-A-1は████・A・██████氏から暴行を受け入院。報告を受けた財団は████・A・██████氏を拘束した。
起因 SCP-XXX-JP-A-1が入院した病院に一時期████・A・██████氏が入院していたことが判明。なお、病院はSCP-XXX-JP-A-1の希望により選択された。その際、████・A・██████氏の元に頻繁に通っていた女性の存在が確認された為、それについて調査を開始。
結果 件の女性はマーシャル・カーター&ダーク社の人間であることが発覚。カルト教団に異常オブジェクトを販売することが目的だったもよう。この調査の際、マーシャル・カーター&ダーク社の所有していたフロント企業内でSCP-████に関する未確認の報告書を発見。
起因 マーシャル・カーター&ダーク社の所有していたSCP-████の報告書の調査を開始。
結果 [削除済み]この調査によって、████████████ ████████████████の████████████が判明。O5の指令のより、これらの記録を全て抹消。████████の殺害は████████████より████████████████████████。また ████████████ ████████████████████と共に管理される。結果、██████の発見に伴い、これらの調査を中止する試みが行われたが、調査活動へと発展。
補遺: SCP-XXX-JPは、オブジェクト回収の任務を終えたばかりのエージェント・Pによって発見されました。当時、エージェント・Pはアメリカ・█████州の█████で現SCP-████の回収任務に参加しており、その際、近くのゴミ捨て場に放置されていたSCP-XXX-JPを発見しました。結果、エージェント・PはSCP-XXX-JPの影響を受け、調査活動を開始。財団はエージェント・Pの異常行動に関する報告を受け、エージェント・Pが何かしらのオブジェクトの影響を受けていると決定し、当人の周辺の捜索を開始しました(なお、この調査の際にはエージェント・Pの行動を詳しく観察するため、彼の活動にあまり干渉しないようにと職員には通達されていました。)その後、エージェント11の監視のもと、エージェント・Pが1994年のミシガン州の█████通り連続少女██事件の犯人の自宅へと到達。その際、SCP-XXX-JP-A-1が当時犯行に及んだ████・A・██████氏から暴行を受け、█████████病院へ入院する事案が発生しました(この時に、エージェント・Pが行動不能な状態に陥っても調査活動が再開される事象が確認されました。)。現在、████・A・██████氏はエージェント・Pの救済に入ったエージェント11によって拘束され、マーシャル・カーター&ダーク社との関係を調査するため拘留されています。
現在、SCP-XXX-JP-Aの活動を止める試みは全て失敗しており、対象の終了も試みましたが、多種多様な外的要因2によってそれら全てが阻止されました。このことから、SCP-XXX-JP-Aの活動を止めることは不可能であると結論づけられ、現在の収容体制へと移行されました。
追記: 現在、SCP-XXX-JPの事案解決により、自殺する職員が急増しています。今後の職務への影響が懸念され、SCP-XXX-JP-Aの活動を抑制する為のプロトコルが検討されています。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: [SCPオブジェクトの管理方法に関する記述]
説明: SCP-XXX-JPは異常性を有する、SCP-XXX-JPの「意思」によって伸縮が自在に操作が出来る「毛布」です。現在、SCP-XXX-JPに使用されている素材の検査は行われておらず、事案XXX-JPにより今後のSCP-XXX-JPに接触する可能性のある行為は禁止されています。
SCP-XXX-JPは、非活性時は非異常性を有する、大きさ4㎡の薄茶色の毛布です。
補遺: [SCPオブジェクトに関する補足情報]
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 現在、SCP-XXX-JPへの侵入経路の捜索は機動部隊と10名3名のエージェントによって行われています。研究スタッフはSCP-XXX-JP異空間班とSCP-XXX-JP通信班の二チームに分かれて、それぞれの業務を行ってください。異空間班のスタッフ長には梁野博士、通信班のスタッフ長にはペインハイル博士が割り当てられます。また、エージェント・ベルナドットの所持していた携帯電話をオブジェクトに認定する議論はペインハイル博士を議長に置いた上でサイト-076の第5会議室にて行ってください。SCP-XXX-JP異空間班はSCP-XXX-JPに関する報告をする際、エージェント・エドモンドからの定期報告を元にそれらを行ってください。なお、20日以上の期間にエージェント・エドモンドからの通信が断絶した場合、24時間待機した後にエージェント・エドモンドの死亡報告書を作成してください。その後、エージェント・エドモンドの救出作戦は凍結されます。エージェント・エドモンドの救出作戦は凍結されました。
現在、エージェント・エドモンドは公式の記録では死亡したことになっており、遺族関係者などには隠蔽工作を行ってください。
説明: SCP-XXX-JPの全貌は正確には判明していません。SCP-XXX-JPは、20██/3/██/AM11:34にエージェント・エドモンドが失踪した事件をきっかけにその存在が明らかとなりました。当時、エージェント・エドモンドは、エージェント・ベルナドットと共に███県██市の███山の森林部でSCPオブジェクトと思われる実体(現在のSCP-███-JP)が発見されたという報告を受け、その現地調査のために出動していました。その後、エージェント・ベルナドットがSCPオブジェクトを発見し捕獲、その連絡をエージェント・エドモンドが行おうとした際に当人が失踪しました。当初、SCP-███-JPの影響による被害を受けた結果、███山内で負傷したのではないかという見解の元、現地の警察と協力した捜索活動が行われましたが、その10日後にエージェント・エドモンドからエージェント・ベルナドットの携帯に連絡が来たため、現状の把握が可能になりました。
現在、SCP-XXX-JPに関する二つの最も有力であると思われる見解が存在し、SCP-XXX-JPは植物意外の生物が一切存在しない、人類が現在生活している世界とほぼ同様の地形、大気、建造物などを有していると思われる異空間であるという説、SCP-XXX-JPに関する情報の交換が行われた通信そのものがオブジェクトであるという説が存在しています。その為、財団上層部によりSCP-XXX-JP異空間班とSCP-XXX-JP通信班という二つの研究チームが設立され、現在これらチームによってオブジェクトに関する議論が継続されています。(この報告書はSCP-XXX-JP異空間班の担当であるため、SCP-XXX-JPが異空間であるという説を肯定した上での概要を記載します。SCP-XXX-JP通信班の報告書はペインハイル博士の許可を得た上で閲覧してください。)
エージェント・エドモンドの報告からSCP-XXX-JPは地球と同様の面積と環境、大陸、海洋を有していると予想されます。また、世界各国の現在の建築物、地形などはエージェント・エドモンドの視認範囲外で常に更新されていることが判明しています。現在、SCP-XXX-JP内に侵入する方法は判明しておらず、エージェント・エドモンドの消失地点の捜索を決行しましたが、侵入および消失に繋がる手がかりを発見することは出来ませんでした。また、SCP-XXX-JP内部では、前述の通り、人類が現在生活している世界と同様の建造物などが存在していると報告されていますが、一部現代の技術では建築することが不可能であると思われる建築物などの存在も確認されており、SCP-XXX-JP内部と我々の生活している世界ではいくつかの相違点が存在するものと予想されます。現在、建造物以外の相違点は発見されていません。また、SCP-XXX-JP内部では太陽の動きが一切見られないという特徴を有しおり、その為、エージェント・エドモンドがSCP-XXX-JP内に侵入してからおよそ█████時間以上経過した今でも、気温:およそ24度、時刻:東京の午後7時台、月:東京の5月中旬の状態の太陽の位置を維持していることが判明しています。また、SCP-XXX-JP内では、移動距離に関係なく常に太陽を観察することが可能であり、いかなる地方、国、山岳部に移動した場合も前述した月と時間の気温と太陽の位置を維持しているという現象が確認されています。(高山地帯においても、積雪は確認されていますが、前述した気温を維持しています。)天候の変化は確認されていません。
過去にエージェント・エドモンドにはSCP-XXX-JP内部の調査と侵入方法および脱出方法の特定任務が割り当てられており、SCP-XXX-JP内部の状況やデータの収集はエージェント・エドモンドの所持する携帯電話からの連絡を利用して行っていました。なお、これらの連絡はエージェント・ベルナドットの携帯電話でのみ受信が可能であり、なおかつ、エージェント・ベルナドットが応答した時のみ通話/録音が可能になるという現象が確認され、これらの原理などについても調査が行われていました(こちらからの通信、およびエージェント・ベルナドット以外の応答は遮断されます)。
現在、エージェント・エドモンドからの通信は断絶しており、財団の記録上死亡したことが決定しています。今後、SCP-XXX-JPに関する研究と調査活動は継続されますが、一部制限がかかります。(制限に関する内容はプロトコルXXX-JP-Worldを参照してください。また、新たなエージェントがSCP-XXX-JPの担当に割り当てられた場合、担当研究者は制限に関する資料を該当するエージェントに配布してください。)
以下はエージェント・エドモンドからの報告の抜粋です。全ての資料を閲覧する場合は梁野博士の許可を得た上で行ってください。なお、抜粋された報告書の内容は、主にSCP-XXX-JP内で新たな発見がなされた報告、および最終報告を記載しています。
エージェント・エドモンドの報告記録の抜粋
<録音開始, [(20██/3/██)天候:雨 状況:機動部隊による第10回目の捜索活動中 ]>
エージェント・エドモンド: こちらエージェント・エドモンド。聞こえる?[雨音が交じる]
エージェント・ベルナドット: こちらエージェント・ベルナドット! おい、エド! お前今何処にいる!!エージェント・エドモンド: いやあ、何処と言われても。皆目見当がつかなくて[小さく笑う]。
エージェント・ベルナドット: 笑い事じゃねえだろ!! 兎に角、今いる場所の特徴を言え! すぐに捜索隊に連絡して
エージェント・エドモンド: いや、多分それは無理だ。
エージェント・ベルナドット: え!? なんでだよ!
[暫くの間沈黙]
**おい、どうしたんだよ、黙りこくって
エージェント・エドモンド: いや、実を言うと、この10日の間、僕はあのオブジェクトを捕獲した場所から殆ど動いていないんだ。多少、山下の町の方へは降りて行ったりはしたけど、あれから誰とも会わなくて。それに、いろいろ試したんだけど、どこの電話を使っても、無線を使っても、誰とも通信が出来なくてね。やっとこの携帯で君の携帯とを繋げられるってことがわかったんだ。
エージェント・ベルナドット: 動いてないって、いや、そもそも通信できないって、なんで
エージェント・エドモンド: いやあ、本当に動いていないんだよ? 君がこの前、任務のために罠を仕掛けた場所に今立っているんだけど、誰にも会わないんだ。君の言っている捜索隊の人たちにも、街の住人にも。何を言ってるのかさっぱりだろうけど、本当に。人っ子一人いないんだ。民家の中を探索してみたけど、恐らく既存の家具が置かれているだけで、生活の痕跡もない。人間なんて、この期間に誰一人として会っていないんだよ。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]そんな馬鹿な話あるかよ。そんなの、
エージェント・エドモンド: それに、もう一つ不可解なことがある。
エージェント・ベルナドット: もう一つ?
エージェント・エドモンド: うん。ずっと夕焼けなんだ。ずっと。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]
エージェント・エドモンド: 僕の今所持している腕時計の時間が正しければ、そう、僕がそっちからいなくなってからずっとだね。うん。間違いない。大体の時間で10日は経っていることになるのかな? あいにく日付までは分からなくて。途中で見つけた公園の時計も、僕が失踪したであろう時間で止まっているし、雑貨屋の中で見つけたカレンダーも、僕が疾走したであろう日付から白紙だったし。
エージェント・ベルナドット: それって
エージェント・エドモンド: うん。普通じゃありえないことだ。つまり、そういうことだろうね。兎に角、こうなった以上、君は僕との会話の記録を本部に提出して、それから新たなSCPオブジェクトの申請を行ってくれ。多分、僕は相当な期間こっちにいなくちゃいけなくなると思うから。あと、連絡はどういうわけか君の携帯としか出来ないみたいだから、恐らく定期報告の義務が僕と君、もしくは担当の研究員に課せられると思う。だから、そこのところは担当になった博士たちと相談した上で
エージェント・ベルナドット: [沈黙]
エージェント・エドモンド: ん? ねえ。ベル? 聞こえてる? 電波が悪いのかな。なんて、そもそも繋がること自体が奇跡みたいなもんか。[笑う]
エージェント・ベルナドット: なんで、
エージェント・エドモンド: え。
エージェント・ベルナドット: なんで[啜り泣く]なんで、そんなに落ち着いていられるんだよ。なんで、そんな状況でいつも俺と話すみたいな会話が出来んだよ!!
エージェント・エドモンド: え、いや、そう言われても。
エージェント・ベルナドット: お前はいつもそうだよ!! どんな時でもすました態度でいやがって!たまには人間らしく、怖がったりだとか、動揺したりだとか、何でもいいから、生身の人間らしい行動をとってみやがれ!! そんな[息が詰まる]そんな、報告気味だとか、オブジェクトの申請だとか、そんな事務的なことじゃなくてよう! もっと、もっと他に言うことがよう!!
エージェント・エドモンド: [沈黙]
エージェント・ベルナドット: 俺が[沈黙]俺がこの10日の間、どんな気持ちでいたか分かってんのか!? 大事な相棒が、いきなり目の前で消えて、捜しても、捜しても捜してどこにもいなくて。それで、やっと、やっと連絡がついたと思ったらこれかよ! ふざけんな! 何冷静になって行動してんだよ! 何仕事の話なんかしてんだよ! 何もう諦めたみたいなこと言ってんだよ!! なんで[啜り泣く]なんで!
エージェント・エドモンド: エージェント・ベルナドット。
エージェント・ベルナドット: なんで! どうして!
エージェント・エドモンド: エージェント・ベルナドット!!
[お互い無言になる]
エージェント・エドモンド: 新たなオブジェクトを発見した以上、我々には財団の職員として、この現象と実態を明確に調査し、本部に報告する義務がある。そして、それは私がこのような状態に陥ってしまった時から、いや、我々が財団職員として就任した時から常に発生している。このような状況に置かれた時だからこそ、我々はより一層冷静に行動しなければならない。何よりも優先すべきは、10日ぶりの再会を喜び合うことでもなく、元の世界に帰れなくなってしまったことをお互いに嘆くことでもなく、このオブジェクトを収容するために尽力することだ。これは我々の、財団の職員としての我々に課せられてた責任だ。今、この場で、この状況で、財団の職員にあるまじき言動は言語道断。そのような失言、するべきではない!
エージェント・ベルナドット: [沈黙]
エージェント・エドモンド: 返事をしろ! エージェント・ベルナドット!!
エージェント・ベルナドット: ああ。[沈黙]ああ、分かっているよ。エージェント・エドモンド。今のは流石に失言だった。すまん。でも[沈黙]
エージェント・エドモンド: [沈黙]分かってくれたならいい。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]
エージェント・エドモンド: 取り敢えず、報告はしておいてくれ。そろそろ携帯の充電が切れそうなんだ。電気は通ってるみたいだから、今後も通話はできると思う。それじゃ。
<録音終了>
<録音開始, [(20██/5/1█)場所:サイト-086]>
エージェント・ベルナドット: もしもし、こちら通信担当のエージェント・ベルナドット。
エージェント・エドモンド: こちら、SCP-XXX-JP内部調査担当のエージェント・エドモンド。よかった通じた。どうやら僕の失踪地点の距離と携帯の電波の関係は度外視されているみたいだね。これも調査記録として残しておいてよ。エージェント・ベルナドット: ああ。だが、私語は控えろ。この通信はあくまで報告書作成の為の記録だ。通信が遅れていたみたいだったが、何か問題でもあったのか。それと今言った失踪地点との距離についても報告しろ。
エージェント・エドモンド: あ、うん。ごめん。いや、それといった問題はない。気温も、時間帯も、太陽の位置も、前回報告した時の状態を維持し続けている。今回通信が遅れた理由は他にある。今、中国にいるんだ。まあ、こっちの世界の方のだけど。
エージェント・ベルナドット: 中国?
エージェント・エドモンド: 少し、この世界の規模について調べてみようと思ってね。一応、僕の失踪地点と酷似した場所は隈無く調べてみたんだけど、そこ以外の場所もどうやら再現、って言っていいのか分からないけど、存在しているぽかったから。だから、それが一体どこまでになるのかが気にな。案の定、海外まで行くことが出来たよ。
エージェント・ベルナドット: でも、どうやって
エージェント・エドモンド: 港に置いてあった漁船を借りたんだ。まるで新品みたいだったよ。誰にも使われた形跡はなかった。恐らく、停船されていた場所は、そっちの世界の場所と同じなんじゃないかな。多分、近々こっち側とそっちの類似点を調べていく必要がありそうだ。
エージェント・ベルナドット: 分かった。報告書に纏めておく。[ため息]それにしても、お前はいつも無茶ばかり。[咳払い]いや、何でもない。それで、その他に何か発見はあったか?
エージェント・エドモンド: 定期報告でも言ったとおり、こちらにある物や建物、その中にある家具や道具、それらの経年劣化の痕跡は一切見られない。本当に新品同然だ。本当に傷ひとつない。誰にも使われたことがない位に。途中、乗り捨ててあるように駐車されている車もあるんだけど、ガソリンも満タンで、走行距離もゼロのままだった。それに、僕がこうやってそっちに連絡出来ていることからも分かるように、電気系統もしっかりと機能しているみたいだ。
エージェント・ベルナドット: 発電所などは調べたのか?
エージェント・エドモンド: 勿論。███県から出て、その途中にあったダムに侵入してみた。
エージェント・ベルナドット: 結果は?
エージェント・エドモンド: 不思議なことに、一切機能していなかった。人がいた形跡も見当たらないし、設備も最近出来たものみたい綺麗だった。まあ、誰もいないみたいだった分、埃みたいなのは積もっていたけどね。けど、にも関わらず、そのダムから███km離れた変電施設には電気が通っていることが確認できた。この現象の境界も調べようかとも思ったけど、詳しく確認するための機材が今のところ入手出来ていないから、今後の課題になるだろう。
エージェント・ベルナドット: 分かった[鉛筆で何かを書く音]それと、エージェント・エドモンド。
エージェント・エドモンド: ん? 何?
エージェント・ベルナドット: 今までこの現象についての報告で、建造物、知的生命体の有無についての報告を主に行ってきたが、食い物はどうしてるんだ?
エージェント・エドモンド: 食い物?
エージェント・ベルナドット: ああ。担当の博士からの要望でそっちの食物、もしくは食品の有無についても報告してほしいと言われた。今後、そちら側に侵入することが出来た場合を考慮して、調査団を派遣する際になるべく多様な情報が必要だとのことだ。それで、どうなんだ。
エージェント・エドモンド: [沈黙]
エージェント・ベルナドット: おい。どうした。そっちにあるのか? まあ、あるにしても誰もいない店の中とかだろうから、別に店から盗んでるわけじゃないんだし
エージェント・エドモンド: 減らないんだ。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]は?
エージェント・エドモンド: ここ数ヶ月、一切空腹という感覚を味わっていない。勿論、こっち側には食べ物なんてない。スーパーの中も、デパートの食品売場にも、何もない。何故か、調理施設とか器具はそのまんま置いてあるんだけど、食べ物といえるものなんて一つも。畑だろう場所はあるけど、何も植えられていない。山菜も探してみた。駄目だったけど。でも、減らないんだ。一日中歩きまわっても、多少の疲労感はあるものの。減らないんだ。
エージェント・ベルナドット:[沈黙]それは、そっちの世界の影響か?
エージェント・エドモンド: 分からない。でも、僕は今そんな物を摂取しなくてもこうやって生命活動を維持し続けることができていることだけは確かだよ。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]そうか。
エージェント・エドモンド: それとさ、そう思うと、最近こういった仮説が浮かんでくるんだ。
エージェント・ベルナドット: 仮説?
エージェント・エドモンド: うん。僕、いや僕という存在は、もうとっくの昔に終わっているんじゃないかってね。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]エージェント・エドモンド: そもそも、今、僕がいるこの世界というものが本当に存在しているのかすら、こうしていると怪しくなってくるよね。この携帯を通じて、唯一君と更新することが出来て、でも、もしかすると僕という存在はあの時から既に消滅していて、この君の携帯という物を通じて僕という存在をトレースした音声のみが流れてくる、そういった類のオブジェクトなのかもしれないし、もしかしたらこっちは死後の世界なのかもしれない。まあ、死後の世界なんて証明できるわけもないから、財団の職員としてはあまり言うべきことじゃないのかもしれないけど。どちらにしろ、僕という存在は完全に消えているとうことで共通している。まあ、この考え自体が正しいのかどうかなんて、今の僕にも君にも確かめることなんて出来ないんだけど、それもひとつの可能性としてあるんだよ。もしかしたら、君の携帯自体が何かしらの影響を受けていて、ただこういった音を発しているっていう
エージェント・ベルナドット: やめろよ。
エージェント・エドモンド: え。
エージェント・ベルナドット: そんな、話。するんじゃねえよ。
エージェント・エドモンド: [沈黙]
エージェント・ベルナドット: そんな、くだらねえこと考えてる暇あったら、とっととこっちに戻ってくる方法を見つけやがれ。じゃねえと、俺が先にその方法を見つけて、直接お前の顔面を殴りに行ってやる。だから、
エージェント・エドモンド: だから、そんなこともう二度と言うなって?
エージェント・ベルナドット: [沈黙]
エージェント・エドモンド: わかったよ。もう言わない。約束する。絶対にここから帰ってくる。[笑う]私語は慎めって、君が言ったのにね。これじゃあ、お偉いさんに怒られるね。
エージェント・ベルナドット: ああ。
エージェント・エドモンド: やっぱり君は熱いなあ。この職場じゃ確実に浮くよ。
エージェント・ベルナドット: だから、お前といつも一緒に、何年もやって来たんだろうが。
エージェント・エドモンド: お互い、浮いた物同士だもんね。そろそろ、新しい拠点を見つけなきゃ。落ち着いたらまた連絡する。じゃあ。
<録音終了>
<録音開始, [(20██/11/█)場所:サイト-076・第4会議室]>
エージェント・エドモンド: もしもし!? ベル!? すぐに知らせようと思ってたんだけど、安定して携帯を充電できる場所がなかなか見つからなくて! でも凄いものを見つけたんだ!
エージェント・ベルナドット: [沈黙]エージェント・エドモンド: ん? どうしたの? ベル。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]エージェント・エドモンド。今からSCP-XXX-JPに関する活動内容の報告を行う。いいか?。
エージェント・エドモンド: え、うん。別に問題ないよ?
エージェント・ベルナドット: エージェント・エドモンド。O5の決定により、本日付けでエージェント・エドモンドの救出作戦に関する計画の凍結準備、そして、SCP-XXX-JP内への侵入方法の調査活動に関する予算削減が決定した。侵入経路の捜索を担当していた機動部隊は全て撤退。担当エージェントを3名のみ指定し、今後彼らが調査を行う。SCP-XXX-JPの記録は担当研究者によって保管され、SCP-XXX-JPによる更なる影響が見られない限り、この状態を現在の収容状態として維持する。その為、エージェント・エドモンドをSCP-XXX-JPと同様のオブジェクトとして認識し、収容すること。以上だ。
エージェント・エドモンド: [沈黙]そうか。
エージェント・ベルナドット: 凍結準備と言っても、本部はほぼ全ての作業と人員の配置を取りやめる。凍結準備というものは建前であって、ほぼ、完全にお前の救出作戦は取り止めになっているも同然だ。すまん。俺の、俺の力不足だ。くそったれ。
エージェント・エドモンド: 良いよ。仕方がない。僕が消えてから、何年経ったっけ。
エージェント・ベルナドット: 言うな。考えたくもない。それに、これ以上話したって無駄だ。[沈黙]報告を続行する。建造物以外での発見はあったか?
エージェント・エドモンド: [沈黙]まあ、僕もそろそろだとは思っていたけどね。こんな、一エージェントに構っている時間なんて、財団からしたらただ時間を無駄にするだけだから。
エージェント・ベルナドット: おい。だから[咳払い]エージェント・エドモンド。私語を慎め。これはSCP-XXX-JPの公式の報告内容として
エージェント・エドモンド: 僕らがこうしている間にも、世界中で僕らが収容しなければならない新たなオブジェクトが発見され続けているんだ。今、一体何処にあるのか、どうやって入るのかも分からない場所なんかに金と労力を浪費するより、今、目の前にある確かな物を収容することの方が最優先事項だよ。多分、僕の任務は継続するんだろうけど、この世界の収容に関しては、もう財団の方も諦めてるのかな。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]
エージェント・エドモンド: 仕方ないよ。これも、財団のエージェントとしての勤めさ。多分、そろそろ僕の家族にも、僕の死亡についての情報が流されてる頃じゃないかな。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]エージェント・エドモンド。
エージェント・エドモンド: うん。ごめん。やっぱり、君と話してるとおもわず、あ。ごめん。
エージェント・ベルナドット: 兎に角、今は報告を行ってくれ。
エージェント・エドモンド: あ、うん! とうとう、こっちにしかない物を、つまり僕らの世界とこちら側の世界との相違点を見つけたんだ!
エージェント・ベルナドット: 分かった。兎に角、落ち着いて、丁寧に説明しろ。お前が興奮してたんじゃ、記録として成り立たなくなる。一体どんな違いがあった。
エージェント・エドモンド: うん。まあ、いや、どう表現すればいいのかわからない形をしてるんだけど、言ってしまえば何かしらの建造物だよ。でも、明らかに物理法則を無視している造りをしているのは確かだ。撮影して、そちらにそのデータを送信しようとしたんだが、何か強い電磁波か電波障害みたいのが発生しているらしく、なかなか出来ない。辛うじてそっちに電話をすることだけは出来たけど。しかし、これは大発見だ! こっちに来て、初めて 僕達の世界との相違点を見つけられた! もしかしたら、この世界について、更に何か分かるかもしれない! もう少しかかるかもしれないけど、これは大きな一歩だよ! あ、因みに、今いるところはアメリカのロサンゼルスで確か町の名前は[沈黙]ベル?
エージェント・ベルナドット: [沈黙]
エージェント・エドモンド: [沈黙]心配いらないよ。僕は大丈夫だから。
[しばらくお互いに黙る]
エージェント・ベルナドット: [沈黙]続けてくれ。
エージェント・エドモンド: [沈黙]うん。現在の場所は、アメリカのロサンゼルス。町の名前は███・█████だ。建造物の特徴は、全体的に流線型を維持している。表面は白く、大理石と似ているかもしれない。壁面表面への接触を試みた際、見た目とは裏腹に液体のような挙動をした。まあ、波立ったりとか、腕を潜らせることが出来た。その際、建造物の崩壊などは無く、今現在のその形を維持している。高さはおよそ20m。目測だからどこまで正確かは判断しにくいけど、後日機材を揃えて詳細な記録を報告するよ。それと、さっきも言ったけど、明らかに重力を無視した立ち方をしてるの確かなんだ。どうやって地面から接地面が離れずに建っているのか検討もつかない。大体の情報は以上かな。
エージェント・ベルナドット: 分かった。報告書にまとめる。
エージェント・エドモンド: 了解。それじゃあ
エージェント・ベルナドット: なあ、エド。
エージェント・エドモンド: ん?
エージェント・ベルナドット: [沈黙]すまん。
エージェント・エドモンド: [沈黙]
<録音終了>
<録音開始, [(20██/4/2)場所:サイト-076]>
エージェント・ベルナドット: 今から、SCP-XXX-JPに関する定期報告を行う。こちら、担当のエージェント・ベルナドット。
エージェント・エドモンド: こちら、担当のエージェント・エドモンド。今いる場所は、地球上でのアフリカ大陸、ナイロビと同様の地点であると思われる。エージェント・ベルナドット: 何か変化はあったか。
エージェント・エドモンド: いや、特には無いよ。気候も安定している。未だ知的生命体、および生物の発見には至っていない。
エージェント・ベルナドット: そうか。その他に報告することはあるか?
エージェント・エドモンド: もう、既に地球を一周しちゃったからねえ。もうこれといって、伝えることと言っても。今後、こちら側に何かしらの変化がない限り、無いだろうね。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]
エージェント・エドモンド: もう、何年も同じことをしてたら、適当にもなるさ。仕方ないよ。
[暫くの間沈黙]
エージェント・ベルナドット: これ以上報告内容がないのなら、これにて本日の報告を終了する。ご苦労だった。エージェント・エドモン
エージェント・エドモンド: ねえ。ベル。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]どうした。
エージェント・エドモンド: ちょっとね。思うことがあるんだ。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]
エージェント・エドモンド: この世界。何かに似てる気がするんだよ。
エージェント・ベルナドット: 似てる?
エージェント・エドモンド: うん。こう、あの夕焼けの世界をずっと眺めていると、何故か、凄い懐かしい気分になるんだ。
エージェント・ベルナドット: そうなのか。
エージェント・エドモンド: ねえ、ベル
エージェント・ベルナドット: [沈黙]
エージェント・エドモンド: ベル?
[暫くの間沈黙]
エージェント・ベルナドット: エド。もう、あまり、個人的な話はしないほうがいい。
エージェント・エドモンド: [沈黙]
エージェント・ベルナドット: これ以上勝手に話し続ければ、監査の手が入って通信が終了させられる。それに、前、お前が言っていたように、この通信自体がオブジェクトなのではないかっていう風潮も広がりだした。下手をすると、この携帯電話自体を収容するハメになるかもしれん。そんな事になったら、俺は[沈黙]
エージェント・エドモンド: [小さく笑う]財団の職員として、あるまじき言動だね。もし、そうなったらそうなっただよ。上の決定は絶対だ。
エージェント・ベルナドット: だから、エド。もう
エージェント・エドモンド: ベル。詩は、まだ書いてるのかい?
エージェント・ベルナドット: [沈黙]え?
エージェント・エドモンド: 書いてるか、どうか。それだけ応えてくれ。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]いや、全然。
エージェント・エドモンド: どうして?
エージェント・ベルナドット: [沈黙]どうしても何も
エージェント・エドモンド: まだ、自分のキャラじゃないとか言ってるの? 君の詩はあんなに素晴らしいのに。僕はすきだよ? あれは皆傑作揃いだ。
エージェント・ベルナドット: [沈黙]
エージェント・エドモンド: ベル?
エージェント・ベルナドット: あんなもの書けたって。何も出来やしない。[沈黙]お前を、助けることも。
[暫くの沈黙]
[雨音が交じる]
エージェント・エドモンド: あ、雨だ。
エージェント・ベルナドット: 何?
エージェント・エドモンド: [沈黙]そうか。
エージェント・ベルナドット: おい、どうしたエド、いや、エージェント・エドモンド。何が起きているのか報告しろ。
エージェント・エドモンド: だから、ここはいつもそうなんだね。
エージェント・ベルナドット: おい、何が起きてる!
エージェント・エドモンド: だから、僕らは、通じ合えたんだ。
エージェント・ベルナドット: お前、何言って
エージェント・エドモンド: 今、僕は確信したよ。この世界が、何でこうも懐かしいのか。この世界が、何であの日の夕焼けのままで止まっているのか。
[ノイズが交じる]
エージェント・ベルナドット: おい、エージェント・エドモンド。それはどういうことだ。何がわかったっていうんだ。おい。エージェント・エドモンド。エド!
エージェント・エドモンド: やっぱり、僕は、消えてしまっていたのかな。ねえ、ベル。また、あの詩を書いてよ。僕、楽しみにしてるんだか
[通信が断絶する]
エージェント・ベルナドット: おい。おい、エド!! おい! 返事をしろ!! おい!! おい!!
<録音終了,>
追記1: 20██/8/8、エージェント・ベルナドットの申請により、再度エージェント・エドモンドの失踪した地点を捜索した結果、エージェント・エドモンドの物と思われるバックパックが発見されました。遺留品の状態は極めて悪く、およそ████年以上経過していると思われます。現在、発見された遺留品はサイト-076の保管用ロッカー内にて管理されています。
追記2: エージェント・ベルナドットの個人で所有し、執筆していた詩集の中に、エージェント・ベルナドットとは異なる筆跡の文章が発見されました。調査の結果、エージェント・エドモンドの筆跡と一致。また、過去にエージェント・エドモンドが報告したSCP-XXX-JP内の様子とエージェント・ベルナドットの詩集の内容にいくつか類似する点が見られることが発覚し、現在、エージェント・ベルナドットの詩集を保管し調査を行っています。
追加されていた文章
僕らはいつも一緒だった。
そして、僕は君の紡ぎだすあの言葉の世界が大好きだった。
君の生み出した、君の見ていた世界が、僕にはまるで大きな水晶を通して見た時のように、七色に輝いていた。
君は、自分のこの感性を自分で笑っていた。
男のくせに、こんなものばっかし書いてるなんて笑われてもしょうが無い、と。
だけど、僕はそうは思わない。
だって、君のこの世界はこんなにも美しいんだから。
だから、これからもこの世界を紡いでいって欲しい。
これは、君の世界だ。
僕は、君と共にずっと生きていくよ。
僕は、いつも、いつだって、君のそばにいるよ。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-8181内の標準人型収容室にて収容されます。収容室内には監視カメラを設置し、二名の女性セキュリティー担当者によって24時間体制で監視されます。通気口など外部との接続可能な箇所はSCP-XXX-JPの身体一部の遠隔操作による収容違反を防ぐ為、細かな穴の開いた鉄板などで封鎖されます。現在、SCP-XXX-JPに関する実験、研究は全て非同性愛者である女性職員のみのチームによって行われています。また、男性職員および同性愛者である女性職員による無許可のSCP-XXX-JPへの接触は禁止されており、異常性伝染防止のため違反した職員は速やかに終了されます。SCP-XXX-JPに曝露したと思われる職員を発見した場合は速やかにサイト管理者に報告してください。また、SCP-XXX-JPに曝露したと思われる職員と接触、会話をしたと思われる職員は特殊医療班の検査を受け、Bクラスの記憶処理を適用されたうえで、経過観察のため収容されます。現在SCP-XXX-JPからの要求は一切受け付けておらず、特に衣服の提供は禁止されています。
説明: SCP-XXX-JPは身長177cmの人間の全身骨格です。SCP-XXX-JPの年齢は身長と骨の形状などから推定27歳前後であると思われ、現在、対象の経年劣化などの兆候は報告されていません。SCP-XXX-JPの体はほぼ完全な状態で保存されており、かつ対象は通常の人間のように振る舞い活動しています。ただし左手薬指と右肋骨の欠損など、その他にも刃物で傷つけた跡のような一部損傷が見られます。SCP-XXX-JPは自身の名前を██ ███と供述しており、戸籍調査を行った結果、該当する人物の存在が確認されました。現在、SCP-XXX-JPと██ ███氏との情報を照らしあわせた結果、歯型など他7箇所以上の一致点が確認されたためSCP-XXX-JPと██ ███氏が同一人物であることが判明しました。骨盤やその他の骨格の形状、戸籍の情報、SCP-XXX-JPから発せられる「声」の特徴から、SCP-XXX-JPの性別は「女性」に分類されると推測されます。
SCP-XXX-JPは骨格以外の生体組織が存在していないにもかかわらず活動し、かつ未知の原理で発声、摂食活動3本来ならば筋肉を必要とするような動作4、呼吸を行っています。SCP-XXX-JPの身体調査を行いましたが、不可視な物質、器官などは発見されず、対象は純粋に人骨のみで構成されていることが判明しています。また、SCP-XXX-JPには視覚や聴覚、味覚も存在しており、SCP-XXX-JP自身の周囲の状況や環境、摂取したものの味など、通常の人間が有する感覚と同様に認識していると推測されます。しかし対象には触覚と痛覚のみが欠落していると思われ、その為SCP-XXX-JPの視覚外からの接触に対し一切反応しないなどのケースが多々見られます。また、痛覚の欠落からSCP-XXX-JP自身が自らの肩や腕の関節を外すなどの行為が可能であり、SCP-XXX-JP自身から取り外された身体の一部はSCP-XXX-JP自身の意思によって遠隔的操作が可能であることも発覚しています。現在、これらの活動原理、筋組織の欠落にもかかわらず行動している原理についての調査が行われています。また、SCP-XXX-JPが衣服を着用した場合、そこに生体組織が存在していないにもかかわらず、人間の女性の乳房、腰、臀部などの輪郭が浮き出るという現象が発生します。衣服の上からそれらに触れたとしても物体の存在を確認することは出来ず、衣服内部を調査しましたが異常性のある物質、大気などは一切検出されませんでした。なお、SCP-XXX-JPの有する異常性のためか、SCP-XXX-JPは衣服を着用することに対して積極的になる傾向が認められ、その為、現在SCP-XXX-JPに対して衣服の提供を行うことは禁止されています。
SCP-XXX-JPの異常性は、人間の男性および同性愛者である女性(以下、被験者)がSCP-XXX-JPと30分間以上何らかの接触を行った場合に発現し、その後、被験者はおよそ一週間以内に自殺します。なお、これらの異常性の発現はSCP-XXX-JPが衣服を着用した場合とそうでない場合で、後者の場合の方がより強い影響が見られることが判明しており、その為、SCP-XXX-JPによって引き起こされる異常性は被験者がSCP-XXX-JPをより強く「女性」であると認識することによって変動すると推測されます。また、これらの自殺方法は一貫しており、手段、使用するツールなどはそれぞれの被験者によって異なりますが、どのケースも皆自分自身の肉体を切断し、骨から剥離しようとすることで共通しています。被験者は痛覚が存在しているにも関わらず絶命するまでこれらの行動を全うしようとし、現在最高で全身のおよそ57%を剥離したDクラス職員の存在が確認されています。調査の結果、これらの異常性は強制的なものではなく、被験者自身の意志によって行われていることが判明しており、ある程度までは自制することが可能ですが暴露してからの時間経過に伴いそれらの行動に対する欲求が強まる傾向が判明しています。これらの症状は軽度であればBクラスの記憶処理を行うことで治療が可能ですが、大抵の場合は治療前に全ての被験者は自害します。当初これらの異常性は個人に対する認識災害によるものだと考えられていましたが、曝露したDクラス職員のインタビューを担当した研究員にも同様の異常性が発現するという事案が発生し、これらの異常性の伝染性が発覚しました。5結果██名のDクラス職員と██名の研究員が自殺し、その後、機動部隊の介入により事態は収拾されました。その為、これらの異常性が発現した財団職員は異常性拡散防止のため、その場で終了されることが決定しています。
対象: D-XXX-JP-001
インタビュアー: 研究員036
付記: このインタビュー記録は曝露したDクラス職員の供述を記録したインタビューです。なお、このインタビューから7日後に研究員036にも同様の異常性が見られるようになりました。
<録音開始, >
研究員036: どうも。気分はどうだい?
D-XXX-JP-001(以下D-001とする): [10秒程の沈黙]研究員036: まあ、いいわけないか。さて、それじゃあ始めよう。
D-001: [10秒程の沈黙]
研究員036: 率直に聞くが、なんであんなことを?
D-001: あんなこと[3秒程の沈黙]。あんなことか。
研究員036: そう。19██年、2月9日。君は自分自身の右腕の肉を食堂にあったスプーンを使って削ぎ落とした。そのことについて教えてくれ。
D-001: [3秒程の沈黙]違うんだ。あれは。
研究員036: 違うって、いったい何が違うっていうんだ?
D-001: [5秒程の沈黙]あんたは、多分、俺の頭がおかしくなったとか、そんな、[唾を飲む]そんな風に思ってるんだろう。
研究員036: それについては答えかねる。それで? どうして、あんなことを?
D-001: [10秒程の沈黙]何かに、何かから開放されたいから。そう[5秒程の沈黙]そういうことを、やってしまうって。そんな気持ち。あんたには、[3秒程の沈黙]無いか?
研究員036: あいにく、私はそれについては良くはわからない。[5秒程考える]だが、君は何かに拘束されているような感じがした。つまりそういうことだね? [メモを取る]当たり前のことだけど、お陰で君は右腕を失った。痛みは?
D-001: 痛み[20秒程の沈黙]痛みは[10秒程の沈黙]あった。あったとも。だけど、[10秒程の沈黙]そうじゃないんだ。
研究員036: なら、何が君をそこまで駆り立てた? 本当だったら気を失っていてもおかしくない程の激痛のはずだ。だけど君はそれをやった。どうして?
D-001: [10秒程の沈黙]俺は。
研究員036: 俺は?
D-001: [30秒程の沈黙]
研究員036: [5秒程の沈黙]どうした?
D-001: 自分でも[咳き込む]自分でも、分からない。違う、分からないんじゃない。[4秒程の沈黙]だけど、気がついたら。[沈黙]いや、やり始めたのは自分だが[咳き込む]自分でだが、止まらなくなった。止まらなくなったんだ。
研究員036: どうして。
D-001: [10秒程の沈黙]わからない。
研究員036: わからない、か[8秒程の沈黙]
D-001: いや、嘘だ。わからなくなんか無い。わかってる。わかってはいるんだ。でも[頭を抱える]
研究員036: [7秒程の沈黙]。わかった、じゃあ話を変えよう。君はさっき、何かから開放されたかったと言ったね。それは一体、何から?
D-001: あれは[3秒程の沈黙]違うんだ。別に、何かになろうとしたわけじゃない。[5秒程の沈黙]ただ、ただ俺は[10秒程の沈黙]自分が[俯き沈黙する]
研究員036: どうした。どこか悪いのか?
D-001: [10秒程の沈黙]彼女。彼女の。
研究員036: 彼女? [4秒程考える]SCP-XXX-JPのことか。[4秒程の沈黙]どうして、今そのことを。
D-001: 違う、彼女のせいじゃない。俺だ。勝手にしたことだ。違う、違う。違う。
研究員036: [5秒程考える]分かった。じゃあ、その彼女について聞かせてくれ。
D-001: [5秒程の沈黙]ああ。[顔を上げ、笑う]
研究員036: どうした?
D-001: いや、[7秒程の沈黙]彼女と初めて会った時、正直驚いた。
研究員036: 君がSCP-XXX-JPに会ったのは[資料をめくる]丁度一週間前か。
D-001: ああ。人生で、一番忘れられない日だ。お前とは違う研究員に連れられて、彼女の居る部屋に入った。最初は、まあ、あの姿だったから、正直ビビった。けど、話をしていく内に、そんな感情どっか行っちまった。彼女は、こんなどうしようもない俺を、優しく受け止めてくれた。小さい頃に、おふくろを無くして、ロクデナシの親父と二人暮らしで。盗みだってやらされたし、ビール瓶で殴られたこともあった。そんな昔話を全部ぶちまけて、でも、彼女をそれをしっかりと聞いてくれて。初めてだった。こんな、なんていうか、暖かい気持ちになれたのは。
研究員036: [8秒程の沈黙]なるほど。
D-001: 信じられなかった。俺の周りには、俺も含めて、クソみてえな連中ばっかだった。いっぱい人を傷つけて、騙して、そんでサツにしょっぴかれて、挙句の果てにはこんな場所で働かされて。でも、彼女はそんな俺の、こんなクソみてえな人生の光になってくれたんだ。こんな俺のために。こんな俺のためなんかに。彼女は、まさに無償の愛を注いでくれた。彼女はまさに女神だ。姿形なんて関係ない。彼女の心が、狂おしいほど美しいんだ。
研究員036: [メモを取る]
D-001: あんたも彼女に会ってみるといい。まるで違う世界が開かれる。
研究員036: そうか。だが、私は遠慮しておくよ
D-001: そして、我々の世界は開かれたのだ。
研究員036: え。今なんて[態度が変わり、無表情になる]
D-001: そう、彼女は光だ。我々の光なのだ。彼女のお陰で全てが美しく見えた。この世は彼女のためにああり、我々は皆彼女のために生きているのだ。だから、我々は決断しなければならない。全てを脱ぎ捨て、彼女のもとに集い、彼女為に生きることを。この体を脱ぎ捨て、真(まこと)の姿を取り戻すのだ。我々の命を彼女に捧げよ。それが我らの喜び、彼女の糧となる事こそ我らの念願であり、生きる意味なのだ。
研究員036: [涙を流す]
D-001: この肉体を捨てた先にこそ心理が存在する。彼女の美しさがその象徴だ。我々は彼女のために生き、その血を捧げる。だからこそ、今こそ、この、肉の服を脱ぎ捨てるのだ。
研究員036: 我らの望む安寧こそ、彼女のもとに集う事であると我々は悟ったのだ。自愛に満ちたかの母のような彼女の愛に身を任せ、魂を委ねるのだ。
D-001: 彼女は、ある時、苦しんでいた。我々には想像もできない程の苦しみだ。彼女は、それと長い間戦い続けてきた。でも、それにも耐えられないまでに、自分を追い詰めてしまったのだ。それに立ち向かうには、彼女はか弱すぎた。それを聞いた時、我々も息が止まるほどだった。それが、我々のそう想像を遥かに超えて、あまりにも過酷すぎた。そして、彼女は、ある決断をしたのだ。そう、声が聞こえたのだ。
研究員036: [6秒程の沈黙]私は、今、何を喋った。私は
D-001: [3秒程の沈黙]決断は決断だ。その苦しみを取り除くための。
研究員036: 一体何が[立ち上がる]
D-001: 私は今はっきりと言おう。我々はあなたを
[3分程の沈黙]
研究員036: おい、貴様、私に何を
[D-001が自身の左腕に噛み付き、腕の肉を体から引き剥がす]
研究員036: 私に何をした!!
D-001: 愛していると。[なおも肉を引きちぎる]
セキュリティー担当者: おい! 貴様何をしている!!
[セキュリティー担当者がD-001を取り押さえる。]
研究員036: [1分程の沈黙]
D-001: [叫び続ける]
研究員036: 私は、私は[涙を流す]止まらない。何だ。なんでこんなに、彼女のことが
<録音終了, >
補遺: SCP-XXX-JPは██県、███市████町██丁目のマンション近くで発見されました。当時、同住所近くに在住していた一般男性が夜間のジョギングをしており、その時に徘徊していたSCP-XXX-JPと遭遇しました。その男性からの通報により、財団は数名のエージェントと二名の機動部隊隊員を派遣。SCP-XXX-JPは大変落ち着いた態度でその地点で佇んでおり、職員によって回収されました。
SCP-XXX-JPに行ったインタビューによると、19██ ██月█日に対象は自身の在住していた、発見された同県同市の██町3丁目の自宅アパート内にて、浴槽内にて自らの肉体を骨から削ぎ落とすと言った行為を行った結果、現在の姿になったと供述しています。現在、これらの供述の内容に関する調査を行っていますが、詳しい状況、経緯などは判明していません。また、SCP-XXX-JPが以前居住していたアパートを捜索しましたが、2000年 █月██日に取り壊されたことが確認され、現地での調査は中断されました。その後、██ ███氏の親族、関係者などの人物の捜索も行いましたが、過去██ ███氏と関わったと思われる人物全ての死亡が確認されました。
現在、SCP-XXX-JPの研究に携わっていた1名の職員が行方不明となっています。以下の記録はその職員のオフィス内で発見されました。
対象: ドーン博士
付記: これは初期のSCP-XXX-JPの研究メンバーであったドーン博士による音声記録です。現在、ドーン博士は行方不明となっており、この記録と合わせて調査が行われています。
<録音開始, >
ドーン博士: ああ。ああ。[マイクを叩く音]私はドーン。███ ドーンだ。これを聞いている人がいるとして、私のことを知っているのであれば幸いだが、もしそうでない人がいた場合を考慮して、すこしばかりの自己紹介と現状の報告を行おうと思う。[ドーン博士はの小さなうめき声の様なものが聞こえる]
ドーン博士: すまない。今の現象についても、後々説明しよう。まず初めに、私の自己紹介のようなものだが、私はSCP-XXX-JPの初期の研究メンバーだった。とは言っても、私がしていたことは資料の整理だとか、報告書、インタビュー内容の管理だったが。まだSCP-XXX-JPが動く白骨でしかないと認識されていた頃、私達の調査と研究によって、今のSCP-XXX-JPの異常性が判明したと言っても過言ではない。まあ、多くの犠牲を出した結果であることも間違いない。そして、もう一つ伝えなければならない事は、私はあの惨劇の唯一の生き残りであるということだ。あの事件によって、私の同僚は皆死んだ。いや、殺しあった。SCP-XXX-JPという存在に取り憑かれ、その「魅力」の様なものに取り込まれてしまった者、皆死んで、殺しあって、自らの命を絶った。運が良かったことに、私はその異常性に侵されているわけではないと診断された。現に、今もこうして生き続けることができている。だが、私が今回言いたいことはそんなことじゃない。
[4秒程の沈黙]
ドーン博士: すまない。今回、私がここに残しておきたい物というのは、今、現在の私の状況だ。これを聞いている人がいると仮定して、先程から私が、うめいたり、急に黙ったりしていることに関して、疑問に思っている人もいるかもしれない。先の私の自己紹介を念頭に置いたうえで、私のこのおかしな行動というものの原因が、今回の記録の目的であることに理解を頂きたい。現在、私はある「声」に悩まされている。声と言っても、そこまで明確な物が聞こえてくるわけではない。どこか、ぼんやりとした、小さい「声」が響いてくるのだ。だが、それは
[3秒程の沈黙]
ドーン博士: すまない。先程からも、その「声」が聞こえていて。[5秒程の沈黙]最近、それの感覚がやたら短くなっているのを感じる。そもそも、これがただの幻聴の類なのではないかと思う人もいるだろう。とは言っても、殆どの人間がそう思うような気もする。だが、また私の経歴を持ち出すのだが、この「声」が聞こえ始めた時期と言うのが、私がSCP-XXX-JPの研究に携わりだしてからだということが問題なのだ。勿論、私はSCP-XXX-JPと接触したこともなければ、暴露した人間からSCP-XXX-JPのことを聞いた覚えもない。そんな記録も存在しない。だが、私があの研究チームに入り、あの事件を越えた今でも、この「声」が止まる気配がないのだ。いや、止まるどころか、昔より頻繁に、そして大きくなっている。そして、もう一つ重要なことが、この「声」の発生している場所である。それは[10秒程の沈黙]それは
[25秒程の沈黙]
ドーン博士: クソ。ちくしょう。
[ドーン博士の小さなうめき声]
ドーン博士: [荒い息]この記録をとろうと思い立ったのは、正直言って自分の身の危険を感じたからだ。明確な物は一切なかったが、何故か、そんな気がした。もし、私がこのまま何も残さずに死んだりしたら、それこそ、財団に務める職員として恥じるべき行動だと思った。だから[3秒程の沈黙]いや、今からでも上に報告すべきなのか。いや、話を戻そう。どこまで話した[2秒程の沈黙]そうだ、私の聞いているその「声」。それの発生している場所だ。それは決して外ではない。どこからか誰かが私を呼んでいるというわけではない。正確にその「声」が何を言っているのかまでは私にもよくわからないが、何かを訴えているのだ。しかも、私の体の中から。自分なりにもこの声の正体を突き止めようと努力してみたが、駄目だった。もしかしたら本当に音が鳴っているのかもしれないと思い、音感知装置を使ってもみたが、何も発見できなかった。結果、これは私の頭の中だけのことだということがはっきりとした。だが、これは私の勝手な言い分だが、これはそんな、ただの幻聴ではないような気がするのだ。言うのもおかしなことだが、いつも、いつだって、これは私の「中」から聞こえる。私の中にいる、もう一人の誰かが、私に対して、何かを訴えている。そして、これの他につい最近になって起こり始めた
[ドーン博士のうめき声]
ドーン博士: くそ。またか。つまり、これだ。ここ最近になり、「声」も頻繁に聞こえ出したあたりから、体の自由が利かなくなってきているのだ。とは言っても、別に動かなくなるというわけではない。むしろ、その逆だ。勝手に、そう勝手に動き出すのだ。そして、その中でも、私はそれに抵抗することが出来る。言っていることがよく分からないかもしれないが、まるで、私の体の中に私と同じ形をした何かがいて、内側から私を動かそうとしているような、そんな感じだ。それと相まって、この「声」。そしてSCP-XXX-JPによる異常性によって死んでいった仲間たちを見ていると、ふと、私の中に一つの仮説が浮かび上がった。
[ドーン博士が声を荒らげ、何かが割れる音がする]
ドーン博士: うるさい! 黙れ! [荒い息]私の仮説は、まあ、こんなもの、科学者としてあるまじき考え方だが、まるでファンタジー、SF小説みたいな話だ。だが、私はこうとしか思えなくなってしまった。そもそも、人間の肉体というものは、全て脳が管理しているのだろうか。神経と言う命令の伝達経路というものに繋がれているが、本当に私達が私達の脳が、私達自身が私達の肉体を支配しているのだろうか。そういう疑問に行き着いた。俗に、胃は第二の脳などと呼ばれ、脳の欲求に対し、独自の動きを行う性質がある。まあ、それを例えに出してくる時点で、私のこの考え事態が間違っていると言えるような気もしないでもないが、しかし、もし私の考えを肯定するのならば、SCP-XXX-JPによる異常性は、私達に働きかけているのではなく、私達の
[ドーン博士悲鳴]
ドーン博士: くそ! くそ! 黙れ! 黙れと言っているんだ! これは私の体だ! あの化け物女なんかにわたしてたまるか!! くそ。くそ。[3秒程の沈黙]もし、この仮説が本当ななら、あのSCP-XXX-JPの存在自体についても説明がつく。我々の中にある、この因子によって、我々は苦しめられている。そうだ。そうに違いない。この一連の事件は、私達の中にある、もう一人の
[ガラスの割れる音]
ドーン博士: [4秒程の沈黙]なんで。なんでお前が、ここに。どうして。
謎の声: 今、あなたの御側に。
[何かが引き裂かれるような音、大量の液体が飛び散る音]
<録音終了, >
終了報告書: 現在、ドーン博士は行方不明であり、この音声記録はドーン博士のオフィス内にて発見されました。室内には、割れたコップ、散乱した資料など、音声記録の内容と類似するような現状が確認されましたが、最後に記録された噴出した液体などの物質は発見されませんでした。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPが記載された書物、メモ等はサイト-71█0のB-33715収容室で保管されます。無許可でのSCP-XXX-JPの持ち出し、量産を行った職員は処分の対象となります。SCP-XXX-JPに関する実験を行う場合はレベル3職員の承認を得たうえで行ってください。
現在、事案XXX-JP-00の発生によりSCP-XXX-JPの実験は禁止、または凍結されています。これらの申請はいかなる理由があろうとも承認されません。
また、サイト-71█0が立地していた地点はサイト-71█0の損壊により、現在サイト-71█0区画として管理されています。担当職員はサイト-71█0区画の周辺20kmを封鎖し、財団の所有するフロント企業の「特殊実験場」と言う名目で一般人の侵入を阻止してください。サイト-71█0に存在していていた物品などは同区画内の緊急収容用倉庫にて保管されています。それらの物品に関する実験などの申請は承認されません。
SCP-XXX-JP-Hangarは事案XXX-JP-00の発生地点にて管理されています。また、サイト-71█0区画への無許可の侵入は禁止されています。セキュリティー担当者は仮設サイト内部の管理区画にてSCP-XXX-JP-Hangarの動向を監視し、異常が発生した際はサイト-7100にまで報告してください。
以下の項目は事案XXX-JP-00以前のSCP-XXX-JPに関する概要です。事案XXX-JP-00、現SCP-XXX-JPについては同表記の項目からアクセスし、参照してください。
説明: SCP-XXX-JPは合計████冊のノート、メモに記録された情報です。現在、これ以外のSCP-XXX-JPが記載されている書物、メモ等は、財団が実験目的で作成した物を除いて、発見されていません。
SCP-XXX-JPの内容はハンガーという言語、概念を中心に構成されており、それぞれのノート、メモにはその内容に順する題名が表記されています。使用されている言語は全て手書きの日本語が用いられており、筆跡鑑定を含めた調査を行っていますが著者の特定には至っていません。また、使用されているインク等は非異常性を有するボールペン、鉛筆、シャープペンシルが用いられており、特殊な成分や異常性は確認されていません。
SCP-XXX-JPは他の紙、メモ、ノート、電子情報などに模写することで量産が可能であり、このことからSCP-XXX-JPの本質は多種の異常現象を引き起こすミーム情報であることが判明しています。SCP-XXX-JPの漏洩を危惧し、オブジェクトクラスをEuclidに指定しました。
オブジェクト番号 | 題名 | 内容・確認される特異性 |
SCP-XXX-JP-A | 必殺!ハンガー拳法!!6 | SCP-XXX-JP-Aはハンガーを用いた体術に関する情報が記載されたノートです。内容は120種類の「型」で構成されており、その「型」それぞれに文章での説明、図表での解説が記載されています。SCP-XXX-JP-Aの特異性は、SCP-XXX-JP-A内の項目を人間が正確に実行した際に発生し、使用したハンガーには高い殺傷能力が発現することが確認されています。また、使用者自身もそのハンガーの影響を受け[編集済]の結果、負傷します。現在、1名のDクラス職員が死亡、2名のDクラス職員が治療を受けています。また、SCP-XXX-JP-Aを人間が視認した際、突如、製造元が不明な木製のブーメラン型ハンガーが被験者の手元に出現する現象も確認されており、現在これらのハンガーの分析が行われています。 |
SCP-XXX-JP-B | ハンガー7マン | SCP-XXX-JP-Bは「ハンガーマン」と書かれた一枚のメモ用紙です。用紙を検査した結果、微量の海水と同様の成分が検出されました。SCP-XXX-Bを人間が視認した場合、対象者はおよそ5分間、絶叫した後に死亡します。影響下の人間を検査した結果、栄養失調、体脂肪の急激な減少、胃、腸の内容物(排泄物を含む)の消失、血小板がブーメラン型ハンガーと類似した形状に変化するなどの現象が確認されました。影響中の対象者に点滴、食物を与えた場合も同様の結果となり死亡します。現在、対象者を延命させる試みは全て失敗しています。 |
SCP-XXX-JP-C | クリフハンガーのその後 | SCP-XXX-JP-Cは「クリフハンガーのその後」と表記された300枚ほどの400字詰め原稿用紙です。内容はハンガーという名の主人公がSCP-XXX-JP-Aと思われる体術を用いて世界的な麻薬組織を壊滅させるというものになっており、クリフハンガーの手法が用いられ終結します。SCP-XXX-JP-Cを人間が読んだ場合、対象者はその瞬間、対象者がその後取るであろう行動全てが反映されるようになります。この現象は対象者を中心とした「行動に関する可能性」の集約を体現していると思われ、対象者、及びその周辺には空間の重複、時間の重複などが確認されるようになります。現在、実験に参加したDクラス職員1名をサイト-81██の特殊収容室30にて収容しています。また、現在影響を受けたDクラス職員の周囲10m圏内で製造元不明なハンガーが突如落下してくるという現象が確認されています。 |
SCP-XXX-JP-D | 題名無し | SCP-XXX-JP-Dは[データ削除済]。結果、被験者は窒息死し、[データ削除済]。 |
SCP-XXX-JP-F | 友達帳 | SCP-XXX-JP-Fは█████種類のハンガーの名称とそのハンガーの「性格」が箇条書されている黒革の手帖です。SCP-XXX-JP-Fの異常性は、対象を人間が視認したうえで、記載されている項目を選択した際に発現します。人間がSCP-XXX-JP-F内の項目を選択した場合、その選択したハンガーと同様の物品が周囲10m以内に存在する不特定の人間の胃内部に出現します。その後、出現したハンガーは対象者の口を通じて体外へと排出され、対象者はその後も定期的に出現したハンガーを排泄するようになります。出現したハンガーを分析した結果、通常のハンガーと同様の成分で構成されており、異常性を有していないことが判明しました。なお、20██/2/11のK88016地区特殊実験場での実験の際に、実験に参加していたDクラス職員の体内にロシアの戦闘機用格納庫8が出現するという事案が発生し、Dクラス職員と研究員を含めた総勢███名の死傷者を出すという事案が発生しました。現在、SCP-XXX-JP-Fの実験は凍結されています。 |
SCP-XXX-JP-G | ミス・ミスターハンガー(裏面に表記) | SCP-XXX-JP-Gは木製のブーメラン型ハンガーの絵です。SCP-XXX-JP-GはA3の画用紙に描かれたおり、非異常性を有する2Bの鉛筆が使用されています。SCP-XXX-JP-Gを人間が30分以上視認した場合、被験者は男女問わずハンガーに対して性的興奮を覚えるようになります。その結果、被験者はハンガーと頻繁に[編集済]を行うようになり、男性の場合はそれ以上の異常性は発生しませんが、女性の場合はハンガーとの[編集済]後に妊娠します。女性被験者が妊娠した場合、体内に胎児や何らかの生物が存在しないにもかかわらず、およそ4ヶ月で出産が可能な状態にまで成長します。現在、3名の女性Dクラス職員が妊娠しており、出産の兆候は確認されていません。なお、実験当初被験者は4名でしたが、妊娠後、1名の被験者が突如死亡。その後、子宮内を切開し調査した結果、ハンガーの形状をした[データ削除済]が摘出されました。 |
サイト-71█0は事案XXX-JP-00の発生により甚大な被害を受けました。現在、施設の約98.32%が機能しておらず、今後のSCP-XXX-JP-Hangarの収容に関する更なる検討が求められます。また、全SCP-XXX-JPの影響下にある人間が何らかの影響で生存した場合に発生する事案XXX-JP-00に関する被害を想定したプロトコルの作成も検討されています。
説明: SCP-XXX-JPはSCP-XXX-JPの創造活動を目的としていると推測される集合的ミーム情報です。SCP-XXX-JPの形状は現在も事案XXX-JP-00以前から変化しておらず、特異性も健在であると思われます。また、事案XXX-JP-00の分析結果から、SCP-XXX-JPによる創造活動に関する人員の選択が行われたと思われる事象が確認されたため、SCP-XXX-JPにはある一定までの知能が存在している可能性が示唆されました。
SCP-XXX-JP-HangarはSCP-XXX-JPによって生成されたプラスチック製の黒色のブーメラン型ハンガーの外見をもつ物体です。対象は常に地上2mの地点を浮遊しており、その下に位置する地面は不透明な赤色の液体へと変化しています。現在、SCP-XXX-JP-Hangarの影響と思われる異常現象が███件報告されており、周囲13km圏内に存在する書物、文献、電子情報にそれらが顕著に見られます。これらの影響を受けたと思われる物品はサイト-71█0区画内の収容用倉庫にて保管されています。物品独自の特異性は現在確認されていません。SCP-XXX-JP-Hangarの影響は対象に接近するにつれ反比例的に強まる傾向があると思われ、半径5m以内ではそれらの影響は人間にまでおよびます。また、SCP-XXX-JP-Hangarは常に未確認の音波を発生させており、分析の結果これはある種の「音楽」のようなものであると推測されました。
事案XXX-JP-00
事案XXX-JP-00はSCP-XXX-JPの創造活動による二次的被害です。事案XXX-JP-00は2███/█/██、未だ実験が行われていなかったSCP-XXX-JPの実験を開始した際に突如発生しました。当時、サイト-71█0内のB棟実験室にてこれらの実験を行っており、参加していたDクラス職員がSCP-XXX-JPを視認した瞬間、対象者が実験室内、およびサイト内の壁を破壊しながらSCP-XXX-JPの創造活動発生地点に引き寄せられるという現象が発生。それと同時刻、その他のSCP-XXX-JPの影響下にあった職員にも同様の現象が発生し、結果、事案XXX-JP-00が発生しました。爆発による施設の崩壊、爆発範囲内にいた職員の形状変化などによる被害により、サイト-71█0内の職員████人が死亡するという事態にまで発展。また、SCP-XXX-JPの影響下にあった人間が複数存在していた際に、その中から特定の人間一人を選択したと思われる事象が確認され、これよりSCP-XXX-JPの知能の有無が示唆されました。O5はこの報告を受け、SCP-XXX-JPに関する実験、接触を制限することを決定しました。
SCP-XXX-JPの創造活動はSCP-XXX-JPの影響下にありかつ生存した人間が一定数(およそ███人)に達し、全てのSCP-XXX-JPが人間によって視認された瞬間に発生するものと推測されます。SCP-XXX-JPによる創造活動は全てのSCP-XXX-JPが自動的に正円形に整列した際の中心地点で行われ、その際に生成されるSCP-XXX-JP-Hangarの材料にはSCP-XXX-JPの影響下にある人間が用いられます。SCP-XXX-JPの整列する地点の条件などは現在判明していません。その際、SCP-XXX-JPの影響を受けた人間は未知の原理によりSCP-XXX-JPの創造活動発生地点に引き寄せられ、結果、事案XXX-JP-00が発生します。想像の瞬間、影響下の人間は全員████され、それら全てが「材料」として結合することによってSCP-XXX-JP-Hangarが形成されます。
事案XXX-JP-00発生時に確認されている現象
・およそTNT火薬100トン相当の爆発
・物質の融解。
・電磁パルスの発生。
・生存者の言語障害、及びミーム災害と思われる被害。
・文献、書物、電子情報の改竄。
・「誰かの声」と称される音
SCP-XXX-JP-Hangarに関する報告書
報告内容: 2███/█/█ SCP-XXX-JP-Hangarを監視中のセキュリティー担当者からの申告で、SCP-XXX-JP-Hangarに関する「知識」と思われるものが常に脳裏に浮かぶと言うものが報告された。現在の収容状態に関する報告と合わえて、収容方法の再検討を申請する。
報告内容: 2███/█/██ 現在もSCP-XXX-JP-Hangarは地上から約2m浮遊している状態を維持している。また、管理区画内に設けられたコンピューターに関して、何者かによる電気信号でのアクセスが度々報告されるようになった。内容は現在不明。打電信号と思われるが、地球上のどの言語にもそのパターンは該当しない。発信元を逆探知した結果、事案XXX-JP-00発生地点からのものであることが判明。また、逆探知したIDからアドレス不明のサイトへとアクセスすることに成功した。
サイト内の内容:
・誰かに対する愛の告白。
・6カ国の言語で描かれた「ハンガー」の文字これ以外の内容は全て解析不能。
報告内容: 2███/██/█ 管理区画に保管されている文献の変化が見られるようになった。現在、変化の見られた文献を収容対象として保管中。内容を確認した場合の異常性は報告されていない。
内容: 誰かに対する愛の告白。
報告内容: この報告書にまでSCP-XXX-JP-Hangarの物と思われる影響が確認されるようになった。現在、70█1区画とは別の地点でこの報告書を作成している。改竄された物について、特筆すべき異常性は未だ確認されていない。しかし、あの内容を見て私は思うことが一つある。あれは一体誰に対して発せられている文章なのか。Dクラス職員をSCP-XXX-JP-Hangarに接近させる実験を行った際も対象は█████となった。未だにあの事件によって狂わされた彼女も、もう元には戻らない。もし、あれがあのミーム情報共によるエゴによって発生しているものなのだとしたら、私はそれを許すことが出来ないだろう。あの事件も、今のこの状態も、全てあれの身勝手な考えのもとに行われているのならば、最早これは(ここで報告書は途切れている。)
報告内容: アーノルドがハンガーになった。私ももうすぐかもしれない。もう、それのことしか考えられない。私はもうすぐ、あれに溺れてしまうのだろう。
あれが何なのか、一体何が目的なのか。それは私にもわからない。あれはただひたすらに、自らの身勝手な愛に溺れているだけなんだ。その身勝手に私達を巻き込んで、弄んでいるに違いないんだ。
あれが現れた事自体、全て決められていたことだったのかもしれない。
私はもう、それを受け入れるしか無いのかもしれない。
私はあれの愛に付き合わなければいけない。なら、最後まで行こう。私はもう行かなければならない。
Hangar
Hangar………………………….
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補遺: SCP-XXX-JPはエージェントの自宅物置で発見されました。当時、エージェントは自宅の大掃除をしており、物置の中を整理しようとした際にSCP-XXX-JPが記載されたノートを発見。その後、エージェントがSCP-XXX-JP-Aを視認したことによりその異常性が発覚し、その後、財団に回収されました。エージェントはSCP-XXX-JPに関しては一切記憶に無いと証言しており、現在、これらの混入経緯について調査が行われています。
追記:
私はあなたを愛しています。この世の何よりも愛しています。
私はあなたを愛しています。この世の何よりも美しいその形を。
私はあなたを愛しています。あなたの美しい響きを持つその名を。
私はあなたを愛しています。あなたに触れられないのが私には苦痛でたまりません。
私はあなたを愛しています。私の全てがあなたで染まっていくのを実感しています。
私はあなたを愛しています。あなたの全てが私に染まっていくのを今日も願っています。
ああ、今日もあなたの名前を私は呼ぶのでしょう。その素敵な名前を。私の声が壁を介して跳ね返り、また私の耳に入ってくる時の喜びを忘れることが出来ません。
私はあなたを愛しています。あなたのことだけを。
この世を全てあなたにあげます。この世を全てあなたで染めます。なぜなら私はあなたを愛しているから。私の思いを実現したいから。
私の思いは本物です。決してゆらぎはしないでしょう。
私はあなたを愛しています。心の底から愛しています。
私はあなたを愛しています。
私はあなたを愛しています。
私はあなたを・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPの周辺20kmは鉄製の柵で覆われ封鎖されます。万が一、一般人がSCP-XXX-JP内に侵入した場合はBクラスの記憶処理を行った後に開放してください。
SCP-XXX-JPから20mの地点には簡易の管理施設が設けられます。対象は常に3名のセキュリティー担当者によって監視され、SCP-XXX-JP内の点灯が確認された場合はサイト-81██に報告してください。消灯後のSCP-XXX-JP内部の調査は機動部隊ぷ-1("家庭訪問")によって行われます。SCP-XXX-JP内部で発見された物品はサイト-81██のA-3保管室で管理されます。
説明: SCP-XXX-JPは██県████市の旧█████村近くに位置している廃屋です。SCP-XXX-JPは19██年まで診療所として利用されており、佐久間 ███氏という医師によって経営されていました。現在、佐久間氏は行方不明となっており、廃業直前に、血縁者によって捜索願が提出されています。血縁者や当時勤務していた看護婦などにも調書を取りましたが、依然手がかりとなる情報は得られていません。SCP-XXX-JPは通常の家屋同様に損傷を受けます。また、SCP-XXX-JPを建設したと思われる業者や不動産を調べた結果、SCP-XXX-JPが建てられた土地の権利書、業務記録などが見つかり、正式に建築された家屋であることが判明しています
SCP-XXX-JPは不定期的に何者かによって侵入されます(以下、侵入者をSCP-XXX-JP-1とする)。現在まで███回の侵入が発生しており、SCP-XXX-JP-1を捕獲する試みは全て失敗しています。また、その正確な姿も確認されていません。この侵入は外部からSCP-XXX-JPを監視している場合にも発生し、SCP-XXX-JP-1が外部からSCP-XXX-JP内に侵入する様子などは確認できません。また、SCP-XXX-JP内部を捜索しましたが、抜け穴や地下通路といった、侵入経路となりうるものも発見されていません。外部からサーモグラフィカメラを用いた調査を行った結果、身長約175cmほどの人物がSCP-XXX-JP内で行動している様子が確認されています。その為、SCP-XXX-JP-1の存在は証明されており、どのようにしてSCP-XXX-JP-1が内部に侵入しているのかについての調査が行われています。
SCP-XXX-JP内にSCP-XXX-JP-1が侵入した場合、照明、家電が使用不能であるにもかかわらず部屋内部の電灯が点灯します。なお、財団職員が内部に侵入した場合は点灯せず、何ら異常性は見られません。これらの点灯が行われるのは主にSCP-XXX-JPの二階部分であり、一階が点灯したケースは報告されていません。これらの現象は1時間から24時間の間隔で続き、その後消灯します。SCP-XXX-JP内部に監視カメラを設置した結果、部屋内部の点灯が確認されましたが、SCP-XXX-JP-1を撮影することは出来ませんでした。死角が出ないように監視カメラを設置した場合も同様の結果となりました。また、██回のDクラス職員によるSCP-XXX-JP内への潜入を試みましたが、外部からは点灯が確認されているにもかかわらず、内部は非点灯を維持しているという現象が発生しました。これらの場合もSCP-XXX-JP-1を発見することは出来ず、なお、これらの調査中にサーモグラフィカメラを使用した場合もSCP-XXX-JP-1と思われる人物を観測しています。
消灯後、SCP-XXX-JP内にはSCP-XXX-JP-1によるものと思われる、家具等を使用した形跡、靴跡、指紋などの痕跡が発見されます。現在、これらの調査を行っていますが、個人の特定には至っていません。また、二階に設置されている事務机の引き出しに収納されている書類の増加、人体の一部、臓器、胎児の遺体などの出現も確認されており、書類や証拠物件等はサイト-81██のA-3保管室にて管理、それ以外は検死担当官に送られています。
SCP-XXX-JP内部で発見された文章の抜粋
患者番号1085647 氏名:田野 ███ (男性)
症状: 変則的な頭痛。
・19██年 ██月█日 心拍数の上昇、瞳孔の収縮を確認。
・19██年 ██月██日 脳組織への観察を開始。神経の一部を摘出。対象の意識は未だ鮮明。治療再開。
・19██年 █月██日 脳下垂体への干渉。患者の状態を観察するため、治療は麻酔を用いること無く実行した。結果、10秒間に渡る患者の手足の痙攣を確認。左脳████野█番の切除を行った結果、それらの症状は完治した。また、痛覚の除去に成功。治療を続行。
・199█年 █月█日 前頭葉部分の切除を開始。患者はおよそ17時間の間、嘔吐、脱糞を繰り返し、意識不明となる。回復を促すため、右脳██野第█番への電気ショックを開始。患者の意識が回復した。しかし、脱糞と嘔吐の症状は依然確認され続けたため、特別治療室へと移動。これらの排泄物はサンプルとして保存。成分分析を行ったが異常は見つからなかった。
・199█年 █月██日 患者の回復が見込めず、脊椎部分の治療を開始。
・199█年 █月██日 脊椎第███号への術式を試みる。左腕の痙攣を確認。その為、部分的切除を試みた結果、痙攣は停止。治療は完了。その後、脱糞、嘔吐も止まった。しかし、心拍数の低下が発生。体温の低下も確認。それらを補うため、人工心肺への接続を開始。また、体温低下を止めるため、腹部内部に発熱剤を移植した。体温の上昇を確認。
・2000年 ██月██ 患者の心停止を確認。原因追求のために心臓を摘出。しかし、原因は分からず、心臓を廃棄した。現在も、患者の回復は見込めていない。さらなる治療が必要。
患者番号2416398 氏名:浅川 ██ (女性)
症状: 腹部の肥大化。吐き気。
・19██年 █月█日 患者の腹部の肥大化を確認。経過を観察する。
・19██年 ██月██日 さらなる肥大化を確認。早急な治療が必要である。しかし、患者は治療を拒んでいる。更に経過を確認する。
・19██年 ██月█日 患者の摂食障害が深刻化した。栄養素の偏りが顕著になる。特に酸味のあるものを欲する傾向にあるようだ。早急な治療が必要になる。
・19██年 ██月██日 患者への説得を試みたが失敗した。最早、考えている時間はない。
・19██年 █月██日 第一手術を開始。現在、胸部の肥大化が確認されているため、その部分の切除を始めた。初めに右胸部を切除。その際、大量出血が発生したため、血管の縫合を行った。その後も出血が続いたため、新たな形成を行った。チューブを代用することで治療が完了。出血が止まる。残りの増加した脂肪部分を切除し、術式を終える。後日、左胸部の切除を開始する予定。
・19██年 █月██日 第二手術を開始。腹部のさらなる肥大化は現在確認されていないが、+9.6kgにも達している。早く切除しなければ。左胸部の切除を開始。前回の反省を活かし、出血すること無く術式を終了。後日、腹部の手術を開始する。
・19██年 █月█日 第三手術を開始。肥大化部分の右側面部分から切開。その際、異臭を放つ体液が漏れだした。原因は不明。吸引器を用いて体液を除去。術式再開。内部に異物が確認された。患者の体内と、管状の組織で繋がれており、この肥大化の原因であると思われる。見た目は人間を縮小したような形状をしている。重量はおよそ1500g。管を切断し、異物を除去。その後、肥大化した皮膚部分を切除し、再形成を行った。大きな出血もなく、治療は完了。異物は廃棄した。
・19██年 █月█日 患者が舌を噛み切るという現象が発生。以前摘出した異物の後遺症と思われる。治療を行い、現在患者は麻酔で眠らせている。今後は患者の精神治療に重点を置く。
患者番号4444444 氏名:██ ████ (男性)
症状: 妄想癖。
・2000年 2月1日 患者のおよそ20回にわたる暴走を確認。その為、両手足を切除し、拘束することにした。また、鎮静剤の投与も開始。経過を観察する。
・2000年 2月9日 患者の証言をまとめる。これらが、さらなる治療への架け橋になるかもしれない。患者は基本、「ここから出せ」といった言動を頻繁にする傾向がある。これは恐らく、患者自身の抑制された精神状態から来るものであると推測される。その為、患者の過去を調べ、こういった精神疾患の原因となった事柄を特定する必要がある。次に「[編集済]」といった言動も見られ、暴力的な行動をする原因も先程の問題に起因していると推測される。
・2000年 2月14日 [データ削除済]
・2000年 3月██日 治療の最終段階に差し掛かり、今後[データ削除済]。経過を観察する。
・2000年4月27日 [データ削除済]。医学のさらなる躍進のために。
SCP-XXX-JPは200█年の█月█日にエージェント・P██によって発見されました。当時、エージェント・P██は個人で定期的に行っているSCPオブジェクトの捜索を行っており、その際にSCP-XXX-JPを発見。監視を続けた結果、その異常性を確認し財団の監視下に置かれました。
現在もSCP-XXX-JPへの侵入は発生しています。今後、SCP-XXX-JPのさらなる調査とSCP-XXX-JP-1の特定が行われます。
追記:
2015年 1月24日、非侵入時のSCP-XXX-JP内を調査中、天井から男性の遺体が落下してくるという事案が発生しました。遺体の右腕、右足、背骨は酷く破損しており、胃から腸にかけての消化器官が切除されていることが判明しています。死亡した男性は顔面を削ぎ落とされており、個人の特定には至っていません。現在、担当医師による検死解剖が行われています。
また、以前、回収された胎児の遺体の調査結果が提出されました。遺体のDNAを調べた結果、行方不明中の佐久間氏のものと完全に一致していることが判明しました。これらの事象に伴い、SCP-XXX-JP-1による侵入の間隔が短くなっているという報告もされています。この結果に対し、SCP-XXX-JPへの警戒をさらに強化することが決定しました。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-8199の生物管理区域の檻に収容されます。SCP-XXX-JPの実験を行う場合はレベル3職員に申請してください。また、XXX-JP-αは2名のセキュリティー担当者の監視のもと、専用の収容室に保管され、今後、XXX-JP-αを用いた実験は行われません。SCP-XXX-JPの収容室内に刃物類、または先端部分が鋭利な形状をしている物品を持ち込むことは禁止されています。SCP-XXX-JPの収容違反が発生した場合はそれらの装備、物品を所持することなく拘束してください。排泄された血液は専用の焼却炉にて処分されます。現在、SCP-XXX-JPの体内に侵入している刃物類、食器類の摘出は行われておらず、許可無く刃物類、食器類を摘出した職員はすぐさま拘束し、被験体として収容する、もしくは終了してください。
説明: SCP-XXX-JPは見た目6歳のやや痩せ気味な体型をした雄のアルガリ羊(学名 Ovis ammon)です。現在まで対象の体毛の成長は確認されておらず、いかなる手段を用いたとしてもその形状を維持したまま気絶するのみであり死亡することはありません。また、切り傷など出血する可能性のある傷はすぐさま修復し全て内出血を伴う傷に変化させる特性を有しており、現在まで老化などの兆候も観察されていません。SCP-XXX-JPは摂食行動などは行っていませんが定期的に血便、吐血します。これらの現象はSCP-XXX-JPの体内では常に通常の生物が生成する約██倍の量の血液が生産され続け、それを排泄するために発生していると推測されています。
SCP-XXX-JPを中心とした半径約12m以内に刃物、先端の尖った物品を近づけた場合、それらはSCP-XXX-JPに刃物部分や鋭利な部分を先にした状態で進行し、その一部が体内に侵入します(以下、体内に侵入した刃物類をXXX-JP-αとする)。また、一度摘出されたXXX-JP-αをSCP-XXX-JPに接近させても以前のような兆候は見せず、再度SCP-XXX-JP体内に侵入させたとしても確認されている以上の特異性は発生しませんでした。排泄された血液が刃物などに触れた場合も同様の異常性が見られましたが、約1週間でその性質は消失しました。
現在確認されているXXX-JP-αの抜粋
XXX-JP-α-001 形状:銀製のフォーク :現在、D-10002に寄生中と判明。 XXX-JP-α-028 形状:木製の鉛筆 :現在、サイト-8199の収容室にて保管中。 XXX-JP-α-052 形状:サバイバルナイフ :現在、D-70702に寄生中と判明。 XXX-JP-α-114 形状:レイピア :対象はSCP-XXX-JPから摘出されていません。 XXX-JP-α-201 形状:槍 :現在調査中のため、第七実験室にて保管中。 XXX-JP-α-355 形状:ボールペン 現在、D-66663に寄生中と判明。
摘出後、XXX-JP-αには重量の増加が確認され、微細な糸状の電導体のようなもので覆われ始めた後に無機物生命体へと変化します。この電導体にはおよそ█Vもの微弱な電圧がかかっており、これらの変化は人間の視覚では観測することができず、電磁波観測用のカメラを用いる以外でこれを観察することはできません。変化後、対象は表面の全ての部位に「痛覚」「触覚」「視覚」などを有し、人間と同様に思考することが可能になります。XXX-JP-αの知能レベルは20代後半の人間と同等であるケースが多く確認されており、しかし、これらのレベルにばらつきがあることも判明しています。現在、XXX-JP-αの使用者を仲介する以外でのコミュニケーションは行われていません。また、これらの組織がどのようにして思考を可能にしているのかも解明されておらず、使用者の治療も現在保留されています。摘出後のXXX-JP-αは破壊不可能な状態になり、電導体により保護されます。この電導体はXXX-JP-αの任意により対象の約0.5倍の面積まで延長することが可能であり、形状も機械的な、または複雑なもの意外であれば変形が可能です。
XXX-JP-αを人間が使用した場合、対象は電導体の一部を使用者の体内へと侵入させ、使用者の神経へと寄生します。その後、神経細胞を利用した分裂を繰り返すことで大脳へと進行し、対象の精神を乗っ取ります。これらのプロセスは使用者がXXX-JP-αを所持した時点で行われており、この寄生が行われた後の使用者には大幅な身体能力の向上が確認されるようになります。これらの現象はXXX-JP-αによる脳の操作によるものであると推測され、この身体能力向上のケースはXXX-JP-αを所持した時にのみ確認されることから、XXX-JP-αから供給される電気エネルギーを活用することでその影響を拡大させていると思われます。寄生された使用者からXXX-JP-αを引き離したとしても置き換えられた精神が通常の状態に戻ることはありません。
補遺: SCP-XXX-JPは██████州の郊外に位置する寂れた教会内で発見されました。当時、その教会付近に位置していた小さな町が一夜にして無人状態になったという噂が広まっており、その真相を確かめるために財団は7名のエージェントを派遣。結果、件の建物内でSCP-XXX-JPを発見しました。発見時、対象には大量の刃物、刀剣、フォークやナイフなどの食器類が突き刺さっており、エージェントが対象へと近づいた際に所持していたボールペンが対象へ引き寄せられる事案が発生。その異常性が発覚し財団に回収されました。
回収当初、財団はXXX-JP-αの特性を身体能力の向上のみであると認識していましたが、実験に参加したDクラス職員へのインタビューを行ったところ異常が発覚。これらの特異性が判明しました。現在合計██名のDクラス職員が拘束、または終了されました。
Dクラス職員に対し行われたインタビュー記録の抜粋
対象: D-10002
インタビュアー: ██博士
付記: 対象のDクラス職員はXXX-JP-α-001の実験に参加していました。
<録音開始, >
██博士: やあ、D-10002。気分はどうかな。
D-10002: [3秒の沈黙]別に、問題ない。██博士: ならば結構。では、実験に参加した時の感想を聞かせてくれ。
D-10002: というと?
██博士: あのフォークを使ったとき、何か変わったことはなかったかね?
D-10002: [2秒の沈黙]そんなもん見てたらわかんだろ。
██博士: ああ、百も承知だよ。私は何を感じたかどうかを訊いてるんだ。
D-10002: なるほど、そういう。ああ、感じたねえ。
██博士: 一体どんな?
D-10002: なんていうかなあ、すごい気持ちが良かったねえ。だんだんと高まってくるんだ。
██博士: なるほど、他には?
D-10002: [唸りながら悩むような素振りをする]あとは、自由って感じだな。
██博士: ほう、自由か。一体何から自由になったって言うんだ?
D-10002: ほら、あれだよ。もう人に使われることもないっていうか、すんげえ力を得たっていうか。やっと解放されたって感じ。
██博士: でも、君はまだそうなったわけではない。なるほど。その気持ちはまだ続いていると?
D-10002: まあな。ほんの少しだが。
██博士: [メモをとる]わかった。結構。では、あのフォークに関して今、君は何を感じているのかを教えてくれ。
D-10002: 何って。そりゃあ欲しいさ。欲しくて欲しくてたまらない。近くに置いておかなきゃ全然落ち着かないね。
██博士: それはまたどうして。
D-10002: そんなの力が手に入るからに決まって
██博士: もっと詳しく。
D-10002: それは。[沈黙]
██博士: なんで言えない。さっきまで饒舌だったじゃないか。何故、そこだけ口ごもる。
D-10002: [沈黙]わかんねえよ。とにかく、俺はもう自由なんだ。それ以上でも、それ以下でもない。
██博士: [4秒の沈黙]わかった。もういい。
<録音終了, >
終了報告書: インタビューの内容から、対象は「自由」「使われる」「解放」などという概念に関して執着しているような言動が伺えました。その為、ミーム汚染、認識災害の可能性が示唆され、今後のSCP-XXX-JPに対して何かしらの処置が行われます。また、Dクラス職員は経過観察のため、拘束されました。
ボイスレコーダーによる録音記録:インタビューが行われたDクラス職員の発言内容は述べられた概念だけではなく「高揚感を覚えた」「力が湧いた」などの、言ってしまえば「ありきたりな回答」ばかりであり、これらの応答の信憑性の希薄さが伺える。対象の挙動を見ただけでも、何かを隠しているように思えてならない。あくまで私個人の推測でしないのだが、念のため対象を経過観察という名目で拘束し、監視、観察する必要があるだろう。-██博士
対象: D-70702
インタビュアー: ██博士
付記: D-70702はXXX-JP-α-052の実験に参加していました。
<録音開始,>
██博士: ごきげんよう、D-70702。
D-70702: [沈黙]██博士: どうしたんだ、黙りこくって。返事をしなさい。
D-70702: 数字で俺を呼ぶんじゃねえ。
██博士: [2秒の沈黙の後、メモをとる]いや、すまない。だが、何故、そんなに怒る必要がある?
D-70702: [舌打ち]物扱いされてるみたいでむかつくんだよ
██博士: これも規則だ。我慢してくれ。[書類を取り出す]では、始めよう。君が実験に参加していた時、何か変わったことは?
D-70702: [5秒の沈黙]そんなこと訊いて何になる。
██博士: これも実験の一部だよ。より多くのデータを収集しなければいけないからね。それに君はあれの使い方を知っている様な動きも見せた。それについても教えてくれ。
D-70702: [沈黙]
██博士: 言いなさい、D-70702。これは命令だ。
D-70702: [沈黙]
██博士: D-70702。
D-70702: 気分が高ぶった! とてつもなく興奮した! 力が奥底から湧き上がってくる、そんな感じがした! 使い方? 知るかそんなもん! 何か頭に浮かんできたんだよ! これでいいのか!? どうだ、満足か! あ!?
██博士: [2秒の沈黙]結構。では次に、君が今あのナイフにどのような感情を抱いているのかを教えてくれ。
D-70702: [沈黙]
██博士: まただんまりか。では質問を変えよう。君はあれに対して、何か依存しているようなことを感じたことは?
D-70702: [3秒の沈黙]依存てなんだよ。
██博士: 依存は依存だよ。
D-70702: 何が依存だ! あれは俺の体の一部みたいなもんだぞ! それを依存だと? ふざけんじゃねえ! 返せ! 今すぐ俺の体を返せ!
[Dクラス職員はセキュリティ担当者によって拘束される]
██博士: 今日はここまでにしよう。
<録音終了, >
ボイスレコーダーによる録音記録:今回のインタビューに関してまず最初に気になったことはDクラス職員の現在の性格についてだ。XXX-JP-α-052の実験に参加するまで、彼女の性格は一般的に「暗い」と言われるものだった。しかし、今回の彼女の性格はそれとは全く異なり、攻撃的なものへと変化している。これがXXX-JP-α-052の、または変異した武器による影響なのかはまだ定かではないが調査する価値はあると私は提言する。なお、この分析は実験前の彼女の記録に基づくものでもある。そして、もう一つの点は、実験に使用した物品の種類に関わらず、それらの発現する能力の差異以外に、使用者に及ぼす心理的な影響にばらつきがあることである。これらの異常性には今のところ規則性は見られず、これについても何かしら調査をしなければならない。次で最後にするが、[5秒の沈黙]SCP-XXX-JPの物品の能力改変がどこまで進行するのかどうか、その点である。財団はあれをただの依存症と認識しているが、私にはそれだけではないように思える。このことに関して、さらなる調査を要求する。-██博士
対象: D-66663
インタビュアー:
付記: 対象はXXX-α-111
<録音開始, >
██博士: どうも。早速だが始めよう。よろしいかな?
D-66663: ええ。構いませんよ?██博士: では[資料を開く]君はあのボールペンを使った時、どのようなものを感じた?
D-66663: どのようなもの[5秒の沈黙]そうですね、何か、気持ちが高揚する様な。あれを使っていると自分がまるで特別な存在のような気がしてくるんです。大いなる力といいますか、なんというか。
██博士: [メモをとる]なるほど。分かった。ありがとう。では、今あれに対して何か思っていることは?
D-66663: 思っていること[沈黙]強いて言えば、落ち着かないですかね。あれが手元にないと。
██博士: なんでまた。
D-66663: なんでと言われましても。[沈黙]そうなんだから仕方がないじゃないですか。
██博士: なるほど。分かった。ご苦労さん。
D-66663: では、私はこれで。
██博士: いや、ちょっと待ってくれないか。
D-66663: [3秒の沈黙]はい?
██博士: 君にちょっと言いたいことがあってねえ。
D-66663: はあ。
[██博士は咳払いをして立ち上がる]
██博士: お前は使えない。
D-66663: [沈黙]は?
██博士: 何度でも言ってやる。お前は使えない。
D-66663: [立ち上がる]おい。
[セキュリティー担当者がDクラス職員を座らせる]
██博士: そのまんまの意味だ。お前は使い物にならない。だからあの実験に使われたんだ。扱いにくいったらありゃしない。お前なんて所謂使い捨ての道具に過ぎないんだよ。お前と同じものなんて腐る程あるんだからな。所詮、大量に消費されるガラクタなんだよ。お前なんてあってもなくてもどうでもいい、そう、言ってしまえば、ゴミだ。
D-66663: [ほくそ笑む]は、一体何を言い出すんですか。あなたおかしいんじゃないんですか?
██博士: じゃあ、最後に言ってやる。
D-66663: 何を。
██博士: おまえ、書きにくいんだよ。
[Dクラス職員が博士に掴みかかろうとする。そのままセキュリティー担当者に押し倒され拘束される]
D-66663: 訂正しろ! 今すぐそれを訂正しろ!
██博士: 今日はここまでにしよう。
セキュリティー担当者: おい! 大人しくしろ!
D-66662: お前に何がわかる! やっと、やっと手に入れたんだ! この自由を! あの屈辱の日々が終わったんだ。この[編集済]! いつか報われると信じてここまでやってきたんだ! あの人がここにやって来た時、どれだけ私が救われたか! 貴様に、貴様に何がわかる! 貴様なんかに何がわかる! 後悔させてやる! 俺達が絶対に後悔させてやる!
<録音終了, >
ボイスレコーダーによる録音記録:今回のインタビューで私の仮説は確信に至った。SCP-XXX-JPの異常性は我々の認識していたもの以上である。この結果を上層部に報告し、SCP-XXX-JPの更なる実験と調査を行うことを要求する。そして、最後に。今回の件でSCP-XXX-JPの能力分析に一歩近づいたのは確かである、だが、これがSCP-XXX-JPの特性の全てだあるとするには些か私は疑問に思う点が一つある。最後のあの男の発言[6秒の沈黙]「物」はあれによって引き寄せられているのか。それともあれら自身が自ら[3秒の沈黙]ここからは私の想像に過ぎないため記録しないことにする。今後のSCP-XXX-JPの研究の躍進に期待する。-██博士
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JP-AとSCP-XXX-JP-Bは生物サイト-9███内で管理されます。また、SCP-XXX-JP-A、Bの戦闘を防止するためそれぞれは隣接した檻内に収容されます。実験を行う場合はレベル3職員の許可が必要です。実験を行う際はSCP-XXX-JP-A、B双方を同伴させ行ってください。収容区画内は24時間体制で監視され、対象一体につき2名のセキュリティー担当者が割り当てられます。対象は非異常性の同種と同様の手順に従って飼育されます。餌は専用の射出口を使用し与えてください。
説明: SCP-XXX-JPはSCP-XXX-JP-AとSCP-XXX-JP-Bの2体の生物によって構成されています。
SCP-XXX-JP-Aは雄のバーバリーライオンと同様の見た目を有した生物です。対象は一日の約6時間以上を睡眠に費やしており、確認されている挙動や食性も通常のバーバリーライオンと変わりありません。SCP-XXX-JP-Aは通常の状態では攻撃性を示しませんが、SCP-XXX-JP-Bと対峙した場合に限り凶暴化します。SCP-XXX-JP-Aは未知の現象によりSCP-XXX-JP-B以外の攻撃による被害を一切受けません。また、老化などの兆候も観察されていません。
SCP-XXX-JP-Bは雌のコモドオオトカゲと同様の見た目を有した生物です。対象は常に興奮状態であり攻撃的です。挙動や食性には何ら異常性は見られませんでしたが、非常に高い硬度を持つ外皮を有しています。現在まで損傷を与える試みは全て失敗しています。しかし、SCP-XXX-JP-Aの攻撃を受けた場合は通常の生物と同様の損傷を受けます。SCP-XXX-JP-Aと同様に老化などの兆候は現在、確認されていません。
SCP-XXX-JP-A、Bは双方との距離が拡大した場合、その距離に応じて急激に形状を攻撃的かつ巨大な実体に変化させます。また、それに応じて双方の知能も向上します。
距離\対象 | SCP-XXX-JP-A | SCP-XXX-JP-B |
5m | 筋力量の増加と知能の向上が見られる。体長も増加する。 | 体長が増加し、前足と後ろ足の骨格が変化し始める。 |
10m | 体長が20mに増加する。背骨部分に突起物が発生し始める。 | 体長が10mに増加する。全身の骨格が二足歩行可能な形状に変わる。前足の骨格も手のように変化する。 |
100m | 体長50mに増加する。犬歯が肥大化する。前足が筋肉量の多い人間の腕のような形状に変化し二足歩行が可能になる。分泌する唾液が強酸性を示し始める。 | 体長55mに増加する。巨大な尻尾と背びれが発生し、口部には刺上の牙が生える。対象から放出される放射線量が増加し始める。全身の筋肉量が増加する。 |
500m | 体長90m。両肩部分に同様の頭部が発生する。尻尾が甲殻に覆われ、先端に鉤爪状の突起物が形成される。 | 体長95m。口部から光線を放つことが可能になる。右目、左目がそれぞれ5つに増加する。尻尾の全長が100m以上に増加する。それに伴い先端部分がサーベル状に変異する。 |
1000m | 体長200m。全身の毛が抜け、強酸性の性質が示される粘液質なものに覆われ始める。全ての頭部の眉間に一角の角が生じる。それぞれの口部から2本の先端が刺状になった付属肢が発生する。 | 体長250m。全身が強固な鱗に覆われ、背中に多数の巨大な刺が発現し始める。尻尾が全長300mまで成長する。光線の威力が大幅に向上し、温度はおよそ████万████度に上昇する。左腕、右腕、それぞれ5本ずつ本数が増える。 |
1000m以降の実験は全て中止されました。
SCP-XXX-JP-A、Bはもう一方の対象を認識するとそれに対して威嚇または攻撃などを試みる傾向があります。SCP-XXX-JP-A、Bの戦闘が行われた場合、それぞれの対象は被異常性を有する生物と同様に負傷しますが、致命的であると思われる状態であろうとも対象は生存し続けます。これらの外傷は双方の距離が広がった際の変異に生じる自己修復能力の向上により回復します。また、双方は熱、冷気といった影響も無効化しており、活動を停止させる試みは成功していません。
補遺: SCP-XXX-JPは19██/██/█の北極圏内の流氷の上で発見されました。当時、SCP-XXX-JP-A、Bは互いに噛む、引っ掻くなどの攻撃を行っており、それらの異常性の確認のため回収されました。しかし、SCP-XXX-JP-A、Bをそれぞれサイト-6███とサイト-1███に収容しようとした際、双方の変異が発生。約██名の死傷者を出す事件に発展しました。その後、SCP-XXX-JP-A、Bが戦闘を再開したため自体は収縮し、現在の収容方法が確立されました。
追記: 現在、変異により知能の向上したSCP-XXX-JP-A、およびSCP-XXX-JP-Bへのインタビューは禁止されています。これらの申請はいかなる理由であろうとも承認されません。
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以下の記録は職員の混乱を防ぐため、一定の条件を満たしている職員にのみ公表されます。
対象: SCP-XXX-JP-A
インタビュアー: G██博士
付記: インタビューはSCP-XXX-JP-Aを本来の収容室から6m圏内の場所に位置する区画に移動し行われました。
<録音開始, >
G██博士: 初めまして、SCP-XXX-JP-A。私はG██というものです。
SCP-XXX-JP-A: どうも。G██博士: 早速ですが、あなたに二三訊ねたいことがあります。よろしいでしょうか?
SCP-XXX-JP-A: [30秒の沈黙]どうぞ。何なりとお答えしよう。私は一向に構わない。
G██博士: ありがとうございます。では、最初に[資料をめくる]あなたの出生について教えていただけますか?
SCP-XXX-JP-A: 私の生まれか。私は██ ██████で生まれた。親は███と█████。その後、█████のもとで仕え、任期を全うし今に至る。
G██博士: [書類に書き留める]分かりました。[6秒の沈黙]██ ██████という場所ですが、聞いたことのない地名ですね。ここは一体どこにあるんですか?
SCP-XXX-JP-A: ████を北に███キロいったところにあるはずだ。正確な位置まではわからないくて申し訳ないが。
G██博士: いえ、問題ありません。あなたの年齢は?
SCP-XXX-JP-A: ███と████歳だ。
G██博士: [3秒の沈黙]では、次に。あなたとSCP-XXX-JP-Bとの関係に付いて教えてください。
SCP-XXX-JP-A: あの女のことか[5秒の沈黙]。[溜息]古い友人だよ。彼此何年になるか。
G██博士: 古い友人ですか[書類に書き込む]。失礼なことを訊くかもしれませんが、あなたとそのご友人は大変仲が悪いように見えるのですが。
SCP-XXX-JP-A: 仲が悪いというわけではないさ。まあ、時々癪に障ることはあるがね。あの女はいつもそうだ。
G██博士: では、何故いつもお互いを傷つけ合ったりしているんですか?
SCP-XXX-JP-A: 傷つける? どういうことだ?
G██博士: ええっと、つまり[5秒の沈黙]噛み付いたり、引っ掻いたり、なんといいますか、まるで喧嘩をしているような。
SCP-XXX-JP-A: ああ、そのことか。なに、あんなものただの遊びだよ。ゲームだ。老人の暇つぶしみたいなものだ。
G██博士: ゲーム?
SCP-XXX-JP-A: そう、ゲームだ。力比べと言ったほうがいいかな。まあ、少しルールを付け加えてはいるが。
G██博士: ルールですか。SCP-XXX-JP-A: ああ。あの女、最初は渋っていたがなんとか賛同したよ。あの気性の荒さ、君らも知っているだろ? あいつはそういう奴だ。なんでもすぐに片付けたがる。そして、それに加え卑怯ときた。逆にルールなんて無かったらあいつはやりたい放題のことをやるさ。私もそれで何度も苦しめられてきた。だが、今度はそうはいかん。なんせ、このルールを破った方が負けてしまうんだからな。
G██博士: その、ルールというのは?
SCP-XXX-JP-A: なに、簡単だ。お互いに手を抜こうと言ったんだ。
G██博士: 手を抜く?それは
SCP-XXX-JP-A: だってつまらないだろ。最初から自分の持ち札を広げて勝負するなんて。たまには全部捨てて、裸で張り合わないと。
G██博士: [7秒の沈黙]なるほど、分かりました。じゃあ、あの戦いは一種の余興、という解釈でよろしいのですね?
SCP-XXX-JP-A: ああ、構わない。だが、今はちょっと違うかな。
G██博士: [5秒の沈黙]違う、というのは一体どういう意味でしょう。
SCP-XXX-JP-A: なんせ、私たちは今このような状況に陥っている。もはや、力比べなどできるわけがない。だから、私はあの女にもちかけたんだ。
G██博士: 何を。
SCP-XXX-JP-A: 力比べはやめだ。今度は我慢比べにしようってな。
G██博士: 我慢[沈黙]
SCP-XXX-JP-A: そしたらあいつ、どんな顔をしたと思う? 今までに見たこともないぐらい悔しそうなツラをしていたよ。[笑う]
G██博士: [書類を整理し始める]
SCP-XXX-JP-A: 私は待つさ。気は長い方なんだ。だが、あの女の性格上、いつまでこれが持つかな。いや、きっと持たない。今回こそ、私が勝つんだ。絶対にな。
<録音終了,>
今後、SCP-XXX-JP-A、Bへのインタビューは禁止されます。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPの発生源と終了点はサイト-81██のコンクリート製の80m×80m×5mの収容室に収容されます。SCP-XXX-JPを構成する実体群の収容違反が発生した場合は機動部隊ぬ-9(”退魔師”)が出動し、沈静化してください。
説明: SCP-XXX-JPは石川県███市███街に発生していた未知の実体による集団行動です。この現象は4年周期の█月██日の深夜2時に行われ、SCP-XXX-JPを構成する要素は基本的に無機物と有機物を身体に有する生物、人間に近い形状をしている異形の生命体、また頭部が哺乳動物などに置き換わっている人型の生命体、人間のような行動をする哺乳動物などの形状をとっており、無機物と有機物を有する実体はその無機物部分と有機物部分が完全に融合していると思われます。ほとんどの実体は麻布で作られた着物状の衣服や、平安装束と思われる衣服を着用しており、現在、確認されている実体は████体にも及びます。また、SCP-XXX-JPを構成する実体群には、元々群生行動を示している一部の個体群を除いて、2体以上の同個体は確認されていません。
SCP-XXX-JPを構成する実体群は発生源となる鳥居から突如現れ、設置してある祠の前に集まりだします。そして、生物群は約6時間の間「宴会」と思われる行動をとり、SCP-XXX-JPの終了後は鳥居を潜り消滅します。SCP-XXX-JPの終了後の実体群を追跡する試みは、発信機の信号の消失、カメラの破損や消滅により未だ成功していません。
SCP-XXX-JPの実体群は物理的ダメージを負いますが、高い生命力と回復能力によって数分程の時間をかけて瞬時に負傷部分を修復します。しかし、回復の許容限界を超えた場合、実体は死亡します。死亡した実体の回収は生存した実体の妨害により成功していません。死亡が確認された実体は他の実態に回収された後、再び鳥居から出現します。また、実体の一部には「友好的」であると思われる行動を見せる種類、人間に対して明らかな敵対心を抱いていると思われる種類が存在します。しかし、一見「友好的」であると思われる実体からの被害も報告されているため、実体群との接触は推奨されません。
番号 | 特徴 | 被害 |
SCP-XXX-JP-007 | ネコ科と思われる生物。人間と同様の仕草を行い、同等の知能を有していると思われる。頭部に五徳をかぶっており、尻尾部分は二股に分かれている。 | 喉を噛み切られ6名の職員が死亡しました。 |
SCP-XXX-JP-066 | 身長約168センチ。頭部が楽器の琵琶と形状が似た物質に置き換わっている人型。盲目であると思われる行動をとり、木製の杖を所持。黄緑色の年季の入った着物を着用。 | 対象の発する、または演奏する音を聞いた職員はその音色に対し重度の依存症を示しました。 |
SCP-XXX-JP-080 | 笈の上部に50代の男性と思われる頭部を有している。笈の脚部分が鷹の脚部のような形状に変化している。 | くわえられていた日本刀の刃のようなもので切りつけられ █名の職員が負傷し、吐き出される炎によって██名の職員が全身に重度の火傷を負いました。 |
SCP-XXX-JP-102 | 全身を少々汚れの目立つ布のようなもので構成されている。2本の足によって直立が可能。全長1メートル、胴体は蛇のような形状をしている。 | 1名の職員の頚部に対象が巻き付き、気道を圧迫。近くにいた職員によって救出され一命を取り留めました。 |
SCP-XXX-JP-223 | 20代前半と思われる日本人女性。頸部が伸縮自在。現在観測されている最高頚部全長は904m。 | 1名の職員が顔面を舐められる被害を受けました。その後、その職員の顔面は化学薬品による炎症のような症状があらわれました。 |
SCP-XXX-JP-460 | ハクシビシンと思われる生物。白い着物状の衣服を纏っており、何かを収容していると思われる風呂敷状の布を所持。 | 2名の職員が脚部を噛まれ負傷しました。 |
SCP-XXX-JP-555 | 全身が青色をしている体調2メートルの人型。鼻が異常に肥大化している。緑色の着物を常に着崩すような形で着用。 | ███名の職員が███を███されたことにより死亡しました。 |
SCP-XXX-JP-780 | 全身が赤く、目が3つある。足は一本で常に逆立ちをしている。足の指は2本、手はそれぞれ3本。 | 職員1名が突き飛ばされ、左肩を脱臼しました。 |
SCP-XXX-JP-1991 | 頭部が「龍」ような形状をしており、通常の人間より細い手足を有している。常に天蓋を持ち上げ掲げている。 | 現在対象からの被害はまだありません。 |
SCP-XXX-JPは19██/██/█はSCP-███-JPの収容施設移転作業を行なっている際に、同行していたエージェントによって目撃されました。後日、財団は機動部隊と数名のエージェントを現地に派遣。その後の調査によってSCP-XXX-JPの発生源は████神社の鳥居であるということが判明しました。
実験記録001 - 日付██/█/██
対象: SCP-XXX-JPを構成する実体群
実施方法: Dクラス職員を████神社内に侵入させる。
結果: [データ削除済]
分析: SCP-XXX-JPの構成実体群は人間に対して何かしらの害をもたらすことが発覚しました。しかし、捕食などをするわけではなく、単に被害をもたらすにとどまっているようです。また、Dクラス職員が███された際に実体群が████神社外へと進出する事態が発生しました。
実験記録002 - 日付██/█/██
対象: SCP-XXX-JPを構成する実体群
実施方法: 一匹の柴犬を████神社内に侵入させる。
結果: 一部の実体は警戒、または逃亡。しかし、一体の実体に[編集済]され、死亡。
分析: 実体群は人間に対しては逃亡するなどの兆候を見せないにもかかわらず、それ以外の生物にはそれを示すことが判明しました。しかし、それを示すのは一部であり全ての実体とは限りません。これらの結果が収容方法に適用されるかは検討中です。
実験記録003 - 日付██/█/██
対象: SCP-XXX-JPを構成する実体群
実施方法: 鳥居を回収し、敷地内に設置した3台のカメラを用いて観察する。
結果: SCP-XXX-JPが発生しました。(鳥居のあった時点と比べて生物群の数が減少していました。)
分析: 鳥居そのものに何かしらの得意性があるわけではないことが判明しました。さらに調査を進めた結果、敷地内の全長30センチの(所々劣化や風化が見られる)祠に実体群が集まっている傾向が見られたため、祠に何かしらの特性があるのではという説が浮上しました。しかし、祠を調査した結果、それらしい特異性は見られませんでした。
実験記録004 - 日付██/█/██
対象: SCP-XXX-JPを構成する実体群
実施方法: 祠のダミーを設置する。本物の祠のある地点には2台のカメラを設置し、ダミーの方にも2台のカメラを設置し観察する。
結果: 大多数の実体群は本来の祠に集合しましたが、ごく少数の実体群はダミーの祠へと集合する現象が発生しました。
分析:このとこから、これらの現象はSCP-XXX-JPを構成する実体群による祠を目印とした集合行動であると結論づけられました。財団はこれらの一連の現象をSCP-XXX-JPと認定しました。
実験や調査結果から、鳥居は実体群の移動を円滑に行うためのポータルの役割を担っており、祠は実体群にとっての目印であると推測されました。その後、鳥居と祠は財団によって回収され、現地には代わりの鳥居が設置されました。祠は実体群の新たな出現を阻止するため、風化や劣化のため撤去されたというカバーストーリーを適用しました。
現在、財団はSCP-XXX-JPの実体群が祠に集合するに至った原因などを調査しています。
追記: SCP-XXX-JPを構成する実体の内█体が収容違反および職員の殺害を犯したため機動部隊ぬ-9(”退魔師”)が出動しました。そして、この事件により初めて死亡した実体を回収することに成功しました。しかし実体を解剖した結果、実体を構成する物質(衣類や所持しているものも含む)はタンパク質と構造が似た成分のみで構成されていることが判明し、骨や臓器といった生体器官は無く、ほぼ100%が筋肉に似た器官であることが分かりました。また、それぞれの実体の頸部脊椎部分の内部からメガネザル科に形状が似た無毛の生物が発見されました。生物は粘液上の物質で覆われており、地球上に存在する哺乳動物のような体内の構造を有しています。ですが、眼球の構造はトンボなどの昆虫類に見られる複眼であり、口内にはおよそ700本もの節足が見られました。発見された生物は外気に触れた瞬間、呼吸困難に陥ったような様子を見せ約1分後に絶命しました。
この事案の発生後、SCP-XXX-JPを構成する実体群は収容室内に滞在し続けています。また、以前のような「宴会」と思われる行動を一切行わなくなりました。現在、実体群の増加は報告されていません。
一部の個体には以前見られなかった身体的特徴(触手、触覚、巨大な節足)が見られました。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-███の標準人型オブジェクト収容室に収容されます。収容区画内は一名のセキュリティー担当者によって監視されます。
SCP-XXX-JPには定期的にカウンセリングを受講させてください。
説明: SCP-XXX-JPは自称84歳、身長165cmの単眼の女性です。
身体的特徴は額の中心に位置している眉が一つ。直径70mmの眼球は眉間を眼球の中心とした場合、下に2cm移動させた箇所に位置しています。虹彩は桃色です。瞼は独自の頭骨形状により通常の人間より肥大した眼窩脂肪、眼輪筋、瞼板、ミューラー筋、眼瞼挙筋、挙筋腱膜、前頭筋、眼窩隔膜を有しています。睫毛は長さはおよそ5cm、本数は通常の人間の平均的な量の3倍と多いにも関わらず、太さは人間と変わりありません。また、鼻はなく、首の左右側面にエラ状の呼吸器を有しています。なお、このエラは頚部にある筋肉により開閉が可能です。それ以外の身体的特徴(内蔵や骨格等も含む)は人間と大差なく、月経も確認されているため妊娠が可能であると思われます。毛髪の色は黒です。
SCP-XXX-JPは実年齢を84歳と供述していますが、肉体年齢は人間を基準にした場合およそ20代に相当します。また、DNAを調べたところ98%が人間のものと一致しました。SCP-XXX-JPは代謝は行うものの肉体の老化は見られません。
また、SCP-XXX-JPは高度な知能を有しており、人間の言語を理解し会話することが可能です。
対象: SCP-XXX-JP
インタビュアー: 宝馬博士
付記: この記録はSCP-XXX-JPを保護して間もない頃に行われたものです。
<録音開始, >
宝馬博士: どうも。僕は宝馬 ███といいます。まあ、呼び方は博士でも宝馬博士でもなんでもいいです。あなたのお名前は?
SCP-XXX-JP: [震えている]宝馬博士: [沈黙]何も無理して言う必要はありません。あなたのペースで。
SCP-XXX-JP: ████(SCP-XXX-JPの名称)[言葉が詰まる]です。
宝馬博士: ████さんですか。初めまして、宝馬 ███です。[握手を求める]
[SCP-XXX-JPは警戒しつつも宝馬博士の手に触れる]
宝馬博士: [懐からメモを取り出す]早速ですが、あなたにいくつかの質問をしてもよろしいですか?
SCP-XXX-JP: [小さく頷く]
宝馬博士: では、お聞きします。あなたがいた所、そこはどのような場所でしたか?
SCP-XXX-JP [口を紡ぐ]
宝馬博士: [沈黙]言いたくないなら結構です。また落ち着いた時にでも。
SCP-XXX-JP: [弱々しい声]赤い、石の牢屋。
宝馬博士: [メモに証言を書き留める]
SCP-XXX-JP: 寒くて[沈黙]とっても冷たくて。私は[震えながら俯く]
宝馬博士: あなたは?
SCP-XXX-JP: わ、私は。私は[啜り泣く声]
[それから数分間、証言は支離滅裂になりSCP-XXX-JPは泣き続けた]
宝馬博士: [一旦手を止め、沈黙]すいません。今日はここまでにしましょう。
<録音終了,>
終了報告書: 宝馬博士の申し立てにより、今のSCP-XXX-JPの状態では情報を聞き出すことは難しいと判断されました。そのため、SCP-XXX-JPには研究担当者によるカウンセリングを受けさせることが決定しました。
対象: SCP-XXX-JP
インタビュアー: 宝馬博士
<録音開始, >
宝馬博士: あなたはどうやって今の言語を使えるようになったんですか?
SCP-XXX-JP: 教団の[言葉が詰まる]人たちの話してる声を聞いて、勉強しました。宝馬博士: なるほど。以前、あなたは赤い石の牢屋で生活していたと供述していますが、そこで聞いていたんですか?
SCP-XXX-JP: はい。いつも、彼らは私のことを見ながら何かの話し合いをしていましたから。
宝馬博士: その話し合いの内容とかは覚えていますか?
SCP-XXX-JP: [沈黙]覚えていますが、あまり自分の口で言いたくはありません。
宝馬博士: それほど酷いことを?
SCP-XXX-JP: [口を固く結ぶ]
宝馬博士: [沈黙]すいません、失言でした。
SCP-XXX-JP: いえ。
宝馬博士: [沈黙]
[およそ2分程の沈黙]
SCP-XXX-JP: [沈黙]あの。
宝馬博士: は、はい。
SCP-XXX-JP: 私も[沈黙]質問していいですか?
宝馬博士: え。
SCP-XXX-JP: だめですか?
宝馬博士: いえ、大丈夫です。どんなことでも構いませんよ?
SCP-XXX-JP: [沈黙]博士は。
宝馬博士: はい。
SCP-XXX-JP: 博士は[沈黙]生きている意味って[沈黙]わかりますか?
宝馬博士: [沈黙]生きている意味ですか。
SCP-XXX-JP: はい。
宝馬博士: [沈黙]難しい質問ですね。
SCP-XXX-JP: すいません。[俯く]
宝馬博士: いいんですよ。謝ったりしなくても。[沈黙]そうかあ。生きる意味かあ。
[およそ20秒程博士は考える]
宝馬博士: [沈黙]質問に質問で返すようで申し訳ないんですが、いいですか?
SCP-XXX-JP: え、ええ。
宝馬博士: あなたは生きたいですか?
SCP-XXX-JP: [少し驚いたような顔をする]
宝馬博士: もう一度訊きます。あなたは生きていたいですか?
SCP-XXX-JP: [沈黙]昔は違いました。でも、今は[沈黙]
宝馬博士: なら、それが答えです。
[SCP-XXX-JPと宝馬博士はおよそ30秒間、見つめ合う]
<録音終了,>
終了報告書: SCP-XXX-JPが高度な知能を有していることが分かりました。また、宝馬博士はSCP-XXX-JPとの会話に関して警告を受けました。
対象: SCP-XXX-JP
インタビュアー: D█████博士
<録音開始, >
D█████博士: SCP-XXX-JP。あなたがやってきた場所について聞かせてもらえますか?
SCP-XXX-JP: [無言]
D█████博士: SCP-XXX-JP、返事をしてください。SCP-XXX-JP: [無言]
D█████博士: SCP-XXX-JP。
SCP-XXX-JP: [沈黙] 宝馬博士を呼んでください。
D█████博士: [沈黙]前にも言ったとおり、宝馬博士は部署を移動しました。もう、あなたの担当ではないんです。SCP-XXX-JP、質問に答えてください。
SCP-XXX-JP: 博士に[沈黙]
D█████博士: SCP-XXX-JP。
SCP-XXX-JP: [無言]
D█████博士: [深い溜息]
<録音終了, >
終了報告書: このインタビューの後、SCP-XXX-JPは一切言葉を発しなくなりました。
SCP-XXX-JPはカナダ郊外に位置する無人の村内の教会で発見されました。当時、█████村内部に悪魔崇拝の一派が潜伏していることがエージェントの報告により発覚し、財団の目に止まりました。財団はその宗教団体の実地調査と実態調査を兼ねて機動部隊█████と現地調査の担当に割り当てられていた███N博士を派遣。その時に教会内にいたSCP-XXX-JPを発見しました。SCP-XXX-JPは大変衰弱した状態でした。
当時の宗教団体の団員はSCP-XXX-JPに対して「儀式」と称した虐待を行っており、それが衰弱の一番の原因ではないかと思われます。機動部隊█-”████”と宝馬博士はSCP-XXX-JPを保護し、それと同時に教団員は彼らに向け攻撃を開始。機動部隊█-”████”によって教団員はその場で終了されました。
現在、█████村のあった地点には財団が所有するフロント企業の所有するダムが建設されています。
当初SCP-XXX-JPの担当はSCP-XXX-JPを保護した宝馬博士が割り当てられていました。しかし、宝馬博士と接触した時に限り、SCP-XXX-JPに微細な心拍数上昇が発生した為、宝馬博士はO5の命令により部署を異動しました。
補遺: その後の調査の結果、教団の所有していた教典が発見されました。鑑定を行ったところ、およそ400年前のものであることが判明しました。そこに記されていた内容はSCP-XXX-JPを表していると思われる簡略化された絵やその他の図表、それと教団員が行っていた「儀式」の手順でした。また、教典内の文字に使用されていた染料を分析したところ、人間の血液であることが判明しました。
現在解読されている部分のリスト
一部劣化が激しい部分があり、教典内全ての項目を理解するには至っていません。教典は「歴史の章」、「罪の章」、そして儀式についての三つの内容を収録しており、2078ページで構成されています。
歴史の章
かつて、我らはこの地で生きていた。だが、我々は虐げられていた存在だった。あるものは身を引き裂かれ、あるものは地獄の業火に投げ込まれた。我々は虐げられていた。
彼の地、我らのエデン。しかし、 あの者たちがやってきた。あの者たちは過ちを過ちとも思わずそれを行った。土を汚し、空を汚し、民を殺し。我らの全てを奪った。
我々は虐げられていた。我々は悲しみの民だ。我々にはあの者たちを粛清する義務がある。
[ここから先、劣化により判読不能]
運命の日、あの方は我々のもとに舞い降りて下さった。我々を憐れみ、その御手を差し伸べてくださったのだ。あの方のその慈愛により、我々の生きる道が指し示されたのだ。
[劣化により判読不能]
我々の命はあの方のために使われるべきである。あの方の御心に応え、我々は生きていかねばならぬ。我々はあの方の御脚の下でその血をあの方のために流さねばならない。己の肉を裂き、骨を武器に変え、四肢がその動きを失うまで、あの方の御元にてその命を燃やさねばならぬのだ。
決着の日、我々はその手に勝利を掴んだ。全てはあのお方の御力である。長く、苦痛に満ちていたあの年月を乗り越え、ついに正義はなされたのだ。全てはあの方の慈悲である。我々は救われたのだ。全てはあの方のために。我らの命はあの方のために。我らのこの身はあの方のために。
罪の章
我々は過ちを犯した。この地を汚した者達は生きていたのだ。我々は過ちを起こした。あのお方を守るという使命を全うすることができなかったのだ。この地を汚した者たちの8人の長はあの方を自らの肉体に取り込んだ。あの方の肉体を切り刻み、それを奴らの腹に収めたのだ。これは我らの最大の過ちである。我々は乞わねばならない。あの方のために。全てはあの方のために。
ここからは教団の行っていた「儀式」の手順についての記述であると思われます。また、文章内に登場する「傀儡」については、今のところSCP-XXX-JPである可能性が有力です。
我々は我らの子孫にこれを託す。傀儡を作り上げるのだ。あの方の命は永遠に廻り続け、輪廻の世界に囚われている。我らの数は少なく、この地を汚した者たちの数は増えるばかりである。「文明」などを産み出し、あの者たちは我らの大地を貪るばかりである。
[劣化により判読不能]
我らの子孫にこれを託す。傀儡を作り上げるのだ。あの方の魂は8人の長たちの肉体に囚われている。奴らは輪廻転生を繰り返し、あの方が再び生まれ出るのを防ぐであろう。皆を殺せ。皆を殺すのだ。あの者たちの肉を用いて傀儡を作り上げるのだ。
8人の長たちの肉体。そして傀儡。その中にあの方の魂は眠り続けている。一人目は腕を。怨嗟の言葉と共に奪い取るのだ。二人目は足を。己の罪を噛み締めさせながらもぎ取るのだ。三人目は目を。奴らから光を奪うのだ。四人目は耳を。奴らから音を奪うのだ。五人目は舌を。あの方の声を取り返すのだ。六人目は心の臓を。奴らに心などいらぬのだ。七人目は血を。その中にあの方がいる。八人目は子宮を。あの方をこの地に再び呼び、我らの彼の地、我らのエデンを本来のあるべき姿に。
傀儡を作り上げるのだ。長たちに肉体を用いて。奪われたあの方の一部を用いて、あの方の生まれ出る腹を作り出すのだ。
作り上げるのだ。全てはあの方のために。作り上げるのだ。
教典の内容から、教団により少なくとも8名の人間が殺害されている可能性が浮上しました。財団は現在それらしい事件の詳細や捜査資料などの有無を調査しています。
傀儡によって我らの神はこの地に戻られる。傀儡の聖杯にあの方はおられる。
しかし、傀儡は彼の者たちの肉体によって生まれしものである。傀儡は苦しまねばならん。傀儡はその身に己の罪を背負わねばならん。
我らは傀儡に苦しみを与えた。醜きその姿を。
我らが子らよ。傀儡の認めし者を探せ。傀儡の心を癒す者を探せ。我らが神を生み出すものは皮肉なことに傀儡の抱く愛なのだ。傀儡に不幸を与えよ。いずれ、彼の者たちの中から傀儡を憐れむものが現れよう。その者こそ、我らの福音である。
我が子らよ。我らが子らよ。全てはあの方のために。全ては我らが神のために。
現在、教典内の「傀儡」はSCP-XXX-JPでるという説が有力です。この記述からSCP-XXX-JPに対して何かしらの「好意」や「同情」といった感情を抱く可能性のある職員、または抱いた職員の接触は禁止されます。宝馬博士のSCP-XXX-JPの部署への再配属の申し入れは現在認められていません。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe Keter
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは████州に位置するサイト-██のロッカー内にて収容されます。使用する際はレベル3職員による許可が必要です。
SCP-XXX-JPは現在、収容不可能な状態です。
説明: SCP-XXX-JPはスミス&ウィルソンM66、2,5インチリボルバーに酷似した銃です。しかし、製造番号などの記録は無く、グリップとトリガーに本来のM66とは異なる特徴をいくつか有しています。また、SCP-XXX-JPの弾薬は通常の銃器と同様に消費され、新たに装填することで再度使用可能な状態になります。
SCP-XXX-JPの異常性は発砲後または発砲前に発揮されます。SCP-XXX-JPを用いて発砲した場合、通常の銃器と同様に弾丸が発射される、または発砲音が確認されず発射された弾丸が消失する2パターンのケースが発生します(その際、SCP-XXX-JPの機構は問題なく機能しており、また使用された弾薬も同様に消費されます)。そして、発砲後、または発砲以前にSCP-XXX-JPを発砲した地点から発砲した当時の運動エネルギーと発砲音を有しながら弾丸が出現します。
実験記録001 - 日付2012/8/11
対象: D-XXX-001
実施方法: D-XXX-001によるSCP-XXX-JPの発砲。
結果: 弾丸は消失しました。その後の弾丸の出現はありません。
分析: おそらく射出された弾丸は過去、もしくは未来にワープしたと思われます。なお、この分析は実験002の結果に基づくものです。使用された実験室は弾丸の出現、または過去にそれらしき事案の資料が発見されるまで、セキュリティー担当者の監視のもと封鎖されます。
実験記録002 - 日付2012/10/4
対象: D-XXX-002
実施方法: D-XXX-002によるSCP-XXX-JPの発砲。
結果: 弾丸は消失しました。その二日後、D-XXX-002がSCP-XXX-JPを使用した地点から弾丸が出現しました。
分析: 弾丸が出現した時刻はその当時のD-XXX-JPが発砲した時刻と同じでした。このことから、SCP-XXX-JPが弾丸を送ることのできる単位は年単位、もしくは日単位である可能性が浮上しました。
実験記録003 - 日付2012/12/24
対象: D-XXX-003
実施方法: D-XXX-003によるSCP-XXX-JPの発砲。
結果: 弾丸は消失。
分析: 調査の結果、1993/2/8に実験室が使用された際、何者かによる発砲事件が起きたという資料を発見しました。当時、保管された弾丸の旋条痕などを鑑定した結果、SCP-XXX-JPによって射出されたものと判明しました。
SCP-XXX-JPは、2004/4/2████州で発生したトラブルが切っ掛けで発見されました。当時、射撃場に来ていた一名の利用客が射撃場のオーナーに苦情を申し立て、その内容はいくら引き金を引いても弾丸が射出されないというものでした。しかし、拳銃内の全ての弾薬を調べたところ問題なく消費されていたことが判明し、ただのクレーマーの文句であると処理されました。ですが2012/3/1に、射撃場には来客が無かったにもかかわらず2発の発砲音が確認され、その後も数回の無人の発砲事件が発生したためオーナーは現地の警察に通報。当時その署内に潜伏していたエージェントの目にとまりました。
オーナーの証言では、2004/3/26の夜中に不審な人物が射撃場に侵入する事件が発生し、オーナーは設置してあったショットガンを用いて侵入者を撃退しました。その際、その人物が落としたと思われる銃を誤って貸出用の銃として利用していたことが発覚し、その後、当時の関係者にAクラスの記憶処理を施した上でオーナーは拾得物横領罪で起訴されました。
財団は現在もSCP-XXX-JPを所持していたと思われる人物を捜索中です。
当初、SCP-XXX-JPのタイムワープの不安定さが懸念されていましたが、X線による調査の結果グリップの右側面内部に「random ON OFF」と記入されたスイッチ、および「F、Pおよび空白 00/00/00」と記入されたメモリが発見されました。グリップ右側面は取り外し可能になっており、「random」の項目をOFFにしたところSCP-XXX-JPの発砲時のタイムワープが制御可能になりました。その後、SCP-XXX-JPはSafeに分類されました。
SCP-XXX-JPに取り付けられているメモリはFとPにより過去、未来の切り替え、数字を入力する部分はそれぞれ年/月/日に該当します。また、年の選択は下二桁までしかなく、現在の年数から換算した年数に依存すると思われます。
使用した場合の例を出すならば、2013年に「F 26/5/9」と入力した場合、2026年5月9日、「P 26/5/9」と入力した場合、1926年5月9日の発砲地点に弾丸が射出されます。同年に射出したい場合は「空白 00/5/9」と入力することで同年の5月9日に射出が可能になります。
これらの記録はSCP-XXX-JPの収容後に発見された、SCP-XXX-JPと思われる改造S&W,M66が使用された事案、およびSCP-XXX-JPによって引き起こされたと思われる「不可解な」事件を時系列順にまとめたものです。
1946/9/16 アメリカ、████州郊外に一人の男性を車で送ったと言う人物の証言が得られました。その男性はSCP-XXX-JPと思われる銃をその地点で使用しており、その当時そこはまだ開発が進んでおらず更地でした。
1952/10/7 ███氏殺害事件
説明: イタリアの███街の夜中の9時に███氏が何者かによって、頭部を正面から撃たれ死亡する事件が発生しました。検死の結果、███氏は至近距離から発砲されたことが分かっています。しかし、当時███氏と同行していた友人はそのような人間はいなかったと証言しており、事件は現在も迷宮入りであるとされています。
また、現地の警察が発見した、███氏の血液が付着した弾丸を財団が鑑定したところ、SCP-XXX-JPによって射出されたものであることが分かりました。
1982/4/10 暴力団員射殺事件
説明: 日本の███県██市にある████港の倉庫にて暴力団による麻薬の取引があった際にこの事件は発生しました。当時の███県警察は麻薬取引の現場を特定し張り込んでいました。しかし、突如、彼らの目の前で一名の暴力団組員███ █████氏が何者かに右即頭部を撃たれ死亡。警察の誤射による殺人の可能性も浮上しましたが、███ █████氏は至近距離から撃たれており、現場にいた刑事の一人はそこには誰もいなかったと供述しています。
1982/7/7 ブラジルの██████という街にてSCP-XXX-JPを所持していると思われる男性が目撃されました。ホテルの従業員が206号室で男性がSCP-XXX-JPを使用しているのを見たと証言しています。
1993/5/4 ホテル密室殺人事件
説明: ブラジルの██████という街のホテルの一室にて女性が射殺されました。女性はバスローブを着用した状態でベッドの上で死亡していました。眉間を正面から撃ち抜かれており、テレビの電源が点けっぱなしになっていたことから、それを点け向き直った瞬間に射殺されたものと思われます。争った形跡は勿論、誰かを招き入れた、侵入された形跡もありませんでした。室内に残されていた弾丸を鑑定した結果、SCP-XXX-JPによって射出されたものであることが判明しました。
1994/8/19 日本の███県██市にある████港にSCP-XXX-JPを所持していると思われる男性が現地の作業員によって目撃されていました。男性はSCP-XXX-JPを使用したその後、姿をくらませました。
1995/11/3 DV夫銃殺事件
説明: アメリカ、████州郊外に住む男性が何者かによって射殺されました。当時、男性は妻と息子と共に自宅のキッチンにおり、妻に対して暴行を行っていました。しかし、突然、外から男性は心臓を打ち抜かれ死亡。息子が外を確認しましたが誰もいなかったと供述しています。
1995/11/4 中国、北京のマンションにてSCP-XXX-JPを所有していると思われる男性が、後に██ ██氏が居住するマンションの一室にて目撃されていました。男性はその部屋を購入し、一週間後に引っ越したとのことです。男性がSCP-XXX-JPを使用していた時を、同階の向かいのマンションの住人が目撃していました。
1999/6/2 中国学生射殺事件
説明: 中国、北京に在住の学生██ ██氏が何者かによって射殺されました。現場は██ ██氏が両親に購入してもらったマンションの自室でした。死因は背後からの頭部への発砲。この事件も至近距離で発砲されたと思われ、その時██ ██氏は自身の机に座りPCを操作していました。しかし、マンションの玄関前にある防犯カメラには██ ██氏以外の人物は写っておらず、彼の部屋にも何者かが侵入した形跡はありませんでした。発見された弾丸を財団が鑑定したところ、SCP-XXX-JPによって射出されたものであることが判明しました。
2003/3/3 イタリア、███街の夜9時にSCP-XXX-JPを所持していたと思われる男性の目撃情報がありました。男性は███氏が殺害された場所にてSCP-XXX-JPを使用したと思われます。
追記: 2013年現在、SCP-XXX-JPは収容不可能な状態にあります。詳しくは事案2013/4/7を参照してください。
事案2013/4/7
2013/4/7にS████博士のオフィス内にて発砲事件が発生しました。当時、S████博士は自身のオフィスにて報告書の作成を行っており、その最中に突然何者かに撃たれました。博士に怪我はなく、彼の証言では部屋には博士以外の誰もおらず、侵入された形跡もありませんでした。
この事案から、SCP-XXX-JPを使用した者による犯行である可能性が浮上しました。また、過去のデータにはSCP-XXX-JPをS████博士のオフィス内で発砲したという記録は無く、当時、博士はオフィスを移動したばかりだったことから「未来」からの発砲であることが決定づけられました。
このことから2013年以降にSCP-XXX-JPの収容違反が発生することが確定しています。また現在、SCP-XXX-JPの収容違反を阻止することはタイムパラドックスを引き起こす危険性があるため、SCP-XXX-JPは収容不可能になりました。
現在、世界中でSCP-XXX-JPを使用した「過去」、「未来」からの射撃事件が発生しています。
SCP-XXX-JPはketerに再分類されました。
SCP-XXX-JPの恐ろしさはその性質でもなく時間的矛盾を引き起こすことでもない。タイムパラドックスを逆手に取った、我々財団にも関与することができない殺人を犯すことが可能であるという点こそ、SCP-XXX-JPの真の性質なのだ。
そもそも、何故、SCP-XXX-JPを所持していた人物が射撃場などに侵入し、SCP-XXX-JPを紛失するなどという事態を起こしたのか。何故、これはこのサイトに保管されるようになり、サイト内の実験室にSCP-XXX-JPによって生み出された形跡がずっと昔からあったのか。少し考えればわかるはずだ。これは時間連続体の波に乗り、ここまで来た。まるであらかじめ決められていた、運命とも言われるもののように。
私はこれでも科学者の一人だ。このようなオカルティズムに浸っていていいような人間ではない。しかし、これらの事象はもはやそのような言葉で言い表すしか私にはできないのだ。
SCP-XXX-JPは内在的なketerである。私はこれを強く主張する。 2013/4/7 S████博士
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: エージェント、および機動部隊「騎士団」はSCP-XXX-JPの潜伏区画周囲の家屋にて、一般市民に変装し24時間体制で監視してください。SCP-XXX-JPと財団の提言のため、SCP-XXX-JPの潜伏区画内部に侵入することは禁止されています。
SCP-XXX-JP-α、およびSCP-XXX-JP-βの活性化により一般市民に被害が及ぶ場合、一般市民の保護を最優先とし後にAクラスの記憶処理を施してください。
説明: SCP-XXX-JPは███県████市の住宅地の中心に位置する█████公園に潜伏しているホームレスの男性です。SCP-XXX-JPはエージェントとの会話の中で自身のことを本名██ ████と名乗りましたが、SCP-XXX-JPの容姿を含めた戸籍調査の結果、19██/█/██に対象は心筋梗塞で死亡していることが判明しました。██ ████氏の遺族にも確認を取りましたが死亡は確定しており、当時担当した医師の死亡診断書も存在します。
SCP-XXX-JPは█████公園において”王”であり、政治、および儀式的な催しに参加します。また、SCP-XXX-JPは█████公園は彼らにとっての”王国”であり、SCP-XXX-JPと█████公園を構成する物の”領土”であると主張しています。
█████公園を構成する主な要素は以下の三つです。
・国民 ムネアカオオアリ、クロオオアリ、コツノアリ、サムライアリ、ジョロウグモ、クサグモ、ハラビロカマキリを主とした日本に生息する昆虫郡です。”国民”はそれぞれが人間並みの知能と寿命を有し、産業革命時のヨーロッパに近しい文明を築き上げています。また、「教育、経済、財産」を柱とした資本主義経済に酷似した社会を形成しており、通貨の概念も持ち合わせています。
しかし、同時に王政主義の形態も存在し、サムライアリとSCP-XXX-JPの貴族社会の色も濃く残しています。
”国民”には兵役の義務があり、満25歳になると”王国”内に設置されている軍隊に入らなければなりません。就業年数は3年であり、使用される武器はマスケット銃に形状が似ているミニチュアサイズの銃器です。しかし、威力は実物サイズと大差はありません。
”国民”の主な生活圏内は█████公園内の茂みや花壇であり、整備された道路や”国民”に合わせた居住施設や公共施設が存在します。
現在、確認されている”国民”の数はおよそ███億████万██千█百██であり、今なお増加傾向にあります。
・建築物 SCP-XXX-JPおよび”国民”は█████公園内部の遊具を”王国”における重要な建造物と認識しています。
滑り台・・・裁判所に該当。
ジャングルジム・・・銀行に該当。
水飲み場・・・大洗濯場として使用されています。
ブランコ・・・処刑場に該当。
回転式ジャングルジム・・・オペラハウスに該当。(使用する層は主に貴族などの上流階級です。)
・守護神・・・”守護神”は二つの要素に分けられ、それぞれをSCP-XXX-JP-α、SCP-XXX-JP-βと呼称されます。
SCP-XXX-JP-αは全身が█████公園内に存在する「砂場」の砂によって構成されている人型の未知の生命体です。目、耳、鼻、といった感覚器官の存在は目視では確認できませんが、SCP-XXX-JP-αは周囲の状況を正確に認識していると思われます。SCP-XXX-JP-αは█████公園の西出入口を主に防衛し、例外はありますが、SCP-XXX-JPの”入国”の許可が下りていない対象を抹殺します。
SCP-XXX-JP-βは█████公園内の中心に位置する、マメ科のエンジュに酷似した一本の木です。SCP-XXX-JP-βは侵入者などを察知しない限り不活性状態を維持し、不活性時はその他の植物と大差ありません。しかし、活性時には、植物としての特徴を残しつつも人型へと形状を変え、SCP-XXX-JP-α同様に対象を抹殺します。主に防衛する場所は█████公園の東出入口です。
なお、SCP-XXX-JP-αおよびSCP-XXX-JP-βは█████公園内でのみ生存できるわけではなく、█████公園外部へ進行することが可能です。また、SCP-XXX-JP-αおよびβを撃退する試みは全て失敗に終わりました。
SCP-XXX-JPは█████公園内の”政治”的実権を握っており、█████公園内での法律の管理を担います。また”王国”の象徴でもあります。
国家の体制は”国民”種族に依存している傾向が目立ち、█████公園内はある種の絶対王政と似たような体制を維持しています。ですが、直接的な政治を行う、またはSCP-XXX-JPからの支持を直接聞くなどの職務を全うする総理大臣を選挙によって任命するなどの民主主義的な傾向も目立ち、これらの政治的な職務に務めるおおよその種族の約8割がサムライアリによって構成されています。それに伴いムネアカオオアリ、クロオオアリは中流階級の生活をしている割合が多く、コツノアリは主に農業を担っています。兵役の任につく割合が比較的に多いのもこの3種類の種族です。また、ジョロウグモは生産される糸を用いた衣服などの布製品の製造を担い、クサグモがそれらを売買する商人的な役割を担っています。しかし、”王国”内では教育体制が確立しているため█████公園内にある”大学”に進学するなど、クサグモの中からも上流階級に昇格するケース、中流階級からのケースも存在します。なお、風俗などを扱う歓楽街も存在します。このような割合の変動が伺えることから、現在”王国”はある種の発展途上の最中である可能性が示唆されました。また、”国民”の全体の割合のうちハラビロカマキリは(主な種族に分類されますが)極めて少数であり階級も安定していないことから、ごく最近に”国民”として”王国”に加えられたのではないかと思われます。
”国民”の一部が兵役の任に就く際、それぞれに適性検査が行われ体型に合わせられた武器が支給されます。それを使用する際、”国民”はそれぞれの前脚を通常の人間のように駆使し銃器を扱います。それのどれにも当てはまらない場合は通信手として任命され、通信端末はモールス信号の打電装置と思われる物が使われています。
SCP-XXX-JPは█████公園内を毎日徘徊し”国民”生活の視察を行なっています。また、”王国”に年周期的に行われる儀式的催しにも参加します。主な催しは「王国誕生祭」「守護神への奉納」「新年の訪れ」などです。
現在、█████公園内にSCP-XXX-JPの許可なく侵入する試みは一度を除いて全て失敗しています。西出入口、東出入口以外の場所(█████公園は周囲を柵で囲われています。)から侵入する試みは、未知の不可視な障壁の出現により阻まれました。
なお、”王国”側からの攻撃に合う対象は財団など、”王国”側に何かしらの被害をもたらす可能性を有する存在を対象に行われていると思われます。
実験記録001 - 日付██/██/██
実施方法: Dクラス職員一名を █████公園西出入口より侵入させる。(尚、実施は夜間に行われた。)
結果: 武器を装備した兵役中の”国民”の攻撃を受け死亡。
分析: 侵入しようとしただけではSCP-XXX-JP-α・βは活性化しないことが判明しました。また東出入口においても、昼夜問わずに行った場合も同様の結果が得られました。
実験記録005 - 日付██/█/██
実施方法: Dクラス職員に防弾処置を施し侵入。(昼夜ともに行う。)
結果: SCP-XXX-JP-αおよびβが活性化。侵入したDクラス職員を殺害しました。
分析: Dクラス職員が”国民”に直接危害を加えようとした場合もSCP-XXX-JP-α・βは活性化しました。このとこから、SCP-XXX-JP-α・βはSCP-XXX-JPを優先しつつも█████公園全域を防衛しているものと思われます。
実験記録011 - 日付██/█/█
対象: エージェント█████
実施方法: 外務省認定の入国申請書を記入の上、西出入口にいる兵役中の”国民”に手渡す。
結果: █████公園内の侵入に成功しました。また、SCP-XXX-JPとの対話も実現しました。
分析: これはもう、本当に国って思った方がいいのかもしれないな。 -███博士
補遺: SCP-XXX-JPは2000年から2014年までの間、区画整理などの対象から外れ続けていたことが発覚し発見されました。また、█████公園にまつわる怪談まがいの噂が広まっていたことも相まって財団の目を引きました。その内容は、公園内で悪戯をした子供が行方不明になっている、誰も活用しないため埋め立ててアパートにしようとしていた業者が公園内で死体で発見されたなどです。なお、行方不明者の関係者全員にはAクラスの記憶処理を行いそれぞれに事故、病死などのカバーストーリーを適用しました。
当時、財団は█████公園の地区における超常現象であるという認識でしたが、事案-XXX-Kが発生したため、対象をSCP-XXX-JPと再認定しました。
事案-XXX-K
██/█/██ SCP-XXX-JPの前方に1羽のカワラバトが飛来。およそ5分間の静止の末、カワラバトもそのほかの”国民”と同様の反応を示しました。その際、カワラバトはSCP-XXX-JPに対し「跪く」と思われる行動をしました。
その後、SCP-XXX-JPは█████公園内で同様のケースが10回にわたり発生しました。
このことから、SCP-XXX-JP-αおよびβはSCP-XXX-JPはSCP-XXX-JPの影響下にある別個体のSCPオブジェクトである可能性が浮上し、現在、SCP-XXX-JP-αおよびβを新たなSCPオブジェクトへと認定するための協議が行われています。
SCP-XXX-JPの人間に対する影響は未だ確認されていません。
現在、SCP-XXX-JPはエージェント█████との間で行われた「不可侵条約」の提言により、SCP-XXX-JPの外部への進軍を抑制することに成功しています。
追記: █████公園内の文明レベルがより高度なものへと発展し始めました。”王国”内での新型兵器の製造が行われる可能性が発生したため、機動部隊「騎士団」は█████公園周囲の家屋に潜伏し、SCP-XXX-JP、および”国民”、SCP-XXX-JP-α・βを監視してください。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト内の専用ロッカーで保管されます。今後、SCP-XXX-JPを用いた実験を行う場合はレベル2の職員の許可が必要になります。また、XXX-129Aの分析を行うために発症者と接触する場合はレベル3職員の許可が必要になります。
説明: SCP-XXX-JPは█████社の製造したと思われる美肌用の乳液です。ですが、█████社に問い合わせたところ、SCP-XXX-JPと同様の規格の製品は製造していないことが判明しています。成分分析を行った結果、本来、化粧品などには使われることの少ない[編集済]と酷似した物質が発見されました。
SCP-XXX-JPの特異性は人間の女性が使用した場合にのみ発現することが確認されています。人間の男性や動物に使用した場合は何ら異常性は見られませんでした。SCP-XXX-JPを使用した場合、使用者の顔面の骨格、体型、肌の色などを変異させ、一般的に「容姿端麗」であるという評価を受ける見た目へと再形成します。変異の段階は皮膚の形成から発生し、その際、使用者の皮膚内の色素は全て破壊され、例外なく白色に変化します。また、シワやたるみ、色素斑や角化症などの症状も完治します。その後、顔面骨格の変異が始まり、目、鼻、口、耳などの位置も修正されます。体型の変化が発生した際、人によって身長の伸縮、余分な体脂肪の消失、骨の再形成などが行われます。身体の形状の変化に関しては使用者の女性は全員、「何も感じなかった」と証言しており、また、これまでの身体の変化にかかる時間には個人差があり、平均約30分で変異は完了します。
これらの変化はSCP-XXX-JPの使用回数によって効果が薄れていくことが判明しており、一回目の使用で続く効力は約5年、二回目の使用で約3年、三回目で約1年、四回目で約半年と減少していきます。最終的には使用しても何ら効果が見られなくなり、その約5ヶ月後、使用者は40度以上にもなる高熱を伴う原因不明の病気を発症し、身体の筋肉量が極度に減少しだします。その結果、自力で歩行することが困難な状態へと移行し、その後は内臓機能の低下、記憶障害、吐血、血便などの症状が確認されるようになります。このような症状が約一週間続いた後、使用者の皮膚下に原因不明の腫瘍が発生し異常な増殖スピードで、およそ1時間で使用者の全身を覆います(この腫瘍をXXX-129Aとする。)。特に顔面の変化が顕著に見られ、鼻の肥大化、まぶたの肥大化による眼球の陥没、声帯機能の退化、歯周病の様な症状により歯が抜ける、などの症状があらわれます。なお、そのような状態であっても使用者は通常の人間と同様に生存することが可能です。また、XXX-129Aを切除した場合、その部分が修復されるため、全てのXXX-129Aを摘出する試みは成功していません。
まるで豚のようだ。-████博士
補遺: SCP-XXX-JPは19██/█/█に病死したとされている女優のA██ ████氏の自宅で発見されました。当時、現地警察が彼女の在籍していた事務所側の「彼女にいくら連絡しても電話に出ない」という通報を受け、自宅に突入。その結果、全身をXXX-129Aに覆われた状態で生存しているA██ ████氏が発見されました。財団は潜入していたエージェントの知らせを受け調査を開始。関係者にはBクラスの記憶処理を行い、カバーストーリー「病死」を適用しました。その後、自宅内の物品の分析を行なった際にSCP-XXX-JPを発見。実験によりその異常性が判明しました。
今後の調査のため、現在█名の発症した使用者を隔離しています。
アイテム番号: SCP-801-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-801-JPはDクラス職員の収容施設内部の一室に収容されます。SCP-801-JPは3m×3m×4mのコンクリート製の区画に収容し、出入口部分はコンクリートで封鎖されます。その区画と隣接するスペースにはDクラス職員1名が配置されます。
その収容区画外部には常にDクラス職員のいる区画を24時間モニタリング出来る場所を設け、2名のセキュリティ担当者によって監視してください。セキュリティ担当者はDクラス職員の記憶の改ざん点に何らかの矛盾を発見し、それらを指摘することは許可されていません。
万が一Dクラス職員がSCP-801-JPの捜索、奪還、尋問に当たる行動をした場合はその場でDクラス職員を終了してください。その後30秒以内に新たなDクラス職員を配属してください。
説明: SCP-801-JPは外見上およそ200kgと思われる肉塊です。。SCP-801-JPは男女の区別なく単体または複数の人間に影響し、その影響下にある人物(これを801-Aとする。)の「家族」の有無に関わらずSCP-801-JPがその一員であると認識させます。しかし、SCP-801-JPの影響圏内(潜伏家屋全体)に血縁関係のない複数の人間が存在した場合、SCP-801-JPの影響を受ける人間はその内の一名に限られます。
SCP-801-JPが801-Aに寄生した瞬間、801-Aの居住している一部の区画はSCP-801-JPによって閉鎖されます。この現象の発生後、801-AはSCP-801-JPに対し食材などを提供しはじめ、また提供された食材は未知の方法によって消費されます。食器類やそれを消費した際に生じるゴミなどは潜伏区画の出入り口前に配置され、記録媒体を用いた消費活動の観察を行ったところ、黒い靄のような物体が対象を包み込んでいる様子が確認されました。当時、実験に参加していたスタッフは「赤ん坊ほどの大きさだった。」と供述しています。
これらの効果は801-AがSCP-801-JPが潜伏している区画を覗くまたは侵入するなどの行動を実行した、801-Aが何らかの事故や病気により死亡した、またはSCP-801-JPの影響下にない人物に記憶改変の矛盾点を指摘された場合に変化します。また、この現象は801-A以外の第三者がSCP-801-JPの潜伏区画内部を視認した場合(カメラなどを使用した場合も同様に)も発生します。
確認されている変化
・SCP-801-JPと生活したという改ざんされた記憶と改ざん前の記憶が混在し始める。
・SCP-801-JPは潜伏区画の床などにポータルを作成し消失する。その後、別の地点に再び出現する。または最も近くにいる人間に影響を及ぼす。
SCP801-JPが次の地点に出現する法則性は判明していません。
801-Aは改ざん後の記憶と改ざん前の記憶の混在による混乱により過度のストレスを感じているように思われます。これらの治療法は確立しておらず、いかなる手段を用いても緩和、もしくは忘却させることは不可能です。(Fクラスの記憶処理を施しましたが効果は見られませんでした。)
SCP-801-JPは███県█████市███2丁目██番地██号の民家にて、SCP-801-JPの影響下にあった家主による通報により確認されました。しかし、SCP-801-JPの出現ポイントに財団が到着した頃には対象は逃走していたため、財団は全国での引きこもりの実態調査を装ったSCP-801-JPの捜索を開始しました。三百件近くの捜索の末、█████県███市█████町にある上流階級の家庭でSCP-801-JPと思われる情報を取得。財団は機動部隊と4名のエージェントを派遣し、その周辺を封鎖しました。。しかし、財団職員の一人が誤って外部からSCP-801-JPの潜伏区画を覗いてしまったため目標は再び消失。その後、一時捜索は中断されましたが4名のエージェントの内の一名にSCP-801-JPの影響が見られ、サイト内にあったのエージェントE█████の宿舎にSCP-801-JPが出現し、急遽その区画をSCP-801-JPの収容区画に改造しました。SCP-801-JPの潜伏家屋に居住していた三名(50代の夫婦、大学三年生の女性)はサイト-████に収容され治療を受けています。エージェントE█████は現在も治療を受けています。
補遺1: SCP-801-JPの影響下にあった家主に対するインタビュー
対象: SCP-801-JP発見当初の家主
インタビュアー: エージェント██████████(後にインタビュアーと記述する。)
付記: これは当時SCP-8013-JPの影響下にあった█████氏の家屋内で、ボイスレコーダーを用いて行われました。
<録音開始,>
インタビュアー: どうも█████さん。はじめても?
█████氏: [沈黙]インタビュアー: [咳払い]█████さん、大体でよろしいのでこちらの質問に答えてください。 今回の事件の発端となったのは、いつ頃ぐらいからだと認識していますか?
█████氏: ██月頃から[沈黙]でも、息子は! 息子はずっと!インタビュアー: █████さん。お辛いかもしれませんが、あなたにお子さんは。
█████氏: [エージェント██████████の言葉を遮る]分かってる! そんなこと! だが[沈黙]だが、息子はいたんだ! ずっと[沈黙]ずっとあの部屋で!
インタビュアー: ですから、それは全て。
█████氏: [机を叩きつける音]貴様に何がわかる! 俺は全部覚えてるんだ! あの子が生まれた時のことを! 生まれたての頃は体重が少なくて、医者からは危ないかもしれないって言われたことを! 入園式の日に一緒に桜を見ながら歩いたことを! 参観日の日に仲良く手をつないで帰ったことを! 大学受験に失敗して、いつもいつも慰めていたことを!
インタビュアー: [沈黙]残酷かもしれませんがあなたの今までの記憶は全て改ざんされたものです。そのような事実は一切存在しません。
█████氏: [二度机を叩く音]分かっているんだよ、そんなことは! あの子がいなかった記憶もあの子と過ごした人生も! 全部[沈黙]全部全部全部わかってるんだよ! だけど、[言葉が詰まる]だけど、どうしろって言うんだよ! あの幸せな日々も、家族がいた毎日も! そりゃあ、あいつが大学に落ちて、そのまま引きこもっちまった時はまるで生きた心地がしなかったさ! 部屋の中でいつも何をしているのかもわからない、働こうともしない! それでも[再び言葉が詰まる]それでもあいつを信じてここまで頑張ってきたのに! でも、俺の頭にはあの子がいない記憶もあって。独りでただ寂しく生きていたあの日々もあって! [啜り泣く声]一目瞭然だろう! どっちの人生が素晴らしかったか! どっちの人生の方が生きているという実感があったか! 俺は。俺は! [突然立ち上がり部屋を飛び出す]
インタビュアー: █████さん? █████さん!
<録音終了,>
終了報告書: このすぐ後に█████氏は彼の家のキッチンに置かれていた包丁を用いて█████しました。
補遺2: サイト████収容されていた3名の801-A、およびエージェントE█████は事件-801-██/5/24が発生したため終了されました。
アイテム番号: SCP-801-JP-B
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 摘出されたSCP-801-JP-Bはサイト████の特殊冷却庫内にて冷凍保存されます。801-Aはサイト██の30cm厚のコンクリートで囲った7m×9m×7mの独房に収容されます。
説明: SCP801-JP-Bは出産直後の乳幼児に酷似した巨大な腫瘍です。SCP-801-JP-Bは収容中の4体の801-A、それぞれの体内で発見されました。SCP-801-JP-Bは801-Aの体内に存在している間、801-Aの身体能力を大幅に向上させ、それに伴い知能を著しく低下させます。
SCP-801-JP-Bは発生後、約24時間以内に801-Aの体内に成分不明の物質を分泌し血中内に混入させます。そして801-Aの脳に到達した時点でホルモン分泌系に作用し始め、その結果801-Aの急激な筋肉の増量、大脳の萎縮という症状を引き起こします。発症後の801-Aは好戦的、または野性的な行動を見せます。
SCP-801-JP-Bを摘出したとしても801-Aからは前述の症状は消失しません。ですがSCP-801-JP-B摘出後、801-Aは約5時間以内に生命活動を停止させました。
SCP-801-JP-Bの発生後、SCP-801-JPの以前のような能力は消失しました。当時、SCP-801-JPの収容にあたっていた一名のDクラス職員が腹痛を訴えた際、検査の結果、初期段階のSCP-801-JP-Bが発見されました。その後、前SCP-801-JP収容施設にDクラス職員を配置したところ以前のようなSCP-801-JPの効果を一切示さず、調査の結果オリジナルのSCP-801-JPの完全な消失が確認されました。現在も新たなSCP-801-JPの情報は得られていません。SCP-801-JPを解剖したところ内部が空洞になっており、へその緒と胎盤に酷似した残骸が無数に確認されました。
事件-801-██/5/24
██/5/21、SCP-801-JPの収容担当にあたっていたDクラス職員が腹痛を訴えはじめ、検査の結果、初期のSCP-801-JP-Bが発見されました。
██/5/23、収容されていた801-AおよびエージェントE█████にも同様の症状が現れ、SCP-801-JP-Bは急速に発達し始めました。当時の研究スタッフはSCP-801-JP-Bの経過観察のため、801-AおよびエージェントE█████の終了処分を保留しました。
██/5/24、801-Aの身体能力の異常な発達が見られ、3体の801-AとエージェントE█████が収容室を脱走するという事案が発生しました。その結果SCP███-JP、SCP███-JPの脱走という最悪の事態を招き、その後、脱走した3体の801-AおよびエージェントE█████はセキュリティー担当者によって終了されました。
財団は過去にSCP-801-JPの影響を受け、SCP-801-JP-Bを保有している可能性のある801-Aの収容を優先して行います。
13/2/26現在、サイト-███には17体の801-Aを収容しています。
時間というものは絶対である。まるで万物を支配しているかのようにそこに在り続け、それから逃れることは決してできないのだ。決められた鉄則の中を我々はただ歩くのみであり、時間とは普遍の真理のように我々の前に常に立ちはだかる。それが「時間」というものであり、この原則は決して変わらないはずなのである。
しかし、その絶対的な物にごく小さな亀裂が生まれたとき、それはもはや時間というものの形を成すことはできない。
タイムパラドックス。時間的矛盾。時間は常に連続的であり、その連続性は常に保たれなければならないのだ。
これはSCP-XXX-JPとこの時間連続体との親密な関係に関して記述した文章である。
[中略]
ここで一つの例を出すとしよう。例えば(もし可能であるならば)ある人物が現代から過去にタイムスリップをしたとする。そして、(これはあくまで例えであるため実際に行うかは定かではないが)その過去の時間に存在している過去の自分に会い、その人物を殺害するのだ。
想像豊かな読者諸君ならここであらかたの筋は見えてくるはずである。
そもそも、時間は連続的であると先に述べた。だから、もし過去に行くとしてもその連続性の中にいる限り問題は起きない。連続体の中のスタート地点が多少ズレるだけ、鉄道ならば今いる駅の一つ前の駅に移動し、時間という名の列車に乗り込むという解釈であれば幸いである。しかし、もし自分の手で過去の自分を殺害した場合、ある矛盾が生じる。
もし、過去の自分が現代の自分に殺害された場合、過去で自分自身は死亡しているため、時間連続体の波に則れば現代の自分は既に過去で死亡していることになる。しかし、ならば、現代から過去に行った自分という存在は一体どこに行くのであろうか。そもそも、過去で自分自身に殺されたはずなのに、どのようにして現代から過去に行って自分自身を殺害しに行くのか。そして、殺害が不可能であるはずなのに現代の自分が死亡するにはどうすれば良いのか。この時点で、現代の自分自身の存在も、過去に殺されたはずの事実も、双方ともに大きな矛盾が生じるのだ。
つまり、これがタイムパラドックス。時間的矛盾である。
SCP-XXX-JPを使用する際にもこれを当てはめることができる。
あるとき、未来の人間がSCP-XXX-JPのメモリを過去に設定して発砲したとする。その時点で現代には過去にSCP-XXX-JPの弾丸が出現したという事実が残る。そして、現代の人間が未来の人間のSCP-XXX-JPの使用を察知し、それを阻止したとしよう。
SCP-XXX-JPの使用を阻止した場合、過去に向かって弾丸は射出されない。しかし、現代にはそのSCP-XXX-JPの使用を阻止する原因となった過去の弾丸の出現という事実があるはずなのだ。そうなると、そのSCP-XXX-JPの使用を阻止しようとする行動の動機の存在理由に疑問が生じるのだ。これらも時間連続体に矛盾している。立派なタイムパラドックスである。
未来に対しての射撃も同様である。その未来に時間軸にて、その未来から現代よりも遥か前に射撃され、その地点にその痕跡が残っていたとする。その場合、未来に向けての射撃を阻止する行動からその痕跡のある地点への射撃に至る過程を阻害する可能性が浮上するのだ。結果としてタイムパラッドックスを引き起こしてしまう確率が非常に高まる。これがより複雑に絡み、それぞれの人間の行動や物の破損等に影響する場合、もはや我々には処理しきれない次元にまで到達するのだ。
[中略]
SCP-XXX-JPはその性質上、時間的矛盾を引き起こしやすい傾向がある。一発の弾丸の出現の有無によって、この世界の行く末を左右している。このオブジェクトの存在自体がこの世界に多大な影響もたらす程の力を有しているのだ。未来の発砲に対してもそうである。このオブジェクトを中心に、このSCP-XXX-JPを使用した世界線、使用しなかった世界線が存在し、ねずみ算式で数多くのパラレルワールドを生産している。単純なその機能によって、一見アイテムに属するように思えるこのオブジェクトによってこの世界は大いに影響されているのだ。しかし、先程までSCP-XXX-JPとタイムパラドックスの関係に付いて言及していたが、SCP-XXX-JPの真の脅威はそこではない。そもそも、タイムパラドックスは現代物理学で考え場合実際には起こりえないため、どんな作用が発生するか不明なのだ。ここまでのは記述してきた内容も、時間的矛盾が生じた場合に起きる現象が不可解なためにそれを阻止しようという単純明快な話でしかないのだ。
ここまでの話を聞き、ならばその弾丸の射出を阻止しなければいい、という結論に至る人物もいるかもしれない。しかし、問題はそう簡単なものではない。
もしも、SCP-XXX-JPの使用者がこのタイムパラドックスが起こることを逆手に取り殺人を行った場合、その殺人は阻止できるのだろうか。もし、あなたの大切な人が過去にこのSCP-XXX-JPを使用した者に殺害された場合、それを阻止しないことはできるのか。それを阻止した場合、この世界に何かしらの影響を与えるとしても。
[中略]
名前: 梁野 武一(やなの たけかず)
セキュリティーレベル: 3
職務: SCPの報告書の作成 事務作業 人型SCPの収容方法の確立 人型SCPの研究 エージェント猫宮と親しくする 神山博士への愛の告白 水野研究員への盗撮 長夜博士へのスカートめくり
所在: どこのサイトでも。もしくは廊下
特徴: スーツに白衣 赤縁のメガネを愛用 身長167センチ 体重52キロ
人物: 19██/3/11生まれ。当初、彼は████大学にて助教授をしており、その時に作成した論文により財団の目に止まりました。その論文「人ならざるのも」の内容はSCP-███に類似した人型SCPの収容方法に関するもので、財団は彼を要注意人物としてマーク。その後、接触を試みました。しかし、彼を調査した結果、過去に要注意団体と関わったような経歴も無く、論文の内容も過去に████へ旅行した際に接触したSCP-███に類似した生物について分析したものであったことが判明し、その能力を買われ財団の職員となりました。
梁野博士は変態です梁野博士は普段はとても良い人柄であり、紳士的です。特にレディーファーストを心がけており、また財団の職務を不備なく全うしています。しかし、頻繁に見せる問題行動がしばしば目立ちます。
梁野博士の問題行動のリスト
・廊下で横になり女性職員のスカートの中を覗こうとする。
・さも当然のように女子更衣室を開ける。
・最低です!-エージェント███
・ありがとう。-梁野博士・SCP-███-JPを[編集済]に使用しようとする。
・人型SCPを口説く。
・逆にどうやった。-████研究員
・惜しかった。もっと、彼女の好みをリサーチしておくべきだった。-梁野博士・食堂でわざとくちゃくちゃと音を立てて食べる。
・エージェント猫宮とわざと親しくする。
・なんでそんなことを?-███研究員
・彼女の兄の反応が面白いから。-梁野博士・宇喜田博士-1の体に触れようとする。
・胸、揉ませて?-梁野博士
・嫌です!-宇喜田博士・背後から耳元に息を吹きかける。
・何故か長夜博士のホクロの位置を網羅している。
・アイドル好きの職員に対して、そのアイドルのスキャンダルなどを暴露する。
・時々、「異世界からやって来た美少女たちが私をお婿さんにするんだって取り合うハーレム的なことが起きないかなあ。」と呟く。
・起きねえよ-エージェントC███
・希望は捨てちゃあいけないよ?-梁野博士・人の恋路を邪魔する。
・人型SCPと結婚しようとする。
・日本支部理事会に、財団の女性職員の制服を全てビキニで統一すべきだと進言する。
・却下です・・・・大変魅力的ですが。-日本支部理事-██
・残念です。-梁野博士・再度、宇喜田博士-1に触れようとする。
・お尻は?-梁野博士
・ダメです!-宇喜田博士・女性職員の飲みかけの飲料水を当然のように飲む。
梁野博士は財団職員となって間もない頃は研究助手をしており、当時担当していたSCP-███-JPの画期的な収容方法を報告。その功績を認められ一時は研究主任にまで昇進しました。しかし、199█/█/█にSCP-███-JPに対し[編集済]や[編集済]といった行為に及ぼうとしたため、降格されました。現在、梁野博士が人型SCPの研究に関与することは禁止されています。ですが、彼の報告する収容方法は財団にとって大変有益なものであることに変わりはありません。
梁野博士の最近の悩み
・
梁野博士が作成した報告書
SCP-JP:
Tales-JP:
・
・
「梁野博士。」
僕はやっとのことで彼を見つけた。
「……ん? ああ、『野々村』君。おはよう。」
博士を探す回るという行為。このサイトに配属され、彼と共に仕事をするようになってからもう何度目だろう。それもこれも、皆、この梁野武一という男の「癖」の所為だ。
今日も博士は廊下で寝転がっていた。この人はいつもそうであり、決まった場所に留まっていることがほぼ無い。その為、僕のように提出期日の迫っている書類の受け渡しを行う際に苦労する人間が後を絶たないのだ。その御蔭もあって、今じゃ配属したてのはずの僕の方が、他の職員よりもここいらの道に詳しくなってしまった。
「……おはようじゃないですよ。どれだけ探したと思ってるんですか。」
「ああ、それはそれは。」
この前だって別の職員が博士を探しまわり、挙句の果て、このサイト内で遭難してしまうという事件が起きたばかりだ。その職員が迷っていた時、当の本人がいた場所は会議室の机の下だった。この話を聞いた時、僕はその職員に大いに同情したのをはっきり覚えている。
ここへ来たばかりの頃は確かに驚いた。なにせエージェントに博士を紹介された時、案の定、彼は廊下で寝ていたのだ。しかも、丁度女性職員にセクハラまがいの行為をしている最中。彼は女性職員の足首を掴んだまま、引きずられて大爆笑していた。
自分の上司になるかもしれない人物のプロフィールぐらいは頭に入れていた。だから、僕は一時期は主任研究員にまでなった『立派な』職員だと言う勝手なイメージを持って、梁野博士の元へと向かったのだ。誰であろうと、そのような経歴を持っている人間だと知ったら、優秀な人間でかつ人格者であるという理由のない人物像を思い描いてしまうものだろう。しかし、結果はそれとは全く正反対だった。当然、僕はそのギャップに面食らってしまった。
「いや、ご苦労をかけたね。暇つぶしに本を読んでたらいつの間にか寝ちゃってたよ。」
「暇つぶしって……頼まれてた仕事はどうなったんですか? 」
僕は彼を探していた本来の目的を伝えたつつ、小脇に抱えている報告書の入ったファイルを持ち直した。
「頼まれた書類? ああ、うん。はいこれ。」
そう言って梁野博士は書類の束を取り出す。電話帳ほどもあるこのA4の束を何処にしまっていたのか、僕には皆目検討がつかない。僕はそれを受け取り、それぞれの書類をめくりつつ、じっくりと中身を確認する。
「……終わってますね。」
「終わっていたからこそ、暇だったのさ。」
そもそも、何で廊下でここまでの仕事ができるのか。自分のデスクで働いている自分がバカバカしくなる。こんなの納得できるわけがない。僕はそんな気持ちに加え、何か虚無感にも似た感覚を抱きつつ書類をファイルへとしまった。
だが、内心こんなことになるだろうと予想はしていたのだ。確かに、梁野博士はいつも廊下で作業していて、就寝の時ですらこのサイトの何処かで寝転がっている。それなのに、どういうわけか仕事だけはまともに終わらせるのだ。一体いつ、どこでそのような作業をしているのか。全く持って不思議であり、僕のような「ごく普通の」職員からしたら謎以外の何物でもない。このことに関して、理不尽と思っている職員は僕だけじゃないはずだ。以前、博士のこれらの行動を叱咤した主任研究員がいたが、博士の仕事の早さに勝てずに結果を残せなかったという事件以来何も言わなくなったのは記憶に新しい。
「……仕事が終わっているのなら別にいいです。でも博士にはちゃんとしたオフィスがあるじゃないですか。決まった場所にいてくれないと、正直探すのが面倒です。」
僕は博士に言った。これを言うのも何度目だろう。もう伝えたところで、彼が自分のオフィスで仕事をすることなんて無いと分かっているのに。本当はもっと、強い口調で声を大にした言葉をぶつけてやりたい。だが、そんなこと彼は何も気にしていないといった顔で聞くのだろう。本当に、何も気にしていない、何も感じていないという顔で。
「そう言われてもねえ。ここが一番落ち着くんだよ。」
博士は先程僕から言われた小言に対する返答をした。やはり予想通りの受け答えだった。その顔は、いつもと同じ穏やかな笑顔だ。
しかし、この人は本当に不思議だ。
僕がここに配属されて彼の下で働き出してから、彼が誰かを叱ったりだとか、誰かに対して何か文句を言ったりだとか、とにかく人に対して何か感情を爆発させた姿を一切見たことがないからだ。少し問題になるようなセクハラまがいの行為は良く話題には上がるが、彼が誰かに対して好意以外の何かをぶつけている姿など、断言出来るほどに一回も無い。そして、また不思議なのが逆に彼が誰かに何かをされたとしても、彼の中にある相手に対する好意の様なものが無くなることが決してないということだ。つまり、誰かを嫌いになるということが無い。コーヒーを服にこぼされた時も、悪口を言われた時も。大げさなことと思われるかもしれないが、彼はたとえ殺されそうになったとしても、その自分を殺そうとする相手にすら好意を抱いていると伝えるだろう。それほどまでに梁野博士という人物は、何かが人と違うのだ。
「……落ち着くとか、落ち着かないとか、関係無いでしょ。僕は困るって言ってるんです。」
僕は少し怒気の混じった口調で博士に文句を言った。しかし、相変わらず彼は何を言われても変わらない。
彼は僕と出会ってからずっと同じ調子で話し、同じ態度で接してきた。彼の僕に対する対応はあの時から全くと言っていいほど変わっていない。機械と触れ合っているとまではいかないが、声の調子、態度、身振り手振り、それらがまるで統一されているかのような印象を受ける。いや、僕だけじゃない。僕以外の人間とも、この彼の雰囲気は変わらない。まるで、器用に皆を平等に扱っているように。全てが平均化され、全てに好意を持っている。しかもその好意すらも平均化されていて、寸分の狂いもないのだ。そんな人間が本当にいるのだろうか。全ての人間と、完璧なまでに平均的に接することの出来る人間が。
ふと僕は足元に視線を移した。先程から博士が読んでいた文庫本がそこに置いてあったからだ。よくよく見れば、その本はとてもぼろぼろな状態で、紙が茶色に変色していた。一体いつから読まれているのか想像もできないほどにだ。表紙に印刷されたタイトルが目に入る。僕はそれを読んだ。
「……人間失格? 」
「ん? ああ、これか。これはね。」
博士の表情が少し物悲しげなものに変わる。この人がそういった感情を表に出すのを見たのは、僕が知るかぎりではこの時が初めてだ。
「私の半生のようなものだよ。」
「……半生? 」
彼は言った。人間失格が半生だと。 僕は頭に疑問符が浮かんだ。恐らく、あからさまに理解出来ていないといった風貌になっていただろう。そして、僕は少しだけその発言について考えてしまったのだ。
それほど壮絶な人生を生きていたのか、この人は。もしくは、登場人物と自分を重ねてる? 一体誰と。無難に行けば、恐らく主人公だろう。主人公と同じ人生。ふと、件の小説の大まかなあらすじを頭の中でなぞる。しかし、いや、今の博士からは想像できない。この人の人生。この人の人生?
「別に、この中の誰かに自分を当てはめているわけじゃないよ。」
「え。」
「ただ私は、これと共に生きて、これと共にここにやって来た。それだけ、私はこれと付き合い、それに費やすための時間が多かったというだけさ。」
まるで、僕の考えを見透かされたようだった。以前もこういったことがあった。僕が、心のなかでとどめた博士に対する悪態を、彼はそのまま口に出して再現してみせた事件だ。まるで、僕のことを、僕よりも知っているかのような物言いで、博士は言うのだ。その時だけ、僕は博士がまるで人間じゃないかのような錯覚に陥る。
「そうだ『野々村』君。」
「あ、はい。 」
僕は先程の思案を止め、唐突な呼び止めに何とか答えた。
「今日、新たに収容されるオブジェクトの一回目の実験が行われるんだ。君はここに来て間もない。だから、まだ収容手順の流れとかよく分かっていないだろう。それの見学がてらに連れてきてくれって主任が言ってたんだ。どうだろう。」
博士はゆっくりと起き上がり、僕の顔を見つめる。
「はい。分かりました。」
僕は二つ返事でその誘いに応えた。
「あ、それと最後に一つ。」
僕らが歩き出すと同時に、博士は再度口を開いた。彼が立ち止まると同時に、僕も立ち止まった。僕はそれに返事をする。僕の先を歩こうとしていた彼は、背を向けたまま話を続けた。
「今日の『子』は、私が見る限りとても怖がりだ。」
「……はい? 」
「気をつけ給え。わけが分からなくなって暴れだした子供ほど、扱いのむづかしい者はない。」
その時、僕はまだその言葉の真意が分かっていなかった。
「私は、『全ての他者』を愛しているんだ。」
僕は脇腹を押さえながら、痛む体に耐え悶絶していた。しかし、そんな僕の存在などには目もくれずに博士は喋り続けていた。
「だから、君のことも愛しているんだよ。」
サイト内の収容区画手前の廊下は辺り一面血の海となっていた。そこら中に人間だった物が散乱している。それらは既に肉片へと成り果て、一部ではゲル状に変異しているものまであった。視線を移せば、頭部と内臓が片隅にかためて置いてあるのが目に入り、ついこないだまで食堂で談笑していたはずの同僚たちの死体が山積みにされているのだ。暫く気絶していた僕は意識が鮮明になってはじめて、この光景を目の当たりにした。そして、その凄惨さからその場で吐き出してしまった。吐瀉物の中に交じる胃液の苦味が僕の舌を襲う。涙が滲み、ただ苦しいという感情だけが僕を支配していった。
護送中のオブジェクトが逃げ出すなんて。サイト内の事故。講習でも非常事態に備えてどう動けばいいかよく理解していたつもりだったが、ここまで凄まじいものだとは思いもしなかった。今日だけで、一体何人の人間が死んだのだろう。こんなにも簡単に人が死んでいくものなのか。誰にも気付かれない極秘施設の中で、こんな戦場が存在していたなんて。何人かの職員は生き残ってはいる。だが、ほぼ死にかけと言ったほうが正しいだろう。ある者は助けを呼ぶために悲痛な叫びを上げ、ある者は無くなってしまった両足を引きずったまま逃げようとしている。そのあまりの衝撃的な状況に、僕は思いの外、素直にその結果を受け入れることが出来てしまった。抗ったところで、どうにも出来ないという絶望が僕を飲み込んでいったのだ。
さきほど僕はそのオブジェクトによって壁に投げつけられた。その所為で今はこの血溜まりの上で腹ばいになって倒れている。体中に痛みが走り、まともに動くことすら出来ない。
死というものがすぐ目の前にある。生まれて初めての、本格的なそれを僕は感じた。
「君は凄い。これだけのことを、一瞬でやってのけたんだから。」
梁野博士が誰かと話している。僕は霞んでいる視界の中で、それを確かめた。その博士の声を頼りに、僕は何とか目と頭を動かした。
「……でも、これは君が好きでやったことなのかい? そうじゃなかったら君は本当に可愛そうな子だ。……ああ、かつて『他者』として認識していた者達のことも愛していたよ。だけどね? それも結局、死んでしまっていたらどうやっても愛することが出来ないみたいなんだ。……私は、まだそこまでには到達できていないらしい。悲しいね。私は。」
『他者』という言葉がとても引っかかった。博士の言うその言葉には、とてつもなく冷えきった物が根底にある。僕にはそう思えてならなかった。
この惨劇の中で、彼はどうしてこうも、いつもと変わらない平然とした態度で誰かと会話が出来るのだろう。そもそも、先程からしゃべっている内容自体が僕には理解し難いものだった。分からない。情報が少ない。いや、違う。分からないんじゃない。分かりたくないと言ったほうが正しいのかもしれない。そう思うと、僕のぼやけた頭でも嫌な想像ができてしまった。他に誰も居ないのなら、僕以外で会話を試みようとするものがいるとすれば、その答えはひとつだけだ。
「ん? やあ、『野々村』君。生きていたのか。私は嬉しいよ。」
博士が僕の存在に気がついた。その嬉しいという言葉が、どこと無く遠くを見て、恐らく僕のことを心配しているのではなく、そうすることが正解なのだという理由で行っているのだと感じた。
「……博士……一体、何を……。」
「彼女と話していたんだ。見給えよ、この光景を。彼女一人でやったんだ。どうだい? 凄いだろ。こんなことを一瞬でやってのけてしまうなんて。彼女は素晴らしい力を持っているよ。だけど、どうやらこれは彼女が望んだ結末ではなかったらしい。だから、私は彼女を慰めてあげていたんだ。だって可哀想じゃないか。……おっと、そうだ忘れていたよ。」
おもむろに博士は僕の業務用の携帯電話を僕の白衣の内ポケットから抜き取った。そして、先程の朗らかな口調とは打って変わって、とても真面目な言い方でこの惨劇についてを上層部に連絡した。周りでは、未だに阿鼻叫喚の声が鳴り響いている。
可哀想という博士の言葉が出てきた瞬間、僕は動けない体で心だけがざわついた。彼の口調は、本当に変わらない。いつもの日常を謳歌するときと全く同じなのだ。
僕の近くに博士が擦り寄り、倒れている僕を起こした。僕の背中を支え、壁が背もたれの代わりになるように座らせる。そして、僕は見た。博士と並んでいる、この惨状を創りだした当人を。そこにいる存在を明確な言葉で言い表すのにふさわしい言葉がある。それ以上でも、それ以下でもない。
「化け物かい? 」
博士が、まるで僕の心を見透かしたかのようにそう言った。まただ。また、この感じだ。僕のこの気持とは裏腹に、博士のその顔は本当に穏やかだった。
「確かにそうかもしれない。だけど、この子はただの臆病な『女の子』でしか無いんだよ。『野々村』君。それ以上でも、それ以下でもない。そうは思わないかい? だからこそ、彼女のこの行いを私は肯定してあげなくてはならない。じゃなきゃ、この子は自分の心を壊してしまう。君も、ただやったことを責められてるのは好きじゃないだろ? それと同じさ。そう、全く同じなのさ。」
「でも……こいつは、みんなを……。」
その瞬間、博士の表情が変わった。先程からの穏やかなものから一変し、そこには一切の感情の起伏も存在しないのだ。まさに鉄仮面だ。人間味というものが、消えて、無くなってしまったのだ。
「……『野々村』君。」
梁野博士が僕の顔に彼自身の顔を近づける。距離はほんの数センチ。彼は両手で僕の顔を掴み、ぐっと僕と自分自身との距離を縮める。
「私は、私の生涯を全くそれとは無縁なもので統一してしまった。だからこそ、私はそれを取り戻さなければならないんだ。私は皆を愛さなければならない。生きとし生けるものを、ずっと、心から愛し続けなかればならないんだ。私の『母』に注げなかった愛を、今こそ、私の中に創りださなければならないんだよ。じゃなきゃ、じゃなきゃ私は、きっと、恐ろしいモンスターになってしまう。やっと、やっとここまで来たんだ。私は、あそこにいる『彼女』も愛しているんだよ。『君』のことも愛しているんだよ……! だって、そうだろ……! 」
博士の目が、僕の目を見続ける。その目からは、何も感じられなかった。虚無。それが妥当だろう。空っぽなものが何求めたとしても、所詮は叶えられないのだ。僕は、その眼差しからそれを強く感じ取った。
いつの間にか周囲の声は止んでいた。というよりも、皆が梁野博士の言葉を聞いていたのだ。先程まで、殺戮の限りを尽くしていたそれも動きを止め、そこでは今の博士の悲痛な叫びだけがこだましていた。
博士は一旦僕から視線を離し、自身の周りを見回した。皆の視線が彼を見つめている。皆が皆、博士の先程からの文句に対して、恐らく僕と同じことを思っているのだろう。
博士は再度僕の方を見る。その顔は先ほどと変わって、いつものように笑っている。
「だから、私はここにいるんだよ。『野々村』君。 」
博士は最後にそう言って、何も言わなくなった。
機動部隊の介入により、事態は収拾された。僕と梁野博士は、この事件においての複数人いる内の生存者として保護された。そして、その後事件の概要について色々と聞かれた。当時の状況、オブジェクトはどのようにして人を襲ったのか。その他、なにか気が付いたことはなかったかなど。大体一時間ほどこれらの質問が続き、担当の職員の方と話して、僕は取調室を出た。扉を開けたそこには、僕と交代するのを待っていた梁野博士がいた。僕の出てきた取調室の向かいにあるソファーに彼は座っていた。
「終わったのかい? 」
博士が訊いてきた。僕は声を出さずに、小さく頷く。博士は、そうかと言って軽快に立ち上がり、僕とすれ違って部屋へと入っていった。横目で見たその顔は、相変わらずいつもと変わらない表情だった。
梁野博士に関しては、あくまで脱走したオブジェクトの活動を一時的に制御していたという名目で、ある意味今回の事件の功労者として扱われたらしい。だけど、僕はそうは思えない。あの人は、普通の人間とは違う。決定的な何かがずれている。あの、いつも温厚そうな顔に隠した物が、あの時、一気に漏れだしたんだ。僕にはそう思えて仕方がなかった。
「・・・だから、私は、ここにいる。」
博士が最後に言った言葉を復唱した。博士がここにいる理由。博士が、ここに自分の意志でいる理由。僕は少し放心的な動きをしながら、サイト内の廊下を歩いていた。一応の向かっている方向は僕のデスクのあるフロアへと続いてはいたものの、その足取りはおぼつかない。
僕は考えた。博士の言った言葉の意味を。
「私は全ての『他者』を愛している。」
僕はその言葉を思い出し、ふと後ろを振り返った。このサイトの、財団のとても無機質な廊下が延々と続いていた。
僕は思う。多分、あの人は、壊れているんだ。
これは私の勝手な言い分だ。ある意味、自分勝手な独白だ。君はこれを聞いてくれてもいいし、聞き流してくれても一向にかまわない。君からしたら、取るに足らない話かもしれない。もしかしたら、聞く勝ちすら無いかもしれない。だが、私が話すことだけは許してほしい。君に伝えたいんだ。
私は、小学校の頃の担任の先生からよく叱られていた。入学して、暫く経ってからずっとだ。恐らく、いやほぼ確実に、『彼』は私の事が大嫌いだったのだろう。『彼』だけじゃない。他の『教員』、『生徒』も、皆、私を嫌っていたはずだ。いつものように職員室に呼びだされ、私は扉を開けた。私は何も思っていないかのような表情を浮かべて、その呼出が、何を意味しているのかもわかっていないような風貌だった。
「何でお前はそうも生意気なんだ。」
これが『彼』の常套句だった。丸いメガネのレンズ越しから、『彼』の怒りに満ちた視線が私を襲った。口調こそ丁寧だったが、その眼差しは十分に私を罵っていた。
それとは正反対に、私は自分自身の表情に一切の躊躇いも映さず、ただ『彼』の顔をまっすぐに見つめているだけだった。あまつさえ、今自分が一体何について怒られているのか、それすら分かっていなかったんだ。その結果、『彼』の顔はより険しい物へと変わる。客観的に見ても、それはそれは恐ろしいものだったのだろう。生憎、私にはその怖さが分からなかった。『彼』のその表情から、私は『彼』の中にある黒いドロドロとした物がにじみ出ているような錯覚に陥った。恐らく、これは単なる怒りという感情ではない。もっと生々しい、今の私の年代の人間には決して向けない物だ。あまりにも具体的過ぎる負の感情そのものを、私は残酷なまでに真正面からぶつけられたんだ。『彼』の顔が、そのドロドロとしたもので覆われていく。今にも、『彼』が座っている椅子から立ち上がって、私にその握りしめた拳を振り落とそうとしているようだった。
私はそれを見透かしていたのかもしれない。自然と『彼』の、恐らく無意識に握りしめられた拳に目が行く。『彼』もそれを察知したのか、『彼自身』もそちらに視線を移す。我に返り、先程までの顔を改める。あくまで理知的な人間であるというカモフラージュを実行したんだ。ドロドロが引いていく。引いていくだけで、『彼』の心の奥底へと戻っていった。
『彼』が何故、私に対してそのような感情を抱いたのか。想像することは容易だった。たかが一人の子供が、大人の自分に対して全て知っているかのような態度で、同等の立場で物を言ったからだ。まさに正論を言われ、皆の前で赤っ恥をかかされた。複数の生徒に嘲笑された。しかも、それが一回や二回ならいざ知らず、この職員室に私を呼び出す度に。最早、怒りなどはとうに超え、それは憎しみにも等しい物になっていたことだろう。汚い言葉を使うのならば、私は『彼ら』からしたら殺したいほど憎い糞餓鬼だったに違いない。『彼ら』はあくまで教師という職に就いている。私があの時点で生きていられたのは、その役割が『彼ら』に課せられていたからにすぎないんだ。
「生意気だ。」
子供の時はこう思われていたほうが良かったのかもしれない。世の中には、生意気な子供などいくらでもいる。そう呼ばれて、そうカテゴライズされていたほうが、私にとってそれが安寧の地へと変貌していたに違いない。しかし、時の流れというものは残酷で、正直だ。無慈悲にそれは加速していき、いつしか私の『他者』との違いを浮き彫りにしてしまった。
そう、君も知っての通り、私は他の『人間』とは少し違う。見た目とか、なにか特異性があるとかじゃない。問題なのは、私の心だ。
私は『他者』というものを細分化して認識することが出来ないんだ。私にとっては『他者』という物は皆が皆平等であり、それ以上の何かへと分類することが出来ない。
私からしたら、例えその『他者』が年長者であろうとも、自分よりはるかに年下であろうとも、何億という財産と地位を持っていようとも、路地裏で泥水を啜りながら生きていようとも、皆、ただの『他者』としか認識できない。男か女か、その個人の情報というものまでは何とか頭で整理することはできるが、それから先は何もわからないんだ。
そして、私は『彼ら』から特別なものを見出すということも出来ない。人が誰かに何かを感じるということは、その誰かがその人にとって何かしらの特別な存在へと昇華しているからだ。それがたとえ憎しみであろうとも、愛であろうとも、友情であろうとも、ただの『他人』という認識から脱しているのには変わりは無く、だが、先程も言ったとおり、私はその特別な人間というものを『造る』事が出来ない。全ての人間が平等に見えてしまうがために、憎しみも、怒りも、愛さえも『他者』に向けることが出来ないんだ。
私には母がいた。私からしたら、『母親』というレッテルの貼られた『他者』でしかなかった。勿論、私はその『母』から生まれた。お腹を痛め、一人で私を育ててくれた。多分、『母』は私を愛してくれていたのだろう。しかし、私は『母』のその思いに応えることが出来なかった。想像してみて欲しい。世間では私にとって『母親』、『家族』とされている『人間』だが、私にとったら『赤の他人』でしか無く、そんな『人間』と24時間ともに生活するという状況を。この現状を苦痛言わず、なんというのだろう。自分の価値観が、明らかに普通の人間と違うということを常に突きつけられているのだ。自分にとって、本来大切な存在であるはずの『家族』という物がこうも無機質なものに見えてしまう自分という存在が、その当時はとてつもなく恐ろしかった。冷血な鬼に思えた。ホームドラマを見て、『彼ら』のまね事でもしようかとも思ったが、それも駄目だった。どうしても私には、この『母親』という存在が、全く持って取るに足らない、ただそこにいるだけの存在にしか思えなかった。
自分に絶望した。愛を知らない、いや、人を愛することが出来ない、誰かを、家族でさえ愛することの出来ない自分に。
私は一応は人並みに恐怖することはあった。しかし、それは自分自身に何かしらの危害が加わる可能性が発生した時だけだ。自分の死に直面した時、社会的地位が転落し生きていくことが困難になった時。『他者』には何も感じない。『他者』から受けた被害に関しては何かしら思うかもしれないが、それをいざ『他者』に向けようとした途端に何も思わなくなる。正確に言えば、その『他者』へと向けられた嫌悪、怒りのような感情がその他の『他者』へと分散しているのかもしれない、そんな感覚だ。私にとって『他者』は皆平等だ。何かしら『彼ら』から突出するものは私には無い。だからこそ、もたらされた現象に対する怒りなどは存在するが、そこから先は有耶無耶になってしまうんだ。
私が中学校に進学すると同時に、『母』は死んだ。重い病を患っていた。気づく筈がない。私にとったら、『彼女』は『他者』だから。『家族』とすら認識できていないから。リビングに倒れている『彼女』を見て、私が最初に思ったこと。
「・・・だた、この人は死んだんだ。」
それ以上でもそれ以下でもない感情だった。いや、感情と呼ぶには些か冷たすぎた。
まるで流れ作業をするかのように私は救急車を呼んだ。受話器を取り、流石に今の落ち着いた態度でこれを知らせたら私が『彼女』に何かしたのではないかと疑われてしまうと危惧し、慌てて電話をかけたという演技をした。葬儀の日も、私は内心何も思っていなかったが、参列者の『人間』に涙を流しながら礼を言った。
「なんで、『彼ら』は泣いているのだろう。」
演技をしながら私は思った。そして、そう思ってしまっている自分が、化け物のように思えた。
私は冷酷なのではないか。感情を保たない、化け物なのではないか。私以外いなくなったアパートの一室。その中の洗面所で、鏡に映った自分を見つめながら自分に問いかけた。
『母』が死んだんだぞ。鏡面に立っているもう一人の私に言う。お前は、本当に何も感じないのか? 全ての『人間』が同じに見えるからといって、人が死んだことに対して何も思わないのか?
私は、戸棚の中に入っていたカミソリを取り出した。
「今、鏡に映っているお前も、僕からしたら『他人』なんだろ? なら」
右手でしっかりとそれを掴み、自分に首筋へと持っていく。ゆっくりと刃をあてがい、力を入れていく。まだ押し付けているだけ、切れはしない。ここで、一思いに手を引いてしまえば、簡単に楽になれる。私はそう確信していた。それに、案の定、鏡に映っている『自分』も、私は『他者』として認識しているようだった。これは好都合だ。こんな化け物、消えてなくなれ。私は右手を引いた。
しかし、それは何者かの手によって阻まれた。手首をひねられ、握っていたカミソリが床へと落ちる。私は驚いて、背中から倒れた。後頭部に激痛がはしり、歪む視界の中で私は私の右手を掴んでいる手の持ち主を探した。
「・・・なんで。」
そこにあったのは、私の左手だった。私は意識などしていなかったのに、左手が勝手に動いた。防衛本能。自分の命を守るための反射だった。死ぬことすら出来ない。私という存在は、私の死すらも否定した。『他者』を均一化し、そんな『他者』というものから私を隔離しているにも飽きたらず、私自身は、私の最後の救いすらも、無慈悲に奪いさってしまった。
私は『他者』に対しては恐怖などは覚えない。しかし、自分の事に関しては違う。私は、この時ほど自分という生き物が、気味の悪い、怪物に思えたことは無かった。鳥肌が立ち、嫌悪感にまみれた。吐き気すらも覚えた。まるで、生体を保存するプログラムで動いているかのようなこの冷静過ぎる動作に、私は私自身により一層の冷酷さを痛感させられた。
私はそれから勉学に逃げた。学問というものは『他者』とは違い、私の中の人間らしい感情を呼び起こしてくれたからだ。努力すれば、それが点数となって返ってくる。その達成感というものに私は病み付きになっていったんだろう。そんなことを繰り返していく内に、私は大学の助教授という立場になっていた。友人なども作らず、いや、正確に言えば作れず、ずっと一人で。『他者』という存在には特別な感情は持たなかったが、孤独感というものは人並みには感じていた。ある意味、私の中の新たな発見だった。この時からだろう。自分を分析し、自分に関する発見をすることをライフワークにしていたのは。
皮肉な話だ。一時期は、『他者』からもたらされるかもしれない被害を恐れて、普通の人間らしく振る舞おうとしていた時期もあったのに、それを止め、この私の『他者』という物の見方の改善を諦めてしまった途端にこの地位を手に入れてしまったのだから。
しかし、私のこの特性が役に立つことがこの頃になって判明した。それは『他者』に対する観察眼の異常な鋭さだ。私は『他者』という物の認識が常に平等になる。しかし、だからこそ『他者』という存在を見た時に、何ら偏見や情報の偏り、感情という物を蔑ろしてそれを観察することが出来きた。結果、その『人間』の仕草から伺える心情の変化や、本人も気がついていない癖などが手に取るように分かった。お陰で、心理学などの学問の深いところまで精通することが出来た。これもまた、皮肉な話だ。
ある意味、その時の生活は安定していたかもしれない。しかし、相変わらず『他者』の認識は変わらなかった。人に物を教えると言う立場で、言動こそは何の違和感もなく『生徒』に受け入れられてはいただろう。だが、全ての『生徒』が同じ風に見えているのでは話しにならないのは事実だった。結局、私は『他者』というものを認識する力がないのだ。このような『病人』が、人に物を教える立場にいていいのだろうか。安定こそしていたものの、私の中の心のモヤは広がっていくばかりだった。毎日が苦悩だ。私自身の『欠損』を自覚し、それをひた隠しにしながら取り繕って生きる。一歩間違えれば私は、私の目的のために『他者』を排除するという行動にも出てしまうのだろう。所詮は平等な『他者』でしか無く、それに対し何かを感じているわけではないんだから、何の躊躇いもなくそれを実行するだろう。そんな不安感に苛まれた。平等に見えてしまうからこそ、一人減ったところでと言う思考に到達してしまうのではないかと言う恐怖だった。
またも、私は逃げるように海外へと出た。休みを貰い、心身を労ると言う名目で飛び出していった。正直、どこへでも良かった。『他者』というものが存在しない場所へさえ行ければ、たとえそれがジャングルの奥地であろうとも。どうせなら、ずっとこのまま誰もいない場所で生きていっても良かったのかもしれない。そうも思ったが、「現実的ではない」という私の理性の声が聞こえた。だが、これは私の人生の中での大きな転機だった。
私はそこで出会ったのだ。『異形』に。『人ならざる者』に。
私はその瞬間、またも自分に新たな発見をした。私は、この『異形』と呼ばれるであろう存在すらも『他者』と認識してしまった。
『異形』は私を見ていた。私は、『異形』に対し、一切の恐れも抱かなかった。ただ落ち着いて、『他者』として見続けた。
私は驚いた。その『異形』が存在していたことだけではなく、自分自身のこの特異性の行き先にだ。頭では分かる。こいつは、人からしたら恐ろしい生き物だ。行動パターンから、人を死に至らしめる大きな力を持っていることも明白だった。だが、私は動じなかった。否、動じることが出来なかった。静かな水面のごとく、そこには一切の波もなかった。だが、そこにはただの冷たさだけではなく、何か穏やかな暖かさを持つものも確かにあった。私はそれを感じた。私の胸の中の何かが飛び跳ねる。鼓動か? 血流か? 違う。これは心だ。私の心が踊っているのだ。しかも、それの直接な原因が、この『異形の他者』によってだ。この事実が、私に感動をもたらした。初めての感覚に、私は膝から崩れ落ちた。嗚咽にも似た声で、私は泣いた。何故私は泣いたのか。証明されたからだ。
「私は・・・・私は、化け物なんかじゃなかった・・・! 私は、誰も愛せないわけじゃなかったんだ・・・・! 」
そう、私は誰も愛せないんじゃない。誰か『一人』を愛せなかっただけなんだ。この『異形の彼女』を見て、私は確信した。私は、『全ての他者』を愛することが出来るのだと。偏見など持たない、公平な愛を。純粋な愛を。皆を愛することが出来るのだ。
私はその『異形の彼女』に関するレポートをまとめた。何故、このような行動に出たのかは私にも分からなかった。もしかしたら、「科学者の知的探究心」と呼ばれるものがそうさせたのかもしれない。学者など、なりたくてなったわけではなかったのに。私はあまつさえ、『彼女』が私の住んでいる場所でどのようにすれば快適に生活できるかに付いても考察した。私のこの観察眼がこのような形で役に立ったのは大変喜ばしいことだった。
私はもう冷酷な化け物などではない。私は全てを愛せるんだ。
私は、ここに改めて言おう。声を大にして。
「私は全ての『他者』を愛している。」
私は言った。私の周りには『他者』だった者達とまだ『他者』であり続けている者達が散在している。真っ赤に染まったその場所で、私はその中心に立っている。そして目の前にはか弱い『少女』。この惨劇を生み出した張本人だ。
「可哀想に。」
「怖かっただろう。」
「君は悪くない。」
こう伝えることが『彼女』にとって正解であり、愛を持って接することに繋がるのだろう。これが正しい。私にとっての愛。『彼女』に与える私の最上の愛だ。
「だから、私はここにいるんだよ。『野々村』君。」
そう。だから私はいるんだ。私の愛がその証明だ。愛してる。全てを愛している。
その思いが、私の口をふさいだ。心地良い。これが愛なのだ。皆の視線が愛おしい。
私は、全てを愛しているのだ。